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【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」2024/05/15

【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」

 TBS系では、ドラマストリーム「からかい上手の高木さん」(火曜午後11:56~深夜0:26 ※放送時間は変更になる場合があります。一部地域を除く)が放送中。本作は、月刊漫画雑誌「ゲッサン」(小学館)で連載されていた山本崇一朗の同名漫画(全20巻)を原作に、ある中学校の隣同士に座る“からかい上手の高木さん”(月島琉衣)と“からかわれっぱなしの西片”(黒川想矢)の日常のやりとりをダブル主演で描く青春ラブコメディーです。

 本作で監督を務めるのは、恋愛映画の名手として映画ファンから絶大な支持を集める今泉力哉さん。ここでは、作品に込めた思いや撮影の裏側などを語っていただきました。

【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」

――原作のどういった部分を意識してドラマに反映されましたか?

「中学生の恋愛ものは初めてぐらいでしたが、原作は派手な出来事というよりかは、主に繊細で小さな日常のやりとりを扱っていて、普段自分がこだわっている部分と近いものがあったので、面白いのができるのではないかと思いお受けしました。どうドラマに落とし込むか考えた時に、実写だからこそ生まれる空気や気恥ずかしさ、ドキドキを大切にして撮影をしました。香川県の小豆島で撮れたのも大きかったです」

――今回小豆島で撮影されましたが、特にこだわったところがあればお聞かせください。

「本屋さんや神社など原作やアニメとリンクする場所で撮ったり、美しい海や自然が画面を豊かにしてくれた部分はもちろんあるのですが、“奇麗な景色を撮る”というよりは、特別すぎない場所を探したりして、“普通にこの島で生活している2人に見える”ように意識しました」

――SNSでは実写化に対するさまざまな意見がありましたが、そういったのも拝見されていますか?

「見てます! 原作はとても人気があり、すでに素晴らしいアニメ化もされている作品で、コアなファンがたくさんいらっしゃるのでさまざまな意見が来ると覚悟はしていました。実写化の発表時には『3次元では無理だろ』『誰もできないだろう』『ここは絶対に守ってほしい!』などいろいろな反応がありましたが、そういった方々も好意的に見てくれている印象でうれしいです」

――印象的だった感想はありますか?

「実写版を作る上で、この漫画は何が特別なんだろうということを知りたくて、原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました。高木さんのキャラクターはもちろんですが、『西片がかわいらしい』『そっちがヒロインなんじゃないか』などの意見も多くあって、なるほど、と。西片のからかわれ方や反応には特にこだわってドラマに落とし込みました。実際に見てくれた方は、月島さんのからかい(アクション)はもちろん、黒川くんの反応(リアクション)も楽しんでくれていて。また、景色についても好印象な感想が多く、小豆島の穏やかな気候の中で、中学生ならではの繊細で生っぽいお芝居がたくさん撮れてよかったです」

――キャスティングにも力を入れたのでしょうか?

「そうですね。キャスティングは、この空気を作れるかどうかに大きく関わってくるので、リアルな中学生の年齢の子たちでできたのは本当によかったです。丁寧にオーディションを重ねて、2人をはじめとしたフレッシュなキャスト陣に出会えたのは、この作品にとってすごく大きなことでした」

――そんなお二人の印象をお聞かせください。

「月島さんはすごく明るい子。オーディションの際は、お芝居経験が少ない中でたくさんのアイデアを出してくれて、同じ芝居をするにしても、ほかの方がやらないような自由な動きをして、いろいろなことを試してくれました。その元気さや笑顔の魅力ももちろんありますが、細かく考えながらやる真摯(しんし)さも魅力です」

【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」

――黒川さんはいかがですか?

