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寺島しのぶ「父とは2人でいたらどうしていいか分からない(笑)」――ドラマ「女系家族」インタビュー2021/12/03

寺島しのぶ「父とは2人でいたらどうしていいか分からない(笑)」――ドラマ「女系家族」インタビュー

 大阪・船場の老舗木綿問屋を舞台に、人間の欲望、嫉妬、愛憎を赤裸々に描いた山崎豊子さんの不朽の名作「女系家族」が、鶴橋康夫さんの脚本・監督で、12月4・5日にテレビ朝日系で2夜連続のドラマスペシャルとしてよみがえります。

 今作でダブル主演を務め、壮絶な遺産相続争いを繰り広げるのは、宮沢りえさんと寺島しのぶさん。お二人は初共演です。大阪・船場で4代続く“女系筋”の老舗木綿問屋「矢島商店」当主・矢島嘉蔵(役所広司)の愛人・浜田文乃を宮沢さんが演じ、寺島さんは嘉蔵の長女で矢島家の総領娘・藤代に扮(ふん)します。

寺島しのぶ「父とは2人でいたらどうしていいか分からない(笑)」――ドラマ「女系家族」インタビュー

 宮沢さんについて、寺島さんは「この作品のこの役柄でご一緒することになったことに感慨を覚えました」とコメント。日本を代表する女優のお二人が激しい駆け引きを展開させると思うだけで楽しみが倍増しますが、今作には水川あさみさんが次女・千寿役、山本美月さんが三女・雛子役、そして叔母・芳子役として渡辺えりさんが出演。さらに伊藤英明さん、余貴美子さん、役所さん(特別出演)、奥田瑛二さんら強烈な個性を放つ俳優陣も参戦します。このそうそうたる共演者と、寺島さんはどのような芝居合戦を繰り広げたのか。そして、ドラマの核となる親子関係についてもお聞きしました。

藤代は“痛い女”? 矢島家は4姉妹!?

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――演じる藤代はどんな人物だと思われますか?

「たぶん自分は総領娘には合わない、だけど長女がやらなきゃいけないっていう代々からの教えで変に気負ってしまって、(妹たちと)ぶつかってしまう女性。みんなそれぞれの家族があって、次女の千寿には旦那さんがいて、三女の雛子には後ろ盾の叔母さんがいることがうらやましかったんだと思うんです。自分は1人で、男性にだまされちゃって、そこも長女らしくて好きだなって感じました。だから、すごく“痛い女”に映っていると思います(笑)。(藤代と恋愛関係にある梅村芳三郎役の)伊藤くんも、ついだまされちゃうようなキラースマイルを何回も見せてきますからね。あれには誰でもヤラれてしまうと思います(笑)」

――愛人、妹たちに加え、“女系・矢島家”の陰の実力者・叔母の芳子とも激しいやりとりがあったと思います。渡辺さんとの共演はいかがでしたか?

「3姉妹というより3姉妹プラスアルファくらい存在感が大きくて、(えりさんが)全部持っていくんです(笑)。あんなに出しゃばる叔母さんは今までの『女系家族』にはいなかったんじゃないですかね。えりさんの役は、前回のテレビドラマ(2005年/TBS系)で浅田美代子さんが演じられていた役なんですよ。『私は浅田美代子さん風にやる!』って言っていたのに、言っていることとやってることが全然違って、『これが浅田美代子さん!?』って(笑)」

――笑ってしまってNGなどありませんでしたか?

「稽古中は散々笑っていましたね。やり切る方なんで(笑)。鶴橋監督もお手上げっていう感じでした。監督のウイットに富んだト書きが書いてあって、踊ったりしなきゃいけないんですけど、率先してやられていましたね。姉妹の話だよって言っているのに、叔母さんが一番前に出てくる。それがまたよかったんですよ。叔母さんだって女系家族の中にいて、女が出なきゃっていうところを読み込んでいるからそうなるのであって、すごく説得力があるんですよ」

寺島しのぶ「父とは2人でいたらどうしていいか分からない(笑)」――ドラマ「女系家族」インタビュー

――もう1人、奥田瑛二さん演じる矢島家の大番頭・大野宇市もくせ者ですよね。

「宇市は嘉蔵と同じ時期に矢島家に入って切磋琢磨(せっさたくま)していたんでしょうね。すごいねたみみたいなものは、ずっとあったと思うんです。そこがどう映っているか。物語をこねくり回す役なので、どれだけ嫌なヤツに映っているのか楽しみですね」

――ちなみに、ご自身の役以外でやってみたい役はありますか?

「宇市。あれはやりたい。だって全部を分かっているから。けれど、最後はああなるっていう、おかしみと悲しみとがあって、やってみたいですね」

“鶴橋ワールド”が大好き!

