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「初瀬が認めてくれた」「森下が相方で良かった」。ななまがりの分岐点【ロングインタビュー後編】2022/03/09

「初瀬が認めてくれた」「森下が相方で良かった」。ななまがりの分岐点【ロングインタビュー後編】

 4月9日、10日に、2日間で4公演の単独新ネタライブ「ななまつり 二〇二二」を開催するななまがり。インタビュー後編では、森下直人さん、初瀬悠太さんのお二人に、「キングオブコント」に懸ける思いや、ターニングポイントとなったメディア出演について語ってもらった。(前編はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1406195/

「初瀬が認めてくれた」

「初瀬が認めてくれた」「森下が相方で良かった」。ななまがりの分岐点【ロングインタビュー後編】

――お二人は2016年に「キングオブコント」で決勝に進出され、17年から20年は4年連続で準決勝まで勝ち進むという結果を残されています。結果だけを拝見すると「あと一歩」ともどかしい思いが続いているのかなと感じたのですが、お二人としてはいかがでしょうか。

初瀬 「結果だけ見たら落ちちゃってるし、決勝にはいけてない年が続いてるんですけど、自分たちとしては『やることはすべてやったな』と。もちろん負けた時は悔しいんですけど、あとは周りとの兼ね合いであったり、審査員の好みなのかなって思っています」

森下 「何かに文句があるとかじゃなくて、『たまたま今じゃなかったんか』ってだけの話やなって」

初瀬 「運命なんかなって。神の所業というか」

森下 「ウケたけど準決勝で負けた年があったんですけど、その時にもし決勝いけてて、それでもし優勝できてても、たぶん売れることはなかったと思います。そうなると『ネタは面白いけど、1回ダメだった人』ってハンデがつくし、そこから挽回するのって難しいじゃないですか。そう考えると、今まで負け続けてきたことにマイナスな感情はないですね。負けた瞬間は悔しかったし、自分の中で『なんでやねん、なんでこれで落ちんねん』って割り切れなかった年も、結局翌年になったら『今はこれで良かったな』って」

初瀬 「決勝にいけない年が続いてはいますけど、最終的な目標は『優勝』なので。逆に決勝常連になったらなったで、そのつらさはあると思うんです」

森下 「優勝はしにくくなると思います。空気階段は3年連続で決勝に進出して去年優勝したけど、だんだん難易度は高くなってたと思うし。だから僕らとしては、まだ1回しか決勝いってないっていうのはアドバンテージやと思ってます」

初瀬 「とはいえ、今年は優勝、したいです………!」

森下 「決勝いくからには優勝したいですね。もう売れる準備もできてることやし…(苦笑)」

初瀬 「おぉ、できてるかぁ…。心強いなぁ…(笑)」

森下 「できてます!!」

「初瀬が認めてくれた」「森下が相方で良かった」。ななまがりの分岐点【ロングインタビュー後編】

――「売れる準備ができていない」というところから「売れる準備ができた」と手応えを感じるようになるまで、ターニングポイントだったなと感じる出来事はありますか?

初瀬 「僕は完全に、千鳥さんがMCの『チャンスの時間』(Abema)やと思ってます。『オープニング長回し選手権』っていう、ニセ特番のオープニング収録の長さで競うというドッキリ企画に出させてもらったんですけど、ずっと何かをやらなあかんっていう状況に必死に食らいついたんです。持ちネタやギャグで約1時間をひたすらつないで、とにかく死に物狂いのロケやったんですけど、いざスタジオ収録に行ったら千鳥さんが『むっちゃおもろいなぁ』ってえらい笑ってくださって。そこが普段の平場の原点になってる気がします」

森下 「正直言うと、それまでコンビの関係がちょっとギクシャクしてたところがあったんです。ネタとかは僕ら的にも順調やったんですけど、平場とかトークとか、それこそ“売れる準備”の部分がお互いできてないのが分かってたんで、『どうすんねん』って。僕がやってる『架空芸能人ものまね』とかも、僕が自分の好きなことをやりたくて勝手にやったりしてたんですけど、ウケる日もあるけどスベる日も結構あるって感じで。初瀬はスベってるところも全部見てるので、僕が『コンビで2人でやろう』って言っても、不安がってたんですよね。『チャンスの時間』に出る前は、2人で出る時に僕がやりたいって言っても『ちょっとあれは…』『やっぱり違うのやろう』って却下されることが多かったんです。でも『チャンスの時間』は、そんなこと言うてられへんかったもんな」

