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3代将軍・実朝を演じる柿澤勇人が絶賛! 和田義盛のラストは「壮絶ですごい回」2022/10/22

 第39回(10月16日放送)の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)では、御家人らが謀反を起こさないように北条義時(小栗旬)が政の仕組みを改めたことによって、三浦義村(山本耕史)や和田義盛(横田栄司)らの不満が少しずつ蓄積されていく様子が描かれていました。しかも義時は鎌倉殿である源実朝(柿澤勇人)に対してもいんぎん無礼な態度を示す場面も描かれ、伊豆にいた青年時代の面影は今や影も形もありません。そんな中、実朝が北条泰時(坂口健太郎)に送った和歌が恋文であることも明らかになりましたね。それぞれの思いが静かにくすぶり続けていますが、今後どうなっていくのでしょうか。

 今回は、義時に実権を握られ、さらに泰時への思いも判明した若き将軍・実朝を演じる柿澤勇人さんから、実朝の人物像はもちろん、義時を演じる小栗さん、義盛を演じる横田さん、そして歩き巫女・おばばを演じた大竹しのぶさんとのエピソードなどを伺いました!

――源実朝を演じることになった時の気持ちを聞かせてください。

「実朝という人物については、3代将軍で源氏として最後の鎌倉殿であることと、鶴岡八幡宮のイチョウ並木の階段で公暁(寛一郎)にやられるという情報しか知らなかったんです。でも、三谷(幸喜)さんが実朝にすごく思い入れがあり、世間にあまり認知されてない本当の実朝を描きたいとおっしゃっていたので、プレッシャーを感じながらも、たくさん資料や台本を読み込んで現場で戦いました」

 ――資料をたくさん読んだということですが、どんな資料を読みましたか?

「実朝に関して最新の研究をされていて、時代考証にも入っておられる坂井孝一先生の本が、今回の実朝像に近い書かれ方をされているので、それはかなり読み込みました。それと太宰治の『右大臣実朝』。これは、実朝が亡くなった後、架空の家来が実朝について語るフィクションではあるんですが、文弱で政にネガティブではなく、いかにいい将軍だったかが描かれているので、それを参考にしていました。ほかにもマネジャーがたまたま持っていた実朝の和歌集も読み込みましたね」

――実朝の和歌を読んで感じたことを教えてください。

 「和歌を詠むシーンはこれからも出てくるので、そこは楽しみにしてもらいたいなと思います。和歌に関しては、本当に無知で、実朝の役をやる時に勉強しました。実朝は船をこいでいる漁師を見て、この平和がずっと続けばいいなとか、庭先の梅を見て、僕がいなくなっても忘れないでねなど、なんてことのない日常の風景や物、人から発想を経て、自分の感情や世の中の状態を結び付けるのが非常にうまい人だと、芸術指導の先生から聞きました。実朝は派手じゃないんですよね。素朴でピュア。父・頼朝(大泉洋)や兄・頼家(金子大地)と同じ血を引いていると思えないぐらい純朴で。それは和歌からも感じますし、実朝の性格と和歌はすごくリンクしているんだろうなと思っています」

――大河ドラマは「平清盛」(2012年)、「軍師官兵衛」(14年)に続いて3度目の出演ですが、大河ならではの特別な思いはありますか?

「大河ドラマは歴史がありますし、僕が小さい頃、祖父が毎週見ていた身近なドラマで、時代設定や所作も含め、クオリティーの高い環境で撮影しているイメージがあります。役者の方々もすごい方ばかりですし…。だから、今回の『鎌倉殿』もそうですが、『清盛』や『官兵衛』の時も、時代劇ならではのセリフに『かんじゃいけない』『失敗しちゃいけない』『NGは極力出さない方がいい』など、勝手に思っていたんです。でも今回それが覆って。失敗を気にせずに、とにかくトライさせてくれて、受け入れてくれる監督やカメラマンさんがいて、すべてのスタッフの方々が嫌な顔一つせず、芝居に一緒に向き合ってくれるんです。『清盛』や『官兵衛』の時もそうだったとは思うんですが、それに気付ける心の余裕は当時の僕にはありませんでした。今作は小栗くんをはじめ、ほかのキャストの方々も無理のない範囲で盛り上げてくれて、それが決して慣れ合いにはなっていないところが、なんかすごいなと。そこに至るまでの環境がとてもあったかいんです」

 ――実権を握る義時は、実朝にとってどういう存在だと思われますか?

