「転校生ナノ」畑中みゆき監督×仲島有彩が語る最終話で描かれる“本物のナノ”とは?2026/05/04 10:00

世界中を熱狂させたタイの人気ドラマの日本版リメーク「転校生ナノ」が、FODで全話配信中。頭脳明晰(めいせき)で美しく、不敵な笑みを浮かべるナノが教師や生徒たちの欲望や嫉妬、疑惑や執着といった負の感情を呼び起こしていく禁断の学園ミステリー・スリラーだ。本作で俳優デビューとなる新星・仲島有彩がナノを演じ、アジアを代表する4人のトップクリエーターが全6話のエピソードを手がけることでも話題を集めている。
TVガイドWebでは、主演の仲島と4人のクリエーターのスペシャル対談を実施。最後となる第4弾では、仲島とepisode6「探しものは何ですか?」を担当した畑中みゆき監督が、これまでとは違う“ナノ”をめぐって持論を展開。盗みを繰り返す青年・タクトと出会い、心を揺らすナノの内面に迫る最終話の撮影を振り返ってもらった。
――畑中監督は、なぜ最終話となるepisode6「探しものは何ですか?」のお話を選ばれたのですか? このシチュエーションでナノの何を見せたいと思われたのでしょうか?
畑中 「プロデューサーのユンさん(Yun Minyoung/NJ creation)から『(タイ版)どの話が一番好きだった?』と聞かれたときに、私は『探しものは何ですか?』って答えたんです。そうしたら『じゃあ、これを』という感じでスッと決まりました。このエピソードにはナノの高笑いもないし、ほかのエピソードとの違いを特別、意識しなくてもたぶん別の世界観を作ることができる。しかも唯一、ナノが無邪気に楽しんでいる顔を撮ってもいいエピソードだと思って、有彩さんの笑顔がかわいいナノをいっぱい撮りたいと思っていました」
――最終話ということも意識しましたか?
畑中 「最終話ということはあまり意識しませんでした。ただ、タイ版を見たときに“本物のナノを描いているのはこのエピソードなのかな? もしかしてこのお話はエピソード0なんじゃないか?”とは思いました」

――ナノのほかとは異なる面を見せる際に演出でこだわられたことは?
畑中 「ほかのエピソードのナノはたぶんずっと1点を見つめていて瞳がほとんど動かないと思うんです。でも、私のお話ではそれを意識的に動かしてみました」
仲島 「このepisode6だけ唯一、ナノの軸がブレるというか、視聴者の方に“いつものナノとは違う”と思ってもらえる感じになっていて。特に最後のシーンでは、盗みをやめられないタクト(西山蓮都)の感情に少しだけ合わせにいって、彼と同じような気持ちで並走しているナノを意識しながら演じました」
――畑中監督は先ほど“本物のナノを描いている”と言われていましたが、監督の思う“ナノ”とはどんな人物なのでしょう?
畑中 「さっき私は“このお話はエピソード0なんじゃないか?”と思ったと言いましたけど、原作者の方とお会いできる機会があって聞いてみたら『これはエピソード0ではなくてナノには相手の感情が映るだけなんだ』と言われてすごく腑(ふ)に落ちたんです。つまり、私の話ではタクトが純粋になればなるほどナノも純粋になる。“本物のナノ”というのはそんな“映し鏡”みたいになる彼女を意味した言葉だったんですけど、私はそれを脚本に落とし込んで撮影に臨みました」
――タイ版を踏襲したところとアレンジしたところも教えてください。
畑中 「今、お話しした“感情の映し鏡”みたいなところは絶対ブレないように、忠実にやろうと思いました。逆にオリジナル版の映像がとても美しかったので、そこは私なりの美しさで追求したいなと考え、キーカラーをティファニー・ブルーにしてもらいました。あと、変えたいと思ったのはやっぱりラストシーン。そこも原作の方の了承を得て、日本版ならではの今の形になりましたね」
――ほかの監督のエピソードの影響もありますか?
畑中 「最初の衣装合わせのときに(episode1を担当する)堤幸彦監督が有彩さんに『この1点を見て、ニヤッと笑ってみて』と言われたんですけど、私はその言葉で日本版のナノが想像できました。私のエピソードではその不敵な笑みは撮れませんでしたが(笑)」
――仲島さんは先ほど、「タクトの感情に少しだけ合わせにいった」と言われましたが、実際にはどんなお芝居を心がけられたのでしょう?
仲島 「この最終話でもナノの軸はもちろんブレないようにしていましたが、タクトの色に少しだけ染まりたいなとも思っていたので、その瞬間瞬間のタクトの目の動きや言葉の使い方、表情に敏感に反応できるようにして。それをなるべく出すようにしていました」
畑中 「有彩さんは脚本の理解力がすごく高くて、現場でも『ここはこうだよね』という私の考えとほとんどズレがなかったんです」
仲島 「よかった~(笑)」
畑中 「私の回はナノの軸がタクトの純粋さによって揺れる場面が多かったのですが、ナノが動揺する度合いや軸のブレ具合、本来のナノをどのぐらい出すのか? みたいなところを2人で話し合いながら調整できたのはよかったですね」
仲島 「私がタクトに感情を持っていかれそうになったときは『もうちょっと抑えて!』と言っていただいたり……」
畑中 「『ぐりぐり(髪を指にくるくる巻きつけるしぐさ)をどこに入れようか?』みたいなこととかね(笑)」
仲島 「そういう話はたくさんさせていただきました」
畑中 「有彩さんは瞬発力もスゴいから、私がいきなり言ったこともパッとすぐに反映してくれる。例えば『ここは本来のナノの表情を30%足してください』って言っても、それができるんです」
――演技経験がまだそんなにないのに……。
仲島 「全くなかったです」
――でも、それができちゃうんですね。
畑中 「そこがスゴいんです。『もっと楽しんで!』って言ったらそれもできるし、たぶん感覚で引き算、足し算をしながらお芝居ができるんでしょうね。結構時間がタイトな撮影だったから、その対応力はすごくありがたかった。いや、本当に大変な撮影だったもんね?(笑)」
仲島 「ツメツメでした(笑)」
畑中 「本当、ツメツメでした(笑)」

