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リオ五輪男子400mリレーのメダリスト・飯塚翔太選手2019/11/05

Cheer up! アスリート2020!

 かつて世界では通用しないと言われていた日本短距離。今や4×100mリレーでメダル獲得の常連になるなど、大躍進を遂げている。その中で大きな役割を果たしてきた飯塚翔太が東京五輪、そしてその先に向けて駆け抜けていく強い意志を語る!

止まらない、エネルギー。

 世界陸上の男子4×100mリレーで、日本が2大会連続の銅メダルに加え、東京五輪の出場権を獲得。東京五輪の日本代表入りをかけた、国内トップ選手による戦いが始まる。リオ五輪銀メダリストの飯塚翔太も日本代表入りを狙う1人。100m9秒台の選手が続々誕生し、日本短距離陣のレベルが上がる中での激しい競争を歓迎する。

「9秒台が次々出る状況は、楽しいです。今年の日本選手権の100m決勝を走りましたけど、注目度もレベルも相当高くて、やりがいがあります。9秒台を出さないとリレーメンバー入りが難しくなってきているので、すごく刺激は受けていますね」

 今季の飯塚は、急性虫垂炎、肉離れと苦難に見舞われ、100mや200m、4×100mリレーでの世界陸上出場は逃す。しかし、本職ではない400mを走る、4×400mリレーでメンバー入り。それは飯塚の走りの強みを見込まれてのものだ。

「僕の強みは、後半の伸びです。距離が伸びてもスピードが落ちないので、200mに向いていると思いますね。19秒台を出した日本人がまだいないので、一番に出したい気持ちがあります。たまに200mに専念したらと言われますが、両方やるのが大事なんです。100mに取り組むとスピードが上がり、200mの感覚も良くなるので、両方チャレンジしていければと思います。もちろん、100m9秒台も狙っています。9秒台と19秒台のどちらを先に出したいかというと、19秒台ですけど(笑)」

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 東京五輪出場を決めれば、3度目の五輪に。1回目となるロンドン五輪では、世界で戦うために必要なものを学んだ。

「ロンドン五輪は、世界陸上の経験もなかったので、世界で戦うことをよく分かっていませんでした。最初に200mに出場して、テレビで見た人がいっぱいいて、『こんな中で自分が走るんだ』という気持ちで、結果も全然ダメ。戦う気持ちが足りませんでしたね。ただ、次のリレーでは、目が覚めて良い走りができました。その時は7万人くらいお客さんがいて、たくさんの観客の中で走る楽しさが分かったのも良かったです」

 続くリオ五輪では4×100mリレーの2走を任され、見事に銀メダル獲得に貢献している。

「僕は2走でしたが、“よーいドン!”の瞬間から僕も走っているような気持ちで待っていて、バトンをもらってから渡すまで、いい感じでした。バトンを渡した時に結構前の方にいたので、これは歴史が動くんじゃないかと叫んで応援していて、アンカーのケンブリッジ(飛鳥)と(ウサイン・)ボルト選手の時は、もう祈るような気持ちでしたね」

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 銀メダル獲得の要因は、バトンパスなどのチームワーク。団体競技とは違う、個人競技の陸上ならではチームの形があった。

「チームの一体感は……実はないです(笑)。4人それぞれが、自分の区間をどれだけうまく速く走るかが勝負なので、みんなのために自分がベストを尽くします。それぞれの色を混ぜて一つの色にするのではなく、それぞれの色を生かしてコラボする感じかな。あと、バトンは相手が走りやすいように渡さないといけないので、そこの思いやりも大事ですね。リオ五輪の時は、僕が一番年上だったので集合時間などを決める時は自分が決めていましたけど、自由な人が集まっていたので逆に無理にまとめないようにしていました(笑)」

Cheer up! アスリート2020!

 3度目の五輪は、自国開催となる東京五輪。これまでの五輪とは異なる特別な思いがある。

「東京五輪が決まった日は、大学の学生選手権に出場していて、インタビューで『東京五輪が決まりましたが、どうですか?』って聞かれて、東京五輪決定を知りました。その瞬間に東京五輪が目標になりました。自国開催の五輪でお客さんがいっぱいいて、日本代表選手を応援してくれる。その応援を受ける感覚がどんなものなのか味わいたいですし、そこで活躍したいです。具体的には200mで決勝に残ること。五輪の200m決勝に進んだ日本人は、まだいませんからね。19秒台もそうですが、1人目はずっと言われるので、最初に決勝に残りたいです。あと、リレーでは金メダルを目指します! 正直、バトンパスの伸びしろは、もうあまりないと思っていて。これからは個人の走力を上げる、それぞれの頑張り次第のところがあります」

 東京五輪にかける思いは強いが、そこを集大成にして歩みを止めるつもりはまだまだない。

「東京五輪も目標ですが、長く現役で活躍し続けるのも目標です。強い気持ちを持って、限界を決めずに行けるところまで行きたいと思います!」

Cheer up! アスリート2020!

【TVガイドからQuestion】

Q1 印象に残っているスポーツ名場面を教えて!

先輩の末續慎吾さんの(2003年世界陸上)銅メダルですね。当時は小6で、単純にすごいって思っていました。自分が世界で戦うようになってからは、末續さんが銅メダルを獲得した実績が、「自分も」という励みになっていますね。

Q2 好きなTV番組/音楽(応援歌)を教えて!

マツコ(デラックス)さんのズバッて言うところが好きなので、マツコさんが出ている番組を見ます。歌は、体にいいとされる528hzを含む音楽やクラシックを聴くくらいですね。クラシックは、モーツァルトが特にいいらしいです。

Q3 “2020”にちなんで、ゴール直後の“20”秒間にどんなことを考えているか教えて!

勝った時はインタビューのことを考えます(笑)。リオ五輪のリレーの時は、うれしい気持ちをどう伝えるか、4人以外に走れなかった2人の選手がいたので、そのことを話そうと思いました。負けた時は黙って控室に戻ります(笑)。

Cheer up! アスリート2020!

【陸上競技概要】
走る、跳ぶ、投げるを基本とした競技。さまざまな距離や障害物がある中で走る速さを競うトラック競技、跳躍や投てきを競うフィールド競技、マラソンや競歩、複数の種目の合計で順位を競う混成などが行われる。人気の高い短距離では、アメリカやジャマイカなど北中米勢が強さを誇る。その中で、男子4×100mリレーでは、日本が抜群のバトンパスを発揮し、北京五輪とリオ五輪で銀メダルを獲得している。東京五輪でもメダル獲得が期待される。

【プロフィール】

飯塚翔太(いいづか しょうた)

1991年6月25日静岡県生まれ。蟹座。

▶︎ミズノ所属。陸上クラブの監督の勧誘を受けて、小学3年生時に練習に参加。「続けるつもりはなかったんですけど、先輩に負けたのが悔しくて」と、陸上の道へ。

▶︎小学6年生で全国大会に出場するも100m決勝に残れず。「中学校でリベンジという気持ちでした」という思いを実現させ、中学1年生で100m優勝、3年生で200m優勝を成し遂げる。

▶︎高校時代は度重なるケガで苦しむが、高校3年生でインターハイ200m、国体100mで優勝。翌年の世界ジュニアの日本代表に選ばれ、200mで世界一に。しかし、「調子に乗ってしまって、翌年は全然ダメでした(笑)」。

▶︎その不調を乗り越え、2012年はロンドン五輪の日本代表入り。16年リオ五輪では4×100mリレーで銀メダルを獲得するなど、日本のトップランナーの1人として活躍中。

取材・文/山木敦 撮影/Marco Perboni



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