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【「鎌倉殿の13人」小栗旬インタビュー・後編】クランクアップ後の心境――前日には三谷幸喜からメッセージも2022/11/20

 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)のクランクアップを迎えた北条義時役の小栗旬さんへのインタビュー前編(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1877306/)では、義時の姉・政子を演じる小池栄子さんや幼なじみの三浦義村役の山本耕史さんらキャストの印象や今後の見どころを語っていただきました。

 後編では、クランクアップ後の心境や脚本を執筆した三谷幸喜さんへの思いをお届けします!

――クランクアップからしばらくたちますが、現在どんな心境ですか?

「あの日に全部置いてきたので、すっかり日常に戻り、今は通常営業です。クランクアップの瞬間は、今まで経験してきたクランクアップとはちょっと違う、なんとも言えない感じでした。まだまだ続けていたいという気持ちもあったし、それと同時にやっと終わったんだなとホッとする気持ちもあり…。一言では言い難い感じの心境でしたね」

――クランクアップ後に脚本の三谷幸喜さんとどのようなやりとりをされたのでしょうか?

「クランクアップの翌日に『全部終わりました。やり切ってきました』というメールをしたら、三谷さんから『ご苦労さまでした』と。一通ずつやりとりしました」

――短いやりとりだったんですね。それでは、撮影中にされた三谷さんとのやりとりで印象に残っていることはありますか?

「撮影期間中は、出来上がったものをご覧になった三谷さんから『あのシーン最高でしたとか、あそこの表情が素晴らしかったです』というメールを時々いただきました。最終日は、僕と小池栄子ちゃんしか撮影が残っていなくて、2人でものすごくソワソワしてしまって。栄子ちゃんと『ちゃんと眠れていますか?』などとメールをしていた流れで、僕が三谷さんに『眠れません』とメールを送ったら、三谷さんから『前日にこんなことを言うことじゃないかもしれないけど、完璧な義時だったから、安心して明日を迎えてください』というメールをいただいて。『すてきなメッセージですね』と送ったら、『寝起きにしてはなかなか気の利いたこと書いたでしょ』と返信がきました(笑)」

――三谷さんは最初から義時像を固めずに、小栗さんが演じた義時を見て脚本に肉付けされていったそうですが、あらためて三谷さんの脚本についてどう思われますか?

「まず一つは、全48回を通して、こんなに説明ゼリフが少ない脚本はなかなかないので、そこがとても優れている部分だと思います。事象と起きている物事と、それぞれの人が言うセリフによって世界観が見えてくる状況が脚本に描かれていて、本当にすごい。しかもそれでいて、1人がこんこんと長ゼリフをしゃべるシーンもあまりなくて。人物の名前をバーッと羅列しなきゃいけないセリフは大変でしたが、それ以外で、感情にそぐわないとか、あらためて物事を説明するセリフはなかったので、俳優としてはすごくありがたかったです。偉そうにこんなこと言うのもあれですけど、本当にちょっと神がかっていたんじゃないかな。あげたらきりがないくらい、今回すごい脚本です。また、三谷さんは、自分たちが演じたキャラクターを見てからの方が脚本づくりがはかどる方なんだろうとも感じていました。大河ドラマをこよなく愛している方なんだというのは伝わってきましたし、毎回、読むのが本当に楽しみでした。三谷さんの脚本で大河ドラマを撮影できたことは、一番ありがたいことでした」

――今作を見て、鎌倉幕府や義時のイメージを新たに持たれた視聴者が多いと思うのですが、小栗さんがこれまでの作品とは違う義時像や新しさを感じた部分を教えてください。

「僕は学生時代に義時の名前を知らなかったし、もう少し歴史を学んでいる人たちにとっても『承久の乱』でしか名前が出てこない人物だと思うんです。『吾妻鏡』を見る限り、義時がやってきたことはなかなかすごいことなので、確かに悪者なのかもしれないですが、今回の大河ドラマを経て、孤独な男だったというイメージを新たに受け取ってもらえるようになっているんじゃないかなと。前半はものすごく明るく真っすぐな彼を見せて、後半は、本当はそこから何も変わっていないんだけど、執権という立場である限りはこう振る舞わなければいけないという、彼の中での大きな矛盾と共に突き進まなければいけない状況になって。だからこそ、北条義時という人物を面白い人間に育て上げることができたんじゃないかと思っています」

――頼朝(大泉洋)が亡くなる前の前半と、それ以降の後半では大きく変わってどんどん重い物語になり、それに伴って共演者も変わっていきましたが、現場の雰囲気に変化はありましたか?

