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「スケールの大きな希望の物語と感じていただければ」原作が完結した今だからこそ、映像化して伝えたいメッセージ──「大奥」プロデューサーインタビュー2023/02/28

「スケールの大きな希望の物語と感じていただければ」原作が完結した今だからこそ、映像化して伝えたいメッセージ──「大奥」プロデューサーインタビュー

 よしながふみさんによる同名漫画を原作に、3代将軍・徳川家光の時代から幕末・大政奉還に至るまで、男女が逆転した江戸パラレルワールドを描くドラマ「大奥」(NHK総合)。

 2月28日放送の第8話からは、再び8代将軍・徳川吉宗の時代へ。今クールでの放送は残すところあとわずかとなりました。そこで今回は、ドラマ10「大奥」の企画者・岡本幸江プロデューサーに、ドラマ化に至ったまでの経緯や作品のこだわりについて伺いました。

──「大奥」ドラマ化のきっかけについて教えてください。

「実は、私が企画書を最初に書いたのは16年前になります。ドラマについてマーケティングや議論をした結果、仕事や家事が終わったひとときに、自分のご褒美として落ち着いて楽しめるドラマが求められているのではないかという手応えに至り、私が熱く語ったのが、よしながふみさんの『大奥』でした。当時はドラマ化の夢はかなわなかったのですが、あらためて今、求められているドラマ作りを考えていた時に原作が完結しまして。最後まで拝読した上でドラマ化したいと強く思ったのが始まりです」

──どのような部分に魅力を感じられたのでしょうか?

「男女逆転というショッキングな設定がありながらも、描かれている人と人との関わりに心揺さぶられましたし、人間の本質に刺さる物語の内容に魅力を感じました」

──脚本は、連続テレビ小説「ごちそうさん」や大河ドラマ「おんな城主 直虎」でタッグを組んだ森下佳子さんです。

「実は『大奥』ドラマ化の背中を押してくださったのは森下さんなんです。作品のファン2人で相談しながらやらせていただいたので、幸せな脚本作りでした」

──脚本作りにおいて、お二人で相談してこだわった点があれば教えてください。

「作品のゴールにある、よしながさんの思いを知った上でのドラマ化ですから、長い歴史の中で人々がどのように思いをリレーして届けるのかを大事にしました。将軍・吉宗(冨永愛)が村瀬正資(石橋蓮司)を相手に『そういうことだったのか』と理解するオリジナルパートを入れさせていただくことで、歴史の流れを切ることなく、思いを引き継いでいくことを意識しました」

──では、キャスティングで意識されたことはありますか?

「新鮮さや驚きは必須だと思っていたので、柔らかい役のイメージがある堀田真由さんに、あえてサディスティックな役をお願いしたりと、その方の新たな面を感じていただきたいというのは意識しました。冨永愛さんはランウェーを歩いていらっしゃいますが、将軍となって御鈴廊下を歩くことは考えていなかったんじゃないかな、と」

「スケールの大きな希望の物語と感じていただければ」原作が完結した今だからこそ、映像化して伝えたいメッセージ──「大奥」プロデューサーインタビュー

──意外性がうまく役にハマっている印象です。

「そうですね。一方で、春日局役の斉藤由貴さんや桂昌院役の竜雷太さんなど、NHKのさまざまな時代劇でお世話になっていて、心から信頼できる方にもたくさんお越しいただいています。そのことが『大奥』の世界に、ある種のリアリティーと心情の普遍性の根拠を与えてくださっているのかなと思います」

──初回に水野祐之進(中島裕翔)が身につけた流水紋の着物など、毎回衣装にも注目しています。

「流水紋というのは、幕末まで通して非常に大きなモチーフとなっていきます。第5話の中で万里小路有功(福士蒼汰)が身にまとって出てきましたが、着物は将軍の気持ちが込められている要素でもあるので、今後も大事にお見せしたいと思っています」

──ほかに、衣装や美術でこだわっている点はありますか?

「将軍たちの衣装は、直感的にキャラクターを感じていただけるように、その人を象徴する色合いなどを綿密に打ち合わせています」

──登場人物も多いので大変な部分もたくさんあるのではないでしょうか?

「江戸時代すべてを描くので、着物もかつらも変わって大変な部分はあります。ただ、NHKには大河ドラマがあるおかげで、何度もスタジオに江戸城を建てたスタッフや、ありとあらゆる時代の衣装を経験しているつわものたちがそろっています。そのすべての知恵や経験値を結集して作っています」

「スケールの大きな希望の物語と感じていただければ」原作が完結した今だからこそ、映像化して伝えたいメッセージ──「大奥」プロデューサーインタビュー
「スケールの大きな希望の物語と感じていただければ」原作が完結した今だからこそ、映像化して伝えたいメッセージ──「大奥」プロデューサーインタビュー

──以前ドラマ化を企画された時と、原作が完結を迎えた今では物語の受け取り方も変化しましたか?

「16年前に映像化を考えた時は、男女の役割を逆転することで、男と女の役割を見つめ直すという部分を強く感じました。作品が完結した今は、血縁によって何かを維持することにとらわれてしまう悲しさや不自由さを感じています」

──では、今あらためて映像化をする上で視聴者の方に届けたいメッセージをお願いします。

「世の中は血縁だけではない絆で人と人がつながっていますよね。原作でも、春日局以降“戦乱の世にしない”という思いを受け継ぎ、江戸無血開城に導いて江戸を救ったのは徳川家とはゆかりのない人々です。自分が何かを犠牲にしてでも守ろうとした人たちを見た時に、私はとても感動しましたし、そういった思いが明治の時代へ受け継がれ、令和の私たちにも脈々と伝わってきていることも確信できました。そのことが、この物語が最後に掲示する大きな希望になっています。私たち自身も、何かできることがあるなら命を燃やしたいと思わせてくれるような、スケールの大きな希望の物語と感じていただければと思います」

──ありがとうございました!

2月28日放送・第8話あらすじ

「スケールの大きな希望の物語と感じていただければ」原作が完結した今だからこそ、映像化して伝えたいメッセージ──「大奥」プロデューサーインタビュー

 時は8代・徳川吉宗の時代へ。吉宗は加納久通(貫地谷しほり)から村瀬の死を知らされる。それと同時に、吉宗が読んでいた「没日録」の続きが紛失。吉宗は村瀬の死と「没日録」の紛失に何か関係があるかもしれないと怪しむ。その一方で、吉宗は苦しむ民のために「上米の制」や「目安箱」などさまざまな政策を打ち出し、いよいよ“赤面疱瘡”の解決へ動き出していくのであった。

【番組情報】

ドラマ10「大奥」
NHK総合
火曜 午後10:00~10:45

NHK担当・M



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