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五輪出場を目指すプロ3×3プレーヤー・落合知也選手2020/02/05

Cheer up! アスリート2020!

 バスケットボーラーとして恵まれた競技生活を送っていた落合知也は、5人制を離れて“3×3”の道を歩み始めた。開催国枠として出場を決めた日本代表について、日本における3×3のパイオニアとして、その実力と、代表への思いを語ってもらった。

先駆者の誇り

 落合知也のバスケットボール人生は一通の手紙から始まった。

「ある日突然、下駄箱に手紙が入っていたんです。ラブレターかなとテンション上がって見たら、ぜんぜん仲良くないクラスの男の子からで『日曜日のバスケの練習に来てください』と。なんだこれ?と思いましたが、惹かれるものがあって少年団のミニバスケットボールクラブの練習に参加してみたんです。そうしたら弱小クラブだったので、次の週の試合にはレギュラーで出られてシュートも決めたんです。それがすごく快感というか、面白いなと思ってハマりました。もし手紙をもらっていなかったら、今ごろは野球をやっていたかも…。感謝ですね、当時の同級生だった彼には(笑)」

 しかし、第一線で活躍していたにもかかわらず、大学卒業を機にバスケを辞めてしまう。

「長年の部活動で“やらされている”感覚もあって、卒業とともに熱が冷めたというか。そんな気持ちでプロになってもすぐに解雇されると思い、バスケ以外のことにチャレンジするため、一度バスケから離れたんです」

 そんな時に出合ったのが3人でプレーするバスケ。当時はストリートボール、3オン3と呼ばれたバスケットボールだった。

「先輩に誘われて、イベントで試合をするような団体に参加しているチームに入ったんです」

 プロからのオファーもあった落合にとって、そこは「チャラチャラやっているんじゃないかと上から目線で」見るような世界だった。

「ところがスキルとかすごい選手がたくさんいたんです。報酬という意味でのお金は生まれないのですが、お客さんの前での立ち居振る舞いがまさにプロ。エンターテインメント性も高いと感じたし、キャラクター作りもしっかりしている。何より練習に打ち込んでいる姿がすごく刺激になりました。選手はみんな、アルバイトなどをしていたのですが、その合間にトレーニングをしたり、夜中や早朝に練習をしていた。そこでまた自分のバスケ熱が盛り上がりました」

 その3オン3を国際バスケットボール連盟(FIBA)が競技化。統一ルールを作り、国際大会を開催する。

「3×3(スリー・エックス・スリー)として競技化された時は、単純に面白いなと思いました。10分間で21点を先に取った方が勝ちというのは新鮮ですし、スピーディーな展開になる。全く違う世界に引き込まれたという感じでしたね」

 その3×3が東京五輪正式種目となり、開催国枠で男子日本代表も出場することが決定した。

「出場国発表イベントの記者会見にも出席して、オリンピック出場を実感しました。2019年シーズンは海外でプロサーキットを戦い、オリンピックで対戦する相手とも戦ってきました。アメリカやスロベニアという格上のチームにも勝てた時があって、それにはすごい手応えを感じています。自信もつけましたし、オリンピックで結果を出せれば最高の舞台になるんじゃないか、とワクワクしています」

 目標はズバリ、メダル獲得だ。

「出場は8チームで、どういうレギュレーションで戦うのか分かりませんが、日本はメダルを狙える位置にいると思います。自国開催なので多くのファンが応援してくれると信じていますし、その声援は絶対に選手たちの力になるはず。ホームコートアドバンテージを背に戦えれば絶対に勝てる試合はあると」

 東京五輪の会場は青海だ。

「青海は僕が初めて3×3のキャリアをスタートさせた場所なんです。もし僕が代表に選ばれてオリンピックに出られたら、その思い出の地で戦えることになるね、とFIBAの方にも言われました。だから、僕がオリンピックに出た方がストーリーがあると思うのですが、どうですかね(笑)」

Cheer up! アスリート2020!

【TVガイドからQuestion】

Q 印象に残っているスポーツ名場面は?

 WBC決勝でイチローさんが決勝タイムリーを打ったシーンです。それまで不調でバッシングされていながら、最後の最後で打つというのは、まさに選ばれたアスリートという感じ。あの大舞台でチャンスをものにできるのはすごいです。自分もそんなアスリートになりたいと思っています。野球も好きですし、イチローさんはリスペクトしています。

【プロフィール】

落合知也(おちあい ともや)

1987年6月18日東京都生まれ。

▶︎9歳からバスケットボールを始め、土浦日本大学高時代は国体ベスト8、法政大時代はU24日本代表候補に選出される。大学卒業後はストリートボールの数々の大会に参加。「NYのハーレムで行われた世界大会で優勝したのは印象に残っています。英語で汚いことも言われている中での優勝だったのでいい経験になりました」

▶︎2014年、3×3日本代表に選出され世界選手権に出場。国内リーグ3×3.EXE PREMIERにも参戦する。18年、栃木ブレックスを退団。3×3で五輪出場を目指す。「世界に勝つにはもっと3×3の時間を増やさないといけない、両立は厳しいと判断しました」

▶︎現在は3×3チームTOKYO DIMEで活躍。「3×3はまだまだマイナー。自分が先頭で広めていきたいです」

Instagram:ud_worm91

取材・文/田村友二 撮影/野本佳子



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