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明日海りお、「ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』」で女性役に挑戦!2021/09/01

TVGwebスペシャルインタビュー/明日海りお(ミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」)

 1991年初演の「音楽座ミュージカル」の代表作が東宝製作で新たに上演! 主演を務める元男役トップスター・明日海りおが、舞台で女性を演じることや、コンビだった元トップ娘役・華優希との共演について、さらに「ポーの一族」や宝塚の同期との交流についても語る!

華ちゃんは、“芝居は楽しいな”っていうことを思い出させてくれるような存在

 「音楽座ミュージカル」さんの作品が基になった舞台を見たのは、昨年上演された「ミュージカル『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』」が初めてでした。衝撃を受けました。テンポが良くて、いろいろな世界観が楽しいし、音楽もすてき。その上で、ズドンと心に響いてくる芯の太さもあって…。“もっと音楽座さんの作品を見てみたいな”と思っていたところに、今回のお話をいただきました。

TVGwebスペシャルインタビュー/明日海りお(ミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」)

 私が演じるモーツァルト/エリーザは女性ですが、類まれな音楽の才能のために、父に男の子として生きることを定められ、情熱的に音楽の道だけを生きています。作品の中で、本来の自分である女性の姿に戻ったりもするのですが、“男性であり、女性である”ことをデリケートに、どこまでも考えて演じたいです。宝塚で男役に向き合い続けて、その後に退団した自分だからこそ、生かせる何かがあればいいなと。ただ、あんばいがとても難しくて…。モーツァルトは幼い頃から男の子として育っていますし、女性だとバレちゃいけないわけじゃないですか。だから、普段から男性としての振る舞いが自然だし、ある程度は内面も男性的になっていると思うんです。そこは、元男役の私に近しい部分かなと思いますし、男性からのエスコートに慣れていない感じとか、ドレスが着こなせない感じとかは、ちょっとコミカルに楽しんでいただけるのではないかなと。でも、やっぱり“マドモアゼル”なので(笑)、お客さまは男性とは違うみずみずしさも期待されるでしょうし…。それに、音楽の才能があるモーツァルトゆえ、音楽への情熱を強力なエネルギーに変えて生きていることに説得力がないといけません。なので、どのくらい男性っぽく演じるかを含めて、演技については、お稽古を通して全体的なバランスを見ながら構築していきたいです。そして、ズドンと心に残る作品を作れたらと思います。

TVGwebスペシャルインタビュー/明日海りお(ミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」)

 演出の小林香さんとご一緒するのは初めて。共演する方もほとんどが「初めまして」の方ばかりですが、皆さんミュージカルやいろんな分野で活躍されてる方ばかりです。特に、モーツァルトの父・レオポルト役の戸井(勝海)さんは、いろんな舞台で拝見して、すごく丁寧に、動きの一つ一つに血を通わせて演じられる印象があるので、今回親子役で共演させていただけるのがうれしいです。そして、モーツァルトの妻・コンスタンツェを演じる華ちゃん(華優希)は、私の宝塚時代での最後の相手役。私が感じている彼女の魅力は、舞台にいる時に“うそがない”ことです。役としての感情が目と口から出る時に、余計なものがない。彼女と演じると、私もいろんな雑念を吹き飛ばしてもらえるというか、すごく芝居に集中できる感じがするんですね。だから、素直に、“芝居は楽しいな”っていうことを思い出させてくれるような存在で…。本人はとっても謙虚で、いろんなことを時間をかけてコツコツ積み上げるタイプ。今回も、きっと見習うことばかりです。私が元相手役で、元男役だってことを気にせずに演じてくれたらと思います。

 今年上演された「ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』」で、初めて男性もいらっしゃる舞台を経験しました。やっぱり男性は体の作りが違うので、声量や訴えかけるパワーがすごくて、(演じた)エドガーとしては“負けてられないな”と思っていました(笑)。あと、舞台に立つ男性の方は、女性の出演者に対してエスコート慣れしてる方が多いんですよ。すごく優しくてジェントルマンなので、おかしな感覚ですけど、そこも見習いたいなって感じました(笑)。

