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神谷浩史◆「『かくしごと』は、僕にとって特別な作品」2020/04/28

 主人公・後藤可久士が娘の姫に隠していること、すなわち“隠し事”は、自分が漫画を“描く仕事”をしている漫画家であること。なぜなら、下ネタ多めの漫画を描いていることを知られたら、きっと嫌われるから──。そんな設定の久米田康治が手掛けるコメディー漫画「かくしごと」がテレビアニメ化され、好評放送中だ。今回は、可久士を演じている神谷浩史を直撃! 「さよなら絶望先生」(2007~09年)に続き、久米田の原作をアニメ化した作品で2回目の主演を果たす神谷が「『かくしごと』は僕にとってちょっと特別な作品」と語る理由とは?

──「かくしごと」へのご出演はどのように決まったのでしょうか。

「可久士を初めて演じたのは、原作漫画の単行本第1巻のCMでした。それから何年か経って、CMとは別の座組でアニメ化の話が動いていることを聞きました。その時に思ったのは、“以前にも久米田先生原作のアニメに出演しているし、CMで可久士の声を一度やっているから神谷さんに…という形でオファーをいただくのであれば申し訳ない”ということ。もちろん、僕としてはとてもありがたいことではあるのですが…。テレビアニメの『かくしごと』は、CMとは違う新たなスタッフさんの“血”を入れて作るもの。“一度演じたから”といった理由で僕がその現場に入るとしたら、異分子になってしまうと思うんです。そんな時、『あらためてオーディションをやります』とお話をいただいたので、『ぜひ!』とお返事をしました。僕としては、新たな監督が思い描くものに自分の声が当てはまるのであれば、ぜひ参加させていただきたいと思っていましたから。そういった流れで、オーディションで声を聞いていただき、ディレクションを受けつつ監督にもご納得いただき、現在に至ります」

──「かくしごと」の原作漫画を初めて読まれた時の感想を教えてください。

「久米田先生は、僕が高校生ぐらいの時から作品を読ませていただいている作家さんの1人。初連載作『行け!!南国アイスホッケー部』(1991~96年)から読んでいます。久米田先生原作の『さよなら絶望先生』がアニメ化された際には主役の糸色望を演じさせていただきました。『かくしごと』は、久米田先生の集大成的な作品という印象があります。あまりこういうことを言うと、“もう書くなってこと!?”と、久米田先生が怒りそうだけど(笑)。まず、久米田先生はお話の畳み方が素晴らしいです。エンディングをしっかりと用意して作っていらっしゃって…。『かくしごと』もそういう作り方をしていますよね。主人公の可久士が下ネタ漫画を描いているという久米田先生に重なる設定や、数々の小ネタ…。今まで積み重ねてきたキャリア、使ってきたテクニック、過去にやってきたさまざまなものを少しずつかき集めて、一つの作品に落とし込んでいる印象があります」

── 可久士は、娘の姫(高橋李依)と2人暮らしの漫画家。下ネタ多めの漫画を描いていて、そのことを姫に知られたら嫌われると、アシスタントら周囲の人を巻き込んで、漫画家であること自体を姫に隠し通しています。演じる神谷さんからご覧になってどんな人物ですか?

「本当に面倒くさい人ですよね(笑)。人間誰しも多面性があるもの。だから、漫画家と父親の顔、二つの顔を持っているのも、それを自分の中で“こっちはこっち”と決めるのもいいんですけれど、可久士の場合、それを周りにいる人たちにも押し付けています。そのあたりが、面倒くさい理由です(笑)。父親としては娘の姫を溺愛していて、たまの休みには姫にいい思いをさせてあげたいと考えるお父さん。でも、それは罪悪感ゆえのことなんでしょうね。もし母親がいて、姫が母親からも愛情をもらっていたら、ここまで能動的にどこかへ連れていくことはなかったかもしれません。母親がいなくて、自分が仕事をしている間に姫が家に1人でいることがどこかでずっと引っ掛かっているから、過保護にもなってしまう…。“姫と一緒にいられる時は、娘のために父親として存在しよう”という責任感が強く感じられます」

── 漫画家と父親という、二つの顔を持つ可久士。演じる上で、気を付けていらっしゃったことはありますか?

