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【「オールドルーキー」インタビュー】東京五輪から1年後に放送を決めた理由とは?「大きな感動を届けるスポーツには、一過性にされてしまう悲しい側面も」2022/08/27

 TBS系で放送中の日曜劇場「オールドルーキー」は、綾野剛さん演じる現役を引退したサッカー元日本代表の主人公・新町亮太郎が、さまざまな挫折を経て出合ったスポーツマネジメント会社「ビクトリー」で、セカンドキャリアを歩むヒューマンドラマ。新町をはじめとした「ビクトリー」で働く個性豊かなエージェントたちが対峙(たいじ)するのは、顧客となる現役アスリートたち。毎話豪華なゲスト出演に加え、本物のアスリートも登場し注目を集めています。  

 ここでは、番組の編成担当で本作の企画立案者である東仲恵吾さんにインタビュー。今後の見どころやゲストキャストの魅力はもちろん、今夏に放送する狙いやタイトルに込めた思いも語っていただきました。  

――ドラマではさまざまな競技とテーマを扱っていますが、思い出に残ってる印象的なエピソードがあったら教えていただきたいです。  

「毎話いろいろなスポーツの新しい側面やテーマを取り上げているので、思い出に残っていることばかりです。スポーツが持つ素晴らしい側面は競技によってさまざまで、その中でも各種目が持つ個性の豊かさに注目していました。野球で例えると、戦力外に至る過程だったり、そこで一心不乱に頑張る姿も魅力的ですね。脚本の福田靖さんもたくさん取材を重ねてくださって、1種目あったら10人以上の方に話を聞いていました。とても大変だろうなと思いつつも、それぞれの話を聞くのはすごく面白かったです」  

――では、特に難しかったテーマは? 

「スポーツには輝かしく奇麗なところがもありつつも、実はあまり知られていない悲しい側面もあるんです。本作ではそこから逃げずに描くように努めているのですが、それらと向き合うのはやっぱり難しかったですね。特に第9話で扱うドーピングはかなりデリケートな問題ですし、日本ではなじみがあまりない上、扱い方にも注意を払わないといけないテーマだったので一層難しかったのですが、かなり綿密な取材をした上で取り上げることになりました」 

――なぜドーピングに着目したのでしょうか? 

「ドーピングって、日本ではあまり問題になることがないですよね。一方でアスリートの方には入念にケアをしている人もいれば、なかなか細かいところまで気にしていなくて、結果として全く過失はないのにドーピングと判定されてしまう選手もまれにいるそうなんです。これはスポーツの一つの悲しい側面ですが、そういう部分も福田さんが書く脚本で、ちゃんと捉えられたらいいなと」  

――第7話の車いすテニスの回も印象的でした。 

「車いすテニスはパラスポーツの一つとして取り上げたテーマでしたね。でも、本作を経て“パラスポーツ”と区切ること自体が少し偏見になるかもしれないとも思っています。実際に取材させてもらって、車いすテニスは普通のテニスの種目の一つでしかないと強く感じたんです。男子、女子、 複合、車いすみたいに、テニスという競技内での分類の中の一つのような印象。スポーツってそういういつの間にか作ってしまっている区切りや垣根を一つにする力があるんだろうなと思っていたので、この作品を通して、車いすテニスを通して、スポーツへのリスペクトが伝わればいいなと思います」   

――物語には幅広いスポーツが登場していますよね。こういった競技の選定はどのように行われたのでしょうか?  

「最初の企画段階から、毎話ごとにいろいろなスポーツを取り上げたら面白いんじゃないかっていうことで、さまざまなアスリートの方に話を聞かせていただきました。その取材を経て、ストーリーにするものを決めたんです。メジャーなスポーツだけじゃなくて、まだあまり多くの人は知らないけど面白い側面を持っているスポーツを積極的に取り上げたい思いもあったので、登場する競技のバランスを考えながら決定しました」  

――第3話ではマラソンを取り上げた後、そのまま「世界陸上」の男子マラソンにつながるリレーも話題になりました。こちらは前から計算していたのでしょうか?  