――ここまでのお話にもあったように、ナノがタクトに感情移入してしまうところがほかのエピソードとの大きな違いですが、タクトも盗みという悪事を働いています。ナノが見極める人の悪の基準や境界線を、お二人はどのように考えられましたか?
畑中 「私は“欲”だと思っていて。タクトは盗みを働きますが、その行為に至るもともとの理由が私欲なのか、そうじゃないのか? ナノはそんな人の心の奥底を見て、それを映し出すと思ったので、私はそこを基準にepisode6を作りました」
仲島 「タクトは確かに盗みを働くけれど、人の本心を見抜くことができるナノは彼が邪悪な存在ではないことが分かったと思うんですよね。それでスイッチが切り替わったんじゃないかなと考えて演じました」
――その変化が分かる具体的なシーンを教えてください。
仲島 「タクトの感情を見ながらお芝居をしていたので、タクトの隠れ家で彼がお父さんの話をするシーンでは実際にウルッときちゃって……」
畑中 「ウルッとじゃなくて、泣いてましたよ!(笑)」
仲島 「それまでのナノは、畑中監督がおっしゃったように瞳が全く動かないんですけど、あそこは人の感情を見るための目線になっていたから影響されたのかもしれません」
――校長室から出ていくタクトを目で追った後に見せるナノの表情も印象的でした。
仲島 「いつものナノだったら、タクトが去っていくのを“ふん”って突き離した感じで見ていたと思うんですけど、あのシーンでは自分が行ったことは正解だったのかな? という後悔もあるし、『待って!』って言いたいけれど言えないもどかしさもあるような気がして。そんな、ナノが自分の行動について考え込んでしまっているようなお芝居になるように心がけました」

