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ヒロミと大久保佳代子が1000万戸に迫る空き家問題に直面! 「NHKスペシャル」チーフプロデューサーの思いとは?2023/09/30

ヒロミと大久保佳代子が1000万戸に迫る空き家問題に直面! 「NHKスペシャル」チーフプロデューサーの思いとは?

 日本の住まいが今大ピンチだということをご存じですか? 住人の高齢化に伴い、全国に空き家が急増しており、その数はなんと1000万戸を超えるともいわれています。しかも、東京都内の一等地に空き家が増加しているとか…。「誰かに話して解決する話でもないし…」と悩んでいる方に朗報です! 10月1日、8日の「NHKスペシャル」(NHK総合)では、老いる日本の“住まい”と題し、第1回では空き家、第2回ではマンションに焦点を当てて、住宅にまつわる問題についてヒロミさん、大久保佳代子さんらが専門家とともに考え、解決策を探っていきます。

 放送に先立ち、「NHKスペシャル」のチーフプロデューサー・細田直樹さんと本間一成さんから、制作意図や各回の見どころ、注目ポイントなどを伺いました!

――なぜ、今回“住まい”をテーマにした「NHKスペシャル」を企画されたのでしょうか?

細田 「『クローズアップ現代』(同局)のメンバーを中心に制作したのですが、この数年、住まいに関する企画がとても多かったんです。マンションや空き家を取り上げることもありますが、生活やコロナの問題など、どんなテーマにしても住まいが大事なことが多い。また住まいを見ると、日本の今の社会の問題が見えてくると感じたので、その取材の蓄積の集大成として、世の中に伝えたいと思って企画しました」

――2週に分けて放送されますが、それぞれどのような回になっているのでしょうか?

細田 「第1回は空き家です。現在、1000万戸に迫るとされている空き家が大きな社会問題であるのはもちろんのこと、どうしてなのか、どうすればいいのかと、悩んでいる方や空き家を抱えている方、将来抱えそうな方、『今の自分の実家どうだろう?』『今住んでいる家はどうなるんだろう』と思われている方たちにも、具体的な処方箋で答えられるような構成にしています。また、専門家と組んで、2040年の各自治体の空き家の数を独自にシミュレーションしました。放送では一部しか取り上げないのですが、デジタルコンテンツでは、47都道府県、自分の市町村がどうなっているのか分かるように作ってあります」

ヒロミと大久保佳代子が1000万戸に迫る空き家問題に直面! 「NHKスペシャル」チーフプロデューサーの思いとは?

――将来、自分の自治体がどうなっているのかを見られるのは興味深いです。第2回はどのような回になるのでしょうか?

細田 「第2回は老朽化してしまったマンションの実態と、その対策をドキュメントしています。“老い”という言葉には、建物が老いることと、そこに住んでいる方たちが老いるという意味があり、二つの老いの実態と解決法に迫っています。第1回、第2回に共通しているのは、いずれも今から50年ほど前の高度経済成長期に大量に建てた家やマンションが、寿命や世代交代の時期を迎えていて、いろいろ問題が噴出しているということ。それが2023年にこのシリーズを作る理由で、その原因分析と対策を2回にわたってお伝えします。先ほど、デジタルコンテンツとして全国の空き家予測マップというものをお伝えしましたが、NHKにはかなり多くの空き家に関する悩みが来ているので、それをまとめて、専門家と共にX(旧Twitter)で毎日Q&Aをずっと報じてきています。そのストックがデジタルコンテンツとして充実してきているので、放送だけではなく、自分のケースだったらどういう戦略があるんだろうと考えていただくためのアーカイブ資産として、世の中に発信したいと思っています」

――日本に空き家が1000万戸近くあることに衝撃を受けました。それは徐々に増えていったのですか?

