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渡辺大知が語る、俳優デビュー作でのキスシーンの苦い思い出――「初情事まであと1時間」インタビュー2021/08/31

 「ありがとうございます、ご足労いただいて…。本当、わざわざありがとうございます。そんなそんな…」と何度もお辞儀をしながら会議室に現れた、渡辺大知さん。この日は7月22日にスタートした連続ドラマ・ドラマ特区「初情事まであと1時間」(MBSほか)に出演する渡辺さんの取材日。

 放送中のドラマ「イタイケに恋して」(日本テレビ系)では主演を務め、Netflixの話題作「全裸監督 シーズン2」にも出演。映画「彼女が好きなものは」など出演作の公開も控えている渡辺さんが、「初情事まであと1時間」では映画「勝手にふるえてろ」(2017年)などで知られる大九明子監督と再度タッグを組むということで、さまざまなお話を伺おうと、数社のメディアが集まっていました。

 数々の映画やドラマに出演するほか、監督にも挑戦。確固たる存在感を放ち続けていますが、その腰の低さには驚かされるほど。本作で演じる役・陽太との共通点を尋ねると、「おバカな感じの役はたくさんいただくので、そう見られてるんだなって思うんですけど…(笑)」と少しはにかみながら見せる笑顔が印象的でした。そんな渡辺さんに、大九監督の作品の魅力や、過去に出演した作品での苦い思い出についてお聞きしました。

大九監督のセリフに詰め込まれた「できる限りの愛」

――本作は4人の監督陣が手掛ける、八つの物語によるオムニバス形式のドラマです。渡辺さんが出演される第7話(9月2日放送)は、映画「勝手にふるえてろ」やドラマ「捨ててよ、安達さん。」(テレビ東京ほか)でご一緒された、大九明子監督が手掛けていますね。

「情事に至るまでのわずかな時間を描いたシリーズもののドラマとお聞きして、面白そうな企画だなと思いました。その上で、豪華な監督陣が参加されると聞いてすごくわくわくしましたし、さらには面識もあって、信頼を置いている大九さんの回に出演させていただけるとのことで、すごく光栄だなぁと。台本を読む前から、これはぜひやりたいなと思いました」

――脚本やセリフ、演出などで、“大九さんらしさ”を感じた部分はありますか?

「“大九マジック”がかかった脚本だなと思いましたね。結構コミカルだし、ファンタジーなお話ではあるんですけど、すごく感情移入できちゃうのがすごいなぁと。例えば、『(チューインガムから、)恋の匂いがしました』というセリフ。大九さんのセリフって、身近にあるものの中に、できる限りの愛を詰め込んだような言葉がたくさんあるんです。現実にありそうとか、リアリティーがあるからといって、伝わるとは限らないじゃないですか? 『ウソだろ?』って思うようなセリフの中にも、切実さみたいなものが込められているのが大九さんの作品の魅力かなと思っています」

――渡辺さんが演じる役・陽太は、前向きで、どこかおバカなところがあるキャラクターですよね。

「おバカな感じの役はたくさんいただくので、そう見られてるんだなって思うんですけど…(笑)。誰に何と言われようと『俺はこうだ!』って、自分の気持ちに真っすぐに猪突猛進しちゃうタイプって、すごく共感する一方で、憧れる部分もあります。演じていて楽しい役でした」

――ご自身との共通点はありましたか?

「自分にも陽太のような部分はあるけど、普段はもうちょっと抑えちゃってるなと感じます。そういう性質は心の中にはあるんでしょうけど、日常生活においては、そうやってなりふり構わず自分の気持ちに正直に行動するのはなかなか…。陽太を演じながら、『こうなれる男、すげーな』と思っていました。あとは、趣里さんをどう巻き込んでいけるかということをすごく考えましたね。ウソっぽくなくやれたらな、と思って演じました」

――相手役・月子は、趣里さんが演じていらっしゃいますね。お二人とも映画「勝手にふるえてろ」に出演していますが、共演シーンはなかったとお聞きしました。本作で初共演となりますが、いかがでしたか?

