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コラム

『みるコレ』は“キュレーション”と“データ”でテレビの未来を切り拓く── 担当者インタビュー第2弾《前編》

 6月の本コラムでは東芝『レグザ』ブランドのテレビで利用できるサービス『みるコレ』の開発者の方々にサービス開発の経緯や現状などについてお話をうかがった。今回はその開発者インタビューの2回目をおくる。今月は『みるコレ』の中心となる「パック」機能や、サービスから得られるデータ活用について、東芝映像ソリューション(株)の片岡秀夫氏と中村さやか氏に語っていただいた。「パック」やデータ活用の実態にとどまらず、テレビを取り巻く環境の変化やデータを扱うポリシーまで多岐にわたる内容を、前後編でお届けする。

《後編はこちら》

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(左から)中村氏、片岡氏

◆「パック」は人力で手間暇かけて

── そもそも“「パック」とは何か?”というところからお話をお聞きします。

中村「テレビやコンテンツが好きな方は、好きなジャンルやタレントであったり、みんなが見ている番組を見たいという欲求があると思うんですよね。「パック」というのは、この「見たい」という欲求の単位ごとにテレビ番組や複数のVODサービス、番組のシーンやCMといったコンテンツをまとめたプレイリスト (といっても、連続再生ではなく、個別に選んで視聴できます) のようなものですね。このパックを使って、おまかせ録画も実現しています」

片岡「お客さんの種類があるということを僕らは気にしています。種類にフォーカスすると、特定のタレントさんが好きというのも種類ですよね。それが人気タレントや俳優さんだったり、オフシーズンの時にはトーク番組に出るスポーツ選手だったり、特定の人物が好きな人たち。一方、特定の人物が好きというわけではない方もいらっしゃいます。例えば、今流行っているテレビ番組や、面白いものが何かないかを知りたいと思う方たち。その場合でも、だいたい好みのジャンルはあると思うんですよ。そこで予約ランキングという、みんながある意味「投票」してくれた参考資料からジャンルごとのランキングのパックを作ったりしてます。あと、ドラマ好き、バラエティー好き、アニメ好き、音楽好きみたいなサブジャンルを細かく掘っています。番組のメタデータだと、ざっくりとしたドラマやアニメというのはあっても、うまく子どもや大人向けアニメなどに分類する指標がなかったりしますから、そういったところをキュレーションとして人力で手間暇かけてやっています。お客さんのタイプごとに違うニーズがあるので、一通り応えられるバリエーションを用意しています。これが『みるコレ』の「パック」の中心となる考え方です。まとめると、放送からネットコンテンツ、CM まで“串刺し”するにしても、人によって切り口は違うので、それぞれに対応した「パック」を用意しています、というのが今の話になります。その全体が揃って初めて『みるコレ』が成立するというのがわれわれの考え方です」

── そうですね。『みるコレ』や「パック」を説明するときに「検索のようなもの」と言ってしまうんですが、実際には検索と違うわけですよね。そこに人力のキュレーションが入ってくるということが大きいと思います。

片岡「「パック」は一種のプリセットなんです。「リモコンで文字入力しなくてもいいよ」というのがコンセプトと言えます。あらかじめよく使うキーワードをお気に入り登録するだけで自動的にコンテンツが見つかるような「自動検索」という方が誤解が少ないかもしれませんね」

中村「「あなたの好きが見つかる」というキャッチコピーのとおりですね」

片岡「「好きなもの」って人それぞれじゃないですか。それぞれの「好き」を用意している中で、キュレーションみたいな手作業も必要になってくるし、人物データベースもいるし、人気ランキングのような視聴ログデータを活用したものもあるというふうに、複合的にやることでニーズに応えていけるようなサービス体系を作りました」

── できるだけ検索をさせない方向に動いている、Web・ネットの世界と歩調が合っている感じがします。

中村「「パック」の検索が普通のキーワード検索より一歩踏み込んだ運用・運営をしているのは、番組名は一筋縄でいかないものだからなんです」

── 非常によく分かります。

中村「例えば旅番組が好きな人が「旅」「温泉」といったキーワードを登録したとすると、ヒットするのは芸能人の罰ゲーム旅だったり、アニメの温泉回だったりで、旅に出たい、温泉に入りたいという時に見たい番組とはちょっと違ってしまうことがあります。そこで人力でパックに手を入れることによって、「秋の房総半島一周」みたいなものを旅行パックで見つけられるようにするなど、単なるキーワード登録ではないところを目指してメンテナンスしています」

