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悲劇の2代目鎌倉殿・頼家を演じた金子大地「小栗さんの優しさに救われた」2022/08/28

 第33回(8月28日放送)の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)では、北条義時(小栗旬)から命を受けた善児(梶原善)とトウ(山本千尋)により、源頼家(金子大地)が暗殺されてしまいました。衝撃のラストに息をのんだ方も多いのではないでしょうか。

 病で伏せっている間に自分を育ててくれた比企一族を義時らに滅ぼされた挙句、自らも命を奪われた悲劇の将軍・頼家を演じた金子さんに、大河ドラマ初出演の思いや頼家への思い、撮影を振り返ってのエピソードなどを伺いました!

――今作の頼家はちょっと幼稚な言動もありましたが、金子さん自身はどういうふうに感じていましたか?

「この役を演じさせていただけるだけでうれしかったですし、全力で挑もうという気持ちが強かったです。頼家は確かに未熟な部分もありましたが、頼家なりに一生懸命頑張る姿や、不安や孤独を脚本の三谷(幸喜)さんが描いてくださったので、ただ暴君だったというわけではない頼家像ができたかなと。台本にもそう書かれていたので、すごくうれしかったです。 とても大好きな役です」

――ご自身と共通する部分はありましたか?

「共通点はあまりなかったですね。頼家は誰も頼りませんが、僕は頼れるところは周りの人たちに頼ります。頼家はそこから逃げないところもあるからこそ、ある意味、肝が座っていて覚悟がある人間だったのではないかなと。僕は絶対にそんなことはできないので、頼家より弱いと思います」

――頼家を演じて印象に残っているセリフやシーンを教えてください。

「1人で蹴鞠(けまり)の練習をするシーンは、頼家を知るきっかけになったので、印象に残っています。頼家は大勢の大人にいろんな言葉を聞かされて、誰を信用して頼ったらいいか分からなくてパンクしそうな気持ちを、蹴鞠で紛らわせようとしていたのかなと。また、父の頼朝(大泉洋)に蹴鞠を教わったことがないという寂しさも、心の中にあったんじゃないかと想像していました」

――寂しさを抱えながらも父・頼朝を尊敬していた頼家を演じるにあたって、頼朝に似せたところはあったのでしょうか?

「伝わっているかどうかは分からないのですが、時房(瀬戸康史)の蹴鞠が上手で褒めるシーンは、頼朝にあったユーモアのようなものを取り入れていました。頼朝と似て、人に好かれるところがあったんじゃないかと考えていましたね」

――父を演じ、先にクランクアップされた大泉さんから連絡はありましたか? また、大泉さんに演技の相談をするなどのやりとりはあったのでしょうか?

「第27回(7月17日放送)か第28回(7月24日放送)が終わった頃にお会いする機会があって、その時に大泉さんから『幽霊として出て、いろんなことを助言したい』と言われました(笑)。僕は『ちょっと死ぬのが早すぎます』と大泉さんに言いました(笑)。撮影についての相談は特にしていません。頼家も頼朝に相談できなかったので、なるべく1人で考えましたね」

――金子さんご自身はどのような頼家像を作れたと思われますか?

「18歳で征夷大将軍になるというのは、ドラマだと流れで見ることができますが、実際の頼家には相当な重圧があって、不安だったというところが垣間見えたらいいなと思って演じました。頼家は生まれた時から鎌倉殿になることは決まっていたので、頑張ろう、父を超えよう、鎌倉を良くしていこうという気持ちはものすごく強かったと思うんですが、あまりにも早い段階で鎌倉殿になってしまって。誰もが『あいつでいいのか』と思っていたと思うのですが、実は頼家自身が一番それを感じていたんじゃないかなと。しかも、心も未熟で信用もなく、頼られることもない、そして、自分のやりたいことに対して『それは止めた方がいい』と否定されるから反発したくなって…。何をやっても源頼朝という圧倒的なカリスマと比べられるその重みを感じていたからこそ、父と同じことをするのではなく、違うことをしようと、どこか開き直った部分もあったと思います。でも、1人になった時には複雑な気持ちを抱えて、いろんなことを考えていたとも思っています」

