Feature 特集

ソニン「濃いキャラクターの中でもマリアがスパイスになるように、役の立ち位置を意識しました」――「となりのチカラ」インタビュー2022/02/10

ソニン「濃いキャラクターの中でもマリアがスパイスになるように、役の立ち位置を意識しました」――「となりのチカラ」インタビュー

 現在放送中のドラマ「となりのチカラ」(テレビ朝日系)。困っている人がいたら気になって仕方なく、声を掛けようか掛けまいかと悩み、中腰になってしまう主人公・中越チカラ(松本潤)が、同じマンションの住人たちが抱える問題を解決していく社会派ホームドラマです。

 第1話では隣人家族の虐待、第2話では、認知症の祖母と祖母の介護か大学受験かで葛藤するヤングケアラーと、身近に起こりうる社会問題を切り取ってきた本作。今夜、2月10日放送の第3話では、チカラの階下に住むベトナム人留学生のマリア(ソニン)が抱える問題に、チカラが首を突っ込んでいきます。

 そんな第3話の放送を前に、外国人技能実習生として介護職につくも妊娠を理由に解雇されてしまい、日本に失望したベトナム人・マリアを演じるソニンさんに、マリアを演じる難しさや初参加となる遊川作品について、また、舞台と映像の仕事の違いなど幅広く伺いました!

――本作は遊川和彦さんが脚本を手掛けられています。ソニンさんは遊川さんとのお仕事は今回が初めてと伺ったのですが、初めて脚本を読まれてどのような印象を受けましたか?

「コメディー色が強いというよりは、社会派なメッセージが強い台本になっているなという印象でした。私が演じるマリアという役は技能実習生のベトナム人で、介護の仕事がしたくて日本に来ている女性なんですが、知人にも、会社にベトナム人の技能実習生の方がいるという方がすごく多くて。日本でのベトナム人の技能実習生のあり方を鋭く切り込んでくるテーマだなと感じました。私は最初に第3話の台本をいただいて、遊川さんの前で読んでマリア役を候補から決める…という感じだったので、役が決まってから台本全体を読ませていただいて。普通にマンションに住んでいる方々が抱えている問題、今の社会が抱えているだろう問題をビビッドに取り上げていて、重たい感じの強いドラマになるのかなと思っていたのですが、遊川さんご自身はかなりコメディーに仕上げたかったようで、『とにかく面白く』『視聴者の期待をどんどん裏切っていく、読めない感じの演技にしてほしい』とおっしゃっていました」

――実際にドラマを拝見すると、確かにシリアスなテーマながらも明るい雰囲気で描かれていました。

「私はまだ第3話を見ていないのですが、私自身はあまりディープに演じすぎないようにしました。深刻に演じようと思ったら、もっと深刻に演じることもできるんですけど、感情の浮き沈みやアウトプットが激しい外国の人物として演出をつけていただいたので、深刻になりすぎないようにと意識して演じていましたね。シリアスなテーマを扱ってはいるものの、そこだけにフォーカスしている作品ではないので、意外と重たい感じにはなっていないと思います。あくまで普通に見える家族が、実はそれぞれに問題を抱えていて、いろんなタイプな人たちがそれぞれに乗り越えていく…そして、問題があって誰も助けてくれなかったり、社会的に解決できない弱くて崩れてしまいそうな人たちを、こんな人が隣にいれば救ってくれるのにな…という描き方であり、かつ、今起こっている社会問題をビビッドに扱っていながら、人とのつながりの温かさも感じてもらえる作品だと思います」

――本作では演出も遊川さんが担当されていますが、“遊川作品らしさ”はどのように感じていらっしゃいましたか?

「今までも手掛けられた作品を拝見したことがありましたが、やっぱりコメディーだけでなく社会派なところに切り込んでいくのは遊川さんらしいなと思います。演出の仕方では、最初お会いした時に『視聴者を飽きさせない展開にしていきたい』『マリアは外国人というのもあって、感情表現が日本人よりも分かりやすい。ワンシーンで怒ったと思ったら、次の瞬間には泣いて…っていう感じにしたい』と言っていただいたのが心に残っています。あと『奇麗な顔はいらない、人間らしさが出る顔の方がいいよね』とおっしゃっていて。キャラクター作りにしても、衣装もメークもすごくこだわる方なんです。衣装合わせも本当に何回もしました。マリアについてもすごく細かくて、視聴者の方がこれに気付いたらすごいなっていう遊川さんのこだわりがあるんですけど、ネイルを奇麗にしている余裕がなくて剥がれている…っていう。マニキュアって放っておくと、剥がれてしまうじゃないですか。それを毎回作っていたんです」

――そんな細かな演出まで!

「そういった細かな部分でキャラクターの人物像を表現したり、『こういう振りをするよね』って身振り手振り一つにしても本当にこだわられていますね。こちらも提案するとすごく喜んでくださって」

――遊川さんの細部にまでこだわる演出が、マンションの住人たちが実際にどこかで生きているようなリアルさにつながっているんですね。

「常にリアリティーを考えられていて、その人柄を“奇麗”に演じてほしくないのではと思うんですよね。女優さんが演じると奇麗な世界に収まってしまうような部分を、人間らしく演じてほしいと考えているようで、以前『人間を格好よく、奇麗にというのは誰にでもできる』『格好悪さを演じられてこそ本当の役者だ』っておっしゃっていましたね」

ソニン「濃いキャラクターの中でもマリアがスパイスになるように、役の立ち位置を意識しました」――「となりのチカラ」インタビュー

――第3話では、ソニンさんが演じられているマリアが抱える問題が明らかになっていきますが、演じ方などで悩まれた部分はありましたか?