「実朝が鎌倉殿になった時点では、まだ若くて政を回すことはできず、無力であることが分かっていたからこそ、義時や母の政子(小池栄子)に任せていたんです。でも、回を追うごとに義時のやっていることと自分が思い描いていたことが乖離(かいり)していって、乱が起き、人が死んでいって…。最初は義時を信用していたのでしょうが、義時のパワーを超える力を持って政をしないと、どんどん悪い方向に向かっていくと考えたんじゃないかと。敵意とは違うんですが、かなり危ない存在であることを意識していきます。ただ、実朝は鎌倉から日本という国を豊かにしていこうと考えるくらい賢い人間なので、力でねじ伏せたり、復讐したりすることはないと思います」

――義時を演じる小栗さんはどんな印象ですか?

「小栗さんは座長で、長い期間、主役として演じなければいけないし、義時もかなり難しい役なので自分のことで手いっぱいになるはずなのに、常に視野をすごく広く持って、スタッフの方やキャストの人たちにも話しかけてくれます。大河ドラマの現場と思えないぐらいアットホームで、すごくありがたいです。今はマスクをしながらリハーサルをしなきゃいけないのですが、小栗さんは毎日マスクに文字を書いていて、僕もクランクインした時は、『実朝ようこそ』と書いてくれたんです。やはり僕もうれしかったですし、みんながハッピーになるやり方をされるので、非常に頼もしく、勉強にも刺激にもなる存在でした」

――実朝を演じるにあたって、小栗さんから何かアドバイスされたことはありますか?

 「大河ドラマはリハーサル日を設けていて、大事なシーンは事前に動きも含めて確認できるんです。時代劇なので所作が必要不可欠なのですが、そうすると所作に捉われて、心が動きにくくなったりすることもあるんですよね。僕は基本的に監督に言われた通りに動いているんですが、僕の表情を察知して、『カッキー、ちょっと1回言われたことを全部なくしてみようよ。やりたいことやってみなよ』と言ってくださって。小栗さんは、役者が自ら考えたプランで動くことが魅力的で豊かなシーンになることも分かってくれていて、それを自分だけじゃなく、後輩や周りの監督にも提案してくれるのはすごくありがたかったです」

――そんな小栗さんとの撮影で印象に残っていることはありますか?

「第34回(9月4日放送)で、実朝が『婚姻はどうなった』と実朝自身のことを聞いているのに、義時が自分の結婚話をするシーンです。夜のシーンなので、義時が部屋の中に火をつけていくのですが、義時が持っている大元の火がなかなか消えなくて、とっさに実朝がいつも持っている扇子で僕が火を消したんです。あれは本番のアドリブというか、とっさにやっちゃったんですが、そのまま監督も使ってくださって、楽しい瞬間でした」

――第39回では、実朝が泰時に恋文を送ったことで、思いを寄せていることが明らかになりました。実朝のパーソナルな部分について、どんなふうに演技に落とし込んでいこうと思われたのでしょうか?

 「第35回(9月11日放送)で、“おばば”という大竹しのぶさんが演じた歩き巫女に一発で見抜かれるシーンがあって。具体的に悩みを見抜かれるわけではないんですけど、実朝がなぜ悩んでいるのかが分かってくるんです。実朝の悩みは、どの時代もあるし普遍的なテーマな気がするので、それに対して勉強するということはなかったですね」

――そんな歩き巫女・おばばとのシーンは大きな反響がありましたね。

「しのぶさんとは、以前、ミュージカル『スウィニー・トッド』で初めて共演して、それ以降、共演はないんですが、舞台が終わってからもすごくかわいがっていただいて。芝居や舞台のことなど、たくさん相談に乗ってもらっていたので、僕のことはなんとなく分かっているんじゃないかな。しのぶさんが歩き巫女として出演されるのは本当に知らなかったんです。台本をいただいた時も、歩き巫女のところだけ空白になっていたので、『誰なんだろうね』なんて言っていたら、しのぶさんだったので、とても驚きました。しかも、しのぶさんの芝居に対する集中力と役に対する向き合い方に対する憧れがあり、今回の大河にかけなきゃいけないという思いから、『カッキー、またどこかで共演できたらいいね』と、しのぶさんが書いてくださったメッセージ付きのお礼状を、僕が読んでいる『右大臣実朝』の本のブックマークにしていたんです。そんなタイミングで、実朝の悩みを一発で当てて、そして、実朝の運命であろうことも当てちゃう役だったことに、本当にびっくりしました」

――歩き巫女に「雪の日は出歩くな」と言われていましたが、今、柿澤さんが実朝に言ってあげたいことはありますか?