初瀬 「そうやなー」

森下 「言うてられへんから、『何でもいいからとにかくやるしかない』って。それでいろいろやってたら、その反応が良かったのもあって、初瀬が『このニュアンスで2人でやっていこう』って言ってくれたんです。その時、僕が好きでやってることを初瀬が認めてくれた感じがしたんですよね。僕のことを面白いとは思ってくれてたんでしょうけど、それをやって、0か100かになっちゃうのを初瀬が怖がってたところがあったんですよ。でも『チャンスの時間』でスイッチが入ったというか、なんなら初瀬の方から『架空芸能人ものまねやったら?』とか言ってくれるようになったんです。それがうれしくて。僕も『好きなことできたとしても、テレビでスベるんはまずいな』って怖がってやらんかった頃もあったんですけど、『チャンスの時間』以降は伸び伸びやれるようになりましたね」

初瀬 「何かがちょっと変わったよな」

――森下さんの思いを受けて、初瀬さんとしてはいかがですか?

初瀬 「森下が言ってた通りです。森下の変なところは持ち味なんですけど、変すぎるとウケないって思ってて。でも『変すぎても笑ってもらえるんや』『そこまでやり切ったら笑ってもらえるんや』って気付けたのが『チャンスの時間』でした。ななまがりってこういうやつらっていう名刺にもなったし、完全にターニングポイントだったと思います」

森下 「ちょうど『チャンスの時間』と同時期に僕が『R-1ぐらんぷり』で決勝いったりもして、19、20年はジャブが効いてきた実感がありました」

初瀬 「そうやな。『水曜日のダウンタウン』の『新元号当てるまで脱出できない生活』もありましたし」

森下 「前よりは知名度も上がってきて、僕の『リトル森下』とか、『自分の家でご飯が食べられない』という部分をテレビで取り上げてくれるようになったんです。少しずつですけど、テレビの経験も増やすことができて。そこから上向いてきて、舞台の数も増えていきましたね」

初瀬 「でも、ホンマに徐々にです。たぶんもう、僕らは徐々にしか無理なんやなって思います。何かでバーンっていくような経験も、劇場所属とかでさえ経験したことがないんですよ。一段ずつ階段を上がるしかできないので、“売れる”という最上級の階段のてっぺんを目指して、一段ずつ上っている最中です」

森下 「うん。それはね、本当に。僕らの強みはネタだと思うので、お客さんに楽しんでもらうためにいろいろ頑張って、まずはこの『ななまつり』の4公演を盛り上げたいと思ってます」

初瀬 「はい。この催しを成功させたいです!」

森下 「コントはもちろんなんですけど、単独では漫才もやります。昔はコント一本で、漫才は『M-1グランプリ』だけ出るって感じやったんですけど、今は漫才も力入れてやっています。コントも漫才も見れるので、楽しみにしていてください!」

「森下が相方で良かった」

「初瀬が認めてくれた」「森下が相方で良かった」。ななまがりの分岐点【ロングインタビュー後編】

――最後に、森下さんだけでなく、初瀬さんもさまざまな“ヤバい”エピソードが語られていますが…。

森下 「僕だけじゃねえぞ~」

初瀬 「あはははは!(笑)」

――森下さんの「自分の家でご飯が食べられない」などは有名なエピソードだと思うので、相方だからこそ知る、お互いの“ヤバい”部分があれば教えていただきたいです。

森下 「いい質問ですね」

初瀬 「確かに! 森下のそういうエピソードを話す機会は多いんですけど、これは新鮮です!」

森下 「初瀬は、ずっとちっちゃいパンを食べてます」

初瀬 「おー、なるほどなるほど(笑)」

森下 「5個入りのちっちゃいパンあるじゃないですか? あれをずーっと食べてるんです」

初瀬 「僕ね、おなかがちょっっっとでもすくと、力が出なくなっちゃうんですよ」

――アンパンマンを思い浮かべてしまいました(笑)。

初瀬 「まさに、アンパンマンの顔が水で濡らされた状態ですね(笑)。5個入りの100円のパン、あれ最強です。舞台の合間、ネタが終わるたびにそれを1個ずつ食べてます」