「黒川くんはクランクアップ時にも、西片になれた瞬間があったかなと真剣に考えるくらい慎重なタイプ。2人は真逆でもありつつ似ている部分もあり、2人の距離感や役へのはまり方、すべてにおいてすごくバランスが取れていたなと思います。黒川くんが『監督や月島さんは(僕のことを)西片っぽいって言うけど、僕はからかわれたら、もうちょっとうまくからかい返せます!』と言っていて。それがもう西片じゃん!と思ったり(笑)。その純粋さも含めて、すごく魅力的な方ですね」

【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」

その年齢とその場の空気でしか生まれない瞬間が多くありました

――映画とドラマをつなぐキャストとして江口洋介さんが出演されていて、いい意味で目立ちすぎてなくて、しっかり高木さんと西片に目が行くなと感じました。そんな江口さんの印象もお聞かせください。

「この作品は驚き方や、泣いたり怒ったりなどのリアクションの度合いもとても大切で。江口さんは、それを絶妙なニュアンスでやってくださってすごく助けられました。また、本作は主に高木さんと西片のやりとりを中心に進むので、授業時などでも黒板側にいる先生がほぼ映らないシーンもいくつかあって。それでも授業を行っている先生の声は2人の芝居分の尺が必要だったりするのですが、あれだけのキャリアのある方がそういった役も引き受けてくださって、5分とか7分とかの授業の声も撮らせてくれて。器の大きさも感じました」

――2人以外の生徒キャストの方々の印象もお聞かせください。

「全キャスト、オーディションで選んだのですが、今回は技術が高い子よりも、“その人が役にはまるかどうか”を重要視しました。また、必要以上に素朴さ、ピュアさなどは意識したかもしれません。演技がテクニカルになってしまうと素朴さが欠けてしまうと思ったので。お芝居の部分では不安な子も選びましたけど(笑)、結果的には1人残らずばっちりはまっていましたね」

【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」
【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」

――実際に中学生のキャストだからこそできた印象に残ったシーンはありますか?

「腕相撲やバレンタインのシーンなどで、恥ずかしがる雰囲気は印象深いです。リアクションの声がひっくり返って高くなったり、本当に照れていたり。その年齢とその場の空気でしか生まれない瞬間が多くありました。また、印象的だったのは、ロケハン(撮影場所を決める下見)の時に、撮影するであろう想定の場所に助監督に立ってもらって、本番での見え方や動きを想像したりしていたのですが、実際に2人が立つと小さくて。中学生って小さいんです。そんな当たり前のことに気付かされて。風景と中学生のバランスだけで、なんだか感動していました」

――演技をしてもらう上で気を付けていることはありますか?

「自分は、『ここはこういうシーンだからこうしてください』という指示は、先にしないようにしています。まずは1回、俳優にお任せして自由に演じてもらう。先にいろいろ言うと、私が思っている以上に面白くなる可能性を閉ざしてしまうので。黒川くんは面白い動きが多くて(笑)。例えば、机をのぞくシーンで、普通にのぞくのではなくて、体をくの字にしてのぞいたり。登校時に後方から来た姿の見えない高木さんから『おはよう』と言われた時に、ドキドキしているのか、一度声がする方とは逆側を見てしまったり。そういうのは演出では生まれないですし、2人から生まれた動きやアイデアはたくさん採用しています」

――以前、月島さんに取材した際に、電話のシーンはワンカットで撮って感情も入りやすかったとおっしゃっていました。

「その都度細かくカットを割ってほしい絵だけを短く撮るよりも、一連で芝居した方が気持ちが乗りやすいと思うので、僕は基本的には通して撮るようにしています。第8話の電話のシーンでは、約10分間、実際に相手と電話をつないで撮影したので、より演じやすかったのかもしれません。とはいえ、まあまあ集中力のいる長い芝居だったので、撮影の途中で黒川くんのパワーゲージが減ってしまい、完全に電池が切れてしまった瞬間もあって。『休憩、休憩! おやつ、おやつ!』みたいな(笑)。それもかわいかったです。皆で休憩したら、復活しました」

【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」

――監督がお気に入りのシーンはありますか?

