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壮絶な最期を遂げた松永久秀。吉田鋼太郎が明かす長谷川博己、光秀、そして散り際への思い2021/01/16

 大河ドラマ「麒麟がくる」(NHK総合ほか)の第40回(1月10日放送)では、松永久秀(吉田鋼太郎)が大坂本願寺攻めの最前線から逃亡。理由を尋ねた明智光秀(長谷川博己)に胸の内を明かした後、織田信長(染谷将太)に反旗を翻しました。放送前から「爆死するのでは?」と予想されていた久秀の最期は、予想とは異なるものでしたが、久秀らしい散り方だったのではないかと思います。そんな久秀を演じた吉田鋼太郎さんから、撮影を終えてのコメントが届きました!

 実は撮影前、久秀を演じるのは大変だと感じていたそう。「松永久秀は非常に謎に包まれた人物ですから、収録が始まる前は、演じるのは大変だなと心配だったんです。ところが、いざ台本を読むと、久秀の描かれ方が非常にはっきりしていました。ひょうひょうとしていて何を考えているか分からないような、実に人間味のある人物として描かれていたので、演じる方としてはとてもやりやすかったですね」と懸念していたことが台本を読んで吹き飛んだと言います。

 久秀といえば、これまで悪役のイメージが強かったですが、今作はそのイメージがありません。「僕としては、台本通りに演じただけですが、やるからには今まで見たことがないような久秀像、あるいは型にはまっていないような武将が演じられればという思いで臨みました。心掛けたことと言えば、長谷川くんを大事にすること、好きになることですね。そもそも役者・長谷川博己は、この作品でご一緒する前から大好きでしたので、これだけ長きにわたってお芝居をさせていただき、役者としても存分に楽しませていただきました」と思いを明かします。

 思わず長谷川さんへの思いを告白した吉田さんですが、久秀の光秀に対する思いは「光秀との最初の出会いは、光秀が鉄砲を求めて堺にやって来るシーンでした。その時の光秀のひたむきさに、まず久秀は好感を持ったんだと思います。彼の真面目さ、ひたむきさ、それから純粋さに、とてもひかれたんだと思います。鉄砲というのは攻撃するものではなくて戦争を抑止するものだと光秀に諭すシーンもありましたが、久秀は考えていたことをほかの誰にも言わないけど、光秀には言ってしまうところがありますね。戦国の世がいつまでも続くことは果たして良いことなのか悪いことなのかを、真っすぐ正面から考えられる人物なのではないかと、光秀のことを見ていたのではないかと思います」と長谷川さんのことが大好きな自身と同様に、久秀も光秀のことを好ましく思っていたのではないかと想像します。

 続けて「光秀に鉄砲で『わしを撃て』と言うシーンがありましたが、あれは愛情の裏返しで、光秀を信頼しているからこそ、ある種の賭けみたいなことをやったんだと思います。久秀は光秀との絡みがほとんどですし、光秀ととても親密な関係性ですが、最後は信長に反旗を翻し、あれほど信頼している光秀と敵対関係になってしまう…その悲しさは最後まで持ち続けていたいと思っていました」とこれまでのシーンを振り返ります。

 一方、どんどん威力を増す信長について「これは台本にも書かれていますが、久秀は、信長とかつての自分の君主・三好長慶とを比べているんです。リベラルだった長慶こそが真に天下人たる人物で、今の信長は完全に冷静さを欠いている。比叡山を焼き討ちするなんて、さすがに人の道に外れ過ぎているのではないかと。ですが同時に、そんな信長に嫉妬している部分もあるんです。自分は信長のようにはなれない、だったら最後までとことん逆らってやろう。信長に反旗を翻したのは、ある意味、久秀の自己主張というか、アイデンティティーだったかもしれません」と思いを巡らせます。

 久秀が反旗を翻すことになった原因についても「直接の原因は、信長が大和国の守護を筒井順慶に指名したことです。久秀はこれまで『大和が好き』とさんざん言ってますから、その大和一国さえも手に入らないなら信長に仕える意味がないと謀反を決意したわけです。とはいえ、久秀は信長の直属の部下ではないのだから、国をもらえる可能性があっただろうか、とも思います。久秀の大きすぎる夢ではなかったかという気もします。『ちょっと久秀さん、それは欲張りすぎなんじゃないの?』って。もしかしたら久秀自身も、年を重ねる中で何かを焦っていたのかもしれないですね」と久秀の野望について冷静に見つめます。