片岡「常に番組表をチェックしてメンテしないといけないということですよね」

中村「そうですね。こまめに番組表は見てます」

片岡「全主要ジャンル、全主要パックのテーマを毎日のようにチェックしてはメンテしてるという人力のたまものなので、知って使ってもらえないともったいないですよね」

中村「そうなんですよね。テレビやレコーダーにある検索機能は大抵、ドラマやアニメというジャンル単位だったり、好きなタレントさんだったりといったところだと思うんですが、『みるコレ』の「パック」だともう一歩踏み込んだ検索を実現できるように、人力で手間暇かけています」

片岡「これがかなり大変なんですよね。タレント名も、短いタレント名だったり英語だったりすると関係ないものがいっぱい出てくるんですよ。除外キーワードを設定するやり方と、出現してくる番組を期待される「パック」名の中身にふさわしいか判断するやり方がある。すると番組を見つけていかないといけない。これは本当に手間がかかります」

中村「アイドルグループが好きな方ですと、欅坂46やEXILEのように大人数のグループ全員を登録するのは大変で、「欅坂46」という出演者名で出演した、音楽番組などしかヒットしないですよね。ですが、『みるコレ』のアイドルグループパックでは、例えば「欅坂46」を登録するとメンバーが出ている番組もヒットするようにシステムを改善して一度に集まるようになってるんですね。そういったところも改善を加えています」

── 自分も番組情報に携わってきた中で、グループの出演メンバーまで発表してくれる番組はそうはないんですよね。いろいろなところから情報をかき集めてきても、その情報が正しいのかどうか分からないという苦しさがあるんですが、そのあたりはどうカバーされているんですか?

中村「人物をIDで管理することによって、定期的に情報をアップデートするようにしています。また、人物IDで管理することによって、同姓同名でまったく違う人だったということを排除したり、部分一致で引っ張るのを避けるような工夫をしています」

片岡「けっこう面倒なんですよね。だけど、(ID管理が)ないと某ショッピングサイトでも苦労しますね。部分一致が全部出てくると多過ぎちゃって肝心のものが出てこないということがあります。人物IDで管理しているサイトはあんまりないんですよね」

中村「若手のアイドルや、駆け出しの声優さんとプロゴルファーさんの同姓同名や、名前の部分一致が重なったりして、「ゴルフパックなのにアニメが録れてる!」ってゴルフファンの人に言われたり」

片岡「身内に怒られるんですよ。そうすると除外のハンドリングをどうするべきなのかが分かれば、次回以降はうまく扱えるようになるんですけど」

中村「ただ、番組は生き物です。どういった番組が放送されて、それに誰が出ているのかというのは、メンテし直さなくてはいけないので、定期的に巡回をしていますね。この「パック」でこれが録れたらおかしい、とか」

── 気の遠くなる作業ですよね…。

中村「そうですよね。でも、差別化を図るにはそういうところを大事にしていかなければいけないのかな、と思います」

── かつて弊社でもチャレンジしていましたので、編成データと人物データを紐付けて運用していく苦労は非常に共感できるところです。

中村「ありがとうございます」


◆『みるコレ』は、番組に出合うハードルを下げるためのサービス

片岡「番組表に書いてあっても放送が変わることもありますよね。この人の特集だと思ったら翌週、翌々週になったりとか。ファンからすると楽しみにしていたのに変わっちゃった方が録れていたり、翌週(録画を)開いて見たらもう終わっていたりとか。例えば、「(『君の名は。』の)新海誠監督が出た番組は対談での出演も、ぜんぶ見つけてほしい」みたいな気持ちがファンの一つの使い方だし。監督の名前が挙がるのはまだよくて、いろんな監督さんの名前まで全部覚えて登録できるわけじゃない。すると、その類いを全部探してほしいというのは個人的な希望ではあり、こういうニーズってきっとあるんです」


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片岡氏

── 6月からお話をうかがってきて、もともと何かが好きな人が好きなものをより深く楽しめるための機能として『みるコレ』の「パック」は優れていると思ったんですが、今のお話から考えると、なんとなく「このへん」が好きな人が、その輪郭をはっきりさせていくことに貢献するのかなという気がしました。