細田 「ざっくり言うと、この20年は増え続けています。2018年の国勢調査の情報では849万戸という数字でしたが、どの専門家に聞いても、今のペースだと次は1000万戸を超えると言っています。2000年代に入ってからはずっと増え続けているという状況です」

――これまで国はどんな施策をしてきたのでしょうか?

細田 「数年前に空き家特別措置法ができました。これで、今にも壊れそうで近隣に迷惑をかけてしまいそうな本当に危ない空き家を各自治体が“特定空き家”と指定して、自治体のお金で壊すことができたり、減免していた税金を解除して、空き家の持ち主に払ってもらうなどの強い措置ができるようになったんです。その時は、私たちも含め、いろんなメディアが空き家問題を多く取り上げましたが、空き家が増えていくケースの方がはるかに多いので、解決できなかったんです。しかし、今年の6月にその法律が改正されて、自治体がこれは危ないと判断すると、その持ち主に、壊したり修繕するといった対応をさらに強く求められるように変わりました」

――都会の一等地でも空き家があると聞いて、とても驚きました。

細田 「実は今、日本一空き家が多いのは、東京・世田谷区なんです。70代、80代の持ち主が亡くなるも、50代、60代のお子さんは他のところで生活しているので、すぐには引っ越せない。または、今は施設などに入っているけれども、戻ってくるかもしれないので、そのままにしておかなきゃいけないことが多いので、皆さんが人気だと思っていた高級住宅街、田園調布や成城学園といったところも急に空き家が増えているという状況です」

ヒロミと大久保佳代子が1000万戸に迫る空き家問題に直面! 「NHKスペシャル」チーフプロデューサーの思いとは?

――そうなんですね! それは意外です。今回、ヒロミさんと大久保さんが出演されていますが、第1回のスタジオではどんな話が繰り広げられたのでしょうか?

細田 「ヒロミさんは皆さんご存じの通り、DIY、家の修理が得意で、お父さまが大工さんなんですが、古い空き家をどう活用すれば次の人が使いたいと思ってくれるのかという視点で、たくさんお話をしてくださいました。ご自身のふるさとが東京・八王子市で、今回未来予測すると、八王子市はワーストの方の結果になってしまいまして、自分のふるさとはどうするんだろうという問題意識で空き家の回を見てくださいました。一方、大久保さんはマンションにお住まいなので、第1回では素朴な疑問や、お父さまたちが住んでいらっしゃった愛知県のご実家を今後どうするかを親族でも非常に悩まれているということで、相続したおうちをどうするかという視点でお話していただきました」

――空き家の回でいえば、リノベーションされているお写真がありましたが、どんなパターンがあるのでしょうか?

細田 「一つは、家を売りたくないけど使わない人が貸す時に、借りる方がリフォームしていいというスタイルの賃貸の仕方が新しくはやり始めています。昔の建物の雰囲気を残して、中だけちょっと近代的にしたり、水回りだけ直したりと、大家さんの許可があれば手を加えていいスタイルです。もう一つは、特に地方ですが、使っていないし売れないと思っている家を家財ごと安く買い取ってくれる会社があって、その会社がリノベーションして、新しい中古住宅として売るという空き家の流通の仕方です。全国的に大きくはやり始めている二つの傾向を取り上げています」

ヒロミと大久保佳代子が1000万戸に迫る空き家問題に直面! 「NHKスペシャル」チーフプロデューサーの思いとは?

――解体費用が高いからそのまま放置している方も多いんじゃないかと思うんですが、そういう方たちへのアドバイスも出てくるのでしょうか?

細田 「これをやれば万全、誰でも大丈夫というものは、正直、日本にはないんですが、今ある制度のメリット、デメリットを紹介しています。街全体で直していかなきゃいけないという話の中では、アメリカの事例を取材して伝えています。家は個人の資産なので、自分の家をどうしたらいいかが最初ですが、地域が空き家だらけになると住みにくくなるので、自分だけで抱えないで地域みんなで街を再生していこうとか、街づくりを考えようという空き家対策も紹介しています」

――第2回のマンションの回では、ヒロミさんと大久保さんはいかがでしたか?

