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杉浦愛蔵役の志尊淳に信頼「“新しい時代が来る”感じがすると思います」。「青天を衝け」演出家が語るVFX撮影&「大政奉還」の“草彅慶喜”2021/07/17

 第22回(7月11日放送)の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか)では、フランス・パリに到着した渋沢篤太夫(吉沢亮)が、初めて見る異国の景色や万国博覧会の展示品に目をキラキラと輝かせている姿が印象的でしたが、実はこれらの映像にはVFXという特殊な映像技術が使われていました。そうと知ってもパリの風景や万国博覧会のエレベーター、皇帝・ナポレオン3世との謁見(えっけん)式のシーンに違和感をさほど覚えることなく「青天を衝け」の世界観に没入できたのはすごいことですよね! 

 今回は第22回~第24回の演出を手掛けた田中健二さんから、VFXならではのシーンや杉浦愛蔵役の志尊淳さん、徳川慶喜役の草彅剛さんのエピソードも伺いました!

――第22回からパリが舞台となり、VFXが駆使されていましたが、その見どころを教えてください。

「当初、パリに行くつもりでしたが行けなくなったので、そこからできることを考えて試行錯誤したことはものすごく大変でした。1864年はまだムービーが発明される前なので、映像には残っておらず、絵や写真でしか知ることができないパリの景色や万国博覧会が、現代の技術で再現されているのが見どころの一つです。また、幕末の日本人がどんな反応をして、どういう感慨に浸ったのかに加えて、パリと日本がパラレルに描かれるのでその差も楽しんでいただければと思います」

――パリに行くつもりだったとのことですが、いつ変更の決断をされたのでしょうか?

「昨年の10月くらいまでは『行きたいね』と言っていたのですが、10月末にフランスの1日当たりの(新型コロナウイルス)感染者が5万人と報告され、11月いっぱいロックダウンということが発表されたので、11月1日か2日ごろに行かないで作る決断をしました」

――パリのシーンはどのような手順で撮影され、合成していったのでしょうか?

「ナポレオン3世と謁見するテュイルリー宮殿は消失して今は現存していないんです。その撮影場所を決める際には、ストリートビューを使ってWEB上でロケハンをした後、パリのプロダクションの方にリアルにロケハンをしてもらいました。実際の撮影に関しては、昭武(板垣李光人)が謁見式で歩いているシーンは、完成に至るまでには細かい作業がありまして…。まず、衣装や履物を身に付けた板垣さんに歩いてもらって、1mを歩くのに何秒かかるかを測り、そのビデオを見て現地の板垣さん役のスタッフに同じスピードで歩いてもらって撮影しました。その後、パリと日本で撮影したシーンをそれぞれ合成していくんです。ほかにも、篤太夫がナポレオンの墓の手すりに手を付くシーンは、現地の手すりと同じ幅と厚みで作ったグリーンの手すりっぽいものに手を置いてもらい、そこにパリで撮影した映像をかぶせるということをするなど、合成に見えないよう工夫をしました」

――ほかにはどのような工夫をされましたか?

「VFXだけに目が行かないように、エレベーターのシーンはセットを作りました。そこは思わず笑っちゃうようなアナログ方式で撮っているんです。万国博覧会はほぼVFX、謁見式はパリと日本で撮影したものを合成、エレベーターはセットを作って周辺をVFXで埋めるという、さまざまな手法を織り交ぜて撮影しました。そうすることによって、各シーンのリアリティーを上げていく工夫をしたんです」

――グリーンバックで撮影していた吉沢さんや板垣さんの反応はいかがでしたか?

