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野木亜紀子が「けもなれ」で第37回向田邦子賞受賞! 選考委員が「作家性に優れた脚本家」と称賛2019/04/03

 優れた脚本作家に贈られる向田邦子賞の第37回選考会が行われ、昨年放送されたドラマ「獣になれない私たち」(日本テレビ系)の脚本・野木亜紀子氏が受賞した。

 発表会見で、野木氏は「この度は、歴史ある素晴らしい賞を頂きとてもうれしいです。私はあまり授賞式や会見で緊張しないたちなのですが、そうそうたる脚本家の先輩方が並んでいらっしゃることに対して、緊張し、一気に汗が出てきました。たくさんありがたいお言葉を頂きましたが、きっと一緒にドラマを作った日本テレビの方々や、主演の新垣結衣さん、松田龍平さんも喜んでくださると思います。やはりドラマは一人で作れるものではないので、関わったすべての人に感謝しておりますし、この作品で栄誉ある賞を頂けたことをうれしく思います」とコメント。

 また、会見には向田邦子賞の歴代受賞者で、選考委員を務める4人の脚本家も登壇。授賞理由を述べるとともに、それぞれが脚本の感想や評価のポイントなどを述べ、野木氏に賛辞を贈った。

【授賞理由】 
「人間は進化の過程で色々なものを失った……」という劇中のセリフに象徴されるように、笑顔の裏で心をすり減らして生きる主人公と、誰も信用していない公認会計士の男の、恋かもしれないラブストーリー。タイトルが意味する「獣になれない……」というメッセージでもある。現代人が抱えるこの思いを、大人テイストで面白く生き生きと描いている。作者のこれまでの作品に観られた筆力が一味違うジャンルで発揮された。

【選考委員・冨川元文氏/第10回向田邦子賞受賞】 
授賞理由に「人間は進化の過程で色々なものを失った」とあるように、ある程度年齢のいった大人の男女がそういった感性みたいなものをなくし、“獣のようになれない”話で、ちょっと地味ですけれども、非常にリアリティのある抑えたセリフの良い作品だったと思います。向田賞として作品性、作家性に優れているため、野木さんに決まりました。

【選考委員・大石静氏/第15回向田邦子賞受賞】 
10月期はちょうど私もラブストーリーを世に出しておりまして、私が書いたものとは対極にある価値観で、作者自身の考えや個性が本当に良く出ているなと拝見しておりました。脚本家の個性が鮮明に出る作品が少なくなっていますので、本当に作家性がある方だと思います。

【選考委員・岡田惠和氏/第20回向田邦子賞受賞】 
野木さんは今ヒットメーカーですし、来るべくしてきた順番だと思います。「獣になれない私たち」は、私から見るとテレビドラマの主人公になかなか選ばないタイプの人たちをステージに乗せ、安易に結論を与えなかった、とても好きなドラマでした。今回この作品で向田賞を取られたこと、すごくうれしく思っています。

【選考委員・井上由美子氏/第25回向田邦子賞受賞】 
今、われわれもドラマを作るなかで、どうしてもカタルシスがなければいけないとか、何かを解決しなければいけない、結果を出さなければいけない、そういったものを作らなければいけないような空気があるんですけれども、そこをはるかに軽やかに飛び越えて、連ドラとしてひとつのテーマ、匂いを表現されていて素晴らしいと思いました。昔、「さよならロビンソンクルーソー」を見て面白いセリフを書く方だなと思いましたが、その時に感じた面白さをこの作品でも感じ、受賞作として素晴らしいと思います。

 総評を受け、野木氏は「『アンナチュラル』や『フェイクニュース』は、最初からエンターテインメントを意識したドラマでしたが、『獣になれない私たち』は、いわゆる毎話、毎話すっきりするとか、何かカタルシスがあるというドラマではないです。淡々と続いていくドラマが今はとても減っていってしまっているなか、こういったドラマにチャレンジできて、そして今回評価を頂けたのでうれしいです」と述べた。

 さらに、そのような作品になった経緯については、「現実ってそんなにうまくいかないじゃないですか。第1話で(主人公が)本当につらくなってうっかり電車のホームから線路に飛び込んでしまいそうになるんですけれど、いわゆるドラマ的展開で、その後すぐに辞表を出すような人だったらそもそもすり減ってないというか…。とりあえず先送りにしているうちに3年、4年経ってしまうことって結構あると思うんです。仕事を辞められなくて疲れているとか、彼氏と別れちゃえば早いのになかなか踏ん切りがつかないとか。間違っているけれどなかなかそこから抜け出せない人たちに向けて、10話かけて最後のかすかな希望みたいなものを見せられたらと。安易にドラマ的なことをやってしまうとそれが伝わらないと思って、このような作りにしました」と振り返った。

 記者からの「今回の受賞を伝えたい人は?」という質問には、「新垣結衣さんに。そもそも新垣さんありきで書き始めた作品なので、新垣さんがいなければ生まれていないドラマです」と答えた。

【野木亜紀子 プロフィール】

1974年東京都出身。2010年「さよならロビンソンクルーソー」で第22回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞し、同作で脚本家デビュー。テレビドラマ脚本に「空飛ぶ広報室」「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」(すべてTBS系)、「掟上今日子の備忘録」(日本テレビ系)、「フェイクニュース」(NHK総合)などがある。

【向田邦子賞】

故・向田邦子さんがテレビドラマの脚本家として、数々の作品を世に送り出し活躍してきた功績をたたえ、現在のテレビ界を支える優秀な脚本作家に贈られる賞として、1982年に制定。主催は「TVガイド」を発行する東京ニュース通信社で、選考は歴代受賞者らによる向田邦子委員会が担当。前年度に放送されたテレビドラマを対象に、選考委員がノミネート作品を選定。本選を含めて4回の討議を経て受賞作品を決定している。選考委員は池端俊策氏(※)、冨川元文氏、大石静氏、岡田惠和氏、井上由美子氏(向田邦子賞受賞順)。(今年度はスケジュール都合により、池端氏は選考に加わっておらず、4人による選考)

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