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マカロニえんぴつ・はっとり、音楽誌「MG」連載最終回でaikoとロング対談2023/08/10

マカロニえんぴつ・はっとり、音楽誌「MG」連載最終回でaikoとロング対談

 現在発売中の音楽誌「MG」NO.18では、マカロニえんぴつ・はっとりの連載「会いに行く支度する。」の最終回スペシャルとして、aikoとの対談を届けている。TVガイドWebでは、楽曲制作についてやお互いのボーカリストとしての魅力、ライブへの向き合い方などについて語られた対談インタビューから一部を抜粋・加筆修正して公開する。なお、誌面では、昨年末開催のロックフェス「FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022」での共演時のエピソードや、2人が愛するユニコーンにまつわる話など、約1万字の大ボリュームで掲載。ぜひ貴重なトークをチェックしてほしい。

――はっとりくんはいつ頃からaikoさんの音楽を聴いていたんですか?

はっとり 「姉がもともとよく聴いていたんです。『桜の木の下』がお気に入りで、家族と車で出かける時とか、大抵流れていました」

aiko 「うれしい。ありがとうございます」

はっとり 「小さい頃に聴いていたものって血肉になるので、その時期にaikoさんの曲を聴いて過ごすことができてよかったなって思うんです。用語が分からないんですけど、メロディーの、ブルーノート的な…半音届かなかったりっていうのが特徴的じゃないですか。そういうのを当たり前のように自分の曲作りで入れているのは、確実にaikoさんの影響だなって。ポップスの奇麗な展開の仕方もすごく参考にしたくなるんですけど、気を付けないといけないんですよ。まねするといい曲が作れちゃうから(笑)。なので、僕はもっと変なことをするようになったんです」

aiko 「私は、その“変なことしてる”展開がすごいなと思って。最初に『洗濯機と君とラヂオ』を聴いて、『なんでこんなに後半で景色が変わっていくんやろ?』って、何回も繰り返し聴きながら夜な夜なジムで走っていました。あの曲を聴きながらだと自分も頑張れるし、つらいときはこの曲で乗り越えようと思っていたんですけど、聴けば聴くほど、アレンジから何からもう悔しくて(笑)。どうやってるんやろうって思って、そこからマカロニえんぴつを聴き始めました」

はっとり 「今、おっしゃったようなことをそのままラジオでお話してくれたんですよね。『洗濯機と君とラヂオ』が入った『s.i.n』っていうミニアルバムが出たのが2017年なんですけど、リリース直後ぐらいにキャッチしてくれて、ラジオでアレンジを褒めてくださって。それがすごくうれしかったんです。まだまだ無名の時に、aikoさんが紹介してくれるって、若手バンドにとってはすごいことじゃないですか。その感謝を直接伝えられていなかったんですけど、先日一緒にお食事させていただいた時に、初めて言えました」

――aikoさんが作詞・作曲をして、はっとりくんがシンガーとして参加した19年春のFM802キャンペーンソング「メロンソーダ」を作った時は、まだそんなに交流はなかったわけですか?

はっとり 「そうです。ちゃんとお会いしたのは去年のレディクレ(FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022)が初めてなんですよね」

aiko 「その前に『Mステ(ミュージックステーション)』の楽屋とかで一瞬ごあいさつしたぐらいです。ちゃんとお話させていただいたのはレディクレの時ですね」

――レディクレでは、「メロンソーダ」に参加したボーカリストがaikoさんのステージにサプライズで登場して、一緒に歌ったんですよね。

aiko 「はっとりくんはイヤモニ(インイヤーモニター)をしてなかったじゃないですか。鮪くん(KANA-BOON・谷口鮪)も聡くん(Official髭男dism・藤原聡)も私もイヤモニをして歌っているんですけど、はっとりくんはイヤモニなしですごい声量があって。転がし(モニタースピーカー)から聴こえてくる音もそうだし、めちゃくちゃ強かったんです。年末にいろんなフェスに出ていて、かつテレビにも出て、それでイヤモニしないであの馬力で歌えるって、もう持ってるものが違うんやなって」

――今、あの規模感でイヤモニを使わずにやっている人の方が珍しいですよね。

はっとり 「使わず嫌いってところもあるんですけどね。転がしから空気を伝わってくる感じでないと、ライブモードに切り替わらないんですよ。耳から聴こえてきちゃうと、レコーディングしている感じになってしまって。ワンマン(ライブ)だったらその会場の特性を把握しながら、モニターバランスをPAさん(音響エンジニア)と話し合ってできるけど、フェスはリハーサルの時間がないに等しいから、難しさもあるんですけどね」

マカロニえんぴつ・はっとり、音楽誌「MG」連載最終回でaikoとロング対談

――逆にはっとりくんは、ボーカリストとしてのaikoさんをどんなふうに見ていますか?