片岡「そうですね。タレントのレギュラー番組など、明確な番組は探しやすいんですが、突発的にその人が特番に出た時に「しまったー!」ってなるんです。例えばPerfumeのようなタレントが好きだとして、毎週やっている歌番組はチェックできても、いきなり年に数回ある長時間の歌番組特番に出ているのを、土日なら気が付くんですが、平日に放送があったりすると、「しまったー」と。月刊誌の番組表を毎月・毎週予約チェックに使ってるんですが、内容未定と番組表に穴が開いているときは、実は気がつきにくいんです。それぐらい見落とさないようにするのは難しいんですよね」

中村「この間3人が歌番組ではなく、ドラマに出た時も大騒ぎして、「音楽番組じゃないからみんな見逃しちゃうよー」って(笑)」

片岡「そういうのが大事なんです。主な対談番組は毎週予約を入れて、興味のある人が出るかもしれない可能性にかけて(レコーダーを)回し続けて早何年、みたいな。急に放送したり、再放送が入る番組もありますが、まずは全部録って、自分の興味のないものはどんどん捨てていくしかない。そのために、毎週3時間以上番組表をチェックし、好きなアーティストやコアなファンのTwitterをフォローし、「○○がこの番組に出ますよ」というのをチェックし、メモして、自分宛てにメールを送りつけ、番組表ガイド誌に書き込んでおき、EPGに出たら予約を入れるというルーチンを回さないといけないんですよ。そういう努力をしないと見つけられないくらいハードルが高いんですが、普通はここまでの手間をかけるのは面倒だからなかなかやらないと思います。だから、こんな面倒なことをしなくてもテレビでいいコンテンツに出合えるようにするために、われわれは『みるコレ』をチューニングし続けているんです。」

中村「片岡さんみたいな強者レベルはそうそういません(笑)」

片岡「このように、『みるコレ』の元となるアイデアは、僕みたいな面倒なことができる人はごく限られているだろうから、そのハードルを下げるにはどうしたらいいだろうというのが発端なんですよ。こういうことは、普段やらないよね、でもやらない人でも似たような結果が得られるサービスってどうあるべきなのか、と」


◆多様な切り口をもつ「パック」

── そう考えると、「よく見られる『パック』は何ですか」という質問を考えてきましたが、安直な質問に思えてきました。どういった傾向の「パック」であればユーザーさんの満足度が高いかという聞き方をした方がいいかもしれないですね。

中村「登録数ナンバーワンの「パック」は、「話題の番組まとめちゃいました」という、一番最初に『みるコレ』を使う人におすすめする当たり障りのない、ラーメン屋さんでいう「おすすめ」「イチオシ」という「パック」ですね」

片岡「初めて行くラーメン屋さんのように、人間、ボタンが並んでいると迷うんですよ。初回設定でそのストレスは嫌だろうなと。「イチオシ」と書かれたラーメン屋の券売機でボタンが押されるように、ちょっとした工夫の一つです。それがみなさんに登録されている」

── 登録されて、実際に使われている?

中村「まず最初に「パック」がどういうものか分かってもらえればいいので、継続的に使われなくてもいいというスタンスです。まずこの「話題の番組まとめちゃいましたパック」を使って、どんな感じに使えるのか体験してみてください」、ということで2位以下にダブルスコアをつけての1位です。このインタビューのためにデータを取ってみましたが、実際に使われているパックは片岡さんのPR(※)の効果かアニメ系のパックが多いですね。この1週間で見ると1位が「アニメジャンルパック」で、2位は片岡さんによる「おすすめ大人アニメパック」です」

※片岡氏は、TimeOnのブログでクールごとのおすすめアニメを紹介するなど、サービス開発・運用と同時に前面に立ちPRも行っている。
《参考》http://m.timeon.jp/blog/2017/blog-4198.html

片岡「中村さんの絶大なるご協力で維持されています(笑)。でもそこには自分のノウハウと感覚を磨いてきているので、労力はすごくかかっています。こういうパックを使ってもらうのがある意味『みるコレ』サービスの神髄なのかな、と。機械仕掛けではできないことを人間がある視点で選んで、使ってもらうという関係が『みるコレ』らしさだと思いますね。ドラマとアニメでは同じことをやっていますが、視聴者にとって、アニメの方が見る作品を選ぶのが難しいんですよ。ドラマの場合はタレントさんが出ていることが視聴理由の一つになってるし、サブジャンルでも幅がそんなにはない。アニメは振り幅がすごいですよね。有名タレントが出るから見るというものでもなく、そもそも大人アニメというだけでもドラマより多いのです。そうすると何を選んでいいのか、全部録画予約するのは猛者だけで、よさそうな番組からさらに自分が選んだ番組を録って、見てみてよかったら継続視聴する、という考え方にならざるを得ないんですよ。作品名では選びにくい。監督や声優だけで選ぶ人も限られている。だから手がかりの必要性がドラマ以上に高いのかな。そのニーズに応えられるようにやっています」

── いまのお話で片岡さんのイチオシの「パック」まで語っていただけました。中村さんはいかがですか?

