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町あかりのプレイリスト~テレビのうた~◆その4:夏の終わりに… 哀愁の昭和ドラマ主題歌5選2022/09/17

町あかりのプレイリスト~テレビのうた~」その4:夏の終わりに…哀愁の昭和ドラマ5選

 日本でテレビ放送が開始してからおよそ70年。ドラマ主題歌やCMソングなど、テレビによって国民に周知された楽曲は無数にあります。平成3年生まれのシンガー・ソングライターの町あかりが、昭和から令和までテレビを通して愛された楽曲について、独自の目線で語る連載です。

 日中の残暑は続いていますが、ふとした時に秋の空気の匂いを感じるこの頃。気が付けば、何げなく口ずさむ歌もしっとりした曲ばかり。季節の変わり目に心も体も「哀愁の音楽」を求めているのかもしれません。

 第4回では「夏の終わりに…哀愁の昭和ドラマ5選」と題して、昭和のドラマ主題歌から選曲。夏の終わりにぴったりのプレイリストを作ってみました。

 まずは、来生たかお「Goodbye Day」(1981年)。加山雄三さん主演のドラマ「愛のホットライン」(フジテレビ系)の主題歌です。警視庁の少年家庭特捜部を舞台に、都会に生きる人々を描いた刑事ドラマの主題歌である本曲は、有線放送で1位を獲得した、来生さんの数ある代表曲の一つ。歌詞の中で「昔より愛が足りない」と言う彼女に対して、彼は「信じていればそれでいい」と諭すように繰り返します。当たり前の幸せを大切にするような温かいメッセージでありながら、どこか別れの予感が漂う、無常の切なさが感じられ胸が締めつけられる名曲です。

 次は、柳ジョージ「星空の南十字星」(82年)。 木曜座「さりげなく憎いやつ」(TBS系)の主題歌。本ドラマは、主演の大原麗子さん演じる女性カメラマンが、雑誌編集者との恋愛模様を繰り広げる都会派ラブコメディー。憧れちゃうような職業の設定も、80年代らしくてイカしていますね。それに呼応するように主題歌もたまらなくおしゃれ! 南十字星(サザンクロス)は東京では見られない星座だそうですが、二つの愛が重なるさまを美しい星座に例えたのでしょう。「俺の心は変わらない」という熱い一節も十字架への誓いのように思えてきます。夜空を見ながら聴きたいロマンチックな曲です。

 次は大人のラブソング、松坂慶子「愛の水中花」(79年)。木曜座「水中花」(TBS系)の主題歌。松坂さん演じる女性速記者が、ひょんなことから銀座のクラブで働くこととなる物語。ドラマと同様に主題歌も大ヒットし、「ザ・ベストテン」(TBS系)では6週連続トップ10入りを果たします。「これも愛 あれも愛…」で始まる印象的な歌詞は、当ドラマの原作者である五木寛之さんが担当。夜の街、水の世界で花開く女性が華麗かつはかなく描かれ、ドラマ主題歌でありながら「人生なんてドラマじゃない」と断言する一節はしゃれがきいていてシビれますね。子どもも歌いたくなるようなキャッチーさを持ちつつ、大人が聴くとドキッとするような表現が実に巧妙。時代を超えて受け継がれる名曲とは“まさにこれだ!”と、あらためて感じます。

 続いては、みのや雅彦「笑えないピエロ」(83年)。月曜ドラマランド「どっきり双子先生・乙女学園男子部」(フジテレビ系)主題歌に起用。「月曜ドラマランド」という単発の枠での放送だそうで、タイトル通り先生がなんと双子! 主演の石立鉄男さんが2役演じる凝った演出の学園ドラマで、ファンも多いようです。みのやさんによる作詞・作曲である本曲は、哀愁漂うメロディーが印象的。正直に気持ちを伝えられないお調子者の悲しみが詰まっている1曲です。イントロのピッコロの切ない音色が、窓を吹き抜ける乾いた秋風のようにも感じられ、より一層寂しさをかき立てます。

 最後は、椎名恵「愛は眠らない」(86年)。「花嫁衣装は誰が着る」(フジテレビ系)の主題歌。主演の堀ちえみさん演じる親を亡くした少女が、ファッションデザイナーを目指す物語で、「まさに大映ドラマ」といった感じの波瀾(はらん)万丈の展開! 主題歌は、75年に世界中で大ヒットしたオリビア・ニュートンジョン「そよ風の誘惑」の日本語版でのカバーです。Aメロの中低音域部分が特にすてきで、ずっと聴いていたいような、ささくれ立った心もなめらかになるような、温かい歌声なのです。オリビアが歌う原曲も人々に安らぎを与える名曲ですが、椎名さんのカバーには夢に立ち向かう勇気を与えてくれるメッセージも込められています。新しい季節に、何か新しいことを始めてみようかと前向きな気持ちにさせてくれる楽曲です。

 いかがでしたでしょうか? 今回のプレイリスト(Spotify)はこちらから! 
>>https://open.spotify.com/playlist/5GwAKGvbWrK0ZGED8wVwb8?si=6fb7322fb33d4103

町あかりのプレイリスト #4「夏の終わりに…哀愁の昭和ドラマ5選」Spotify

 秋晴れの空に並ぶうろこ雲の下、海水浴客のいない海辺を散歩するイメージで、切ないけれど心地よい気持ちになれるようなプレイリストにしました。楽しかった夏を惜しみつつ、気持ちのいい秋風に吹かれながら聴くのにオススメです。食べ物にも旬があるように、音楽もその季節に合わせたものを聴くことで、味わいが増すものかもしれませんね。しかしあっという間に過ぎ去ってしまうはかない季節でもあります。思い立ったが吉日。哀愁の名曲たちを味わいながら、秋の始まりを存分に楽しみましょう!

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町あかり

シンガー・ソングライター。2010年から活動を始め、作詞・作曲、編曲、執筆、イラストや衣装制作まで自身で行う。19年には、ビクターエンタテインメントからメジャー5thアルバム「あかりおねえさんのニコニコ♡へんなうた」をリリース。20年10月に、日本コロムビアから初のカバーアルバム「それゆけ!電撃流行歌」を発売。ほか、アーティストへの楽曲提供も行う。映画「男はつらいよ」と昭和歌謡曲、そして文鳥を愛する。最新アルバム「総天然色痛快音楽」が好評発売中。

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