はっとり 「声がずっと変わらないですよね。僕はどんどんグレードアップしていくより、維持していく方が歌い手として大事だと思うんです。ほっといてもどんどん摩耗していくから。aikoさんは艶感とか声の成分が変わらないから、どういうケアをされているんだろうっていうのは気になります。ただ、aikoさんは自分ではそんなに喉が強くないっておっしゃっていましたよね」

aiko 「そうですね、強くないです。楽しかったら乗り越えられるんですけど。この間も気付いたらトリプルアンコールで27曲歌っていて、でも元気に打ち上げでサバ食べました(笑)」

はっとり 「次の日のしかかってきませんか?」

aiko 「次の日も普通にしゃべってました。年齢とかもあるかもしれないんですけど、若い頃に筋トレしていたりすると、もうパワーで乗り越えられない箇所は、今まで培ってきた筋肉が頑張ってくれるらしいんです」

はっとり 「使えるところを探すんですね」

aiko 「そう。20代・30代で頑張っていたものがやっと身になるのが50歳なんだよって聞いて、そうなんやと思って。私は24歳くらいのときに声帯結節をやっちゃって、そこから手術しない代わりに1カ月間無言で生活して治したんですが、また同じようになったらどうしようっていう怖さがあるんですよね。風邪を引いたりすると、1回できた声帯結節の丘ってまたすぐに出てくるんです。それとどうやって向き合うか、日常生活をどう過ごすかを考えるようになって、だからあんまり飲みに行かないんです」

はっとり 「痛めちゃってから、精神的にナーバスというか、神経質になりましたか?」

aiko 「なりました。8~9年ぐらい引きずってずっとおびえていたんですけど、そこからちょっとずつ変わっていって、もう今はどうやって楽しく歌おうかっていう気持ちになっています」

はっとり 「精神的作用というか、気持ちの部分が大事なのかもしれないですね。僕も一昨年、喉を痛めちゃって、声帯結節が2カ所できたんです。病院嫌いなんですけどさすがに行かないとなと思って、覚悟して行って。点滴で乗り切れたんですけど、それからかなり神経質になっちゃいました。でも、気にし過ぎもよくないんでしょうね。僕は、吸入器とかもやめるようにしているんです。あれに頼ると、さっきおっしゃったような、20代の地力みたいなものを育てないまま先に進んじゃいそうで。いじめるじゃないけど、使って、かれて、治して…を自力でやった方がいいのかなと最近は思っていて、吸入器を我慢するようにしています」

aiko 「めちゃくちゃ振り回しよるんですよ、声帯って。でも、いいライブができた時は、何にも変えられないぐらい気持ちいいですよね」

マカロニえんぴつ・はっとり、音楽誌「MG」連載最終回でaikoとロング対談

※音楽誌「MG」NO.18から一部を抜粋・加筆修正。

【プロフィール】

aiko(あいこ) 
1975年生まれ、大阪府出身。98年メジャーデビュー。今年7月にデビュー25周年を迎え、全アルバムの12インチアナログ盤(生産限定盤)をリリース予定。その第1弾となる「小さな丸い好日」「桜の木の下」「夏服」「秋 そばにいるよ」が発売中。8月30日には「暁のラブレター」「夢の中のまっすぐな道」「彼女」「秘密」が発売となる。

はっとり 
ロックバンド・マカロニえんぴつのボーカル&ギター。作詞・作曲を手掛けた「天才てれびくん」(NHK Eテレ)のテーマソング「ネクタリン」が配信中。8月30日にフルアルバム「大人の涙」をリリース。9月16日からアリーナツアー「マカロックツアー vol.16 ~マカロニちゃん、じつはとってもシャイなの…仲良くなっても時間を置くとすぐまだ照れちゃうからコンスタントに会ってくだシャイ…♡編~」を開催。

取材・文/金子厚武 撮影/フジイセイヤ(W)



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