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「俺の家の話」脚本・宮藤官九郎&磯山晶プロデューサーインタビュー!「だから長瀬くんのドラマは作っていて楽しい」2021/02/05

 現在放送中の金曜ドラマ「俺の家の話」(TBS系)。主演・長瀬智也さんと脚本・宮藤官九郎さんの令和初タッグで描くのは、濃すぎる家族が織りなす新しい形のホームドラマです。今回は長年にわたり長瀬さんと数々の人気作品を生み出してきた、宮藤さんと磯山晶プロデューサーを直撃。長瀬さんとのドラマ制作秘話や、今作に込めた思いを語ってくれました。

――11年ぶりのタッグ作品ということで大きな話題になっていますが、制作のきっかけと放送が決まった時のお気持ちを教えてください。

磯山 「約5年くらい前からドラマをやりたいという話があって、少しずつ企画が進んでいたんです。だからはっきりとしたスタートラインがあったわけじゃないんですよね」

宮藤 「そうですね。長瀬くんと以前映画の制作があった後に、子どもがいる父役をやったことがないとおっしゃっていたので、親子ものがいいかなとか、介護の話にしてみようかなとか話し合っていました」

磯山 「自分にも子どもがいて親もいるようなストーリーがいいかな、そしたら長瀬くんの父親役は『西田敏行さんがいいですね』と、すぐに決まって。そこからプロレスや能の要素を肉付けしていきました」

宮藤 「以前磯山さんとご一緒した『監獄のお姫さま』(TBS系)くらいの時から、ちょっとずつこんな感じにしようという話を進めていたので、あまり11年ぶりという感じもしないです」

磯山 「決まった! うれしい!というよりは、どちらかといえば、ようやく整ったなっていう思いでした」

――長瀬さんの意向を取り入れて作品づくりをされたということですが、具体的にはどんなところでしょうか?

宮藤 「プロレスです。特にコスチュームについてこだわられていたと思います。こういう設定ならこういう衣装がいいんじゃないかとか」

磯山 「長瀬くんが先手先手で準備してくれていたので、むしろこちらが遅くなってすみません! という状況もありました(笑)。1年以上前から髪も伸ばされていて、気持ち的には誰よりも早くスタートされていたと思いますし、常に先にスタンバイされていました」

宮藤 「長瀬くんは他の作品でもそうなのですが、形から入っているからこそ、本質を捉えているんだと思います」

――ポスタービジュアルの長瀬さんは本当にプロレスラーのような体つきですよね。

磯山 「そうなんです。以前プロレスを見に行った時に、レスラーの皆さんの大きさがかなり印象的でした。私のイメージの中の長瀬くんはすごくスリムだったので、本物のレスラーとは全然違うな…と思っていたんです。でも打ち合せで長瀬くんにお会いしたら、もう既にすごく大きな体になっていてびっくり。仕上げてきてくれたんだと感動しました」

宮藤 「いわゆる役者さんの体づくりとはまたちょっと違いますよね。本物のプロレスラーのような仕上げ方というか。おかげでプロレスシーンは迫力のある映像が撮れています」

――あらためて感じた“役者・長瀬智也”のいいところはどんなところでしょうか?

宮藤 「思い切りのいいところです。導入の時は細かいことを気にされるのですが、テクニックとか小手先で勝負するのではなく、自分で限界を決めずに何でも思いっきりやってくれるので、見ていて気持ちがいいんです」

磯山 「内心すごく細かいところまで気にしている方ですが、画面で見るとスケールが大きくて、そんなこと気にしてるようには見えない。単に格好いいわけではなくて、私が男だったらああいう人に生まれたいと思う人を自然に演じてくれるんです。本当に唯一無二の役者さんだと思います」

――長瀬さんとだから生まれたシチュエーションや設定はありますか?

