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「第44回BKラジオドラマ脚本賞」最優秀賞はこども食堂を舞台にした佐藤あい子氏の「あの子の風鈴」が受賞2023/11/18

「第44回BKラジオドラマ脚本賞」最優秀賞はこども食堂を舞台にした佐藤あい子氏の「あの子の風鈴」が受賞

 「第44回BKラジオドラマ脚本賞」の授賞式が、主催するNHK大阪拠点放送局(BK)で行われ、「あの子の風鈴」で最優秀賞を受賞した佐藤あい子氏、「大和川--明日に向かう流れ--」で佳作の北川由美子氏、「週刊 田中一郎」で同じく佳作の山田浩司氏が登壇した。

 1980年から始まった「BKラジオドラマ脚本賞」は、受賞者の中から、BK制作の連続テレビ小説「ええにょぼ」を担当した東多江子氏、「芋たこなんきん」の長川千佳子氏をはじめ、連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」や大河ドラマ「八重の桜」の山本むつみ氏、「舞いあがれ!」の桑原亮子氏など、テレビやラジオで活躍している多くの作家が誕生しており、次代を担う新人作家の登竜門として高く評価されている。

 今年は、年齢は22歳から96歳まで、194編の作品が寄せられ、脚本家の大森美香氏、劇作家で演出家のオカモト國ヒコ氏、脚本家の新井まさみ氏ら6人が審査を担当。最優秀賞に選ばれた「あの子の風鈴」は、50分のラジオドラマ番組「FMシアター」として制作し、NHK-FMで全国放送される予定だ。

 「あの子の風鈴」は、こども食堂を舞台にした物語。14歳のるいの家はこども食堂を営んでおり、るいは毎日手伝わされ、水族館さえ連れて行ってもらえない。るいは毎日食堂に来る同い年の望のことが嫌いだが、母・香苗は望のことをいつも気にかけ、望の食べたいものを作っている。

 ある日、望が子猫を抱えているのを見かけたるいは、食材を届けに来る田辺に、子猫を動物病院へ連れて行くよう頼み、子猫は一命をとりとめた。だが、食堂で子猫をかわいがる望に、るいは「飼えないのに身勝手だ」と文句を言う。やがて、るいは子猫を追い出し、香苗には「望が猫を逃がした」とうそをつく。その晩、るいは望が子猫とともに海で溺れる夢を見て心配になる。しかし、香苗に大事にされる望にいら立ったるいは、香苗が大切にしている風鈴を望に握らせ、床に落とさせる。砕けた風鈴を見てかく然とする香苗。「望がやった」とるいは言い、望は食堂に来なくなる。ひどく悲しむ香苗に、るいは怒りをぶつけてしまう――。

 審査員からは、「登場人物たちにリアリティーがあり、主人公の揺れ動く感情をひと夏の出来事としてすっきり描いている」「人間の弱さに共感できる作品になっている」と高評価が集まった。

 佐藤氏は「このたびは、素晴らしい賞をありがとうございます。BKラジオドラマ脚本賞は今年で44回目ということで、私自身の年齢も今年44歳なので、何かご縁があると感じています。この賞にはシナリオを書き始めた頃に応募し、初めて最終選考に残していただきました。その後なかなかうまくいかず、やめようかと思う時もありましたが、去年もう一度この賞に応募し、また最終選考に残していただいたことで、まだ続けてもいいのかなと思いました。文章には文体というものがあるといわれていますが、ラジオドラマやテレビドラマで、『あの人が書いたのだろうな』と思ってもらえるような作家を目指していきたいです」と、今回の受賞により、今後の創作へさらに意欲を燃やしている。

 江戸時代の大阪で、河川の埋め立てをきっかけに展開する時代劇「大和川--明日に向かう流れ--」で佳作となった北川氏は、「大変素晴らしい賞をありがとうございます、受賞するなど全く思っていませんでした。ただただ(脚本を)書くだけで毎日が楽しくて幸せで、その積み重ねの結果として、今回このような歴史がある賞をいただけたことを本当にありがたく思っています。本当に幸せです」と喜びを伝える。

 地方新聞社の入社試験を受けることになった大学生・蒼太と、その採用試験となる新聞作成の取材相手・田中一郎の交流を描いた「週刊 田中一郎」で佳作の山田さんは、「関西出身ということもあり、このコンクールには複数回連続して応募しておりました。去年までは応募の条件が『関西あるいは関西にゆかりのある場所が舞台』ということでしたので、応募作品の執筆のために舞台にしたい場所を実際に訪れておりました。今年から舞台地の条件がなくなり非常に迷いましたが、今年も舞台を関西でいこうと決め、京都府の天橋立を題材にした作品を書かせていただきました。そういった実際に赴いた作品にまつわる風景が後押しになり、最後まで書ききることができ、賞もいただくことができました。この賞を励みにますます精進していきたいと思います」と語った。


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