「第7話のラスト、高台で2人が話すシーンですかね。撮影も終盤で、実際に2人のお別れも近く、もうすぐ終わってしまうなあという環境で撮ったので、細かい演出はしていないですが、とてもいい表情が撮れました。音楽がなくてもグッとくるものがありましたね。また、第2話の高木さんの“変顔”は、原作とアニメでは顔は描かず、西片のリアクションだけで表現されていたので、原作のファンの中には『そこは見たくなかった』という意見も多く見受けられたのですが、変顔を見せた理由はこのシーンにあります。ただ“からかい”として存在していた“変顔”が、気丈に振る舞う高木さんの精いっぱいの強がりになればと。連ドラなので、第2話の時点ではそういう声も出るだろうなと想像していましたが、この場面を見れば『そうか、このためだったのか』と理解していただけるかなと」

【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」

――皆さんの反響が気になりますね! ほかに現場で生まれたシーンがあればお聞かせください。

「第6話のラストの合唱のアカペラは、脚本上にはなくて現場で思いつきました。クラスメートの歌う声とピアノの音がすっと消えた静寂の中、2人の歌声だけが響いたらきっとグッとくるんじゃないかなと思って。2人に相談して、それぞれアカペラで歌ってもらいました。震えるくらいよかったですね。また、作品を作る上で自分の経験を入れた方が強度も出ると思っていて、今回でいうと、合唱で高木さんが鏡越しに西片を見るシーンはオリジナルですね。僕、小学校で合唱部に入っていたのですが、発声練習の際に鏡を使って好きな子をちらっと見た記憶があって。僕がソプラノで、彼女がアルトで。自分のことを振り返りながら作りました」

中学時代を思い返したり恥ずかしくて甘酸っぱい感情になれる、ピュアで尊い作品が作れた

――原作やアニメも含め「からかい上手の高木さん」の魅力はどこにあると思いますか?

「世代など関係なく誰もが懐かしめるような作品で、島や2人のほのぼのとした雰囲気や空気感などが魅力かなと思います。原作を読んだ時に、言葉や動作一個一個が本当に繊細に描かれていて、1個違ったら全部が変わってしまうぐらいの作品で。自分はそこに強くひかれましたね」

――先ほど、中学生の恋愛模様を撮るのは珍しいとおっしゃっていましたが、普段の恋愛作品と違って難しかった点はありましたか?

「大人の恋愛作品とはもちろん純粋さの違いはありますが、うそが上手だったり、器用に言葉を紡げるような人が出てくる作品はこれまでも作っていないので、そういう意味ではジャンルは違いますが、鈍感さ、不器用さ、正直すぎるところみたいな部分は共有しているのかなと思って作りました」

――最後に第8話(最終話)や映画の見どころをお願いいたします。

「第8話の電話のシーンでは、お互いの顔が見えないからこそ、より相手を意識してしまう時間や会話の間、また、ふいに出た西片の言葉のドキッとしてしまう高木さんなど、今までとは違う表情も見どころになっています。また、映画につながるシーンもあるので、最後まで楽しんでもらえたらうれしいです。今回、ドラマと映画を作ってみて、俳優のお芝居はもちろんのこと、音楽や情景などいろいろなものが合わさって、あらためて自分で見ても、中学時代を思い返したり恥ずかしくて甘酸っぱい感情になれる、ピュアで尊い作品が完成しました。この作品を作れてよかったです。多くの人に届きますように」

【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」
【「からかい上手の高木さん」今泉力哉監督インタビュー】「原作ファンの方々の感想からたくさんのヒントを得ました」

【プロフィール】

今泉力哉(いまいずみ りきや)
1981年2月1日生まれ。福島県出身。2010年に「たまの映画」で商業映画監督デビュー。代表作に「愛がなんだ」「街の上で」など。近年は「ちひろさん」「アンダーカレント」(ともに23年)を手掛けた。

【番組情報】

「からかい上手の高木さん」
TBS系
火曜 午後11:56~深夜0:26 ※一部地域を除く
※放送時間は変更になる場合があります
※Netflixにて配信中

取材・文/N・E(TBS担当)
Ⓒ山本崇一朗/小学館 ⒸTBS



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