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長谷川博己「麒麟がくる」撮影が始まって一番変化したこととは?2020/02/01

 1月26日放送の大河ドラマ「麒麟がくる」(NHK総合ほか)の第2回では、2万あまりの大軍を率いて美濃の侵略をもくろんだ織田信秀(高橋克典)に対し、わずか4000の軍で戦いに挑んだ斎藤道三(本木雅弘)。数的には勝てる見込みがないにもかかわらず、道三は見事に敵を欺き、勝ちました。戦闘は迫力満点で、実に見応えのあるシーンでしたよね! また、その戦いのシーンで敵の侍大将が叔父の明智光安(西村まさ彦)に似ていたことから、首を討ち取ることにためらいを覚え、武士の本懐とは何かを考え始める明智光秀(長谷川博己)の姿も印象的でした。そんな光秀を演じている長谷川さんから大河ドラマの主役に対する思いや撮影エピソードを伺いました!

──早速ですが、光秀を演じることになっての感想と撮影の手応えを教えてください。 

「謀反人として信長を殺したという悪いイメージがある一方で、そうではないという説もある人物なので、演じるのが楽しみでした。面白い題材を主役にしたなと、興奮もしましたね。見る人によって、賛否があるかもしれないという怖さもありますが、いずれにせよ何かが起きるんじゃないかという楽しみを感じながらやりたいなと思っています。撮影はとにかくヘビーです。だからこそ、皆さんが期待している戦国時代の大河ドラマができたのではないかと思っています。王道でありながら新しさもあって、同時代性も感じるような作品で、明智光秀のドラマがなぜ今必要だったのかを感じられるドラマになっていると思います」

──第1回の鉄砲を探し求めている時に松永久秀と出会う場面では、お酒を飲んで思いの丈を久秀にぶちまけてしまう光秀が面白かったです。久秀役の吉田鋼太郎さんとの撮影エピソードがあればお願いします!

「鋼太郎さんは今までのイメージとは違う松永久秀を演じていらっしゃる感じがします。松永久秀と明智光秀が若くして出会っていたかもしれないというエピソードは歴史ファンからすると、たまらないのではないでしょうか。鋼太郎さんとは何年も前から舞台で共演させていただいて、楽屋も一緒だったりしたので、芝居をすると安心しますし、阿吽(あうん)の呼吸でいろんなことが分かる感じです」

──光秀を演じられるにあたって参考にされたものはありますか? また、光秀を演じる難しさや楽しさを聞かせてください。

「光秀の写真が残っているわけではないので、膨らませて表現することは可能ですが、当時はこういう動きはしなかったということなどを、どう飛び越えて説得力があるようにできるかなと考えています。日々模索しながら悩みながらも、そこから抜けて『これでいいんだ』と思えるところに演じる楽しさがあります。また『国盗り物語』や、一番好きだった『黄金の日々』を見直したりしました。当時の作品は舞台の作品を見ているような重厚さがあり、そのムードで演じることにひかれながらも、今の人たちにも楽しんでもらえるような戦国大河ドラマを作っていければと思っております」

──池端俊策さんの脚本の魅力と、光秀を演じていてどんなことを感じていらっしゃいますか?

「池端先生の台本は繊細でなかなか一筋縄ではいかなくて、行間で表現が変わるんです。色合いでいうと、淡い曖昧な色で白黒はっきりしている感じではないんですね。台本を読んでいると筆が躍っているように感じるので、池端先生は乗ってらっしゃるんじゃないかなと思っています。池端先生にお話しを伺った時に『光秀は僕自身なんだよ』とおっしゃっていたので、それを聞いて読み直すと『なるほど』と思いました。光秀はとにかく黙っていて、台本に『…』がものすごく多いんです。道三にムチャなこと言われても、帰蝶に何か言われても『…』と沈黙している。そこを埋めるのは私自身で、その作業は楽しくもあるんですが、難しいです。分かりやすくして伝えることが正しいというわけでもありません。光秀は選択を強いられることが多いので、どう演じようかと悩んでいることを池端先生にお話ししたら『五分五分だと思うよ』と。光秀は瞬発的に物事を決めていた可能性があるとおっしゃるんですね。それもまたすごく難しいんですが、最近はそういうことも面白くなってきています。例えば道三とのシーンでは、本木さんが演じている姿を見て、こちらはどのような表現にするか、現場での瞬発力を大事にすることで、徐々に“光秀に向かっているな”という感じがします」

──ご自身が光秀に感情移入できるところはどんなところでしょうか?