――各回を振り返ると、第28回の二代目征夷大将軍として上座に座り、御家人13人を従えるシーンは、鎌倉殿の立場を象徴する場面でした。

「そうそうたる皆さんの圧がすごいので、本当に怖かったです(笑)。でも、絶対に弱みを見せないでやってやるんだという気持ちがありました。“ここで弱みを見せたら負けだ”と思いながらすごく背伸びした状態で撮影に臨んでいました。頼家は、生まれながらにしての立場もあるから、そういうふうには思わなかったかもしれませんが、頼朝という偉大な父と一緒に鎌倉を作り上げた世代の御家人たちとの対峙(たいじ)は緊張したと思います。頼家はそれなりに覚悟がないと言えない言葉を結構言い切るなと思っていて、この言い切るということが、どれだけすごいことなのかを実感しました。とても肝が座っていると思います」

――また、第29回(7月31日放送)の頼家が頼時(坂口健太郎)に泰時と改名を命じる場面で、頼家の振り向きざまの首の角度がSNSで話題になっていましたよね。

「あれは意外と全然できなくて、振り向きざま、すごくにらんでくれと監督に言われたのですが、なかなかOKが出なかったんです。僕の中ではとても難しいシーンで、どうやったらいいんだろうと悩んでいたら、小栗さんが『こうやったらいいんじゃない』とアドバイスしてくださって。そうやってできたシーンでした(笑)」

――何度も撮り直したんですね!

「もうちょっと怖くやってほしい、もうちょっと気持ち悪くやってくださいと言われて、意外と苦戦したシーンではありました」

――反響はご覧になりましたか?

「見ました。あの振り向き方のことを、“シャフ度”ということを初めて知りました。アニメでそういうのがあったと聞いて。まさかあそこまで話題になるとは思ってなかったので、びっくりしました」

――第32回(8月21日放送)では、頼家が目覚めると、本来そばにいてくれるはずの妻や子ども、比企一族が討伐されていました。どんな感情で演じられましたか?

「絶望と怒り、そして悲しみなどいろんな感情が入り混じって、頭が真っ白になるような感じでした。言葉ではとても表しがたい感情がこみ上げていたであろう頼家の気持ちに寄り添って演じました」

――いろんな人たちに裏切られて、頼家は誰のせいで自分はこうなったと感じていたと思われますか?

「怒りや裏切られたという気持ちが強いのは、信頼しようと思っていたから。それが強ければ強いほど裏切られた時の怒りや絶望が強いと思います。いつも支えてくれていた義時のことを父までとはいわないけど、心のお兄ちゃんのように思っていたので、義時、そして北条家に対して怒りがあったんだと思います」

――そんな義時を演じる小栗さんと共演してみて、刺激を受けたところはありましたか?

「小栗さんの存在は、僕の中で大きかったです。リハーサルの時も全然できなかったと、どこか自信をなくしていたんですが、いつだったか、小栗さんがご飯に誘ってくださって。今思えば、自信がなさそうにやっているのが小栗さんに伝わったのか、そうやって誘ってくださって、とてもすてきだなと思いました。その時に『自信を持って自分の好きなようにやればいいし、撮影で撮ったシーンに満足ができなくて言いづらかったら言ってくれれば、“もう1回今のカットやりませんか”って俺が言うから』と。その優しさがうれしくて…。そんなことを言うって、すごいですよね。『俺が嫌われ者になってもいいから、大地が満足できるようにやればいいよ』と。そこからちょっと吹っ切れて、義時と2人の芝居もぶつかっていこうと思いました。あの時の小栗さんの優しさにすごく救われました。芝居中も『大地、このセリフ、俺はどう言えば言いやすい?』と、僕のやりやすさを優先して一緒になって考えてくださった方なので、小栗さんの存在がなければ演じられなかった部分が大きかったです。忙しいのに、僕に時間を割いて話を聞いてくださるところも格好よかったです」

――第32回では、疑心暗鬼になっている頼家が、見舞いに訪れた母・政子(小池栄子)に向かって激高するシーンも衝撃的でした。

「母上とのシーンは実はそんなになくて、あそこでやっとちゃんとぶつかったんです。そういうとても大事なシーンだったので、相当心を削られましたね。怒りや憎しみ、絶望だけでは表現できない、もっと重い悲しみが頼家を襲い、これまでたまっていたものが爆発したシーンだったので、結構苦しかったです」

――その政子を演じた、小池栄子さんと共演した印象はいかがですか?