――そこが際立つのは、ほかのエピソードにはない楽しいシーンが前半にいっぱいあるからです。ナノとタクトがプールサイドで桃太郎の鬼退治の一幕を演じていたり、遊園地で遊んでいるところは2人の笑顔にも魅せられますが、あの一連の撮影はいかがでしたか?
仲島 「タクトとプールサイドで戦っているところは本当に楽しいなと思いながら演じていました。普通の日常なんですけど、その日常が幸せというか、それこそ学生気分であのシチュエーションに入り込んで満喫していましたね(笑)」
畑中 「短いシーンですけど、鬼退治の殺陣を練習してくれて、見事にギュッと締まったいいものにしてくれました」
仲島 「本当は私、すごく動きがトロいんですけど、編集でなんとかしてもらいました(笑)」
畑中 「いやいや、よかったですよ(笑)」
仲島 「遊園地の方は……私、ナノが遊園地に行くのかな? と最初は思っていたんですけど、相手の感情を反映するナノだからこそ、タクトの純粋な心に引き込まれるように遊園地も思いっきり楽しんじゃうんですよね。いつもは作り笑いだったり、ニヤッと不敵な笑みを浮かべるだけのナノが、ここでは心の底から楽しいという感情で笑っている。遊園地のコーヒーカップに乗って普通にはしゃいでいるナノを私も楽しみながら演じることで、やっと本来の自分になれたナノを知ることができたし、タクトにどんどんひかれていっている彼女の気持ちを感じることができたのはとても新鮮でした。私の中のナノの概念が全く変わったし、畑中監督が用意してくださったこの最終話の世界観は本当に新しかったです」
畑中 「ただ、コーヒーカップのシーンの撮影は大変でしたよね」
仲島 「風の影響で何度も撮り直したけれど、別に大変とは思っていなくて。逆に1作しかやれなかった畑中監督にはもっともっと撮ってほしいと思いました(笑)」

――仲島さんが今回の撮影で感じられた畑中監督の印象は?
仲島 「最初は“怖い方なのかな?”って思っていたんですけど、そんなことはなくて。新人の私の意見も真摯(しんし)に聞いてくれましたし、分け隔てなく接してくださったので、安心して撮影に臨むことができました」
畑中 「怖いと思っていたんですか?」
仲島 「現場でお会いする前は新人だし、そう思っちゃっていたんです(笑)」
畑中 「ちょっと!(笑)」
仲島 「でも実際は違って、キャストの一人一人とたくさんお話をされて、コミュニケーションをとりながら現場の雰囲気やそのシーンを作るすべてのことを大切にされていた。私は結構ナノのことしか考えられなかったんですけど、細部にまで目が行き届いている監督はやっぱりスゴいなってあらためて思いましたね」
――畑中監督は、仲島さんとまたお仕事をするとしたらどんな彼女を撮ってみたいですか?
仲島 「すごく気になる(笑)」
畑中 「私は今回、かわいい有彩さんしか撮っていないから、次は強い表情を作れる役でご一緒したいですね。あの短い時間で殺陣をマスターしたぐらいだから、アクションもきっとうまいと思うんですよ。なので、バイオレンスやアクションでお願いします(笑)」
仲島 「私もそれこそヤクザ役とかやってみたい(笑)。でも逆に、お花畑にいそうな、か弱い女の子みたいな役にも憧れがありますね」
【プロフィール】
畑中みゆき(はたなか みゆき)
「僕の大好きな妻!」(フジテレビ系)、「キンパとおにぎり~恋するふたりは似ていてちがう~」(テレ東系)などの脚本と監督を担当。監督を務める「水曜日、私の夫に抱かれてください」(水曜深夜0:30)がテレ東系で放送中。

仲島有彩(なかじま ありさ)
2005年9月30日生まれ。神奈川県出身。高校生の時に横浜中華街でスカウトされて現事務所に所属。特技は英語(アメリカ留学経験あり)、暗記。今作「転校生ナノ」が俳優デビュー作となる。
【コンテンツ情報】
「転校生ナノ」(全6話)
FOD
全話配信中
※episode1は無料。
<episode6「探しものは何ですか?」あらすじ>

盗みをやめられない孤独な青年・タクト(西山蓮都)は、骨董品店で謎めいた少女・ナノ(仲島有彩)と出会う。後日タクトの学校に転校してきたナノは、彼の孤独に触れ、秘密を共有することで、互いに胸の奥を埋め合うように距離を近づけていく。ゲーム感覚で盗みを繰り返していた2人は、やがて校長室の金庫を狙うという大胆な挑戦に踏み出す。タクトは初めて誰かを信じ、守りたいと感じるが……。

取材・文/イソガイマサト 撮影/尾崎篤志(仲島有彩)
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