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【傑作選】「香川1区」大島新監督が問う、情報と“時間の使い方”2022/10/10

【傑作選】「香川1区」大島新監督が問う、情報と“時間の使い方”

 私たちが正しく判断するために、今、何をどう知るべきか。その極意を学ぶ連載「私のNEWSの拾い方」。月刊誌「スカパー!TVガイドBS+CS」で掲載中の人気連載を、TVガイドwebでも展開中。本誌では2020年からスタートし、30回以上にわたる連載から【傑作選】として過去のインタビューを公開する。今回は、日本映画専門チャンネルで「香川1区」「なぜ君は総理大臣になれないのか」が10月に放送されることを記念して、ドキュメンタリー監督・大島新氏のインタビューをお届け(記事は2021年10月に本誌に掲載された内容)。

POINT 1◆「脳に入れられる1日の情報量は有限」という意識を持つ

POINT 2◆「その時間の使い方で本当にいいのか?」と自問自答する

――今、私たちはどんなニュースの拾い方をするべきですか?

「まず前提として、皆さん忙しい日常を送っていて、情報に接する時間が限られているわけですよね。『その限られた時間をどう使うか』が、一番大事だと思います。私の場合は、紙の新聞を読んで、NHKの朝7時のニュースを見るのを日課にしています。新聞を読むのは、今起きていることを広く知れるから。昔はこれに加えて、総合週刊誌を週に4冊読んでいましたが、今は週刊文春くらい。その減った3冊分が、スマートフォンで読む情報に置き換わったんだと思います。

 通勤時にスマホでニュースを読むこともありますが、あまりそちらには重きを置いていません。理由は、私の場合、紙の新聞を読んだ方が頭に入ってきやすいのと、もう一つ、ネットは終わりがなくて際限なく読めてしまいますよね。それはさっき言った『限られた時間をどう使うか』という点で、あまりやりたくない。ネットを見るのに1時間使う人はたくさんいますが、同じ1時間を使うのであれば、NHKの『クローズアップ現代+』や『ETV特集』、『BS1スペシャル』を見る方が有意義な情報を得られる、と思います。

 玉石混交のまま、ものすごい量の情報を吸収して取捨選択できる人もいますけど、そういう時間の使い方ができる人、そういう能力を持った人はごく一部です。ほとんどの人は1日のうちに脳に入れられる情報の量が限られている、と思います。だからまず、『本当にその時間の使い方でいいんですか?』と自問自答するところから、情報との接し方を考えていくべきだと思います。そう考えるようになったのは、年をとった影響もありますね。『元気で働ける残り時間』を考える年齢になったので、『限られた時間の中で、ちゃんといいものに触れていたい』と思うようになりました」

――新型コロナワクチンを、副反応を恐れて接種しない人もいますが、陰謀論的な解釈で接種しない人もいます。これはどんな背景があるのでしょう?

「この問題は非常に現代性があると思っています。ワクチンの効果がマスメディアで強調されすぎの面もあると思いますが、一方で陰謀論的な解釈で打ちたくない人も確かにいる。おそらく、SNSから得た情報に引きずられてのことだと思いますが、その意味でも、紙の新聞やNHKのニュースを押さえておくことは大事だと思います。すべてが正しいとまでは言いませんが、それでも精査された上で出てきた情報ではあるので。

 アメリカでは、共和党優勢の州がワクチン接種率が低いという数字がはっきり出ていて、ワクチン接種がそのまま政治信条と結びついているという状況が生まれています。今年(取材時の2021年:編集注)ETV特集で放送された『ジェニファーは議事堂へ向かった』というドキュメンタリーは、アメリカの議事堂襲撃事件を取り上げたものだったのですが、情報への接し方の差が、友人関係や家族関係の分断まで生んでしまうという状況を描いていて、非常に衝撃を受けました。日本ではまだそこまでの状況ではありませんが、アメリカで起きたことが日本では絶対に起こらない…とは言い切れないと思います。

 われわれの業界では『ハード(媒体)が変わればソフト(中身)も変わる』という言葉がありますが、その最大のものはインターネットです。インターネットが登場したことで、ソフトも絶対に変わってくる。それは記事内容だけの話ではなく、人間の心にまで影響するレベルの変化だと感じます。それは現在進行形の変化なので検証しにくいけれども、ネットに接する際に、そういう意識を持っておくことは必要だと思います」

取材・文/前田隆弘

【番組情報】

「香川1区」(テレビ初放送) 
日本映画専門チャンネル 
10月11日 午後6:40~9:25(再放送/10月30日 午前6:20~9:05、11月7日 午前10:10~午後1:00) 
「なぜ君は総理大臣になれないのか」(テレビ初放送) 
日本映画専門チャンネル 
10月28日 午前7:00~9:10(再放送/11月7日 午前8:00~10:10)

【傑作選】「香川1区」大島新監督が問う、情報と“時間の使い方”

小川淳也議員の政治活動を追い、話題を呼んだ映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」の続編。2021年秋に行われた第49回衆議院議員総選挙の“香川1区”の攻防を追う。小川淳也議員に加え、「香川のメディア王」と言われ強力な地盤を持つ自民党の平井卓也議員、日本維新の会の町川順子氏も出馬を表明。日本の政治・選挙を考える社会派ドキュメンタリーであり、火花散る熱い戦いの行方を追ったエンターテインメント作品。

Ⓒネツゲン

【プロフィール】

大島新(おおしま あらた) 
1969年神奈川県生まれ。95年にフジテレビ入社、「NONFIX」「ザ・ノンフィクション」などを担当し、99年からフリーに。2020年公開の「なぜ君は総理大臣になれないのか」で、第94回キネマ旬報・文化映画第1位など数々の賞を受賞。

【「見つけよう!私のNEWSの拾い方」とは?】

【傑作選】「香川1区」大島新監督が問う、情報と“時間の使い方”

「情報があふれる今、私たちは日々どのようにニュースと接していけばいいのか?」を各分野の識者に聞く、「スカパー!TVガイドBS+CS」掲載の連載。コロナ禍の2020年4月号からスタートし、これまでに、武田砂鉄、上出遼平、モーリー・ロバートソン、富永京子、久保田智子、鴻上尚史、プチ鹿島、町山智浩(敬称略)など、さまざまなジャンルで活躍する面々に「ニュースの拾い方」の方法や心構えをインタビュー。当記事に関しては月刊誌「スカパー!TVガイドBS+CS 2021年10月号」に掲載。



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