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「四畳半タイムマシンブルース」浅沼晋太郎インタビュー2022/09/21

“変わったな”と思われてしまうことに対しての恐怖が強かったんですね

 森見登美彦が手掛けた小説「四畳半神話大系」と、4度の舞台化、さらに2005年には実写映画化もされた劇団「ヨーロッパ企画」主宰・上田誠による青春SF戯曲「サマータイムマシン・ブルース」が融合して生まれたのが、森見登美彦著の小説「四畳半タイムマシンブルース」。まさに夢のようなコラボが実現した作品だったのだが、さらにアニメ化もされたことで話題沸騰中だ。現在はディズニープラスで独占配信中で、9月30日からは3週間限定で全国ロードショーも行われる。監督は、昨年、TVアニメ「Sonny Boy」という名作を世に送り出した夏目真悟。TVアニメ「四畳半神話大系」(10年)でも絵コンテや演出を担当していたクリエーターで、その世界観を熟知している存在でもある。そして、TVアニメ「四畳半神話大系」に引き続き主人公「私」を演じているのは、声優としてだけでなく、脚本家、演出家、俳優としても活躍する浅沼晋太郎。12年ぶりに「私」を演じた感想を聞いた。

――「僕の声優としてのターニングポイントになった作品は、間違いなく『四畳半神話大系』」というオフィシャルコメントを出されていましたが、「四畳半神話大系」にはどんな思い出がありますか?

「僕はずっと脚本家、演出家として活動をしていて、06年にアニメ(「ゼーガペイン」)の主人公(ソゴル・キョウ)役で声優デビューをしたんです。なので、そこから10年くらいは、“来年はこの世界にいないだろう”と思いながら、ずっとやってきていたというか…。“次はないだろう”と思っていたものが、ありがたいことに、次も次もとつながり、声優を続けることができていました。でも、だからこそ本気になれたというか、毎回悔いを残さないようにやろうと必死に取り組んでいたんです。そんな中で出合ったのが、『四畳半神話大系』という作品でした。お芝居って、全力でやっても正解も完成形もないものだから、多かれ少なかれ、悔いって必ず残るんです。もちろん僕もこれまで、TVアニメのオンエアを見ながら、“もうちょっとできたな”とか、“相変わらず下手くそだなぁ”なんて思ったりしていたんですけど、あんなに搾りかすもなくなるほど、“これ以上できない”と思った作品はなかったというか…(笑)」

――そんなに大変だったのですね! ただ、「四畳半神話大系」はかなり高い評価を受けていたので、そこで声優としての未来も見えたのではないですか?

「いやいや、それは全然見えなかったです。06年から10年くらいなので、16年あたりまでは、“来年はここにいないだろう”と思っていましたから(笑)。ただ、作品が賞を頂いたり、普段アニメを見ていない方まで見てくださった作品でもあったので、“来年いないかもしれないけど、続けられるなら、もうちょっと続けたい”っていう、欲みたいなものは芽生えたかもしれないですね」

――それは大きな変化だと思います。共演者から学んだことも多かったのではないですか?

「この作品に限らずですけど、僕は声優としてはド素人でデビューしているし、かといって新人と言える年齢でもなかったので、とにかく周りの足を引っ張っちゃいけないと思っていたんです。年齢的にも甘やかされることは絶対にないから、とにかく必死だったんですけど、この作品では、すごく周りの方が僕に信頼を置いてくださっていたというか、変に支え過ぎることもなく、座長として持ち上げるでもない、すごく居心地の良い環境を作ってくださっていて。そのおかげで、それまでの作品とはまたちょっと違う心持ちやスタンスで関わることができた気がします」

――「四畳半タイムマシンブルース」は「四畳半神話大系」と「サマータイムマシン・ブルース」が悪魔的融合を果たした作品ということですが、「サマータイムマシン・ブルース」の映画や舞台をご覧になったことはありますか?

