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小澤征悦が炎天下の撮影を乗り切ったアイテムとは? 中条あやみ主演「水上のフライト」でカヌーのコーチを熱演2020/11/12

小澤征悦が炎天下の撮影を乗り切ったアイテムとは? 中条あやみ主演「水上のフライト」でカヌーのコーチを熱演

 

 実話に着想を得た映画「水上のフライト」が11月13日に公開される。不慮の事故で歩けなくなった藤堂遥(中条あやみ)が、母や仲間、コーチらに支えられながら、カヌーに挑む物語。遥のコーチを務める宮本浩を演じた小澤征悦から、役どころや撮影エピソードなどを聞いた。

――まずは、台本を読まれた感想をお願いします。

「『TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM2017』で審査員特別賞を受賞した作品で、台本を読んだ時に『いいものを書く!』という勢いを感じました。実際、よかったからこそ、この作品に参加させてもらおうと思ったんですけれども、まだ粗削りなところもあり、文字という二次元で表現されているものを、役者が三次元で表現する時につじつまが合わないというか…。直した方がよりよくなるよねというところは、兼重(淳)監督と相談して、軌道修正したのですが、基本的には楽しく愛情深い作品だなと感じました。パラカヌーという題材で、不慮の事故で悲しいことが起こってしまった後に、家族の愛や仲間の献身的なサポート、カヌーのコーチと生徒の師弟愛が随所に散りばめられていて、それが大きな大きな優しさとなって作品全体ににじみ出ているのが感じられたので、すごくよかったです」

――主人公の遥は、歩けなくなってからパラカヌーに出合います。小澤さんはパラカヌーについてはご存じでしたか?

「パラカヌーという競技があることは知っていましたが、詳しくはなかったです。演じる側としては、パラカヌーという世界で頑張ってる人たちがいて、それに対してリアリティーを持ってお伝えできればと思って、頑張ってやったつもりです」

――小澤さんが演じる宮本はカヌー教室を開いていますが、ご自身はカヌー経験があったのでしょうか?

「遊びで乗ったことあるような気がするんです。覚えてもいないくらい昔にちょっと乗ったんですけど、こんなにたくさん乗ったのは初めてでした。本物のコーチの下、映画の撮影に入る3週間ぐらい前からみんなで集まって、中条さんやカヌー教室に出てくる子どもたちと一緒に練習をしました。“沈(ちん)”と言って、ひっくり返る練習もするんですが、結構怖いんですよ。もしもの時のために、カヌーから抜け出す練習もしましたね。実際に経験して、カヌーは手じゃなくて足でこぐんだなと体感しました。カヌーは足を交互に踏ん張って、それに合わせて手を動かすので、方向性を決めるのは実は下半身なんです。まさに全身運動なんだということが分かりました。そして、普通のカヌーはバランスを取るのはそこまで難しくはないんですけど、中条さんが劇中で乗っている競技用のカヌーは幅が細くて、バランスを取るのがものすごく難しいんですよ。僕もカヌーの両端を持ってもらって、競技用のカヌーに乗ったんですが、手を離された瞬間に沈没しましたからね。それを中条さんは猛練習されて乗っているので、すごいなと思いました。ただ、僕もコーチ役で、うまくならなきゃいけないので一生懸命練習しました」

小澤征悦が炎天下の撮影を乗り切ったアイテムとは? 中条あやみ主演「水上のフライト」でカヌーのコーチを熱演

――3週間練習したとのことですが、1日にどれくらい練習されたのでしょうか?

「練習は、川に出て1時間程度かけて往復するのを1本と数えて、それを繰り返すんですけれども、1日に5、6本やりました。それだけやったらもうクタクタでした」

――それはすごいですね! しかも、作中で遥を川に飛び込んで助けるシーンもありましたよね。

「あれは大変でした。川に入ると濡れちゃうので、段取りだけやって一発撮りで。いい意味で現場の緊張感がありましたね。川の下に何があるのか分からないので、それも考慮して、浅くない、飛び込んでも大丈夫なところで飛び込んで。ちょっと川の水を飲みました。リアルガチな川の水を(笑)。でも、助けるのがあの中条さんですから。あんな美人を川から助けられるんですから、一生懸命頑張りました(笑)」

――先ほどカヌーを猛練習していたといわれていた、遥を演じている中条さんの印象を教えてください。

「今回の映画で『はじめまして』だったんです。僕は以前から映画やドラマで見ていて、繊細で頑張り屋な方なんだろうなという印象があって。実際会うと、ものすごく頑張り屋さんで、カヌーも前向きにひたむきにやる方で、素晴らしいなと思いました。あれだけ美人でかわいい人なのですが、自分がそういう容姿であることを全く気にも留めずに、どんどん自分の表現力を出して芝居されていたので、誠実で真っすぐな人なんだなと感じました。実際、芝居もすごくいいですし、今作は彼女の女優人生の中でもすごくいい作品なんじゃないかなと思いました」

小澤征悦が炎天下の撮影を乗り切ったアイテムとは? 中条あやみ主演「水上のフライト」でカヌーのコーチを熱演

――中条さんとの撮影の中で、思い出のエピソードを教えてください!