「うーん、どうでしょうね。僕の中で、“漫画家の時はこう、父親の時はこう”とはあまり考えていませんでした。可久士のセリフはどれも本心から出てくる本音。それに、さっきも言ったように、人間、誰しも多面性はあります。例えば僕も、今は『僕』と言っているけれど、しゃべっているうちに『俺』と一人称が変わることは普通にあります。でも、それは神谷浩史という1人の人間の中では成立していること。だから、可久士の“芯”の部分をちゃんと作っておけばいいという思いで演じましたね。可久士の“芯”になるのは、責任感。子どもをちゃんと育てていく、仕事をする…そういう責任感がちゃんとある人です。ただ、可久士は姫のことを一番大切にしているので、姫との距離感に関しては、演じる上ですごく気を使いました。それは、可久士自身が気を使っているからです」

── アフレコで印象的だったエピソードはありますか?

「久米田先生の作品は、空気感が独特で、特にセリフのセンスが素晴らしいんです。例えば、文字通り読むと褒め称えているようなニュアンスのセリフも、本当に褒めているとは限りません。その裏では、“実はばかにしています!”ということがあるんですね。ほかの作品を引き合いに出してしまうのですが、僕が望を演じた『さよなら絶望先生』では、第1話で『今朝も中央線が止まりましたね』というセリフがありました。さりげなく話を切り出しているようでいて、何かとても不穏なことを言っている…。そのニュアンスを、『ね』に重きを置いて演じることで出しました。久米田先生の書くセリフは、書いてあることをそのまま“音”にしてしまうと何げないセリフで済んでしまうけれど、引っ掛かりのあるニュアンスで演じた方が、より面白くなるんです。『かくしごと』の現場で、それを理解していたのは、可久士の職場のアシスタント・亜美役の佐倉綾音さんと僕だったと思うんですよね。佐倉さんは久米田先生原作のアニメ『じょしらく』(12年)に出演しているので。1話で可久士と亜美が会話するシーンは、“これがベーシック”というガイドを作っているように感じました。それにならって、と言うとおこがましいのですが…ほかのキャストの方も、そこから自分のキャラクターの方向性を決めたり、微調整したりという感覚があった気がします。もっとも、センスの塊みたいな人しか収録スタジオには入れないので、僕がいなくてもできてしまうとは思うのですが…」

── それでは、最後に視聴者へメッセージをお願いします。

「『かくしごと』は、僕にとって特別な作品。それは、年齢的に、自分が主人公を演じてトップクレジットに名前が来る作品が珍しくなってきたことも関係しています。それから、『さよなら絶望先生』は第3期まで演じさせていただきましたが、原作の最後まで映像化できたわけではないので、悔いがないと言えばうそになります。でも、『かくしごと』は、原作漫画の最終巻までをアニメ化する予定なので、『さよなら絶望先生』で果たせなかったことがこの作品では果たせることも自分の中で大きいですね。『かくしごと』は、誰かが悲惨な目に遭うような事件が起こらない“日常もの”の側面があり、人を選ばない魅力があります。最終話まで見て、“すごいいい作品だった”と思っていただける自信があるので、多くの方に見ていただけたらうれしいです」

【番組情報】 

「かくしごと」
TOKYO MXほか 
木曜 深夜0:00~0:30

漫画家の可久士(神谷)が恐れているのは、ちょっと下品な漫画を“描く仕事”をしていることが溺愛する娘の姫(高橋)にバレてしまうこと。可久士の職場のチーフアシスタント・志治(八代拓)や新人アシスタント・芥子(村瀬歩)らも、その可久士の“隠し事”に付き合わされて…。

【プロフィール】 

神谷浩史 Hiroshi Kamiya

1月28日千葉生まれ。みずがめ座。A型。7月スタートのアニメ「スケートリーディング☆スターズ」に出演。映画「クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」、劇場オリジナルアニメーション「サイダーのように言葉が湧き上がる」が公開予定。ミニアルバム「TP」が発売中。

取材・文/仲川僚子 撮影/峰フミコ 
ヘア&メーク/NOBU(HAPP’S.) スタイリング/村田友哉(SMB International.)

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