「パリで撮影した素材にVFXチームがCG上の人物を入れたイメージ映像や、当時の絵や写真を大伸ばしにして、風景をイメージできるようにするなど、できるだけ具体的なものを用意して臨みました。板垣くんは謁見式で、ナポレオン3世との距離感や、目線の位置が分かりにくいだろうということで、目線の位置は棒などで指し示しました。役者さんは相手に合わせて自分の芝居をすると思うので、相手がいないということのストレスは相当あったろうと思います。吉沢くんは割と楽しんでやってくれてたと思います。こちらの勝手な思い込みかもしれませんが(笑)。本人の中でイマジネーションを広げてくれて、思い切った芝居をしてもらいました。そこが彼のすごいところだなと思います」

――第22回から本格的に登場する杉浦愛蔵役の志尊淳さんの印象を教えてください。

「志尊くんとは連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合)でご一緒させていただいた縁もあり、非常に信頼している役者さんです。杉浦愛蔵はパリ万博を機に篤太夫と個人的な関係を結び、親友という形で篤太夫と関係を結んでいく人物なので、今までの人とはちょっと違う雰囲気がほしいなと思っていました。志尊くんはそれを理解してくれて、幕末の熱い攘夷の志士たちとは全然違う、柔らかいナチュラルな感じで演じていただいたので、“新しい時代が来る”感じがすると思います」

――「半分、青い。」の時から成長を感じた部分はありましたか?

「『半分、青い。』以降、主役などの経験を経て、役柄に対する感度がものすごくいいなと。『半分、青い。』の時から思っていましたが、その時以上に居ずまいがどっしりしているというか…。新しい登場人物の方は、周りが出来上がっているので、そこに入っていくのは勇気がいると思うんですけれども、堂々と篤太夫の親友になるという役柄を即座に理解していて…。僕自身、信頼しているので、『志尊くんが考えている表現でいいよ』という感じでやっていただきました」

――パリ編では、篤太夫が和装から洋装になるという変化がありますが、篤太夫自身にはどんな変化があるのでしょうか?

「第22、23、24回のパリ編での大きな変化というと、外国人が嫌いで、かつては攘夷の志士だった篤太夫が外国の人々を人間として認め、理解することです。それは演出的にいろいろ仕組んだところでもあって、新しいことをのみ込む能力の対比をはっきりさせる意図があり、吉沢さんにはその辺の表現、物事に感動する、物事を受け入れることを際立たせてもらっています。それは水戸藩士と対立するようなところを通じて、栄一の栄一たるゆえんが分かるというか。新しい環境や新しい物事に対しての好奇心『おかしれえ』と感じる部分をパリでも発揮したからこそ、渋沢栄一が大きくなるんだなと分かるようにはしたつもりです。そこは吉沢くんも意図をくんでくれてビビットにやってもらっています」

――篤太夫がパリにいるころ、日本国内では大政奉還が起きますが、草彅剛さん演じる徳川慶喜の見どころを教えてください。

「第23回(7月18日放送)で大政奉還が起こります。なぜ大政奉還に至ったのか、慶喜公は見方によって評価が分かれることは、勉強すればするほど感じてしまうし、本当のところはどうなのか分からないのですが、『青天を衝け』では、こういう筋道で慶喜が大政奉還をしたんじゃないかと、慶喜の気持ちが分かるように描いたつもりです。なぜ慶喜が大政奉還という決断に至ったのかという気持ちをメインに演じていただいたので、今までの幕末ものとは一味違う感じでご覧いただけるかと。実は徳川家康とドラマ上でも少しリンクさせるという隠し技もあるので、そこも楽しみにしていただければと思います」

――草彅さんが演じる大政奉還のシーンをご覧になって、いかがでしたか?

「大政奉還の宣言で家康公に言及したという史実があるのですが、そういうところに少し思いをはせてくれというオーダーをしたところ、ものすごくいい芝居をしていただいて。撮り終わった後に『感動しました』と伝えたら『言っているうちに家康様が降りて来ちゃって』と言われて(笑)。本当かウソか分からないですが『家康様に感情移入してこんな感じになりました』と。大政奉還の宣言はとても難しいセリフなのに、どこか“草彅慶喜”の気持ちを出してくれているんです。ちゃんと感情が大政奉還に入っているのがすごいなと思いました」

――ありがとうございました!

【番組情報】

大河ドラマ「青天を衝け」
NHK総合 日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K 日曜 午後6:00~6:45

NHK担当 K・H

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