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「麒麟がくる」明智光秀の母・牧を演じた石川さゆり。歌手ならではの着眼点で芝居の面白さを表現2020/10/03

 第25回(9月27日放送)の大河ドラマ「麒麟がくる」(NHK総合ほか)では、織田信長(染谷将太)が斎藤龍興との戦いに勝利したことで、ついに美濃が平定されました。それにより、明智十兵衛こと光秀(長谷川博己)は母・牧(石川さゆり)と共に美濃に向かうことになりました。牧は美濃を離れる際、もう戻ることはできないと覚悟していたでしょうから、その喜びはひとしおだったと思います。酔っぱらって思わず踊ってしまう牧はかわいく見えましたよね。そんな牧を演じた石川さんが、大河ドラマや役への思いを明かしてくださいました。

 「津軽海峡冬景色」や「天城越え」など、歌声から情景が浮かぶ歌手のイメージが強い石川さんですが、女優としても活躍されており、2006年放送の大河ドラマ「功名が辻」に出演されるなど、華やかな経歴があります。

 今回、14年ぶりとなる大河ドラマへの出演に対して「いつもミュージシャンの方とアンサンブルをしながら音楽を作っていますが、大河ドラマはやはりお芝居、ドラマの世界で、それぞれの役者さんがそれぞれの個性を持った楽器でアンサンブルをしますので、とても面白かったです。歌や音楽とは違い、ドラマは『こんな感じかな』と思いながら台本を読んで、スタジオに入らせていただいても、役者さんとアンサンブルをとった時に、突然違う音程や間合いが出てきたりします。ドラマは台本という軸があり、それが音楽では譜面なのかもしれませんが、やはり役者さんはその方の役を作っていきますし、その役の生きざまみたいなものが、また全然違うアプローチで絡んでくるんです」と、歌手ならではの表現で芝居の魅力を語ります。

 撮影に臨んだ際は、緊張感や戸惑いがありつつも、楽しいことばかりだったそうで「とにかくスタッフの皆さんの情熱がありますし、優しいです。ドラマもエンターテインメントですが、音楽のエンターテインメントとは違う、『人間エンターテインメント』みたいな感じで、それが心地よく楽しかったです。どうしても私は声も音楽に聞こえてしまうのですが、お芝居の中でも、言葉を交わすセリフの中にちゃんと音があるんだと気が付きました。いろんな声があり、そこには感情の中の間合いやテンションの音があることをたくさん感じさせていただいたので、今度はこれを音楽の世界に、自分のところに戻る時にちゃんと持って帰りたいなと思います」と今後の歌手生活にも生かしたいとのこと。

 続けて「歌い手は自分が真ん中に立って旗を振り、エネルギーをお客さまに届けます。50年近くやってきましたが、今回は十兵衛が立ち上がっていくのを支える、見守る立場でしたので、歌い手では経験できない、人と人が心をつないでいき、支えていくことの楽しさを感じました。歌も面白いですが、やはり“表現”はさまざまな角度でできますので『楽しいな』って。人を表現していくのは面白いですね」と演じる楽しさを発見したそう。

 また、早くに夫を亡くし、光秀が小さい頃は夫の代わりに「武士としての心構え」を時には厳しく、時には優しく諭す牧について、「息子を育てるという感覚とは違い、ちゃんと家を譲っていく、その家をしっかりと継いでいく、その長となる者を育てていきます。十兵衛はいつどこで命を取られるかという日々を過ごして大人になっていきますが、十兵衛が帰ってきた時に『おかえり!』と声をかけるセリフにも、『けがはしてないか、ちゃんと無事か』と、その一言に気持ちを込めながら演じていました」と厳しさがありながらも、戦国時代を生きる息子を案じる母として演じることを意識していたと明かしました。

 そして、激動の戦国時代の中における明智家には「『麒麟がくる』ではもちろん歴史や戦などいろんなことが描かれますが、家族の物語、例えば信長の生い立ちや家族、道三の家族、いろんな家の抱える背景というのが描かれています。その中で唯一、この明智家というのは穏やかで、安らぎのある一家なんですよね。いつ親が子を殺すか、子が親を狙うか、兄弟を狙うかというような本当に恐ろしい家族がたくさん描かれる中で、明智家ではそこに仕える人たちももちろん、親子関係もすべてが『こんなところがあったんだな』とホッとするところですから、何かそういうものを皆さんにお届けできたらいいなと思います」と視聴者にとっても心安らぐシーンであってほしいとの願いを込めていたそうです。

 さらに、物語の中の時間が進んでいく様子を伝えるため「最初は光安さんと碁を打っているシーンから始まったのですが、その時初めて立て膝をしました。その囲碁をしている時の膝の高さを少しずつ折っていき、小さくなっていくことで時間の経過みたいなものも感じていただけたら」と動作にも細かい工夫をしていたことが明らかに。しかも、途中から地毛で牧を演じていたそうで「カツラを付けて演じるよりももっとナチュラルに光秀・十兵衛の母になっていけるのかなと思いました。カツラでお芝居をしてきましたが、髪の毛がだんだん長くなってきたので床山さんとお話してやってみました。髪の毛が伸びていく中で役が自分に染みていき、そしてまた自分の体の中でも牧という役が腑に落ちていくというものを体感しました」と自らアイデアを出していたというのです。役に懸ける思いが伝わってくるエピソードですよね。

 物語のラストに関してはこんな願望も。「『麒麟がくる』は今の時代とすごく重なると思います。あまりにも思いもしないことがいっぱいありますが、でも生きてるってそういうことなんだとあらためて感じています。日曜に大河ドラマを見て『負けてられない!』『自分もちゃんと生きていかなきゃ』と、みんながそう思えるような結末であればいいなと思います。高度成長の時もあり、バブルがはじけた時があり、また自然の中に翻弄される日があり、いろんな時を経て今があるわけですから…。戦国時代でも人はたくましく立ち上がったんだから、人はそれくらいたくましく、ある部分では愚かで、ある部分では喜びを感じながら、ここまで来たんだという気がします」と現状のコロナ禍に思いをはせながら、希望を語ってくださいました。

 最後に「きっと絶対に麒麟は来ますので、どうぞ楽しみにしていてください。でもいきなりは来ないんですよね。いろんな日があった先に、麒麟がくると思いますので、来るまでの課程、皆さんが作る人間模様、世の動き、そういうものを楽しんで、感じていただきながら、最後まで見届けていただきたいです。私も十兵衛の成長を、母としてちゃんと見守っていきたいと思います」とコメント。どんな形で“麒麟がくる”のか。予想しながら見るのも面白いかもしれません。

【番組情報】

大河ドラマ「麒麟がくる」 
NHK総合 日曜 午後8:00~8:45ほか 
NHK BS4K 日曜 午前9:00~9:45ほか 
NHK BSプレミアム 日曜 午後6:00~6:45 

NHK担当 K・H

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