Feature 特集

柄本佑、主演映画「痛くない死に方」は「どう生きるかについての映画」2021/02/17

 終期を迎えて“在宅医療”を選んだ患者やその家族と、彼らと向き合う在宅医師の交流や奮闘を描いた映画「痛くない死に方」。葛藤しながらも成長していく在宅医・河田を演じる柄本佑が登場。

── 前半は、河田は疲れからか、いやに覇気がない医師でしたね。

「あの頃の河田は、患者のことよりも家庭が大変なことになってるからと、マニュアルに沿って流れ作業的に対応していただけでした。最初は愚かしい医者でしたが、在宅医療を選んだ患者に痛い思いをさせて死なせてしまったのを機に、昔の師匠のもとを訪れ、考えを改めていく。本作は、河田の成長物語です」

── 師匠から学んで気付くことで、河田が患者に向ける表情や態度などが刻々と変わっていきます。その変化が絶妙でしたが、本作は順撮りですか?

「完全ではありませんが、河田に変化が訪れる流れに沿って大きく三つのパートに分けていただき、演じやすかったです。しかも10日で撮り上げたんです。河田が最初の患者さんを死なせてしまうまでを3日、奥田瑛二さん扮(ふん)する師匠のもとで修業するところに3日、残りの4日で宇崎竜童さん扮(ふん)する末期がんの本多さんとのシーンを撮りました」

── 恐るべき速さですね!

「10日と聞くとすごいスピードに思えますが、現場は全く急いでいる印象はありませんでした。普通に撮って、時間があるから明日の分も撮っちゃえ、みたいな。助監督が、『このままだと1週間で撮り終わってしまうから、少しスピードを緩めましょう』と監督に言ったくらいですが、体感的にはゆったりでした」

── テーマの“在宅医療”については、元々ご存知でしたか?

「原作は読ませていただいていましたが、それ以前はほぼ知りませんでした。ですから原作者で在宅医師である長尾(和宏)先生の尼崎のクリニックに行き、実際に往診に連れて行っていただいて。そこでの学びが、役をつかむ上で一番大きかったです」

── 具体的には、どんなことが参考になりましたか?

「本当に長尾先生はシャツにGパンという気軽な装いで、聴診器だけ持って診療に行かれるんです。お医者さんが家の中に入って来ると、それだけで患者さんは委縮し、何も言えなくなってしまう、と。だから白衣も医者かばんもすべて排除し、近所の人みたいに患者さんと接するという“長尾イズム”を学べました」

── 死や医療を扱う映画というと、深刻で重い作品を想像しがちです。でも本作は実に軽やかで、希望も感じさせられます。

「前半は明らかに、医者と患者という強者と弱者の区別がある。でも河田が成長した2年後には、そこに強弱の区別はなく、人と人という関係性になっていますよね。タイトルは『痛くない死に方』ですが、実のところ死に方を探すというより、生き方を探す、どう生きるかについての映画だと強く感じています」

── 宇崎さん扮(ふん)する本多とのシーンは心地良くさえありました。

「本多さんが書かれていた川柳が、またなかなかブラックでいいですよね。とてもいい句もあれば、最後に“浮気をしました”という句を残されたりして(笑)。残された奥さんにとっても映画にとっても、重々しく終わらない、いい抜けになっている。監督の優しさというか、洒脱なセンスによるもので、大好きです」

── 柄本さんは「心の傷を癒すということ」でも医者を演じられ、医者役が続きますね。

「確かに、妙に“死”を扱う作品が重なった印象はあります。それにより具体的に自分の中に落とし込んだというのはありませんが、漠然と“死”を意識していた気はします。まだ僕は生きてガシガシやっていきますが(笑)、本作を通し、その時になってこういう先生との出会いがあったらいいな、とは思います」

【MY『生涯大切な医療』MOVIE】

高橋伴明監督の映画「火火」(2005年)ですね。日本映画が少し低迷していた当時、この作品を見て「高橋監督がいるから、日本の映画は大丈夫だ」と思いました。田中裕子さんが、白血病の息子を持つ信楽焼の陶芸家を演じられていて、深刻な状況にも関わらず、たくましくひょうひょうと目の前のことに立ち向かっていく姿に感銘を受けました。死を扱いながらも、ラストは希望につながっていく。ある種、完璧な映画だと思います!

【プロフィール】

柄本佑(えもと たすく)
1986年12月16日。東京生まれ。射手座。B型。2001年にオーディションに合格し映画「美しい夏キリシマ」(03年)で主演デビュー。近年の主な主演作に映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」「きみの鳥はうたえる」「ポルトの恋人たち 時の記憶」(全て18年)、「火口のふたり」(19年)など。現在は日曜劇場「天国と地獄~サイコな2人~」(TBS系)に出演中。

【作品情報】

映画「痛くない死に方」 
2月20日公開

在宅医療のスペシャリスト、長尾和宏のベストセラー著書「痛くない死に方」「痛い在宅医」をベースに、高橋伴明監督が映画化。病院で痛みを伴う延命治療を行わず、終末期に在宅医療を選択した患者たちと、河田(柄本)ら在宅医師たちの姿を描く。

監督・脚本:高橋伴明 原作・医療監修:長尾和宏  
出演:柄本佑/坂井真紀/余貴美子/大谷直子/宇崎竜童/奥田瑛二 ほか

【プレゼント】

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応募はコチラ→https://www.tvguide.or.jp/news/present/
(応募期間:2021年2月17日正午~2月24日午前11:59)

ハガキでの応募方法は「TVガイド」2月26日号(P98)をご覧ください。
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取材・文/折田千鶴子 撮影/大槻志穂 
ヘア&メーク/廣瀬瑠美 スタイリング/林道雄

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