本間 「ヒロミさんは、今まであまりマンションに住んだことがないらしいんですが、老後、子どもたちが出ていったらマンションに住もうかなと少し思ったそうです。戸建ては建て替えるイメージがあるけど、マンションはそういうイメージがあまりないよねとおっしゃっていて、それはおそらく視聴者の皆さんの印象と近いと思うんですが、その中でマンションについてどう考えたらいいのかと話していました。また、ヒロミさんは八王子の地域の人たちと仲良くされているんですが、そういったコミュニティーに関するお話もしています。大久保さんは、まさに今、マンションを買おうかと悩んでいて、買う場合は新築と中古のどちらがいいのか。中古の耐震性は大丈夫なのか。リノベーションされているけど、中身は大丈夫なのかなどの疑問をおっしゃっていて、そういったことにも一つ一つ答えています」

――番組では、老朽化したマンションの解決策を提示されているのでしょうか?

本間 「老朽化するとかなり修理する場所が増えるんですが、住人が年金暮らしでお金がないということが大きな問題になっています。しかし、この問題の解決策はなかなかなくて。そうなってしまうと逆転することはなかなか難しいですが、そうならないためにどこに相談するべきか。さらに、老朽マンションを10年で半減させることに成功した京都市の例などをお伝えしています。私たちのマンションはまだ大丈夫だと思っている人たちに見てもらえると、今からやった方がいいことに気が付き、今後のヒントになると思います」

――老朽マンションを10年で半減させるとはすごいですね! それは他の自治体も目指されているのでしょうか?

本間 「自治体によって結構ばらつきがあって、空き家の対策も一生懸命やっている自治体と、そうじゃない自治体に分かれています。京都はもともと古いマンションが多いのですが、隣の滋賀県でボロボロになったマンションを税金で壊さなくてはいけなくなって、約1億円かかったという問題が起きたこともあって、そうなる前になんとかしないとまずいんじゃないかと。それで、市の方から修理をしてなさそうなマンションにアドバイスしていくことで、何もしていなかったけどやってみようかと始めているケースが多いんです」

ヒロミと大久保佳代子が1000万戸に迫る空き家問題に直面! 「NHKスペシャル」チーフプロデューサーの思いとは?

――先ほど、空き家の回でリノベーションの話をされていましたが、マンションの回でもリノベーションの話が出てきますか?

本間 「マンションの回は修繕をしていないとどれだけひどいことになるのかということや、1970年代に建てられたマンションの課題を紹介しています。リノベーションというと、部屋の中を奇麗にして使ってもらう意味合いが強いですが、マンションは、壁を補修すること、むき出しになった鉄筋や古くなった排水管はどうするかなどという話をしています。もう一つは、70代、80代の住人が認知症になったり、孤独死が出た場合、ボヤ騒ぎが起きたらどうするかなどを語っています」

――それらについて取り組みをされている方たちをご紹介されていると。

本間 「北海道と京都で、マンションの人たちの中でアイデアを出して実践されている人たちが、ヒントをくれています」

――私も祖父母が住んでいた家をどうしたらいいのかと家族で悩んでいます。今回、そんな立場の人々に具体的な解決法を教えていただけるのでしょうか?

細田 「いろんな理由やご事情があるので、すべてのパターンを網羅できているとは申し上げられないんですが、多くの類型として、どういった場所に建っているか、どのくらい手入れをされているか、ご家族の中で合意が得られているか、あるいは、今は元気だけどこの先どうするのかなど、さまざまなケースに応じてこういうふうに動いたらいいということを、放送でもデジタルコンテンツでもお届けしています」

本間 「場所によっても全然違いますし、個別のケースについて番組で全部は紹介できないのですが、NHKみんなでプラスというホームページ(https://www.nhk.or.jp/minplus/0152/)の中に、さまざまなケースを想定したいろんな人の悩みが出てきます。『まず何から始めたらいいのか』『どういう相談したらいいんでしょうか』という初歩的なことから、『親戚ともめています』などといった悩みにも答えているので、それを番組と一緒にご覧になっていただければ解決の糸口が見つかるかもしれません」

ヒロミと大久保佳代子が1000万戸に迫る空き家問題に直面! 「NHKスペシャル」チーフプロデューサーの思いとは?

