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この冬、見る人の心を温めた「リエゾン」。人々に寄り添い続けたドラマの魅力を振り返る2023/03/13

この冬、見る人の心を温めた「リエゾン」。人々に寄り添い続けたドラマの魅力を振り返る

 3月10日に最終回を迎えた連続ドラマ「リエゾン-こどものこころ診療所-」(テレビ朝日系)。郊外の児童精神科クリニックを舞台に、自らも発達障害=凸凹を抱える院長・佐山卓(山崎育三郎)と研修医・遠野志保(松本穂香)のコンビが、さまざまな生きづらさを抱える子どもとその家族に真っすぐ向き合い寄り添っていく姿を描いた医療ドラマは、見る人に多くの感動を与えた。

 最終回放送後には「すごく面白かった」「凸凹への理解が深まるとっても素晴らしい作品」「続編期待しています」などの反響の声、そして続編を望む声が多く上がった本作。発達障害という難しいテーマを題材に、ここまで多くの声を集めた本作の魅力を、あらためて振り返っていく。

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 本作で一番印象的だったのは、佐山ら「さやま・こどもクリニック」の人たちがひたむきに子どもたち、そしてその家族に向き合い続けた姿だ。子どもたちが抱える凸凹をはじめ、親自身が抱えている悩み、家庭環境、学校生活での悩みをすべて受け入れた上で、その人への最適解を導き出す。「さやま・こどもクリニック」の治療は、どの病院よりも“人に寄り添うこと”に徹底した療法だった。

 第1話で佐山が志保に言った言葉──「あなたにしかできないことも、きっとあります。あなたのその凸凹に当てはまる生き方が、必ずあるはずです」──この言葉を守るかのように、佐山は終始否定をせず、丁寧に向き合い続けた。そんな佐山を演じる山崎さんの熱意と丁寧さは、毎話画面越しからでも伝わってきていた。最終話のラストで、佐山から志保へと伝えられた「あなたにしかないものがある」というセリフは、多くの人の心に刺さったのではないだろうか。

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 そんな「さやま・こどもクリニック」で一番大きく変化したのは、クリニックで研修を受けることになった志保だろう。一度は佐山から「おそらくあなたは、発達障害でしょう」と伝えられ、「私には無理だ」と夢を手放そうとした志保だが、佐山からの言葉を受け、自身の凸凹と向き合うことを決意。症状を改善するべく努力し続けた彼女の姿は、彼女に影響を与えた佐山自身にも確実に影響を与えているはず。

 また、第4話で昔のアルバイト仲間に自分が発達障害であることを打ち明けたシーンは、志保にとっての大きなターニングポイントだったのではないだろうか。カミングアウトしたことで待ち受けていたのは残酷な展開だったが、あのシーン以降、志保自身にも落ち着きが見られるなど、第1話からは驚くほどの変化が垣間見えた。

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 クリニックを支えていたのは佐山や志保だけではない。臨床心理士の向山和樹(栗山千明)をはじめ、言語聴覚士の堀凛(志田未来)、訪問看護士の川島雅紀(戸塚純貴)、受付の市川渚(是永瞳)という個性豊かな面々の存在も大きかった。冷静ながら誰よりも患者のことを考える向山、強気な性格で姉御肌な一方で情に厚い堀、普段は陽気でフランクながらも仕事への向き合い方は人一倍熱い川島、個性豊かなクリニックの面々を温かく見守る渚、全員がいてこそ「さやま・こどもクリニック」の温かな雰囲気は最後まで作られていたと感じる。

 そして、「リエゾン」に欠かせなかったのは、これからが期待される“影の主役”・子役たちだ。500人近い候補者の中から選ばれたという子役たち。毎話登場するゲスト子役の演技は本作の見どころの一つとなっていたが、見るたびに「このシーンにどれだけ準備したのか」「それぞれが抱えるバックボーンや苦悩、葛藤を踏まえてなぜここまで体現できるのか」と毎週考えさせられるほどに、子役たちの演技は光り、見る人の期待感を高めていた。