「頼家と政子には距離があったのではないかと思います。頼家は政子にもっと弱音を吐きたかったけど、そんなことは言えなくて。たくましい自分の姿を母上に見せたいという気持ちもありつつ、一方で母は北条の人だという複雑な気持ちもあって。 なので、小池さんとのシーンは毎回緊張していました」

――現場での小池さんとの距離感はどんな感じだったのでしょうか?

「普段の撮影時は普通に話していましたが、第32回の頼家が感情を爆発させるシーンの時は、あまり会話しなかったんです。あまり会話をしたくなかったというか。なので、現場でも少し距離がありました。終わってからは、より話すようになりました。小池さん自身もあのシーンはつらいシーンだったと思うし、僕自身もつらいシーンだったので。でも、母としての存在感やリアルさは感じていました。それは小池さんの愛がしっかりあって、僕に伝わっていたからだと思います。少し照れくさいんですが、本当に母のように思っていました」

――頼家の壮絶なラストシーンについてはいかがでしたか?

「もう何も思い残すことがないくらい三谷さんが描いてくださったので、それをしっかり受け止めて、本当に悔いなく終われました。頼家にはつらいことばかり待ち受けていて、毎回台本をいただくたびに気持ちが沈んでいたので、ちょっとした解放感はありました。最後のシーンは『まさか』と驚きましたね」

――毎回、放送後に話題になりますが、頼家の反響で印象に残っているものはありますか。

「中には『頼家ってヤバいな』という意見もありましたが、『頼家が切なくかわいそう』という見方で見てくださっている人もいたりして。それは頼家の苦悩が伝わっているように感じてうれしかったです」

――小さな掛け違いがいろんな悲劇を生んでいきましたが、金子さんご自身はどのように見ていらっしゃいましたか。

「頼家は政子と頼朝の息子だけあって、頭も切れるし武術の才能もあったと聞いています。『頼家対御家人』になったところがよくなかったのか。または、もっといろんな人を信じて、人に弱みを見せられるところがあったら、うまくいったのかもしれませんが、あの時代でそれをやることの難しさもあったのかなと。ちょっとしたことであんなふうになってしまいましたが、本当はすごくうまくいった道もあったんじゃないかと思います」

――大河ドラマ初出演で頼家を演じたことは、どんな経験になりましたか?

「演じている時は常に自信がなかったです。リハーサルもすごく不安で、本番もずっと『これでいいのかな』と思いながらやっていました。でも、初大河でこの役を演じて、頼家に感情移入ができたことはかけがえのない経験になりました。それに、作品を作る上での一体感や座長の小栗さんのすごさも感じられましたし、キャストやスタッフ、監督の皆さんのおかげで演じられました。熱量がある作品に入れたことが一番の幸せで、みんなの力で作品がこんなに良くなるんだということをあらためて感じられたので、今後はどんな作品でも熱量を持って臨みたいと感じました」

――常に自信がなかったということが意外でした。

「ずっとこれでいいのかなという気持ちは抱えていました。放送を見ていても思います。でも、それが頼家とリンクしているところがあったので、今の僕の心情をそのまま役にのっけようという気持ちもありました」

――最後にクランクアップした時の気持ちと、これからも続いて演じられるキャストの皆さんに一言お願いします!

「最後はあっという間でした。僕の役目はここで終わりましたが、『鎌倉殿』はまだまだ続きますし、最後まで皆さんを見届けたい気持ちが強いです。しっかり最後まで見届けます。本当に感謝しかありません」

――ありがとうございました! 

【番組情報】

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K
日曜 午後6:00~6:45

NHK担当/K・H



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