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医療に関するニュース、どう拾えば? Buzz Feed Japan Medical・岩永直子記者に聞く【後編】2022/12/31

 私たちが正しく判断するために、今、何をどう知るべきか――その極意を学ぶ連載「私のNEWSの拾い方」。月刊誌「スカパー!TVガイドBS+CS」で掲載中の人気連載を、TVガイドwebでも展開中。今回は、BuzzFeed Japan Medicalで専門家の声を分かりやすく届けてくれる記事を多数執筆している岩永直子記者にインタビュー。またも迎えた厳しい新型コロナウイルスとの冬に、今一度確認しておきたい、医療に関わるニュースとの付き合い方を聞いた(前編はこちら▶ https://www.tvguide.or.jp/column/column-1883052/ )。

POINT ◆詳しい情報を補完するメディアもチェックする

――30分や1時間のニュース番組の、ほんの1コーナーで伝えられるコロナ情報だけでは、実は十分な情報は得られないのではないでしょうか?

「メディアの側もそれを感じているのか、たとえば、ニュース画面に「詳しく知りたい人はこちら」というWEB記事へ誘導するQRコードを表示させるテレビ番組もあります。新聞の紙面にも、より詳しいWEB記事へ誘導している記事があります。また、私たちBuzzFeedのような、大手メディアとは立ち位置が少し違うメディアは、たとえば『子どものワクチン接種をどう考えればいいのか』という、意見のグラデーションがある話題を、専門家にロングインタビューしたりしています。

 どういう記事かというと『何が何でも子どももワクチンを打つべきだ』という小児科の先生もいらっしゃるけれども、そもそも子どもは重症化しにくいわけです。だから、重症化リスクを下げるために打つにこしたことはないけれども、本人の中でワクチンへの不安が強すぎると、その不安が副反応のような症状を引き起こすこともある。それならワクチンを無理に打たなくてもよい…という内容で、それを理由まで含めて説明しようとすると、どうしても長い文章になるわけです。テレビのコンパクトな情報だけで足りない場合もあるので、そうやって詳しい情報を補完するメディアを自らチェックしにいくことは重要です」

――「海外ではもうマスクを外して生活している」映像をニュースでよく見かけます。それを見ると「マスクをしている方が異常なのかも?」という気にさせられますが、このような事例はどう受け止めるべきですか?

「たとえばイギリスは真っ先にマスクを外した国の一つですが、それによって重症者がものすごく増え、死亡者も増えたことはそれほど報じられていなかったと思います。つまり彼らは『マスクを外すことにはリスクもつきまとう』という、そのリスクの部分も引き受けたうえで、マスクを外すことを選んだわけです。日本は第7波でとても厳しい状況を経験しましたが、それでも重症者も死亡者も抑えてきた国なんですね。もし日本が一つの選択として、コロナ対策を一気に緩めて(人が集う場所でも)マスクを外すことをOKとするならば、『身近な高齢者が亡くなってしまうリスク』を引き受ける覚悟が国民にないといけない。でも多くの日本人はそこまでの覚悟を持っているように思えないし、政府からきちんとリスクの説明を受けているようにも思えない…というのが現状です。

 その一方で、たとえば1人で道を歩いている時や、他に人がいない公園で子どもを遊ばせるような時は、マスクをする必要はないわけです。でもなぜかそういう状況でも律儀にマスクをつけている人が多い。マスクをする意味を忘れて、『みんながつけているからつける』くらいの感覚になってしまっている。ですからメディアはあらためて『なぜマスクをするのか』という科学的な根拠を発信していく必要があります」

POINT 2◆情報をもとに、自分で考える癖をつける

――もしかして「与えられた情報をもとに自分で判断する」よりも「絶対的な一つの答えを示してほしい」という人が多いのでしょうか?

「それは私も強く感じています。コロナ禍の初期の段階で『3密を避けよう』というスローガンが掲げられましたよね。3密の基本的な考えを理解していたら、あとは自分で判断できるはずなんです。でも実際は『このケースだとどうですか?』のように、個別の具体例を問う質問が、私のメディアを含めたくさん寄せられました。『お墨付きがほしい』という心性が影響しているのかもしれませんが、『情報を得る』だけでなく、その情報をもとにして『自分で考えて判断する』ことも重要なのではないかと思います」

取材・文/前田隆弘

【プロフィール】

岩永直子(いわなが なおこ)
1973年生まれ。98年、読売新聞社に入社。読売新聞の医療サイト「ヨミドクター」の編集長を経て、2017年に「BuzzFeed Japan」に入社。「Buzz Feed Japan Medical」を創設し、医療に関する取材や情報発信を行っている。

【「見つけよう!私のNEWSの拾い方」とは?】

「情報があふれる今、私たちは日々どのようにニュースと接していけばいいのか?」を各分野の識者に聞く、「スカパー!TVガイドBS+CS」掲載の連載。コロナ禍の2020年4月号からスタートし、これまでに、武田砂鉄、上出遼平、モーリー・ロバートソン、富永京子、久保田智子、鴻上尚史、プチ鹿島、町山智浩(敬称略)など、さまざまなジャンルで活躍する面々に「ニュースの拾い方」の方法や心構えをインタビュー。当記事に関しては月刊誌「スカパー!TVガイドBS+CS 2023年1月号」に掲載。



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