中村「ドラマ担当としては、「おすすめドラマパック」です。それから「美女子パック」などもおすすめです。女性が好きそうな、「BeauTV ~VOCE」とか、ダイエット番組の中でもおしゃれなダイエットを特集している番組を選んだり、YouTubeでヨガなども見られるように仕込んでいるパックです。あとは「お笑い特番パック」。「M-1グランプリ」や「THE MANZAI」という不定期に放送されるお笑い番組は見逃しがちで、「この人が優勝したんだ」とネットで知って、「見たかった」という声が出たりする、そういった不定期のお笑い番組を集めた「パック」です」

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中村氏

片岡「先ほど話にあがった本質につながるのはそこですよね。アニメ監督のインタビュー番組はめったにないというのに通じる。お笑い好きには人気のある番組だけど不定期だから逃しちゃう。定期番組や、クール替えで調べたりする番組は追っかけやすいけど、難易度が高いのは音楽特番しかり、お笑い特番しかり。そういったものを確実に逃したくないというニーズがせっかくあるので、人力でどれだけ見つけられるか」

── 先月公開したバラエティー番組の録画視聴の集計でも、お笑い・ネタ番組は録画で見られているんですよね。それと整合性がとれますね。

中村「そうですよね。「アメトーーク!」とか」

── レギュラー出演者が固定されていないということも一因なんでしょうね。

片岡「内容が入れ替わる番組において、好きなテーマやゲストの回のみ視聴する、というのはトーク系もそうなんです。マツコ・デラックスさんの番組でカラオケで歌われる曲にアニメ主題歌が多いというトークの回は、普段トークバラエティーを見ていない僕ですら、興味が出て見ましたが、好きなジャンル周辺をいい感じに捕まえるのは本当に難しいし、それがニーズだと思うんですよ」

中村「片岡さんみたいに「これが好き」というのが決まっていなくても、「だいたいこの方向が好き」というのが拾えるように、さまざまなジャンル・サブジャンルの「パック」を提供しています」

──「パック」の切り口に多様さがあるのがすごいと思うんですよね。輪郭のぼやっとしたものをパック化するのはかなり大変だと思うんですが、どう発想しているんでしょうか?

中村「ありがたいことに、片岡さんみたいに周りにとんがった人が多いので(笑)、鉄道好きだったりゴルフ好きだったり、周りからの意見を集めて、こういった趣向があるんだというところをヒアリングして回っています。まずは作って運営してみて、だいたい勝手が分かってきたらちょっとずつ幅を広げていっています。例えばVODのジャンルだったり、本屋さんに行って雑誌の種類から、「健康」や「バイク」などのニーズを拾ったり、そういう種類をかき集めたり。あとはメルマガを登録する際の「どんな趣味がありますか」といった質問で聞かれるジャンルを参考にしてましたね。ある程度の趣味系が揃ったら、実際に毎週見る番組表の中から、例えば番組として数が多かった「衝撃映像」関連番組が集まる「パック」を作ったり。日本という島国ゆえか、日本から外国に行った人や、外国から日本に来た人に興味がある切り口から、外国に対する興味を拾うといったところで、そういった文化をぎゅっとまとめた「パック」を作ったりとか」

── 書店での選書やキャンペーンに近いですよね。

片岡「僕らも「今度アニメ化される原作はこれです!」みたいなコーナーを作るように分類する。ただ並べるんじゃなくて、学園ものを寄せてみたり、萌え系、アクション系を寄せたりすることで、お客さんの目に入るようにと、アニメジャンルをさらに細分化したサブジャンルは特にそういう傾向でやっていますね」

《後編へ続く》


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関根禎嘉 (せきねさだよし)
株式会社東京ニュース通信社 経営企画室 兼 企画営業部所属
2007年入社。新聞向けテレビ欄の制作、ウェブ媒体編集を経て現職。EPGを初めとするメタデータ制作・活用を通じ、“ほしい人にきちんと届き、作った人にきちんと還元される”コンテンツ流通のあり方を考える日々。NPO法人・日本メタデータ協議会などの社外団体の活動にも参加。

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