「先ほどリアリティーのお話をしたんですが、本当にリアルに演じるとまた違うんですよね。遊川さんがマリアという役に本当に求められているのは、この作品における立ち位置や役割もあるのかなって。もちろん日本に在留する外国人特有の問題ではあると思うのですが、外国人実習生のリアルを伝えるというよりは、マンションの住人の中での関係性でスパイスになるような…。みんな濃いキャラクターなんですけど、その中でもまたちょっと違う個性のキャラクターの1人になっているのかなと思います。これが韓国や中国の方のカタコトのイメージともまた違って、ベトナムの方の日本語って話し方が柔らかくてかわいい印象を受けました。だけど、激しくて、チカラくんが振り回されてしまうっていうキャラクターにしなければいけないので、バランスに悩みました。あとは、皆さんとの中でのバランスやポジショニングを意識していますね」

――個性的なマンションの住人たちの中でも、ベトナム人のキャラクターは少し特殊かもしれないですね。

「台本も少しなまっているように書いてくださっているのですが、『ここはたどたどしくするために、ここの助詞をスキップさせてほしいです』『ここは言いづらそうな感じにさせてほしいです』と遊川さんに相談させていただきながら、マリアを作っています」

――ソニンさんは舞台の仕事も多く、地上波の連続ドラマが久しぶりかと思うのですが、舞台と映像の仕事の違いをどのように感じていらっしゃいますか?

「こんなにハードスケジュールの映像現場は本当に久しぶりですね。前から感じていたことではあるんですけど、ここ数年、舞台のライフスタイルになっている中であらためて思ったのは、舞台と映像は全く別のお仕事だなと。“演じる”ということだけが一緒で、その方法や技術が全く違うんです。映像は演技をしている時、目の前にスタッフがいるのですが、舞台はアクティングエリアには出演者しかいないので、集中力の使い方も違いますよね。ドラマは順番に撮影しないですし、同じシーンを画角違いで何度も撮ったりして…。私もカット割りは分かっているんですけど、『ここが使われたら…』『ここの音が使われたらどうしよう…』と思って、私は全カットを全力で演じるんです。そうしたら、遊川さんが『あなたは全部全力で演じて、本当に偉いね』って言ってくださって(笑)」

――ライフスタイル、生活リズムや気持ちの面でも全く異なってきますよね。

「そうですね。そういった意味では、今の現場のキャストの皆さんは特に映像のお仕事のプロフェッショナルの集まりなので、映像の仕事でのブランクは感じます。皆さんは自分の配分やルーティン、精神のコントロールの仕方も全部分かっていらっしゃるんですよね。置き換えれば、私が舞台で分かっていることと同じことだと思うんですが、日々反省です…(笑)」

――主人公のチカラを演じている松本潤さんとご一緒されての印象はいかがですか?

「まず、すごく繊細で、いろんなところに目が行き届いてらっしゃるなと思っていて。失礼かもしれないですが、舞台の時の自分と似ているなと感じています。私はすごく周りが気になって、いろんなものが見えるタイプなのですが、松本さんはカメラや証明、音声、セットの美術品、カット割りも含めて全部が見えていて、全部把握されていて…。それでいて、セリフ量がすごいので『松本さんはいつ寝ているんだろう?』って本当に思うくらい、超人的な方だなと思っています。だから、『疲れていないかな』と心配になるんですけど、スタンバイの時には普通に雑談もしてくださいますし…」

――どんなお話をしていらっしゃるんでしょうか?

「健康系や食事などの話題で盛り上がったりしますね(笑)。あとは、早生まれなので学年的には私の方が一つ上なんですけど、生まれ年が同じなのでそんな話をしたり、共通の知り合いもいるので、そんな話をしています」

――記者会見の際にも現場が和気あいあいとしているとお話していましたね。

「周りのキャストさんが本当に皆さんフレンドリーで、『あそこのあれがおいしい』とかたわいもない話をしたり、私がドライアイだと話したら、風吹(ジュン)さんが『この目薬がいい』とオススメしてくださったり。松嶋(菜々子)さんもすごくフレンドリーですし、長尾(謙杜)くんもすごく無邪気でかわいいですし、上戸彩ちゃんは昔から知っているので…現場は本当に和気あいあいとしていますね」

――本当にいい雰囲気で撮影されているんですね! では最後に、「となりのチカラ」全体を通しての見どころをお伺いできますか?

「各話で住人にスポットを当てていくのですが、回を重ねるごとに、その回のメインとなる住人にマンションの人たちが関わっていくようになって、そして最後には、マンション全体の話になっていくんです。全部を見ていただくことによって、この『となりのチカラ』の面白さがすごく伝わっていく作りになっているので、ぜひ最後までご覧いただきたいです。さらにいろんなシチュエーション、年代の方に『あ、これは私だ』『このシチュエーション、経験あるな』とか思っていただけると思いますし、チカラくんの“格好よくないヒーロー”をすごく応援したくなる話になっていると思うので、ぜひ最後まで見届けていただきたいですね」

――最後まで楽しみにしております。ありがとうございました!

ソニン「濃いキャラクターの中でもマリアがスパイスになるように、役の立ち位置を意識しました」――「となりのチカラ」インタビュー

【プロフィール】

ソニン
1983年3月10日生まれ。高知県出身。O型。魚座。舞台を中心に活躍し、近年の主な出演作にミュージカル「マリー・アントワネット」(2018~19年)、舞台「KERA CROSS『グッドバイ』」、ミュージカル「ビューティフル」(ともに2020年)、ミュージカル「17AGAIN」「オリバー!」(ともに2021年)など。今秋上演のブロードウェーミュージカル「Kinky Boots」では、ローレン役で出演する。

【番組情報】

「となりのチカラ」
テレビ朝日系
木曜 後9:00〜9:54

テレビ朝日担当 K・T



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.