「とにかくいろんな気配りをされている方。自分のことだけじゃなくて、現場にいる方にも配慮を欠かさない、若いのにすごくたくましい方だなと感じました。演技においても、身体の使い方や表情が豊かで。なのにちょっとした不器用さもあるのがずるいなと思いましたね。その不器用さがチャーミングで、すてきな方でした」

渡辺さんが考える、“優しい人”

――本作では、陽太の“優しさ”がとてもすてきに描かれていると感じました。渡辺さんが考える、“優しい人”とは、どのような人だと思いますか?

「一言で言うと“相手のことを考えるとは、どういうことか”が、このお話のテーマになっている気がしたんです。人と人が出会って、情事に至るまでの短い時間の中に、『自分のことを自分はどれだけ分かっているのか』『相手のことを自分はどれだけ見れているのか』みたいな葛藤が、誰の中にもあるんじゃないかなと。相手のことを考えるということは同時に、自分自身に気付かされる――そんな“他者と自分との共存関係”について考えさせられたんです。だから“優しさ”って、『どれだけ相手の気持ちになれるか』ということな気がしています。僕は、それくらいシンプルなことかなぁと思うんです」

――渡辺さんが演じる陽太からは、月子を思う気持ちがにじみ出ていますよね。そのお話、もう少し詳しくお聞かせいただけますか。

「自分一人で生きるんじゃなくて、ほかの人もいる世界で生きていて、『なんでこの人は、自分のことを支えてくれるんだろう?』『なんで自分は、この人を支えたいって思うんだろう?』って考えることが、“優しさ”のスタートというか。自分が何か行動する時も、自分のことをいったん置いて、『目の前にいる人がどういう気持ちになるだろう?』って考えることが、“優しさ”の始まりな気がします。完全に相手の目線になるって難しいし、ちょっときれいごとなところもあるんですけど、“試みる”ことが大事なのかなぁと思います。頑張って、“相手の目線になってみる”、“(相手の目線に)なりたい、って思う”ことが大事なのかなって」

――渡辺さんも、相手からそう思われることはうれしい?

「みんなはどう思ってるんだろう?(笑)。僕は、相手からも同じことは求めないかな。みんながどう思ってるかは聞きたいですね。『優しさとは』みたいなことって、人によって違うと思いますし。コミュニケーションをとっていく中で、『自分と違う考えの人がいるんだな』って思えることが、人と接するということなんじゃないかなと思います」

俳優デビュー作「色即ぜねれいしょん」での忘れられない出来事

――本作の物語は、思い返せば笑い話だけど、その瞬間は彼らにとって大きな問題、というエピソードが描かれています。渡辺さんは、そのように思い浮かべる出来事はありますか?

「えっとですねぇ…(苦笑)。初めて映画に出演させていただいた『色即ぜねれいしょん』(09年)という作品で、キスシーンがあったんです。それまで自分にキスの経験がなくて、これが初めてだったんですけども。テストでは実際にはキスはせずにお芝居をして、『いい感じだね、次、本番いこう』ってなったんですけど、いざ本番が始まったら、それまで順調に進んでいたのに、そのシーンで僕、よけちゃったんですよ」

――相手役、臼田あさ美さんでしたよね?

「そうなんです。本番で、臼田さんがこう、キスをしにきてくれたのに、『やばい! ダメダメ!!』と思っちゃって。あんまり人生で、人の顔がこんなに近くに来るなんてなかったんですよ。だから、なんていうんですかね…。経験してなかったのもあって、怖いって思っちゃって、それでよけて。もちろんNGが出ちゃって、臼田さんにも申し訳ないし、失礼なことしたなって…」

――その後は…?

「ちょっと気持ちを整えるために、1回現場から離れようと思ったんです。気持ちを落ち着かせようと思って、『軽く散歩してきていいですか?』って聞いて、その辺をぐるぐると走り回って。それが僕としては体感でいうと5分、10分もらったつもりだったんですけど、後から聞いた話によると、30分くらい待たせてしまったらしくて…。結構現場もピリっとしていて。今思うと、本当に失礼なことしたなって思います。臼田さんも、『私にできることないかな?』っていろいろ考えてくれてたらしいんですよ。そんなこと考えさせてしまったのがすごく申し訳ないですし…」

――走って戻ってきてからは、すんなりできたのでしょうか…?

