「西田二郎のたし算」第30回 人をハッとさせる「緊急声」グランフロントの熱狂で気付いた声の力2026/10/30 17:00

人気テレビ番組を長年けん引し、現在は枠にとらわれないコンテンツ作りの最前線を走る“伝説のテレビマン”西田二郎。彼がエンタメ業界の裏側や、これからの時代を生き抜くヒントを独自の目線で熱く語る不定期連載「西田二郎のたし算」! 今回は、グランフロント大阪でのイベントMCを通じて再発見した「声の特性」について語る。
どうも、西田二郎です。
この間、グランフロント大阪で「UMEKITA HAPPY HOUR」というイベントがあったんです。その中の「ウルトラ対流酒場」というスーパー交流会みたいなイベントのMCを頼まれましてね。「行くわー」って言うたら、横に「水曜どうでしょう」の藤やん(藤村忠寿ディレクター)がいて。「なんやねん、それ」みたいに言われつつ(笑)。考えてみたら、MCをやるのは久しぶりでした。
広い会場にやぐらみたいなものが組んであって、「こんなとこ、ほんまに人が来るんかいな」と思っていたんです。でも始めてみたら、酒場のマスターという方々が20数人登場して、中には吉本興業の元会長の大﨑(洋)さんもおられたりして、えらい盛り上がりました。
その時、めちゃくちゃ思ったことがあるんです。
それは「声」についてです。
会場は、普通の体育館や四角い箱の会場ではなく、吹き抜けの一般の場所なので、声が散らかるんですよ。しかもPA(音響)の環境も、きっちりできてるわけじゃない。
ただね、僕の声はそれ用にできてるんじゃないかと思うほど、よく届くんですよ。
「皆さーん!」
文字にすると、「皆さん」だけです。でも、この「皆さん」だけで、人がバンッと振り向くんです。隣にいた藤やんが「二郎ちゃん、すごいね」って。僕はまだ何も、すごいことを言ってないのに(笑)。

ここで、声の話をさせてください。声には、人それぞれ特性がありますよね。いい声とか、だみ声とか、特徴のある声とか。僕は、声には大きく分けて二つの役割があると思っています。
一つが、「安心声」です。小鳥のさえずりのように、人を安心させる声。「大丈夫だよ」「そんなことないからね」と落ち着かせる声ですね。
もう一つが、「緊急声」。ホイッスルや警笛のように、「何かが起こってるぞ、大変だぞ!」と伝える声です。
僕の声は、完全に「緊急声」なんです。
緊急声は、誰もが持ってるわけじゃありません。分かりやすい例が、優れたアナウンサーさんです。優れたアナウンサーの声は、ほぼ緊急声。安心声じゃないんです。災害の時、「逃げてください」「危ないです」と言わなあかんので。もちろんみんな一生懸命言いますけど、その声の中に「緊急性のつぶつぶ」が入ってないと、人は振り向かない。
怖い顔をして「危ない!」と言うことは、誰でもできる。でも、「なんか分からんけど、動かなあかん」。この、「なんか分からんけど」と思わせるのが、緊急声なんです。
逆に、安心声が出る人は、いい役者になります。役者は安心声でないとダメなんです。お芝居の中で「危ない、岩が!」と言う緊急の場面でも、役者さんは安心声のまま緊急を演じているだけでいい。ほんまに緊急声を出したら、見てる人が「ヤバい!」って現実に引き戻されてしまうから。僕が役者をやったら、ずっと大変なことが起きているお芝居になってしまいますわ(笑)。
だから僕の声は、緊急な時こそ機能する。前からそう思ってたんですけど、今回、それを改めて確信しました。
音が散らかるガサガサの会場で、「皆さーん!」と言った瞬間に、全員がグンッと振り向く。なんか分からんけど、振り向く。そして、人がズワーッとこっちに集まってくる。
それが、緊急声の力やと思うんです。
最後にお知らせです! 12月2日水曜に、藤やんと僕で「藤やん二郎の1年の振り返りトーク&大忘年会!!」を開催します。緊急声と安心声(?)の掛け合いを生で聞きに来てください。お待ちしております!
【プロフィール】
西田二郎(にしだ じろう)
1965年生まれ。1989年に読売テレビ入社。「11PM」のディレクターを経て、「ダウンタウンDX」のプロデューサーに。2015年に営業局へ異動し、新規事業などを担当。現在は静岡放送(SBS)のCCIO(チーフコンテンツイノベーションオフィサー)、一般社団法人未来のテレビを考える会の代表理事を務めるほか、2026年6月、株式会社エビリーの最高クリエイティブ責任者(CCO)に就任。
【イベント情報】
「藤やん二郎の1年の振り返りトーク&大忘年会!!」
日程:12月2日(水)午後6:30〜9:00
場所:株式会社エビリー(東京都渋谷区)
参加費:3500円
https://nj-produce.stores.jp/items/6ae2212c72f1e8198bf1b433
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