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神谷浩史◆「“『さよなら絶望先生』と一緒じゃん”と取られても、“それはそれでいいです”と達観したところもある作品ですね」2021/06/23

 ちょっと下品な漫画を描いている漫画家の後藤可久士(神谷浩史)は、まな娘の姫(高橋李依)と2人暮らし。姫に嫌われたくないと、可久士が自身の仕事をひた隠しにすることから、騒動が巻き起こる――。愛と笑いに彩られた父娘の物語を描いたアニメ「かくしごと」は、久米田康治の漫画が原作だ。2020年にTVアニメとしてオンエアされた本作が、「劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか―」としてスクリーンに! 可久士を演じる神谷が感じるその見どころとは?

――今回の作品は、TVアニメを経ての劇場編集版ですね。

「TVアニメの主人公は僕が演じる可久士で、今回の『劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか―』は、サブタイトルの『“ひめ”ごとはなんですか』も表しているように、可久士の娘・姫の目線で描かれたもう一つの“かくしごと”なんです。だから、すごく低い目線で物語を捉えているんですね。“そうか、姫目線で見ると、可久士がこういうふうに見えているんだ”と思える演出になっています」

――神谷さんからご覧になって、可久士はどんな人物ですか?

「面倒くさい人ですよね。自分が生きていく上で、漫画家の自分と父親としての自分を線引きして、その上でルールを作って、さらにそのルールを自分だけじゃなく周りにいる人にも課すという…。ただ、周りの人は、『後藤先生が言うんだからしょうがないよね』とフォローしてくれています。周りの人との関係をちゃんと築いているからこそ成立しているんですよね。それは、TVアニメの終盤で、可久士が病室で漫画の続きを描き始めるところにも表れています。昔描いた作品を、かつてのアシスタントたちが集まり、もう1回作業をして描くのですが、それに対して、彼らは非常に前向きなんです。それを見ると、面倒くさい人ではあるけれど、そんなにむちゃくちゃ問題のある人ではないんだろうなと思います。ギャグの要素が強い作品なので、可久士のいろいろな行動をとっぴなものとして描いているけれど、周りにいる人にとって、それは当たり前で、肯定的に受け入れています。可久士は“協力してあげよう”と思えるような人なんでしょうね」

――神谷さんが久米田先生原作作品で主演をするのは、アニメ「さよなら絶望先生」(2007~09年)の糸色望以来2度目ですね。

「すごく分かりやすいところで言うと、『姫に漫画家だとバレたらどーする!』という可久士のセリフは、糸色の『死んだらどーする!』のセルフパロディー。それを両方僕が演じているっていうことは、もはやパロディーでもなんでもないじゃん…というところではあるんですが(笑)。そういうところも含めて、ネタに昇華しているんですよね。糸色と可久士は全然違う人生を送っていますが、出ている“音”が一緒だったら『一緒じゃん!』とツッコまれます。でも、それも分かった上でアプローチしていきました。可久士役は、そういう複雑なところで成立していますが、そういう説明をすると、すごくつまらなくなるじゃないですか(笑)。“『さよなら絶望先生』と一緒じゃん”と取られても、“それはそれでいいです”と達観したところもある作品ですね」

――「かくしごと」は漫画家を描いた漫画で、可久士は下ネタ漫画を描いていますが、久米田先生もかつて下ネタありの漫画を描いていた過去がありますね。

「可久士が下ネタ漫画を描いていることを自身で全否定するようなストーリーでありつつも、久米田先生にも同様の過去があるからこそ、『かくしごと』が成立しています。久米田先生は、それも含めてネタに昇華できる度量を持っていらっしゃるということなんですよね。先ほどお話したように、糸色を演じた僕が可久士を演じる点も合わせて、全方位でツッコミ待ちのような作品ですが、『それを成立させるだけの力がありますよね』と言われているような感じがしました。そこに対して、『無理です』とは言えませんでしたね。『当たり前ですよ。頑張ります』みたいな感じで、可久士役を成立させていきました」

――可久士が漫画家という仕事について「いつまでできるんだろう、この仕事?」と自問自答するシーンもTVアニメにありましたが、作品全体を通じて、求められて初めて成立する漫画家の仕事と、声優の仕事が重なる部分はありましたか?

「そうですね。あれは、僕からすると非常に刺さるセリフです。僕はあのセリフに対して“すごく重い”と思うし、痛感しながら音にできるんですけど、世間の多くの方々から見たら何となく流れていくシーンだと思います。でも、それでいいんです。あのセリフの意味を深刻に受け止めちゃうと、笑ってもらえなくなるので…。“普段ふざけたことをやっている人間が、ちょっと悩んでいるな”と、一種の記号として受け取っていただければと思って演じていました」

――TVアニメと劇場編集版で、印象が変わったキャラクターはいましたか

「TVアニメと劇場編集版で、そんなに大きな違いがあるキャラクターはいないんです。ただ、可久士に関して言えば、TVアニメではあまり見えてこなかった奥さん(能登麻美子)との関係が描かれています。その奥さんが抱えていたシリアスな問題について、可久士がどう接していたのかは、新しい見どころの一つ。そこを切り取ったことで、可久士に対し、もしかしたら違う印象を持たれるかもしれないですね」

【プロフィール】

神谷浩史(かみや ひろし)
1月28日千葉県生まれ。水瓶座。A型。映画「ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語」が6月25日公開予定。劇場版オリジナルアニメ「サイダーのように言葉が湧き上がる」が7月22日公開予定。7月4日スタートのアニメ「天官賜福」(TOKYO MXほか)、7月5日スタートのアニメ「うらみちお兄さん」(テレビ東京ほか)でも主演。

【作品情報】 

「劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか―
7月9日全国ロードショー

下ネタ漫画家であることを娘の姫(高橋)にひた隠す可久士(神谷)。しかし、可久士には、姫の母(能登)の行方というもう一つの“かくしごと”があった。2020年にTVアニメとして放送された愛と笑いの父娘の物語を、新規カットを追加し、劇場編集版として再構成。

【プレゼント】

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応募はコチラ→https://www.tvguide.or.jp/tvguide_enquete
(応募期間:2021年6月23日正午~6月30日午前11:59)

ハガキでの応募方法は「TVガイド」」7月2日号(P98)をご覧ください。
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取材・文/仲川僚子 撮影/トヨダリョウ

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