「半分狙っていて、半分偶然です(笑)。マラソンをテーマにした話はどこかで必ずやりたかったので、リサーチは済ませていて、ちょうど第3話を作っている中で物語と競技がマッチングしたので、その段階で第3話を入れたらもしかしたら『世界陸上』と重なってくるんじゃないか…という予想はしていました」  

田中樹&當間あみの役作りに「キャスティングしてる身としても感謝の思いでいっぱい」

――ゲスト出演されている俳優の方は、スポーツ経験者もいれば作品のために練習した方々も多いと思います。特に印象に残っている方がいたらお聞かせください。 

「経験者の出演という意味では、中盤あたりから出演してくださっている神尾楓珠さんは、早い段階でプロデュースチームが接触をしてくれていたこともあり印象深いです。綾野さんも今回すごく頑張ってくださいましたが、サッカーは一朝一夕でできるようになるものではないので、役になるべく説得力を持たせるために、サッカー経験がある上手な方を探していたんです。逆に経験者じゃない方だと、第3話でマラソン選手として出てくれたSixTONES・田中樹さん。そして、フェンシング選手役で出てくれた當真あみさんは、演じていただく競技をやったことがない中で、お二人とも撮影に入る前の段階で何回も練習を重ねていただいて、印象に残っています」  

――未経験者とは思えないようなお芝居でしたよね 

「そうなんです。田中さんは、本当にランナーだったのではと思うような体づくりをしてくださいましたし、ご本人のストイックさも素晴らしい。フェンシングもすごく難しくて、こちらも一朝一夕じゃできないですが、當真さんのセンスが光っていました。フォームや動き、所作を含めて見事にマスターしてくださっていましたね」  

――ちなみに東仲さんはスポーツのご経験はありますか? 

「僕は野球をやっていました。一応スポーツ経験はありますが、サッカーは未経験なので、今回綾野さんと大久保嘉人さんの練習を見て、やっていないスポーツはこんなに難しいんだなとあらためて実感しました。そんな中で、田中さんや當真さんみたいな方々があれだけ見事に演じてくれたのは、近くで見守る身としてすごく感動しましたし、キャスティングしてる身としても感謝の思いでいっぱいです」  

東京オリンピックの思い出に問いかける作品に…

――昨年、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、今年は昨年と比べると世間的にスポーツ熱が落ち着いているような気がします。そんな時期に本作の放送を決めた理由や意義をお考えでしたら教えてください!  

「本作の企画自体は2年前に立ち上がっていて、ちょうど東京オリンピックが始まる前でした。世間の潮流とかを考えると、オリンピックが終わった1年後はおそらくスポーツ熱が冷めるのではないかという予想はもちろんありました。TBSでは、今夏に『世界陸上』の放送でスポーツを盛り上げさせてもらいましたが、そうは言っても、やはり世界的スポーツの祭典であるオリンピックの熱ほどのものはない…というのが正直なところだと思います。東京オリンピックでは、スケートボードという競技を知らなかった人が多い中、選手たちの活躍で一気にメジャーになりましたし、フェンシングもオリンピックでメダルを取った瞬間には有名になりましたが、今はどうでしょうか。大きな感動を届ける一方で、一過性のものにされてしまう瞬間もあるのがスポーツの悲しい側面。だからこそ、オリンピックから1年後の今、本作を通してみんなの記憶の中にあるオリンピックの思い出や、心に残っているスポーツへの愛や熱が冷めないようになるといいなと…。ちょっとおこがましいかもしれませんが、そんな思いを込めてこの夏に編成をしてもらいました」 

――スポーツへの愛が伝わってきます。そんなスポーツファンに刺さる演出が多いと感じるのですが、どのような話し合いをされているのでしょうか?  