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 第1話〜第4話では、川原瑛都さん、佐藤恋和さん、浅田芭路さん、沢田優乃さん、片岡凜さん、鈴木梨央さんが登場。凸凹の一種であるADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)だけでなく、片岡さんが演じた古川朱里の摂食障害が心の病気(=精神疾患)の一つというのは、人間関係一つで症状が生まれてしまうことから、ひとごとでは見られない印象的な回となった。

この冬、見る人の心を温めた「リエゾン」。人々に寄り添い続けたドラマの魅力を振り返る
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 第5話〜最終話では、古川凛さん、石塚陸翔さん、加藤柚凪さんが登場。後半では「ヤングケアラー」「父子家庭」「過去のトラウマ」「大切な人を失ったことへの向き合い方」と、これまで以上に難しいテーマを扱っていたが、それでも繊細に、丁寧に描き続けたからこそ、見る人にも響くものがあったのではないか。

この冬、見る人の心を温めた「リエゾン」。人々に寄り添い続けたドラマの魅力を振り返る
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 さらに、第7話ゲストの南沢奈央さん演じる紺野美樹のパニック障害や、第7話と最終話のゲスト・三浦貴大さん演じる丸山浩之が抱えていた“妻を失った悲しみ”など、子どもだけでなく“大人の心”にも向き合っていたのは、よりリアリティーのあるシーンとなっていた。

 それぞれの患者がさまざまな悩みを抱えている中で、もちろん佐山や志保たちが患者たちへの解決策を見つけることもあったが、時には友人に心の内を打ち明け、時には家族で向き合ったことで、それぞれの答えを導き出して前へ進んでいたことは、佐山にも、志保にも気づきを与え、少なからず影響を与えていたのではないかと感じる。そして、それが見る人に感動を与えていた一つの要因であったのかもしれない。

この冬、見る人の心を温めた「リエゾン」。人々に寄り添い続けたドラマの魅力を振り返る

 本作の大きなテーマであった“発達障害=凸凹”。難しく、重たいテーマであるにも関わらず、毎週放送が終われば「終わるのが寂しい」「勉強になった」「もっと多くの人に届いてほしい」「見ていて涙が止まらない」など、視聴者だけでなく、発達障害当事者の方からもドラマに対する温かい声が寄せられていた。なぜ、これほどまで見る人を魅了したのだろうか。

 もちろん山崎さん、松本さんらキャスト陣が作り出す温かな空気感というのは言うまでもない。しかし、ここまで見る人の心を温かくしたのは、根本にある脚本や演出の存在が大きいのではないだろうか。本作で脚本を手掛けた吉田紀子さん(※第1話〜第3話、第5話、第7話〜最終話を担当)は、昨年映画も公開された「Dr.コトー診療所」シリーズ(フジテレビ系)を手掛けてきたが、映画でもテーマとなったのは「島の中での医療環境」について。島民同士の温かな空気感を保ちながらも、“島の中での満足いかない医療体制”という切っても切り離せないものを描き続けた。こういった、温かな空気感の中に社会的な問題に対するメッセージを伝え続けていることが、吉田さんの脚本の真骨頂であり、「リエゾン」でも見る人の心を動かしていたのだと思う。

この冬、見る人の心を温めた「リエゾン」。人々に寄り添い続けたドラマの魅力を振り返る
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 “人に寄り添うこと”を信念に、これからも「さやま・こどもクリニック」で患者と向き合うことを決めた佐山と、佐山ら「さやま・こどもクリニック」一同から温かく送り出された志保。3年間の後期研修で志保がどのように変化していくのか、どんな医師になっていくのか、気になるばかりだ。そして、一回りも成長していくであろう志保が、「さやま・こどもクリニック」に戻って、佐山らと共に悩みを抱える子どもや家族に向き合う姿を、またどこかで見られることを願いたい。

【番組情報】

金曜ナイトドラマ「リエゾンーこどものこころ診療所ー」
TVerで第1話、最終話を配信中
TELASAでは全話配信中

テレビ朝日担当 S・H



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