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欅坂46主演「残酷な観客達」に見る現実と仮想の境界線。長濱ねるが置かれた状況はリアルか、それともバーチャルか?2017/06/28

 欅坂46主演の連続ドラマ第2作目となる「残酷な観客達」(日本テレビほか)。密室に閉じ込められた21人の女子高生(欅坂46)が、タブレット越しにその様子をのぞいている全世界の“観客”から多くの「いいね!」を獲得することで脱出を試みる本作ですが、まるでわれわれ視聴者も“観客”さながら傍観している気分になるような── 現実と仮想が交錯する演出が特徴的なドラマとなっています。

 初回オンエアから全10話と明かされていた本作も6月21日に第6話の放送を終え、物語も折り返し地点となりました。何人かの生徒たちの過去に焦点が当てられ、「1番」「2番」と互いを出席番号で呼び合う生徒たちのパーソナリティーも少しずつ見えてきましたが、それでも回を追うごとに謎は深まるばかり。

 謎めいた演出の中でも、ひと際ミステリアスな光を放っているのは出席番号14番・永嶺みこ役の長濱ねるさん。生徒たちが夜通し「いいね!」獲得を目指してあがいたために一斉に眠気に襲われた時、目をはっきり開け、親友の葉山ゆずき(平手友梨奈)を見ながら一瞬上がった口角。全員で大縄跳び100回にチャレンジし、「97、98、99…」と誰もがクリアできたと思った時、地面から離れることなく真っすぐ立っていた脚。そして、ゆずきの耳元でささやいた「私、ゆずきとなら死ねるよ」という言葉…。一方、食に対する異常なまでの執着心が際立つゆずきは、まだみこの真意を捉えきれていない様子です。

 クラスメートとはなんとなく一線を引き、どこかバーチャルなキャラクターであるみことは対照的に、ゆずきは空腹になると狂暴になったり、ちょっとしたことで放送禁止用語を度々口にしたりと、その姿はリアルな女子高生といった印象。プライバシーの保護を優先するあまり、生徒や教師の名前が知らされず互いを出席番号で呼び合う時代設定の中、唯一「ゆずき」「みこ」と名前で呼び合う関係性の2人は、明らかにほかの生徒たちとは違います。そこには見えない壁が存在していることを、意識的に感じさせられます。

 また、見えない壁は当然ながら生徒たちと観客の間にも存在しているでしょう。そもそも、これはタブレットの向こう側にいる知らない人に生徒たちのプライベートが監視されているという異様な光景。親気分で応援する人もいれば、一方で彼女たちが苦しむ姿を見て笑顔になる人も。野次馬感覚で見ている人もいます。タブレットの中でもがいている名前も知らない女子高生は、観客にとってはバーチャルな存在。しかし、見ているうちに彼女たちの状況が気になって仕方なくて、いつの間にか感情移入してしまっている観客もちらほら。

 先ほど「残酷な観客達」で描かれている状況を「異様な光景」と表現しましたが、考えてみればこの光景こそ、現代の人と人とのコミュニケーションの形に限りなく近いのではないでしょうか。さまざまなSNSの発展により、知らない人の生活をのぞき見したり、また知らない人に向けて発信したりすることが当たり前となった現代は、リアルとバーチャルの交錯がもはや日常。本作において、生徒たちが冒頭から観客の「いいね!」を頼りにしているのは一目瞭然ですが、実は、みこの目論見はもっと「壁」の先にあるのではないか。現に、「いいね!」獲得に向けて何かパフォーマンスをする時や、「いいね!」の数のチェックや閲覧者からのコメントを見る時しかタブレットの向こう側に目線を送らないほかの生徒たちとは異なり、みこは時として、タブレットに集まる視線を意識しているととれる言動を見せています。

 みこがゆずきと一緒にいる一番の理由は、リアルを常に肌で感じていたいからなのではないでしょうか。バーチャルをリアルと捉えようとせず、他人事のようにのぞき見している“観客”の立場にいる人が、リアルなものの存在を忘れてしまった時…。その先に待っている世界が本当に「残酷な」ことに気付くのは、さほど遠い未来ではないのかもしれません。

【番組情報】

「残酷な観客達」 
日本テレビほか  
水曜 深夜0:59~1:29

日本テレビ担当 M・M



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