森下 「それを後輩のネルソンズに『またちっちゃいパン食べてるじゃないですか!』ってイジられてるんですけど、イジられすぎて、初瀬はその日の出番に誰が出るのかを調べて、ネルソンズが一緒に出る日はちっちゃいパンを持って行かないんです」

初瀬 「あまりに言われすぎて、なんかもう嫌になってきて。また言われても『ええやんけ!』って思うんですけど、『また言われるんやろうなー』って考えると、ちっちゃいパン買わなくなっちゃいました」

森下 「たまに味を変えたいのか、ちっちゃいパンじゃない日があるんですけど、『1本満足バー』を2本食べてます」

初瀬 「1本満足は1本じゃ足りないですね………」

森下 「2本満足になってます。常に口に何か入ってるんですよ。俺なら絶対腹減ってから飯食いたいけどなぁ」

初瀬 「おなかがちょっとでもすくのが嫌なんですよ。明らかに腹減った状態で舞台出たことが何回かあるんですけど、全然ダメでした! 僕のパフォーマンスが!!」

森下 「本来消化にエネルギー使うから、空腹の方が集中力上がるはずなんやけどなぁ、人間は」

初瀬 「人によるんでしょうね。僕は、違います。森下はもういろいろヤバいエピソードがありすぎてね~。代表的なものに目がいきすぎて、細かいことが気にならなくなっちゃってるんです」

森下 「だからこそですよ」

初瀬 「だからこそか(笑)。なんやろなー、森下。そやな、意外と話長いところですかね」

森下 「ははは!(笑)」

初瀬 「ホンマ、ここまでなってきますよ(笑)。テレビとかで取り扱うことももちろんないんですけど、森下って普段は一見おとなしそうじゃないですか?」

――今日のインタビューでも、「森下さんってこんなにしゃべってくださるんだ!」って思ってました(笑)。

初瀬 「インタビューでも思いました!? 僕のターンでもしゃべってきましたよね!?」

森下 「我慢できなくなっちゃった(笑)」

初瀬 「変な話ですけど、森下って彼女とかも今までいたことないですし。前はしてましたけど、今はルームシェアしてるわけでもないので、ホンマに話し相手がいないと思うんですよ。自分に何があったかを言える人がたぶんいないから、楽屋でもずっとしゃべってますし。コロナ前ですけど、バンビーノの藤田(ユウキ)の家に森下が行って、夜中までずっとしゃべってたらしいんです。藤田も『この人めっちゃしゃべるな』って思ってたらしいんですけど、森下が『じゃあ、そろそろ帰るわー』ってかばん持って玄関先まで行ったところで、『それでさー』ってそこから2時間くらいしゃべり続けてたって聞きました。それからは藤田、『もう二度と家呼ばん』って(笑)」

森下 「2時間じゃないですね。夜の10時くらいに立ち上がって、結局朝5時までおったから」

初瀬 「えぇ!?」

森下 「立ったまましゃべってたら、途中で藤田が『なんで帰りそうで帰らないんですか!』って。そういう時、僕、そのノリをずっとやっちゃうんです。立ちながらわざとドア半分開けたりして、2、3時間しゃべりました。その日を境に、藤田が一切電話とってくれんくなった。無視されてます」

初瀬 「だから僕、森下が相方で良かったなって思ってますね。友達やったら、そんなん無理ですもん(笑)」

「初瀬が認めてくれた」「森下が相方で良かった」。ななまがりの分岐点【ロングインタビュー後編】
「初瀬が認めてくれた」「森下が相方で良かった」。ななまがりの分岐点【ロングインタビュー後編】
「初瀬が認めてくれた」「森下が相方で良かった」。ななまがりの分岐点【ロングインタビュー後編】
「初瀬が認めてくれた」「森下が相方で良かった」。ななまがりの分岐点【ロングインタビュー後編】

【プロフィール】

ななまがり
森下直人(1986年5月20日生まれ、神奈川県横浜市出身)と、初瀬悠太(1986年4月5日生まれ、香川県高松市出身)が大阪芸術大学の落語研究寄席の会で出会い、2008年11月に結成。14年より、活動拠点を大阪から東京に。「キングオブコント2016」ファイナリスト。「R-1ぐらんぷり2020」ファイナリスト(森下)。全国14局のラジオ局で放送される「芸人お試しラジオ『デドコロ』」のパーソナリティーを担当中。4月9日、10日の2日間、東京・北沢タウンホールにて、4公演の単独新ネタライブ「ななまつり 二〇二二」を開催予定。会場チケット・配信チケットともに発売中。