「実写映画を見ていました。その上で、『四畳半神話大系』ととても親和性があると感じました。まだオリジナルの舞台を見たことはないので、ヨーロッパ企画さんが5回目の再演をしてくださることを願っています。そのときは、端役ででも出演させていただきたいです(笑)」

――確かに、今回のアニメにはヨーロッパ企画の皆さんも出演していますからね。

「だから、すごく良いコラボレーションをしているなと感じました」

――浅沼さんご自身もそうですし、ヨーロッパ企画の方々もそうですが、声優としての経験がなかった方が声優業に挑戦することも多々あります。例えば、浅沼さんがファンだと公言されていて、TVガイドにもよく登場してくださっているSnow Manの佐久間大介さんなども声優業をされていますよね。

「彼らは超人なんですよね。もう僕らとは違う生き物。何でもできちゃうんです(笑)。だから、“アニメが好きなら、当然声優もやれるよな”って思います。僕にとって不思議なことでも何でもなかったですね」

――今回のアニメのストーリーは、壊れたクーラーのリモコンを何とかするために、タイムマシンで壊れていない昨日のリモコンを取りにいこうと、「私」たちクセモノぞろいの登場人物たちが右往左往するというもの。久々に「私」を演じてみていかがでしたか?

「多くの作品は、新たに続編が作られるとなると『あの当時の芝居』を求められてしまうことが少なくありません。特に『四畳半神話大系』は、多くの方に愛されていた作品でもあったので、“変わったな”と思われてしまうことに対しての恐怖が強かったんですね。それは、自分の中で特別な作品であり、『私』が特別なキャラクターであったからでもあるんですけど、“変わらない”ということにすごくとらわれていたんです。だから、『私』特有の早口のモノローグを、監督が求めるよりも速いスピードで読んでしまっていて、『もっとゆっくりでいいです』と言われたり…。でも、自分の中では、“これが『私』だろう、変わっちゃダメだろう”っていう意識があるから、自分の中でしっくりこなくて、途中で監督とディスカッションさせていただいたんです」

――方向性を確認したのですね。

「僕は“成長しないところが『私』の良いところで、成長したとしても階段一段分くらいのイメージ”だったんですけど、監督としては『もっと成長しているんです』と。ナレーションも、前作と違ってSFの解説も担っているから、多少ゆっくりであると。そこからはすっかり受け入れられて、今回の『私』を演じることができました」

――ちょっと成長した「私」と明石さん(坂本真綾)との恋の行方なども見どころですよね。

「そうですね。僕は、“うまくいかないでくれ!”とすら思っていましたけど(笑)、実際はどうなるのか、ぜひご期待ください」

【プロフィール】

浅沼晋太郎(あさぬま しんたろう)

1976年1月5日、岩手県生まれ。O型。今年は「劇場版ツルネ -はじまりの一射-」にも出演。「AD-LIVE 2022」9月24日公演(大阪国際交流センター 大ホール)に出演。音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」の碧棺左馬刻役としても活躍。

【作品情報】 

「四畳半タイムマシンブルース」
9月30日より3週間限定全国ロードショー
ディズニープラスで独占配信中(配信限定エピソードを含む全6話)

原作は、森見登美彦の小説「四畳半神話大系」と上田誠の青春SF戯曲「サマータイムマシン・ブルース」が融合した小説。ある日、下鴨幽水荘の「私」(浅沼)の部屋にあるクーラーのリモコンが壊れ、タイムマシンを使って壊れる前のリモコンを持ってこようとするが…。

【プレゼント】

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応募はコチラ→https://www.tvguide.or.jp/tvguide_enquete
(応募期間:2022年9月21日正午~9月28日午前11:59)

ハガキでの応募方法は「TVガイド」9月30日号(P106)をご覧ください。
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取材・文/塚越淳一 撮影/Marco Perboni ヘアメイク/丸山郁美 スタイリング/ヨシダミホ 衣装協力/glamb tokyo



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