TVGwebスペシャルインタビュー/明日海りお(ミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」)

 今回は、5月に出演した「エリザベート TAKARAZUKA 25周年 スペシャル・ガラ・コンサート」でエリザベート役をやって、舞台での女性役に初挑戦した経験も生かせたらいいですね。今まで、あんな高音で歌うことはほぼなかったですし、あの時は男役さんに対して自分がどのくらいの力加減で挑めばいいのかすごく難しくて…。記録映像を見ましたが、男役であるトート役・望海(風斗)さんと並ぶと大きいエリザベートでしたし(笑)、何より自分で見てもすっごく緊張しているのが分かって、あらためて娘役さん、女優さんってすごいなと思いました。

 「~ガラ・コンサート」では宝塚の同期の出演者が多かったのですが、退団後も、同期とLINEのグループで、「初日、おめでとう」とか「新しいビジュアル、見たよ~」とか、ちょくちょく会話してます。特に、七海(ひろき)は、声優とか結構新しいことにチャレンジしてますし、お互い露出がすごく多い時は「大丈夫?」「元気!」って送り合ったりしています(笑)。今は退団後の活動の形が広がっていて、七海みたいにずーっとカッコいいままなのもすごくすてきだと思います。私自身は上手にいいとこ取りをしたいというか(笑)、その時に求められるものを提供できたらいいかなと。宝塚出身だと、バリっと格好いいことを求められるシチュエーションがすごく多いのですが、演じる時は役になじむのが一番なので、いつでも男性の引き出しを“ガコガコ”させずにスッと開けられる人でありつつ、女性の引き出しもどんどん増やしていきたいです。

 今はまだドラマやバラエティーなど、自分がやってきた舞台以外の畑で生息する時は、どうしても緊張して、楽しめるレベルまでいけてないですね。緊張しないためにどう準備すべきか戦っている最中ですが、場慣れしないと解消されない緊張もあるので、とにかく1回1回の機会を大切にしようと…。今回も、男役ではなく女性役として舞台に立ち続けることは新たな挑戦。どの場所でも落ち着いて表現できるまでには、きっとまだまだ長い道のりだろうと思います。研究したいことがたくさんありすぎて、既にちょっと、一生分だと時間が足りない予感がしています(笑)。

TVGwebスペシャルインタビュー/明日海りお(ミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」)

♬ 最近聴いている音楽は?

Adoさんの「うっせぇわ」を聴いて、“あぁ、いいな”、“すごく気持ちいい声だな”と思っていたんです。そしたら、この間マネジャーさんが、Adoさんの「ギラギラ」っていう曲がいいと教えてくれて。聴いてみたら、本当にすごい格好よくて最近よく聴いてます。自分で歌ったりもしてますね(笑)。とはいえ、家で思いっ切り歌うと飼い猫の「おこげ」がびっくりしてしまうので(笑)、お風呂の中でひっそり歌ってます。

【プロフィール】

明日海りお(あすみ りお) 
1985年6月26日、静岡県生まれ。かに座。B型。2014~19年まで、宝塚歌劇団の花組トップスターとして活躍。退団後は、連読テレビ小説「おちょやん」(20~21年)、ドラマ「青のSP―学校内警察・嶋田隆平―」「コントが始まる」(ともに21年)などに出演。

【作品情報】

ミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」

「ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』」
10月10日~31日 
東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

福山庸治の同名漫画を原作とした「音楽座ミュージカル」の代表作が生まれ変わる。男として育てられた天才音楽家・モーツァルト/エリーザ(明日海)が、偽って結婚したコンスタンツェ(華)との関係や本来の自分の姿に悩みながらも、音楽とともに生きる物語を描く。

取材・文/齋藤春子 撮影/藤木裕之 ヘア&メーク/山下景子(コール) スタイリング/大沼こずえ(eleven.) 衣装協力/ジュエッテ



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