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山田裕貴「全然舞い上がってないです」 エキストラ時代の悔しさから「過去一」のシーンを作り上げた「ホームルーム」インタビュー【前編】2020/02/03

俳優という仕事の面白さ「自分の人生より心が動いてるんですよ」

山田裕貴「全然舞い上がってないです」 エキストラ時代の悔しさから「過去一」のシーンを作り上げた「ホームルーム」インタビュー【前編】

 映画「HiGH&LOW THE WORST」では己の拳のみで勝負する不良、連続テレビ小説「なつぞら」では愛情いっぱいに育てられた一人息子、舞台「終わりのない」ではごくごく普通の10代の少年。それらとはまたガラッと異なる印象の役に「ラブリンには何度も共感しました。終盤の方は、ラブリンと同じように本当に苦しくなってきて…。今まで演じてきた役の中で、飛び抜けて苦しかったかもしれないです」と撮影当時を振り返り、次第に表情を曇らせていく。

「話が進んでいくごとに、幸子との距離が開いていくんですよ。撮影のたびに『今日のこのシーン、また振り向いてもらえない…』『どうしよう、どうしよう』っていう気持ちを引きずってしまって。汐梨ちゃんも愛田先生がほかの人とキスするシーンを見た後は、幸子としてだと思うんですけど、すっごく悲しそうな顔をしているように見えたんです。勘違いかもしれないんですけど。それを見てまた苦しくなる、みたいな」。

 幸子との関係に思い悩む愛田さながら、うつむくように話していた山田さんが、パッと顔を上げる。「このお仕事って面白いなって思うのが、自分の人生より、役を生きてる方が心が動いてるんですよ。だから『自分の人生、つまんな』と思うんです。役に入り込んでいるうちはそうやって本当に苦しくなるんですけど、だから僕、この仕事好きなんだなって」。

「なつぞら」公式サイトで公開されているインタビューでも、雪次郎を演じた撮影期間を思い返し、「とにかく毎日楽しくて、自分で生きている人生より雪次郎の人生は楽しいです」と明かしていた。目の奥には揺らがないものを宿らせながら、キラキラした表情でそんな言葉をさらっと、それでいてどっしりと口にする山田さんを目の前にすると、俳優という仕事が山田さんにとって本当に「天職」なのだろうなと感じずにはいられなくなる。

エキストラ時代の悔しさが、「過去一」のシーンに結びついた

山田裕貴「全然舞い上がってないです」 エキストラ時代の悔しさから「過去一」のシーンを作り上げた「ホームルーム」インタビュー【前編】

 本作では初の教師役。そして同時期2作主演となる「ホームルーム」「SEDAI WARS」で、連続ドラマ初主演を飾った。

「先生役が初めてなので、共演するみんなが僕にとって初めての生徒なんですよ。みんな毎日現場に来て、エキストラさんにお願いするような役割も全部、生徒役のみんながやってくれたんです。教室のシーンだけじゃなくて、後ろに見える廊下にいる子とか、そういうのも朝から晩までずっと。中には1日中いて、一言もセリフがない子ももちろんいて」。

 18歳で地元・愛知県から上京。芸能養成所で芝居を学びながらドラマや映画のエキストラに参加し、チケットのもぎりやチラシの折り込み、舞台のセットの組み立てや搬入も行いながら、必死に「俳優」という仕事に食らいついていた。

「もともとエキストラからやってるから、セリフがない子たちの気持ちが分かるというか。授業のシーンでは、ラブリンは絶対幸子を当てるんですよ。でも、幸子の前にほかの生徒を当てたりして『この先生、愛されてるんだな』っていう空気をみんなで作らないと、ラブリンは完成しないなって思って。『授業中しゃべってもいいし、思ったこと言っちゃっていいから』って伝えて、みんなで話しながら撮影することができたんですよ。小林勇貴監督も『自分の作品の中でも過去一だ、勝った!』って大絶賛してくれました。あと、主演だろうとそうでない役だろうとどの現場でも考えてることなんですけど、生徒役の子たちも、ヤンキーチームも、みんなが『このドラマに出てよかったな』って思える楽しい現場になればいいなって。『山田くんがいたから、なんか楽しかったな』って思ってくれればいいなって、そういうことは意識していました」。

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