「去年の夏に暑い中、川沿いで撮影していたんですけれども、川だから隠れるところがないんですよ。それこそ、カヌーに乗っちゃうと全く隠れられないし。だから、2時間撮影したら10分休憩を入れるという熱中症対策をしてたんですけど、そんな中で『ちょっとでもテンションを上げていこうぜ!』ということで、中条さんはアイスクリームやアイスキャンディーを大量に差し入れてくれて。おかげで子どもたちと一緒に楽しい時間を過ごせました。僕はちょっと塩分高めでしょっぱいけれど、大好きな梅干しを『これだったらみんな、喜ぶかな』と思って差し入れしたら、共演者もスタッフの皆さんも喜んでくれてあっという間になくなりました。梅干しはミネラルもあって1粒食べると塩分をはじめ、いろんなものを吸収できるので夏の暑い時にはお薦めです」

――宮本を演じるにあたってどんなことを心掛けましたか?

「宮本は、心に傷を負った子どもや学校に行けなくなっちゃった子どもを受け入れて、そこで人生勉強というわけじゃないけれども、カヌー教室を開いているんです。そういう大きな器みたいな、受け入れる受け皿みたいな、そういう人物としていれたらいいのかなと。問題を抱えてしまった子どもたちに、大らかな笑いと『大丈夫だよ』と励ましながら明るく接する人間で。すごく愛情があるからそういうふうにするわけです。そんな宮本さんを描けたらいいなと思って演じました」

――宮本の明るいキャラクターが小澤さんにピッタリですよね! そんな宮本の役に近づくためにどんなことをされましたか?

「近づくためにというよりかは、宮本という役柄には、キーワードとして“子どもたち”がすごく大事だったので、撮影前に子どもたちとカヌーの練習をする中で、自然にコーチとして見てもらえるように心掛けました。宮本の大きな魅力の一つが、自然と子どもたちが集まってくるというところで、それが大事だと思ったので、意識して子どもたちと積極的に接していました。撮影が始まってからも、子どもたちのところへ椅子を持って行って、みんなで雑談をしながら撮影が始まるのを待っているようにしていましたね」

――だから宮本と子どもたちの距離が近く見えたんですね!

「そう言ってもらえるとすごくうれしいです。子どもたちが生き生きとしているということがすごく大事なので」

小澤征悦が炎天下の撮影を乗り切ったアイテムとは? 中条あやみ主演「水上のフライト」でカヌーのコーチを熱演

――不慮の事故に遭った遥のことを、宮本はどのように見ていたと思われますか?

「彼女の心の状態を助け上げてあげなきゃいけないと思っていたでしょうね。遥に対して『お前ならできるよ』と褒め称えることによって、彼女の心を動かさなきゃいけないわけです。心は物理的には動かせないんですよね。だから言葉の力というのがすごく大事で、物語の中では、宮本の仲間だった遥のお父さんとの関係性があり、彼女のことを昔から見てるという、第二の父親的な存在だったりもするので、優しくいたわるのではなく、『ばかやろう! そんなこと言ってるんじゃないよ、お前ならできるよ!』と鼓舞する感じ。僕はそういうのがすごく優しいと思うんですよね。そういう形で宮本を演じることができたのはよかったです。映画的にもそっちの方が正解だったと思います」

――遥はやがて、宮本や周りの影響でパラリンピックに出たいという気持ちになります。それを知った時の宮本の心情はどうだったと思いますか?

「あのシーンは宮本にとっても遥にとってもすごく大事なシーンで。キャンプに行ってご飯を食べている時に遥から『私、出ようと思う』と言われて『いいじゃん。やろうよ。お前ならできるよ。バッチグーだぜ!』と宮本が答えるんですが、実はアドリブなんです。やってみたら監督が『それいいね!』と。宮本が昭和のおっさんみたいで周りは全然受け入れてないんだけど、本人は大真面目にそれをやっている。ああいうすごく大事なところで、抜けたことをすることによって、みんながふわっとして前向きになれるという要素を入れられたので、うれしかったです」

小澤征悦が炎天下の撮影を乗り切ったアイテムとは? 中条あやみ主演「水上のフライト」でカヌーのコーチを熱演

――最後に、あらためて見どころをお願いします!

「遥を支えようとする家族の愛や仲間たちの大きな愛、コーチと生徒の師弟愛など、いろんな形の愛が集まって、それが大きな力となって遥の背中を押していく。そういう優しさと美しさ、人間が本来持っている優しい心みたいなものを感じてもらえたらうれしいです。また、コロナ禍であまり外に出られないとか、人と会えない時だからこそ、こういう優しさに包まれた映画を見ていただいて、人って、仲間って、家族っていいなとあらためて感じていただけたらすごくうれしいです」

――ありがとうございました!

【プロフィール】

小澤征悦(おざわ ゆきよし)
1974年6月6日生まれ。アメリカ合衆国カリフォルニア州出身。ふたご座。O型。近年の主なドラマ出演作は、ドラマ「もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~」(日本テレビ系)、「アフロ田中」(WOWOW)、「パパがも一度恋をした」(フジテレビ系)主演。2021年2月11日公開の映画「キングスマン:ファースト・エージェント」で主人公・オックスフォード役の日本語吹き替えを務める。

【作品情報】

「水上のフライト」
11月13日公開 

自分の実力に自信を持つ藤堂遥(中条あやみ)は、走り高跳びで世界を目指し、有望な選手として活躍していた。だがある日、不慮の事故に遭い、二度と歩くことができなくなる。将来の夢を絶たれ、心を閉ざしていた遥だったが、周囲の人々に支えられ、カヌーという新たな夢を見つける。

監督/兼重淳 脚本/土橋章宏 兼重淳
出演/中条あやみ 杉野遥亮 大塚寧々 小澤征悦ほか

取材・文/K・H



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