「僕が初めてスポーツを生で見て格好いいと思った瞬間を演出に入れ込んでいます。スケートボードも実際に競技を見させていただいたのですが、佐竹晃選手の滑りを実際に見た時は、スタッフ一同本当に感動しました。オリンピックをテレビで見ている以上の躍動感を感じたので、それをどう映像として届ければいいんだろうと、監督やカメラマンとかなり話し合いながら作りました。フェンシングでは、競技について取材させてもらった宮脇花綸選手が『小さい自分でも大きい人を倒せるんです。身長や体重は関係ないんです』とおっしゃっていたことがものすごく印象に残ったので、作中にセリフとしても入れましたし、映像での表現も工夫しました。取材で得た情報と、競技を生で見た時の感動を掛け合わせ、監督と話しながら視聴者の皆さんにも僕たちと同じ感動を届けられるように奮闘しています!」  

「アスリートの姿が、世の中で一筋の光になったらいいなと」

――主人公の新町は、非常にピュアですごく魅力的に見えますが、演出で意識していることはあるのでしょうか? 

「スポーツ選手を取材していく中で、少年のような気持ちを持っていらっしゃる方が多かったのが印象的だったので、それを新町に投影できるように意識しています。ピュアな気持ちを持つがために苦しんでいる選手もいらっしゃるのも事実なのですが、僕たちみたいに社会にもまれている大人たちにとってみれば、少年のようなアスリートはとても無垢(むく)な存在。そんなアスリートの姿が世の中で一筋の光になったらいいなと思っていたので、それを目指してキャラクターを作っていました。新町はすごく前向きで、気の赴くまま直感で進んでいくタイプ。いろいろなことを考えながら進んでいく人が多い中で、とても稀有(けう)な存在です。視聴者の皆さんには、本作を見て、明日はちょっと新町みたいに進んでみようかなって思ってもらえたらいいなと」 

――綾野さんはどのように役作りをしていらっしゃいましたか? 

「新町のピュアさをいいあんばいで出すために綾野さんもとても悩んだだろうし、いろいろ考えながら演じてくださっている印象です。 その中で、新町のキャラクターの一つの指標になったのが、サッカー監修で就いてくださっている大久保嘉人さんだと思います。昨年現役を引退されたばっかりなんですけど、前向きで、人としてとても純粋な方。おそらく綾野さんが大久保さんとサッカー練習を通して過ごしていく中で、役作りの基盤になっただろうなと思います」  

――新町の最終回に向けての変化や成長についても教えてください。 

「ある意味、成長していないところが新町の一つの成長なんじゃないかな。最初から一貫して、アスリートファーストであるのが変わらないんですよね。元々アスリートだったが故に、担当しているアスリートの気持ちが痛いほど分かってしまうのがやはり新町の持ち味。物語の序盤では、元々スポーツマネジメントという仕事を知らなかったので、自分の信念は貫きつつも、周囲の意見を聞いて取り入れてきました。しかし今後は、自分の担当しているアスリートを守るために、今まで受け入れていたところも含めて徹底して戦おうとする姿が見どころになってくると思います」 

――神尾楓珠さん演じる伊垣尚人の海外移籍に関しても、注目ポイントですよね! 

「そうですね。新町のようなサッカー選手にとって、海外移籍はやはり夢みたいなこと。新町にも、自分自身が海外移籍したかったという思いもあると思います。本作では、『夢が終わった、人生が始まった』をキャッチコピーにしていますが、伊垣の海外移籍というのは、新町にとっての新たな夢です。その夢を実現できるかどうかは、やはり注目してほしいですね。実際に、海外移籍を実現させるのには相当な経験が必要だと聞いています。その難題を新町がどう乗り越えていくかというところが、最後の見どころになってくると思います」 

――では、最後に視聴者に向けてのメッセージをお願いいたします! 

「たとえ20代だとしても、少年たちから見れば“オールド”。年を重ねたり、もしくはその業界で古株になっていったとしても、まだまだピュアな気持ちで臨めるぞというのが本作のタイトルに込めた思いです。いつでも誰でも初心に返れるのだということが、本作を通して皆さんに伝わったらうれしいです!」 

 【プロフィール】 

東仲恵吾(ひがしなか けいご) 
東京都出身。2007年TBSに入社。主なプロデュース作品として「99.9―刑事専門弁護士―」「グランメゾン東京」「おカネの切れ目が恋のはじまり」「日本沈没−希望のひと−」などがある。 

【番組情報】

「オールドルーキー」
TBS系
日曜 午後9:00~9:54

取材・文 / TBS担当A・M



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