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――今回、鶴橋監督が脚本と演出を手掛けられていますが、監督の指示で驚いたことはありますか?

「そればっかり! 監督のト書きは突飛だし、それが面白いんですよ。それを実現させるのが役者として面白いですし。4シーンぐらい変な場面があるんですけど、短い期間で撮影しなきゃいけないから、(監督は)周りには大反対されていたんです。撮影だけでも時間が掛かるのに、用意も大変だし。(そのシーンは)出てくる必要のないところで出てくるんですけど、それが私は大好きなんです。だから、私とえりさんで、『絶対これはやりましょう!』って言ってやったんです。その日の監督の満足そうな顔を見て、やっぱりやってよかったなって思いました。それがどういうふうになっているのか楽しみです」

母には「きっちり分けてね」って(笑)

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――ドラマは藤代ら姉妹の父・嘉蔵の死と遺言状が、すべての事の発端となっています。寺島さんとお父さま(七代目尾上菊五郎)の関係をお伺いしたいです。

「性格が父とめちゃめちゃ似ているんです。だから全然会話していないです。父と娘の会話はほぼゼロ。子どもの時は父について歩いていたらしいんです。けれど気付いたら思春期になっていて、気付いたら役者さんの家にいるって感じになっちゃって。本当にほぼしゃべっていなくて。だけど、父に見られている感じはします。私が『キャタピラー』(2010年)でベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀女優賞)を取った時に、父が銀座に行ったらみんなに『おめでとう』って言ってもらえて、すごくうれしそうにしていたよって、人づてに教えてもらって。お互いに照れ屋だからっていうのもあるんですけど、とにかく似ているんです。分かり合えるし、逆に嫌だなっていうところも同じだと思うし。同じ場所に2人でいたらどうしていいか分からない(笑)。でも、ものすごくリスペクトしています。家族って不思議ですよ」

――では、姉弟関係はいかがですか。

「母(富司純子)には、遺産相続争いはしたくないから、きっちり分けてねって言われています(笑)。弟(五代目尾上菊之助)とは仲がいいし、そういうことで仲が悪くなりたくないですからね」

――お父さまから言われていたことや、家族のルールはありますか?

「(考えて)あいさつに関してはうるさかったです。それぐらいかな。本当に家では静かな父なので」

寺島しのぶ「父とは2人でいたらどうしていいか分からない(笑)」――ドラマ「女系家族」インタビュー

――最後に、お忙しいと思いますが、ご自身を動かしている原動力は何でしょうか?

「すべてに対しての使命感ですね。私がやらなきゃいけないミッションとしてやっています。気力を振り絞ってやるしかないですね」

――ありがとうございました!

【プロフィール】

寺島しのぶ「父とは2人でいたらどうしていいか分からない(笑)」――ドラマ「女系家族」インタビュー

寺島しのぶ(てらじま しのぶ)
1972年12月28日生まれ。B型。近年の出演作に映画「ヤクザと家族 The Family」、映画「キネマの神様」、映画「空白」(すべて2021年)、テレビアニメ「アーヤと魔女」(NHK総合/声の出演)、スペシャルドラマ「悪魔の手毬唄~金田一耕助、ふたたび~」(フジテレビ系)、ドラマ「ポイズンドーター・ホーリーマザー」(WOWOW)、「いだてん ~東京オリムピック噺~」(NHK総合ほか)がある。Netflixシリーズ「新聞記者」が2022年1月13日から配信。

【番組情報】

寺島しのぶ「父とは2人でいたらどうしていいか分からない(笑)」――ドラマ「女系家族」インタビュー

2夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子『女系家族』 
12月4・5日 
テレビ朝日系 
午後9:00~10:55 

大阪・船場で4代続く“女系筋”の老舗木綿問屋「矢島商店」。当主・矢島嘉蔵(役所広司)が亡くなったことで、矢島家ではその莫大な遺産を巡り、総領娘・藤代(寺島しのぶ)を筆頭として、次女・千寿(水川あさみ)、三女・雛子(山本美月)の3姉妹による、みにくくもし烈な争いが繰り広げられようとしていた。そこに突然明らかになる、嘉蔵の愛人・浜田文乃(宮沢りえ)の存在。3姉妹は、姉妹間の壮絶な駆け引きに加え、文乃とも対峙(たいじ)することを余儀なくされ、遺産相続争いは思いもよらぬ展開を見せていく。

取材・文/TVガイドweb編集部 撮影/尾崎篤志  
ヘア&メーク/光倉カオル(dynamic) スタイリスト/中井綾子(crêpe)  
衣装協力/ピアス ¥583,000、リング ¥352,000(TASAKI:0120-111-446)。その他スタイリスト私物



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