「光秀は今の時代に必要な新しいヒーローなのかなと。でもヒーローという言葉が合うかといったらどうなのかな。違和感を抱く人もいらっしゃるでしょうけど、僕は少しヒーロー的な部分があるんじゃないかなと思っています。上司に対してズバッと正直に言うし、知性と品性で突き進む光秀は、今の世の中に“こういう人がいたらいいな”と思う人物だという気がしていて、そのつもりで演じています。光秀に感情移入はしますね。いろんなことを強いられて、気の毒だと思うことがあって。光秀が教養人として有能な人間だからでしょうけれど、命令を受けて敵国へ潜入するといったさまざまな経験をしたからこそ光秀は“智将”と呼ばれる人間になったのかなという気もしています」

──光秀を演じるにあたって気を付けていることはありますか?

「池端先生は『みんなが知っている、本能寺の変を起こした光秀から逆算して考えてないでほしい』とおっしゃっていたので、僕も意識をしないように1人の青年として演じています。普通の人間として美濃という国を守りたいという気持ちが根本にあって、自分の血筋を大事にしたいという気持ちがあって…。それは今の人間でも同じことじゃないですか。そういうところは共感するし、明智荘から出て、国の大きさを知り、尾張や堺も守りたいと思う。それがどんどん広がって一つずつ変わったっていうことですね。今の人々が国を守りたいという気持ちと同じなんだと思います」

──今後、光秀は織田信長(染谷将太)と出会うことになりますが、2人の関係についてどのように想像されますか? また、信長役の染谷将太さんの印象はいかがでしょうか?

「光秀と信長は似ていると思うんですよ。信長の『俺は何者なのか分からない』『まだ何者でもない』というセリフがあって、『それは光秀も同じですよね』と池端先生に聞いたら、『そうだよ』とおっしゃっていたので根本的なところで似ていて、シンパシーを感じるところがあったと思います。染谷さんのつくる信長は、今までの信長像とは違って、親や家族の関係から、どこか孤独を感じさせるようなキャラクターになっています。独特の雰囲気を持っていて、それが“何かあるな”と思わせる今作の信長像とうまくマッチしているのではないでしょうか。信長も光秀もお互いが『何者なんだろう?』と思っているところなので、現場では自然と距離を縮めないでいます。役としての関係性に近いようにお互いがあまり近づかないようにしている感じがあるけれど、それは染谷さんに聞かないと分からないですね(笑)」

──大河ドラマの撮影が始まって、生活習慣に変化はありましたか?

「とても早起きになりました。40歳を超えたせいなのか分からないんですけれど、撮影が始まってからは、目覚めるのが早くてパッと起きられます。朝は苦手だったので、早起きの習慣がついたのは自分でも不思議です。もしかしたら戦国武将らしくなってきているのかな(笑)」

──大河ドラマには以前にも出演されていますが、あらためて“大河ドラマならでは”と感じることはありますか?

「やはり、1年間通して同じ役を演じる経験ができるのは大河ドラマだけですから、こんな役者冥利に尽きることはないなと思っています。撮影はすごく大変で、体が追いつかず正直、『もうきついな』となる時もあります(笑)。でも次の日に広大で景色のいいオープンセットで朝日を見ながら演じていると、素晴らしい経験をさせていただいているなと感じています」

──主演ということで、撮影現場で心掛けていらっしゃることを教えてください。

「主演は座長になるわけですから、全体をちゃんと見通しておかないといけないなと感じます。でも僕は基本的には役に入り込みたいので、座長らしいことができなくて…。だから主役はなかなか責任が重いポジションだなと。主役は周りの人の演技を受けて、それを違う人に渡して、なだらかに流れるようにやらなきゃいけないなと感じます。とはいえ、主役から見る景色というのはなかなか気分がいいものです(笑)」

──ありがとうございました! しっかりかみしめるように丁寧にお話しされているなと思っていたら、「もうきついな」と思うこともあるなどと、ちゃめっけたっぷりに話されて、さまざまな顔をのぞかせる若き光秀のように、長谷川さんの新たな一面を拝見することができました。

 さて、2月2日放送の第3回では、夫・土岐頼純(矢野聖人)を亡くした帰蝶(川口春奈)が明智荘を訪ね、光秀や駒(門脇麦)らと心安らぐひと時を過ごし、笑顔を取り戻します。一方、道三は美濃の新しい守護として土岐頼芸(尾美としのり)を擁立しようと考えます。内心、道三のことを嫌っている頼芸は、高政(伊藤英明)に自分が実の父親であるかのようにほのめかすのです。第1回でも親子関係があまりうまくいっていない様子の道三と高政でしたが、この2人の関係は今後どうなっていくのでしょうか。光秀を取り巻く人々の動きからも目が離せません。

【番組情報】

大河ドラマ「麒麟がくる」  
NHK総合 日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BS4K 日曜 午前9:00~9:45ほか
NHK BSプレミアム 日曜 午後6:00~6:45

NHK担当 K・H

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