 平蜘蛛を光秀に託す場面については「久秀が『平蜘蛛は自分だ』と言った場面は面白いと感じましたね。平蜘蛛は、一見異様に見えるものの、よくよく見ると理にかなった形をしている、だから美しいと言われています。それが自分だと言うのですから、考えようによっては非常に厚かましいですよね。ですが、久秀は、生まれがよくないために己の才覚だけでのし上がった人物。その見方で、姿かたちが一見醜怪な平蜘蛛と重ねるという点では、実感を込めて演じられました」と自身を平蜘蛛に例えた久秀の心情をおもんぱかり演じたと話します。

 光秀と語らう最後の場面も懐古し、「思えばこれまで久秀の場面は、光秀とのシーンがほとんどなんです。あの場面は、久秀と光秀との最後の場面、そして長谷川くんとお芝居する最後の場面でもありました。撮影が始まったのが去年の春でしたから、ずいぶんと長い間、長谷川くんとお芝居していたんだなあと。撮影の際は、いろんな思いが重なって、非常に感慨深いものがありましたね」としみじみ。

 加えて、第40回と最初の頃とは異なる光秀を演じる長谷川さんに脱帽した様子で、「作品の中で、光秀が年齢を重ねていくさまを、長谷川くんはすごく上手に演じてらっしゃる。どんどん精悍(せいかん)になっていくし、重みが増していますよね。ところが、2人の最後のシーンでは、堺で初めて出会った頃の光秀がふとよみがえったように感じました。特に光秀の『戦などしたくない、平蜘蛛などいらない!』というセリフの部分では、若い頃の光秀をもう一度見たような気がして。本当にすばらしい演技だったと思います」と大絶賛。

 そして迎えた久秀の最期については「久秀の最期が爆死ではなかったので、少しがっかりしましたが(笑)、『麒麟がくる』という作品の色を崩さず、池端(俊策)先生らしい解釈で描かれていて、実にすてきだなと感じましたね。心して演じなければと思いました」と笑いながらも、率直な本音を明かす吉田さん。無理を承知で言うと、爆死のパターンも見てみたかったですね。

 また、自害するシーンに込めた思いとして「久秀としては、信長を見据えながら腹を裂くという思いでした。非常に心残りだったと思います。演じる上では、全編を通じて何を考えているのか分からないような人物として演じてきたので、最期もひょうひょうと死んでいくという方法もあったのかもしれません。ただ、僕自身、どうもしっくりこなかったので、やはり自分自身の本能の赴くままに演じてみたんです。その結果、断末魔の叫びというか、信長に対する咆哮(ほうこう)をあげつつ息絶えるという演技になったんです。ただ『麒麟がくる』での救いは、久秀には自分のすべてをさらけ出せる明智光秀という心の友がいたということ。久秀の最期の心情の中には、『光秀ありがとう』という思いもどこかに含まれているんだということを、視聴者の方にくみ取っていただけるとうれしいなと思います」と当初はラストの演じ方について悩んでいたことを打ち明けます。

 最後に、久秀の最期を視聴した方へのメッセージとして「史実であるかどうか分かりませんが、実は、爆死したかったという思いもちょっとはありまして、もしそうであれば、それこそ皆さんの想像を遥かに超えたすさまじいものにしたかったなと。とはいえ、久秀の心情としては、40回を通じてそれと同じくらいのピークを迎えられたと感じていますし、池端さんが描かれた久秀の最期を演じられて心から良かったと思っています。ですので、お願いですから『爆死じゃないのか』とガッカリしないでください」と懇願されていました。

 さまざまな葛藤を経て、久秀を演じていた吉田さん。その思いを知った後に久秀の最期を見ると、これまでとは違う感情が湧き起こるかもしれません。本放送でご覧になった方も、再放送でもう一度、久秀の最期を見届けてはいかがでしょうか。

【番組情報】

大河ドラマ「麒麟がくる」
NHK総合 日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BS4K 日曜 午前9:00~9:45ほか
NHK BSプレミアム 日曜 午後6:00~6:45

NHK担当 K・H

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