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“当たり前に便利なことを実現” ──担当者が語る『みるコレ』の魅力2017/06/30

 先月の本コラムでは、『レグザ』ブランドのテレビから、ユーザーの許諾を得て収集したデータを集計した、ドラマの録画視聴データの分析を試みた。このようなデータを集計できるのは、『レグザ』が『TimeOn』というクラウドサービスを展開し、また他のメーカーとは異なる独自の録画機能をもっているからだ。


『TimeOn』はサービスの総称であり、その中で映像コンテンツを楽しむのに非常に役立つのが『みるコレ』というサービスだ。『みるコレ』では、「パック」という形で条件に当てはまる番組を自動録画したり、テレビ放送だけでなくYouTubeやdTV、TSUTAYA TVなどのネット動画も横断して抽出したりしてくれるという、一度使ったら手放せなくなる機能だ。今回はこのサービスの企画担当である東芝映像ソリューション(株)の片岡秀夫氏・中村任志氏・石灘崇氏に、開発の経緯やサービスの現状、課題についてお話をうかがった。

(左から)片岡氏、中村氏、石灘氏

◆面倒だと思われるところは解決してあげたい

── まず、『みるコレ』のサービス開始時期を教えてください。

中村「ベースとなる TimeOn が 2012年、前身サービス『おまかせ録画コミュニティ』は2013年、『みるコレ』自体は2015年です」

── その直前に中村さんとお話しする機会があり、デモも見せていただきました。そのとき、これはすごいなと思いました。いろいろすごいなと思ったポイントがあるんですが、一つはテレビ番組とYouTube を同じ平面で見られるということです。一方で、当時からするとChromecastやAmazon Fire TVなどが普及してテレビでネット動画を見られるということ自体は普通になってきちゃいましたよね。そこで『みるコレ』が他のデバイスと差別化できるポイントを改めて教えていただければと思います。

中村「コンテンツを横断的に一つのテーマでまとめて見ていただくことができるというのが、少なくともテレビでは他社ではまだ実現できていないところですし、われわれのサービスの一番の特徴だと思っています」

── この発想はいつごろからあるんでしょうか。

片岡「2005年から、元々コンテンツ視点で考えていたんですね。放送という考え方というよりは元々の歴史から来ちゃってるんですけれど、DVDの立ち上げをやっていた1995、6年かな。DVDというパッケージメディアもあれば、録画メディアもある。コンテンツとして捉えた時に、いわゆるセル、それから放送録画も考えるし、そしてゆくゆくは配信も来るねという時代だったんですね。そこでコンテンツを見つける手段として横断検索を考えましたが、毎回キーワードを入れて検索するのも面倒くさいですよね。 (画面を)開いたら全部串刺しで出てくるのがあるべき姿であると言って、4対3画面のときにUI(※)デザインをたくさん作ったりしてました。2005年にその提案をしたんですよ」
  ※UI…ユーザーインターフェース。ここでは操作画面のこと。

中村「潜在的にはみなさん面倒くさいと思っていたんですよ。でもその手段があまりなかったので顕在化しなかった。ユーザー視点で考えたとき、面倒だとはっきりは思っていなくても、面倒だと思われるところというのは解決してあげたいという根本的な思いでした。もちろんいろいろ作るのも大変ですし、横断検索で今の形のGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を出すにあたって、それぞれVOD事業者さんに協力いただいたり、というのが必要なので大変は大変なんですけれど、そこを独自の価値提供として実現したいと作っていたという流れです」

片岡「約10年ぐらいかかったということですね」

『みるコレ』パックのイメージ画面。
『みるコレ』パックを使えば、特定のタレントや好きなジャンル・テーマごとにテレビ放送だけでなくYouTubeやdTV、TSUTAYA TVなどのネット動画も横断検索して番組を見つけることができる。
見つかった未来番組は、接続されたUSBハードディスクにおまかせで自動録画も可能。

◆当たり前に便利なことを実現することをわれわれはやっている

── 技術的な解決よりも、環境が整うのが大変だったということですか?

中村「それもありますね。API(※)の下地が整ってきたので、われわれはそれを利用させていただいてやることができたと言う面も確かにあります。構想があっても技術的に、あるいは環境的になかなかできなかった。あとはテレビ側の性能、一昔前だとこういったことができるようなブラウザがなかったりとか、処理が追いつかなかったりとかっていうのがありましたけど、全体のタイミングが合ってきて、ようやくできるようになって一通り満たせるようになったイメージですね」
  ※API…アプリケーション・プログラミング・インターフェース。異なるサービス間で機能を共有するための仕組み。

── デモをあらためて見せていただいて思ったのは、テレビ番組をネット動画のように扱えるという感覚なんですね。これはネット動画に親しんでいる人ほどすごいと思うと思うんですが、具体的なターゲットとしているユーザー層はあるんでしょうか?