「うーん。難しいな。『義時には気をつけろ』ですね(笑)。『義時のことをもっと監視しなさい』とも言いたいですね」

――太宰治の「右大臣実朝」に書かれていた“いい将軍”という部分を参考にされたとのことですが、実朝のどんなところがすごいと思われましたか?

「鎌倉で力を持っている人たちは、自分たちの家や土地を守ろうとしたり、大きくしようとして、自分のところさえよければいい感じがあるから、いがみ合う。それは人間として当然なのかもしれないけど、実朝はそういうことも分かっていながら、後鳥羽上皇(尾上松也)がいる京側と手を組むことによって、もっと豊かになるんじゃないかと考えていて。自分のことや源氏のことはもちろん大事なんですが、そこを差し置いて、もっと先のことを考えているんです。史実で言うと、勝手に宋へ行くための船を作って失敗して、本当に頭の悪い将軍で何を考えているか分からないといわれているんですが、そんなことを気まぐれでやるわけがないし、何か絶対に理由があると。みんな自分たちのことしか考えていないのに、実朝は本当に日本や鎌倉のことをちゃんとふかんして客観的に捉えて、自分に力がないことも謙虚に受け止めて、周りの力もちゃんと借りなきゃいけないと考えていたところがすごいところだと思っています」

――もし実朝が宋へ渡っていたら、どうなっていたと思いますか?

「歴史は変わっていたと思います。実朝は中国にすごく固執していたんですよね。多分中国語とかもすごく勉強して分かっていたただろうし。大河ドラマでもそうですし、いろんな研究を見て、本当にこの人がトップに立って政治が行われていったら、すごくいい時代になったんじゃないかなと思います。中国との関係がどうなったかは分からないですけど、実朝は賢いので、いろいろ考え悩みながらも政治をやっていたんじゃないでしょうか」

――そして、実朝にとってキーパーソンの1人に和田義盛がいますが、演じている横田さんとのエピソードを教えてください。

「栄司さんとは、舞台を何本か一緒にやらせてもらって、1発目が蜷川幸雄さん亡き後のシェイクスピアシリーズで、『アテネのタイモン』という作品をやりました。その後は、それこそ三谷さんの『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』という作品で、僕がシャーロック・ホームズで、彼がマイクロフト・ホームズという兄弟の役をやりました。舞台が終わった後も何度もご飯に行った仲で、本当に良き兄ちゃんで大好きです。今回、栄司さんが演じる義盛と実朝の関係性は、シェイクスピアの『ヘンリー四世』の中のハル王子とフォルスタッフの関係を三谷さんが意識されていて。若くして王子になった真面目なハル王子に、フォルスタッフという大酒飲みが『堅いことは考えないで、とにかく飲んで遊ぼうぜ』とちょっと悪いことを教える、若者に知らない世界を見せてやるシーンがあるので、『ああ、なるほど』とすぐふに落ちました。実朝は鎌倉殿として政をして君臨しなきゃいけないけど、自分には力がなく、パーソナルな部分でも常に悩んでいて、とにかくずっと下を向いている時に、やることや言っていることは荒いけれど、純粋なところがあって誰かを陥れようなどと考えていない義盛に出会って共鳴したんじゃないかと思っています」

――今後、和田合戦が勃発し、慕っている義盛と複雑な関係になっていきますが、それについてどう思われますか?

「難しいですね。実朝がすごく慕っていて、関係も良好で、義盛が実朝のことを武衛と呼ぼうとして、武衛じゃないんだけどなっていう(笑)。そのシーンが布石となって、発展するようなところもあるんです。だから、そこを楽しみにしてもらいたいです。仲良くなった義盛を失わなきゃいけないのは、ものすごく悲しいですが、横田栄司さんの最後は本当に役者として、あっぱれで格好よかった。それが何回になるのかは言えないけど、役者魂を見せつけられて。それは実朝としても受け取ったんですが、相当いいんです。壮絶ですごい回になったと思います」

――ありがとうございました!

【番組情報】

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K
日曜 午後6:00~6:45

NHK担当/K・H ヘア&メーク/松田蓉子 スタイリスト/杉浦優



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