「走って戻ってきた後、1発目に撮ったのが映画になってるんです。よく見ると、ちょっとだけ(顔が後ろに)引き気味なんですよ(苦笑)」

――何度も見た映画なので、そんな裏話が聞けてうれしいです(笑)。

「そのキスシーンだけでもぜひまた見てください(笑)。今は配信にもあるので、自分の人生初キスがいつでも見れる状態になっているという…(笑)」

――偶然、「初情事まであと1時間」の第1話に、臼田さんが出演されていますね。

「これがいい宣伝になれば…(笑)」

――(笑)。今は笑い話にできますか?

「そうですね。ただ臼田さんには、『あの時、すみません』みたいなことはまだ言えないですね。10年以上たってるし、お会いしたらいつも楽しくおしゃべりするんですけど、その映画の話はしないようにしてます(笑)」

今までの“縁”が運んでくれた、連続ドラマ初主演

――渡辺さんというと、ここ3~4年ほど、映画やドラマ、ご自身が監督を務めた作品も含めて、絶え間なく活躍されている印象です。

「いやいや、そんなはずはないと思うんですけど…(笑)。2018年とか、たまたまぎゅっとした時はあったかな」

――今も主演を務めるドラマ「イタイケに恋して」が放送中ですね。複数の作品が同時期に動くこともありお忙しい日々かと思いますが、今はどのような心境ですか?

「いやいや、『もっと仕事ください!』って思ってますよ(笑)。『イタイケに恋して』も楽しく撮影させてもらって。連ドラ初主演なんですけど、それはやっぱりうれしかったですね…(かみ締めるように)。自分はミュージシャンという畑から、役者の仕事もどうしてもやりたい、って言ってちょっとずついただけるようになって。出自が違う人間であるにもかかわらず、こうやってオファーをいただけるのもすごく光栄なことだなぁと思うんです」

――大切な初主演なんですね。

「そうなんです。『地道にやれることをやろう』と思ってやってきたことがこうやって連ドラ初主演に結びついたのは、本当に今までの縁があったからこそだなぁって。それは、ちょっと自信を持って言いたいなって思ったんですよね。いきなり連続ドラマで主演ってできるもんじゃないですし、今までお世話になった方々や、関わってくれた人たちとの縁がここに運んでくれたなぁと。しかも歌を歌う役で、これまで自分がやってきたことがそのまま今につながっている実感もあって。こういうことがあるから、これからも頑張っていこうと思えてます」

【プロフィール】

渡辺大知(わたなべ だいち)
1990年8月8日生まれ。兵庫県出身。O型。高校在学中の2007年、ロックバンド「黒猫チェルシー」を結成。ボーカルを担当。10年にメジャーデビュー、18年にバンド活動を休止。俳優活動では、俳優デビュー作となる主演映画「色即ぜねれいしょん」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。映画「モーターズ」では初監督を務める。主な出演作は、映画「くちびるに歌を」「勝手にふるえてろ」「寝ても覚めても」「ここは退屈迎えに来て」「体操しようよ」「ギャングース」「見えない目撃者」「わたしは光をにぎっている」「僕の好きな女の子」「太陽の子」、NHK連続テレビ小説「カーネーション」「まれ」、ドラマ「恋のツキ」(テレビ東京ほか)、「べしゃり暮らし」(テレビ朝日系)、NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」「青天を衝け」など。主演を務めるドラマ「イタイケに恋して」(日本テレビ系)が放送中。映画「彼女が好きなものは」「ノイズ」「Ribbon」が公開予定。

【番組情報】

ドラマ特区「初情事まであと1時間」
MBS 木曜 深夜0:59~1:29
tvk 木曜 午後11:00~11:30
チバテレ 金曜 午後11:00~11:30
テレ玉 水曜 深夜0:00~0:30
とちテレ 木曜 午後10:30~11:00
群馬テレビ 木曜 午後11:30~深夜0:00

<配信情報>
見逃し配信:TVer、MBS動画イズム、GYAO!(全8話)
見放題独占配信:TELASA、J:COMオンデマンドほか(全12話)

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【締切】2021年9月27日(月)正午

取材・文/宮下毬菜(TBS・MBS担当) 撮影/尾崎篤志

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