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上京から6年、「長かった」。男性ブランコが歩んできた道【ロングインタビュー前編】2022/02/25

上京から6年、「長かった」。男性ブランコが歩んできた道【ロングインタビュー前編】

 「キングオブコント2021」で準優勝、初の敗者復活戦に進出した「M-1グランプリ2021」では敗者復活戦3位という結果を残した男性ブランコ。昨年は飛躍の1年となり、今年2月7日に開催された単独コントライブ「ヘッジホッグホッジグッヘ」は、会場チケットが即完売。会場・配信合わせて3000枚近くを売り上げる、大盛況な公演となった。

 結成は2011年。別々の大学の演劇サークルで出会い、ともに大阪NSC33期生として入学。同期は「キングオブコント2015」チャンピオン・コロコロチキチキペッパーズ、「M-1グランプリ2018」チャンピオン・霜降り明星、「R-1グランプリ2021」準優勝&「歌ネタ王決定戦2021」チャンピオン・ZAZYら。彼らの華々しい活躍を横目に、なかなか結果の出ない状況に心が折れそうになりながら、日々舞台に立った。

上京から6年、「長かった」。男性ブランコが歩んできた道【ロングインタビュー前編】

「そういうのは、自分たちにはもうないのかもしれないなと思うくらい、長かった」。

 2022年、目標は一つ。「キングオブコント優勝」。3月には東京と大阪で単独コントライブの開催が決定している。今、感じていること。あの頃、考えていたこと。浦井のりひろさん、平井まさあきさんのお二人に、思いを聞いた。

1年前と比べて、単独ライブのチケットの売り上げが10倍以上に

上京から6年、「長かった」。男性ブランコが歩んできた道【ロングインタビュー前編】

――単独コントライブ「ヘッジホッグホッジグッヘ」、お疲れさまでした。公演前から配信チケットを1000枚以上売り上げる、大変話題のライブとなりました。

平井 「そんなに売れてるとは思わなかったですね」

浦井 「去年の4月とか5月にも単独ライブをやったんですけど、頑張って200枚ちょっととかだったので、その頃から考えたらありがたいなという感じです」

平井 「こんなに見てもらえるとは、って驚いています。コロナ禍じゃなかったら会場でアンケートを配ったりするんですけど、今はそれができないので『Twitterで“#ヘジホジ”でつぶやいてくれたらうれしいです』と声を掛けさせてもらって。そしたらたくさんつぶやいてくださって、しかも結構長文で感想を書いてくださる方が多くて、うれしいですね。読み応えがあります。『そう考える人もいるのか』と思うような、意外な感想もあったりして。いろんな捉え方があって、僕らの意図と違う感想もあったんですけど、それはそれで全然いいと思います」

――昨年の「キングオブコント2021」をきっかけに、お二人をメディアでお見掛けする機会がぐんと増えました。そんな中、精力的に単独ライブを続けていますが、ご自身としては今の状況はいかがですか?

平井 「ここ最近はわりと落ち着いているんです」

浦井 「そうですね。『キングオブコント』直後に比べたら、落ち着いています」

平井 「年末にいろいろな収録に出演させていただいたと同時に、12月24日、25日に、2日間で3公演の単独ライブをさせてもらったんです。それらが重なって、その時期はめちゃくちゃ大変でした。そこをなんとかね、乗り越えられたので、今は落ち着いている感じがしますね」

浦井 「そうですね」

平井 「全然忙しいとは思わないです」

――お二人としては、忙しい方が楽しいですか?

浦井 「そうですね、ある程度は…(笑)」

平井 「僕は忙しい方がうれしいです」

浦井 「最近は、代演でいろいろ出させていただいて。今はみんなで助け合っている感じですね。それで忙しくさせてもらっているのはありがたいなと思います」

――3月には、東京と大阪で単独コントライブの開催が発表されました。これまでも毎月のように単独ライブを行っていたと拝見したのですが、実際はどれくらいのペースで行っていたのですか?

平井 「去年が隔月で、半年くらいやったのかな?」

浦井 「その前は3、4カ月に1回くらいのペースでしたね」

平井 「だからそんなにむちゃくちゃたくさんやってるわけではないんですけど、今回は月1回のペースでできたらいいなと思っています。この先、状況的にどうなるか分からないので『月1回やります!』とは言いづらいんですけど、実際月1となると僕らとしてはハイペースな感じになりそうですね」

――単独ライブ前は、どういう準備をされるんですか?

平井 「基本、稽古ですね。最初に作るのはビジュアルで、デザイナーの川名潤さんにお願いしています。それから台本の締め切りを設けてもらって、そこから照明や衣装、小道具、オープニングや幕間のVTR…という感じで準備していきます。グッズがもし出せるとなったら、この時点でどんなグッズにしようか考えたりします」

浦井 「そうですね」

平井 「今回はグッズを考えていなかったんですけど、来場者特典でポストカードを作らせてもらいました。これも川名さんがデザインしてくださったんです。今回は配信視聴特典もあって、次回もそういうのができたらなと思っています」

――ネタはどのように作っているのですか?

平井 「基本的には、僕がたたき台を作ります。気になる言葉とかシチュエーションを普段からメモしているのと、あとは家で結構独り言を言うので、そこかなと(笑)」

浦井 「僕がもらう時は、完全に台本になっていますね」

平井 「大ストーリーを作って、浦井に投げてみて。そこから2人で合わせて、『ここ、こうした方がいいんじゃない?』とか意見をもらいながら完成させていく感じです」

――浦井さんのセリフも、平井さんが書いていらっしゃるんですか?