中村「ターゲットというわけじゃありませんが、最近の若いデジタル・ネイティブと言われてるような方々だと、むしろコンテンツを好きなときに好きなように見るということが当たり前なのではと言う気がするので、テレビって不便なものという捉えられ方をしているかもしれない。多分そういう方々にとっては好きなところから選んで、最初から最後まで自由に見られるということが当たり前でしょうから、それをテレビでできるようにしてあげたとしても新鮮さはないかもしれません。一方、もうちょっと上の世代だとテレビ番組をネット動画のように扱えるというのは、驚いていただけると思うんです。ある意味、当たり前に便利なことを実現することをわれわれはやっているのかなという意識ではいます」

──「当たり前に便利なことを実現」っていいフレーズですね。

中村「ちょっといいこと言ってみました(笑)」

片岡「昔から比べるとコストが大幅に落ちました。サーバーコストが非常に大きな問題で、当時レコーダーのころも部分的に似たような『おすすめサービス』や、レコメンドでのおまかせ録画サービスもやっていました。しかし、昔だとサーバーの立上げが何千万円、月額が何百万円の世界なんです。利用者が少なかろうがどうしてもコストがある一定のキャパシティまでかかるのが、AmazonさんのAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)というサービスを使うことで利用量に応じてCPUやメモリを最適にスケーラブルに購入できる。自分でサーバーを、設置場所を借りて、マシンを借りて、メンテナンス要員をお願いしてその維持費を払ってまでサービスに回さなくても、誰もが必要なリソースを借りるという形で自分のサービスを立ち上げられる時代を支えてると思うんですね。うちに限らず新しくクラウドサービスやアプリサービスを立ち上げられているのはこういった時代が来たからです。そういう時代性がコストを落とし、その容易さ、メンテナンスのしやすさ、ビジネスのしやすさというのを満たしているんですね」

中村氏

── やはりそういう話をお聞きすると、発想に環境とかいろいろな用件が追いついてきたという感じがしますね。映像コンテンツを自由に楽しむための条件が、ようやく整ってきたと言えるかもしれないですね。

片岡「そうですね。彼(中村氏)が先ほど触れたターゲットユーザについてですが、実はいろんなターゲットを想定しているんですよ。サービスに対してすごくエントリーな人もいれば、特定のアイドルやアーティストのコアなファンもいる。こういう人たちは似ているようで、好きなアーティストを『アーティスト』ってくくっちゃいけないんですよ。要は出現率が低いか高いかは大きな使用感の差なんです。ジャニーズ系の有名タレントさんは番組に冠も付いているけれど、別の番組にゲストでポンと出たりする。前者は教えてもらわなくて後者だけ教えて欲しいんですね。あるいは、大好きなタレントだけどめったにテレビに出ない、年に1回か、アーティストだったらアルバムを出した2年にいっぺんぐらいドッと出るという人もいる。なかなか慣れていないと深夜のトーク番組とか、専門チャンネルとかに出るのを見つけるのは難しい。そういったことをもれなく見つけるのはまったく違うニーズなんですよ。当初の思想としてはそういういろいろなニーズに対して共通で答えるのが『ターゲット』というスタートラインで、ただここら辺で使い勝手が上がらないよねっていうのは現実問題としてあるんですよ」

中村「片岡が説明したようなこともあるんですけれど、お客さんにはその辺の裏事情はあまり関係なくて、便利に使えればいいわけですよ。どうしてもコンテンツの違いによって操作感の違いとかが出てしまうんですけれども、普段使いしていただけるような便利なサービスにするために進化させていくというのを日々やっているという感じですね」

片岡「具体的な使い勝手の一つとして、僕がやっているのは好きなアーティストが朝のワイドショーにあちこち出ていると、どこに(出演シーンが)あるのか?ってなるじゃないですか。こういった場合、その人のパックを開くかシーンで検索すると、出演シーンのリストがパンと出てくるので、順番にチェックしていってそこだけ連続で見るという使い方です」

中村「それも人によって違うんですよね。片岡は人物が軸なんです」

片岡「これは朝ワイドによくでる人気タレントの操作のケースですが、好きなアーティストがあまり出ないというケースが多いのも僕なんですよ。それぞれの好みがあるので、そういうストーリーに分解してあげないと、サービスとしては『これだけいっぱいあるね』というのがまるで幕の内弁当になっちゃう」

石灘「『次みるナビ』(※)や『みるコレ』のパックというのは、どのテーマを選ぶかが結構肝になっているサービスだと思うんですよね。好きなアーティストがいなくても、人気の高い番組が事前に分かるランキングパックや、スポーツや趣味など、細かいテーマで楽しんでいただけます。それをどう伝えるのかや、見たいものが決まっていない人に対して、『こういうところから番組はいかがですか』という提案をいかにこのサービスの導入部分でやるかというのが今の課題です。最初にサービスを起動するときに『興味のあるパックを選んでください』という形でやっていますが、その中でどうやったら本当に興味があるパックを選んでもらえるのかというところを日々考えている状態です。特に人物系のパックってすごくおまかせ録画されている割合が高いんです。」

※『次みるナビ』…番組を見ながら、出演者やお気に入りのジャンル・テーマに関連する録画番組、YouTube動画を表示。次見たいコンテンツをすぐに選べるサービス。
(BZ710XシリーズとM510Xシリーズに搭載)

◆実は最先端テクノロジーと人力のハイブリッド

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