――早速、拝見します! 今回のキーワードは「今動く」ということだそうですが、それに込めた思いを教えてください。

細田 「自戒の念も込めてですが、ある日、急に家が崩れるわけではないので、多くの人が後回しにしがちです。例えば、ご両親が亡くなられた家も、思い出があるのですぐに壊そうとはなかなか思えませんよね。実は空き家もマンションも、手を打つのが遅くていいことは一つもないんです。もしお母さまの思いを残すんであっても、そのままにしておくのではなく、手を打つことで残せるものも増えるんです。とにかく、今何もしないでそのままにしておくのが一番もったいないことや困ること。すぐやることが、どのパターンでもいいことだと。空き家の法律もこれからどんどん変わってきて、早く動く人は優遇するけど、放置している人にはムチを振りますよみたいな感じになっていくことがもう見えているので、とにかく今やると。人口が減って新築が増えているのに、空き家が増えているというヘンテコな日本ですが、まだ今だったらギリギリ活気ある街並みを維持できるし、戻せる本当の最後のチャンスだと専門家の皆さんもおっしゃっているので、“今でしょ”という感じですね」

本間 「マンションも修理を後回しにしていけばしていくほど、お金もかかるし、取り返しがつかなくなります。壊れてからだと修繕費が高くなるので、一番いいのは予防していくことです。マンションは、最終的にはどこか壊れて立て直さなければいけなくなるんです。初めにマンションが建ってから50年たっているので、そういうことも考え出さなきゃいけない時期に来ている。こうしたことも年を取ってからだと動けなくなるので、動けるうちに頑張んなきゃいけないってことですね。本当に。話を聞いていると大丈夫なのかなと思うことがいっぱいあって心配になってきますが、早く動いたらそういうことも改善できるんじゃないかと思います」

――最後に、それぞれ明るい展望も教えていただきたいです!

細田 「空き家の回では、番組の中で“ピンチはチャンス”という話が出てきます。今、相続が日本で一番増えている時代。空き家が増えて悲しいと思うかもしれませんが、逆に言えば、その家を次の人たちが使える、新しい使い方ができるチャンスでもあるんです。本当は住みたいけど高くて住めないよと思っている人も、世田谷区に5万戸は家があるわけですから、その5万戸が世の中に出てくれば住めるんです。新しい地域に住みたいとか、そういうことを作るチャンスだというのがラストメッセージになっていますので、決して暗い話ではありません。今やれば、自分たちの好きなライフスタイルや、家との付き合い方ができるよというメッセージが番組全体から漂っています。『NHKスペシャル』は重いイメージがありますが、極めて明るい番組になっているので、前向きな気持ちを持っていただけると思います」

本間 「マンションは、同じ時期に30代の前半くらいで買うことが多いんです。全員が同じように年を取って大変になるイメージがありますが、そうならないように、いろんな年代が交ざり、若い人が入ってくると活力が違って修理に前向きになれるんです。そういったことをやっているニュータウンが出てきています。こんなふうにいろんな世代が交ざることによって解決していくことがあるんだなと、だんだん分かってくる形になっています。暗い話ばかりではないので、ぜひ安心してご覧ください」

――ありがとうございました!

【番組情報】

NHKスペシャル「老いる日本の“住まい”」
NHK総合
10月1日 午後9:00~9:49
10月8日 午後9:00~9:49
※放送終了後、1週間、NHKプラスで見逃し配信予定

NHK担当/K・H



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