磯山 「“長瀬さんだから”という部分がほとんどですね。プロレスも能も習得しなければならないのでかなり負荷がかかっていますし、ご本人が『俺はスーパーマンじゃないよ』と愚痴るくらい (笑)、負荷をかけちゃってるんです。でも、そんな普通の人はできないようなこともクリアしてしまうのがすごい。だから長瀬くんのドラマは作っていて楽しいですね」

宮藤 「介護のシーンでは、お父さんを支えたり、それなのに意地悪されたりするシーンがあるのですが、僕はそこでの『なんで俺ばかりこういう目にあうんだ!』という長瀬くんのお芝居が見たかったんです。20年ぶりに帰ってきた家でいろんなことを仕切らなければならなくなった長男の悲哀を、長瀬くんが表現したらグッとくるものがあるだろうなって」

磯山 「これまで長瀬くんと作った『池袋ウエストゲートパーク』『タイガー&ドラゴン』(共にTBS系)などと比べると、今回は一番地に足が着いていて現実味がある役どころです。42歳になった彼だからこそ、人生経験を積んで感情移入しやすい人物になっているのではないかなと思っています」

宮藤 「今までは思っていることを全部言ってしまう役柄だったんですよね(笑)。今回は基本的に家の中にいて、自分の感情を爆発できない役どころなので、あえてモノローグを入れているのも見どころの一つです」

磯山 「フィクションを作る上で毎回設定の振り幅を考えるのですが、本当はプロレスと能ではなくて、もっとありえそうな設定でもよかったんです。でも長瀬くんがやるなら、この二つでやってほしいなって思いました。設定としては現実味が薄いのですが、本質的な部分は普通の42歳の悲哀だったり、家族を思う気持ちなので、皆さんに共感してもらえると思います」

――今回はホームドラマということですが、父親の介護問題だったり、息子役・羽村仁成さんの学習障害の話だったりと社会派に寄っているテーマもあると思います。そういう部分はどういった狙いで作られているのでしょうか?

宮藤 「自身の周りでも親の介護をしている人が多く、誰もが直面する問題なのに、その割にはドラマで扱われることは少なかったように感じました。これから絶対にみんなが直面する問題だから、逆になんで今まで取り扱うことが少なかったんだろうなというところから入りました。そしてホームドラマで、しかもホームコメディーになったら、今まで長瀬くんと磯山さんで作ってきたドラマのテイストで“介護”を扱えたらいいなと考えました」

磯山 「私も実はこの5年の間に両親を亡くしたのですが、思い残すことがないようにしないと、という思いがある中で、親の生き死にというのは意外と身近にあるドラマチックな出来事なのではないかと思い、そういう話を宮藤さんにしたら結構盛り上がったんです。介護をテーマにしたドラマなんて見たくないという反応もあると思います。ただ、辛気くさく作るつもりは全くありません。私自身、介護は“劇団親孝行”だと思ってやっていましたし、そういうふうにドラマチックに描けたら面白いなと思ったので、立ち向かう価値あるテーマだなと思いました」

――こういったホームドラマを今やる意義や、お二人が考える理想のホームドラマについてもお聞かせください!

宮藤 「今は好きな時に1人で見るのが当たり前になっていると思います。実際は家族で一緒にご飯を食べたり、テレビを見たりすることは少ないんじゃないでしょうか? だからこそ、ドラマではそういう描写を見てもらうのがいいんじゃないかと思いました。今作で言えば、ほとんどの家庭で直面するだろう親の介護という課題があって、LINEの家族グループができて、『そう言えばみんなでご飯食べるのは久しぶりだね』っていうようなシーンは象徴的ですね」

磯山 「友達や同僚、上司に言われる言葉より、家族から言われる言葉ってこびりついて離れないもので、どんなささいなことだったとしても自分に影響することが大きいと思うんです。そして、言われた相手が認知症になったり、亡くなった時って、その人にとってはすごく大きい出来事です。そういう家族にしかない言葉や関係の重みはドラマチックだなと感じましたし、ホームドラマの醍醐味(だいごみ)なんじゃないかなと。宮藤さんが描いてくださっているセリフに、『うれしいことも悲しいことも、家族だからこそある重み』という言葉があります。今作を通して、そういうところを表現していけたらと思っています」

【番組情報】

金曜ドラマ「俺の家の話」
TBS系
金曜 午後10:00〜10:54

TBS担当 A・M

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