平井 「一応書くんですけど、そこは任せてます。ツッコミのセリフとかは、雰囲気で言いやすいように、ワードは考えてもらってますね」

浦井 「ボケ役の時はだいたい台本通りです。ツッコミの時はある程度任せてもらえてます」

――お二人は漫才もされていますが、漫才ではいかがですか?

平井 「漫才は、台本はなくて。一応今やっているスタイルとしては、なんとなく僕がボケを羅列して、『ちょっとやってみていい?』ってその場で作ります。その場の感じでツッコんでもらって…」

浦井 「ツッコミまして…」

平井 「はい。それで、出来上がります(笑)」

「もっと早く、『キングオブコント』で優勝できると思っていました」

上京から6年、「長かった」。男性ブランコが歩んできた道【ロングインタビュー前編】

――南海キャンディーズ・山里亮太さんの言葉に後押しされ、2016年に関西から上京。それから約6年がたちますが、長かったですか? それとも、あっという間でしたか?

浦井・平井 「(2人とも、即答で)長かったです」

浦井 「長かったですねー…」

平井 「同期や後輩もどんどん先に行って。売れて売れて…。賞レースで優勝してとか、テレビでハネてとか、人間性で売れるとか、そういうのは、自分たちにはもうないのかもしれないなと思うくらい、長かったですね。なんならもっと早く、『キングオブコント』で結果が――優勝できると思っていました、正直。でもそんなに甘くないなと。言っても僕ら、『キングオブコント』の成績あんまり良くないもんね」

浦井 「そうなんですよ。準決勝までいけたのも3回だけで」

平井 「2回戦でも全然落ちてたし。再エントリーしてギリ準々決勝までいくけどダメで…とかばっかりで」

浦井 「うん…」

平井 「これはもう、にっちもさっちもいかないなって思ってました。諦めることはないですけど、心は折れ折れで。でも、やるしかないなって。辞める選択肢はなかったです」

浦井 「なかったですね」

――そういうメンタルの時、奮い立たせてくれたものはありましたか?

浦井 「先輩に『あのネタ面白かったよ』って言われると、うれしかったですね。まだ続けてもいいのかなって」

平井 「うん。ちょっと褒めてもらうだけで、首の皮一枚はつながるよね。あと、仕事が少ない時でも、∞ホールとかで月に2、3回は出してもらえてたんです。そこで同じ境遇で頑張ってる、ライバルであり同士たちが身近にいたんですよね。先輩でも、なんなら売れてる人も、単独ライブでネタ作ってたりしてて、『こんなに売れてる人でもやってるのに、自分らなんもせんのってただのサボりやん』って。そんな感じで、なんとか正気は保てていました(笑)」

浦井 「まだ出し尽くしてないんだって気にはなりましたね」

平井 「そうそう。まだ全然やる余地があるなって。あとは、自分からエントリーできるライブもあるし、先輩に『出させてください!』ってお願いすることで、増やそうと思えばなんぼでも増やせるんです。だからやる気さえあればライブ数は増やせるので、ネタを下ろすチャンスはあったんですよね。ちょっとずつですけど、やり続けたらお客さんが増えてくれたりもするので。本当に1人ずつとかですけど、ウケてくれるようになったりして」

――上京されてから、何年くらいそういう状況だったのですか?

平井 「東京来てから最初の1、2年はそういう感じだった気がするなぁ。もっとか、3年くらい?」

浦井 「うーん…。かもしれないですね」

平井 「∞ホールって芸人のランキングというか、ピラミッドがあるんですけど、3年くらいは本当に上がれなくて。毎週バトルして、高いポイントが取れたら上がるっていうシステムなんですけど、1個だけ抜け道みたいなのがあって(笑)。正攻法で上がってないもんね、僕ら」

浦井 「裏口入学みたいな(笑)」

平井 「ほぼ運で勝つというか。それで1回上がれたんですけど、一応、そこからは落ちてなくて」

浦井 「落ちることはなかったですね」

平井 「そこから『頑張ろう!』って気合を入れ直したと思います。上がれてからは、主催ライブができるようになったり、仲良くなった先輩や同期がライブに呼んでくれるようになって、∞ホールだけでもライブ数は増やせるようになってきたんです。お金はそんなにたくさんもらえてたとかじゃないし、バイトもやりつつでしたけど、一応劇場でやるライブ数は増やしていけるようになりましたね」

 インタビュー後編はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1398012/

上京から6年、「長かった」。男性ブランコが歩んできた道【ロングインタビュー前編】

【プロフィール】

男性ブランコ(だんせいぶらんこ)
浦井のりひろ(1987年12月3日生まれ、京都府京都市伏見区出身)と、平井まさあき(1987年8月1日生まれ、兵庫県豊岡市出身)が別々の演劇サークルで出会い、その後ともに大阪NSC33期生として入学。2011年、コンビ結成。16年より、活動拠点を大阪から東京に。「キングオブコント2021」準優勝、「M-1グランプリ2021」敗者復活戦3位。22年3月20日に東京・ヨシモト∞ホールにて「男性ブランコのコントライブ『変身東京ウミウシ』」、3月24日に大阪・ナレッジシアターにて「男性ブランコのコントライブ『変身大阪ウミウシ』」を開催予定。両公演ともに会場チケットは完売となり、配信チケットがFANYオンラインチケットにて発売中。

取材・文・撮影/宮下毬菜



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