【イベント情報】

「ななまつり 二〇二二」

2022年4月8日(金)~10日(日)
北沢タウンホール(294席)

■ななまつり 二〇二二『前夜祭』
4月8日(金)開演午後8:00(60分)
無観客配信
FANYオンライン配信チケット777円
※見逃し視聴期間 ~4月10日午後8:00
※配信チケット販売期間 3月9日午前10:00~4月10日午後0:00

■ななまつり 二〇二二『ななまがり単独公演 -玄武-』
4月9日(土)開場午後2:30 開演午後3:00
会場観劇チケット4000円(税込・全席指定)
FANYオンライン配信チケット2000円(税込)
※見逃し視聴期間 ~4月11日午後3:00
※配信チケット販売期間 3月9日午前10:00~4月11日午後0:00
出演:ななまがり ゲスト:空気階段

■ななまつり 二〇二二『ななまがり単独公演 -青龍-』
4月9日(土)開場午後6:00 開演午後6:30
会場観劇チケット4000円(税込・全席指定)
FANYオンライン配信チケット2000円(税込)
※見逃し視聴期間 ~4月11日午後6:30
※配信チケット販売期間 3月9日午前10:00~4月11日午後0:00
出演:ななまがり ゲスト:もう中学生、ZAZY

■ななまつり 二〇二二『ななまがり単独公演 -朱雀-』
4月10日(日)開場午後1:00 開演午後1:30
会場観劇チケット4000円(税込・全席指定)
FANYオンライン配信チケット2000円(税込)
※見逃し視聴期間 ~4月12日午後1:30
※配信チケット販売期間 3月9日午前10:00~4月12日午後0:00
出演:ななまがり ゲスト:和牛

■ななまつり 二〇二二『ななまがり単独公演 -白虎-』
4月10日(日)開場午後4:30 開演午後5:00
会場観劇チケット4000円(税込・全席指定)
FANYオンライン配信チケット2000円(税込)
※見逃し視聴期間 ~4月12日午後5:00
※配信チケット販売期間 3月9日午前10:00~4月12日午後0:00
出演:ななまがり ゲスト:ミルクボーイ

★「玄武・青龍・朱雀・白虎」の4公演はすべて上演内容・演出が異なります。
★「玄武・青龍・朱雀・白虎」の4公演をすべて会場観劇いただいたお客さまには、キングオブペセ認定証として「宇宙ペセステッカー」をプレゼント。
★来場者さま限定割引配信チケットがございます。「玄武・青龍・朱雀・白虎」の会場観劇チケットご購入のお客さまは、観劇いただいた公演の配信チケットが1000円でご購入いただけます。詳細はご観劇当日会場にてご案内いたします。

■ななまつり 二〇二二『後夜祭』
4月10日(日)開演午後7:30(60分)
会場観劇はななまつりオリジナルグッズ「ギンモクッション」をご購入いただいたお客さま限定ご招待のみとなります。
FANYオンライン配信チケット777円
※見逃し視聴期間 ~4月12日午後7:30
※配信チケット販売期間 3月9日午前10:00~4月12日午後0:00
出演:ななまがり

■ななまつり 二〇二二『ななまがり単独公演 -玄武・青龍・朱雀・白虎- 配信通し券』
FANYオンライン配信チケット通し券7000円(税込)
※見逃し視聴期間 公演により視聴期間が異なります。各公演の見逃し視聴期間と同じ日時となります。
※配信チケット販売期間 ~4月11日午後0:00

★ななまつりオリジナルグッズ発売決定(販売価格は会場にて)
・ギンモ等身大クッション:これでいつでもギンモと一緒! 抱きかかえると不思議とイヤらしい気分に…。ご購入いただくと後夜祭の招待状もついてくる!
・ななまがり御朱印帳:ペセ御用達。ななまつり二〇二二から始まり、ななまがりの単独公演ごとにスタンプを48回分おせる御朱印帳!
・ななまつりポーチ:ななまつりポーチに入れたものには奇妙な神通力が宿る!?

取材・文・撮影/宮下毬菜



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