「現場の雰囲気は基本的にほぼ変わっていないのですが、前半の第20回くらいまでは、僕が年下の方だったんです。だけど、後半の第20回以降から急にお兄さんにならなければいけなくなって。年下でいられた時は、大御所といわれる方もいらっしゃるような環境の中で、現場の在り方などに気を使うことがなかったので楽ちんでしたが、後半は若い人たちが入ってきて、彼らが背負わなければいけないテーマがいっぱいあったので、そういう時にはできる限り環境を良くしてあげたいと思いながら過ごしていました」

――座長として背負うものも大きいですよね。

「主役をやるとそういうふうに言われるけど、結局現場を作っているのはスタッフのみんな。今回で言えば、チーフ演出の吉田照幸という監督が作る現場の空気がそのまま撮影以外の場所でも浸透していました。風通しが良くて、変な緊張感もなく、それぞれがちゃんと意見ができる環境がありました。自分から率先して何かをしないとこの現場はまずいと思うことが一つもなく、楽しく居させてもらいました」

――撮影を振り返って、ご自身の成長を感じたことはありましたか?

「俳優としては1年5カ月、義時の若い時から晩年までやらせていただいたおかげで、1人の人間を生き抜いて人物を作る時には、ここまで深く読み取らなければいけないんだと実感できました。過去の自分のことを反省するばかりなんですが、これだけ時間をかけてやらせてもらえたおかげで、次から作品に臨む時には、事前にこのくらいまで深掘りしておかないといけないんだなと感じるようになりました。もちろん、以前やってきた仕事も同じように臨んでいたつもりですが、それでも義時という役をやってきて、回を重ねれば重ねるほど、『なぜこのセリフをここで言うことになったんだろう』と考える時間がすごく多くて。だからこそ、この作品がお客さんに楽しんでもらえるものになっている気がします。通常の映画やドラマの撮影の時も、初日の段階でこのくらいの自分でいなきゃいけないことを痛感しました。それを知れただけでも、今後俳優として次の作品にもう少しグラデーションをつけることができるようになったんじゃないかと思います」

――1人の人物を演じるにあたって、役への向き合い方も変化したのでしょうか?

「義時に関しては、後半は台本をそんなに読まなくても場面がなんとなく思い浮かぶし、自分が演じてきた義時だったらきっとこう行動するだろうと想像していたことが、本当に台本に描かれていたこともあって。それを自分という器を使って“北条義時“になっていけばいいとか、そこにいればいいという感覚になっていったのは、ある意味一つの自信になりました。演じるということを超えて人間を表現するためには、僕は不器用なので、1年5カ月くらい使わなきゃいけないんだなと感じたりしますけどね」

――毎週放送後にはSNSがものすごく盛り上がっていましたが、そういった視聴者の声は現場の中では話題になっていましたか?

「現場では話題になったことの話はよく出ていて、ある意味それがみんなの励みになっていると感じていました」

――「全部大泉のせい」なんていうのもありましたね。

「そうですね。あれは本当に言ってよかった(笑)。毎回、放送が終わると確実にその回のキーフレーズが話題になっているのは、非常にうれしいです。いつかトレンドワードに『おなごはみんなキノコ好き』というのが入ればいいなと思っているんですけど、なかなかそこは…(笑)。それと、お客さんがみんな義時を気持ち悪いと言っているのが、一番うれしいです。女性に対して元々はすごいストーカー気質を持っている人だったので、そういうことがちゃんと気持ち悪いと言ってもらえて。全48回やらせてもらって感じているのが、北条義時を好きだとか、いいねと言われることがないまま、ここまできた主役がすごくいいと思っているんです。初めのころは『気持ち悪い』で、途中からは『怖い』とか『アイツやばい』とか言われて。そういう評価をもらえることが、演じてきた自分にとってはものすごい励みになっています」

――一つには絞れないでしょうが、今作が盛り上がった要因は何だと思われますか?

「皆さんが面白がってくれている理由は、やはり物語の力だと思います。自分たちが見ても面白いと思いますし。いつも演じることに対してすごく前向きにさせてくれる本づくりをしてもらっていたので、間違いなくそこがこの作品において、お客さんたちをひきつけている要因の一つだと思います。それに応えるべく演出や美術など、いろんなところで一生懸命その世界観を作ろうとしたことが、相乗効果になっているんじゃないかと考えています」

――もう一度、大河ドラマ主演のオファーがあったらどんな役をやりたいですか?

「大河ドラマの主演はまたいつか本当にやりたいです。ただ、それは僕がある種の成功体験をさせていただいたからかなと。今の日本の環境でいうと、どこを探しても1年5カ月ノンストップでやり続けて、全48回で1人の人物を描くドラマはなかなかないので、機会があればとは思っていますが、こういうことがやりたいというのはあんまりないんです。こんなことをいうと2023年の『どうする家康』で徳川家康を演じる松本(潤)くんにものすごく申し訳ないですが、できれば今回と同じように、あまり皆さんの先入観がない人物を演じられる機会がもらえるんだったらまたやりたいです。今回自分がここまで楽しめたのは、『義時のことそんなに知らないでしょ』と言えるからというところがあって、そこはすごく大きかったと思っています」

――ありがとうございました!

【番組情報】

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K
日曜 午後6:00~6:45

NHK担当/K・H



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