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三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】2023/02/21

三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】

「絵を描くことも、小説を書くことも、舞台に出ることも、“自分の中の表現を皆さんに見てもらう”というくくりでは一緒なんですよ。そのことが私はどうやら好きみたいです」。

 女優、声優、作家、イラストレーター、バラエティータレントなど、多方面で活躍している三田麻央さん。NMB48のメンバーだった頃からアニメ・漫画好きとして知られ、アニメ「AKB0048」(tvkほか)では声優メンバーに選抜。2019年にNMB48を卒業後は、ライトノベル「夢にみるのは、きみの夢」(小学館)で作家デビューを果たしたほか、数々のラジオドラマ、オーディオドラマの声優を担当。舞台への出演も間断なく、22年には4本の作品に出演した。さまざまな顔を持つが、その軸にあるのは「好き」というピュアな気持ちだ。

三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】

 2月15日~26日にかけて、東京・新宿村LIVEにて上演される舞台「INDESINENCE」。シリーズ第1弾から約2年ぶりの公演で、「Dry」と「Beautiful」の2本立てでおくるミステリー作品となっている。三田さんは、2月22日~26日に上演の「INDESINENCE Case:Beautiful Vermilion Ways」で主演を務める。

 23年は「INDESINENCE」も含め、既に3本の舞台への出演が発表されている。「毎日刺激的です。すごく楽しい」と目を輝かせる、多彩な彼女が見据えていることとは――。

稽古の段階で「スイッチをオンにできた感覚」

三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】

――主演を務める舞台「INDESINENCE Case:Beautiful Vermilion Ways」の上演を目前に控えていますが、出演が決まった時はどういう心境でしたか?

「『主演でお話をいただいています』と連絡をもらった時から、もうプレッシャーがすごくて。主演自体が2回目で経験も浅かったので、『大丈夫かな?』と緊張しながら稽古場に入ったんですけど、周りの方が映像も舞台もずっとやられているような、経験豊富な方ばかりだったんです。もちろんそれに対して緊張もあったんですけど、逆に“支えられている”という安心感が強かったです」

――先日、稽古場での最終稽古を終えたそうですね。

「そうなんです。演出家さんの要望がはっきりしていたので、自分のやるべきお芝居をすぐ見つけることができたのもありがたかったです。キャストの皆さんからも『ここはこうした方がいいと思うよ』『ここはこうした方が格好いいよ』とたくさんアドバイスをいただいて、お稽古がすごく楽しかったんですよ。そして最終稽古が終わった時、演出家さんがキャスト全員に向けて『すごくいいものを見せていただきました』という言葉を掛けてくださったんですけど、それが本当にうれしくて。なんか、まだ始まっていないのに達成感を感じてしまったくらい(笑)。あと、その日『Dry』の方のお稽古も見学させていただいたんですけど、『この2本、すてきな座組になっているな』という実感もあって…。最終稽古は終わったんですけど、初日までの間にまだまだ詰められるところは詰めたいなと思っています」

――演出家からうれしい言葉があったとのことですが、ご自身も結構手応えを感じていたのですか?

「手応えはすごくありました。私の傾向として、やっぱりどうしても頭の中でセリフを追っちゃう癖があって。役になり切れるのが、いつも本番に入ってからになってしまうんです。アイドルの時からそうで、『ライブとリハーサルで全然違うね』って言われたこともあって。自覚はないんですけど、お客さんを目の前にするとスイッチが入るみたいです。舞台の時もずっとそういう感じだったんですけど、今回はそのスイッチを稽古場でオンにできた感覚がありました。その感覚が早めにつかめてうれしかったですし、そういう空気を作ってくれたキャストの皆さんにはすごく感謝しています」

「この状況でこの言葉、“三田麻央”だと言えない」

三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】

――演じる南上宮陽子(ながみやようこ)は「復讐のために生きている」キャラクターとのことですが、演じてみていかがですか?

「陽子は、本当に強い女性。信念を貫き通すためなら自分が傷つくことさえいとわない、一本気な人です。舞台が1970年代で、昭和中期のお話なんですけど、その頃はまだ女性が社会的に弱い立場で。そんな中、ここまで自分を貫いて、1人で歩いてきた陽子って、すごく格好いいんですよ。その格好いい陽子になれるのが本当にうれしいし、何より楽しくて!! お稽古が終わると『いや~、今日のこのシーンの陽子、めっちゃ格好よかったわ~』って、俯瞰して見ちゃうくらい(笑)。強い陽子を演じて、私が一番楽しんでいます」

――ご自身は、そんな陽子と似ている部分はありますか?

「根本的な部分はめちゃくちゃ似ていると思っています。私も、やりたいことがあるから突き進む頑固なところがあって。その分、人からアドバイスをもらっても『私はこうやるから』って思ってしまうんですよね。陽子もそうなんです。1本めっちゃ太いものがあって、そこを崩すのに時間がかかるという点はすごく似ていると思います。ただ、スタンスは似ていないですね。私は結構面倒くさがりなのに頑固なんですけど、陽子は自分の目標達成のためなら、『こっちの方が効率がいいな』と思ったらそっちに全振りできちゃう柔軟さを持っているんです。根本は似ているけど、考え方は違う。だから最初はすごく苦労しました。陽子の発するセリフについて、『言葉の理屈は分かるけど、なんでこれを言うのかが分からない』って思ってしまったことがあったんです。『この状況でこの言葉、“三田麻央”だと言えないわ~』ってなると、なかなかセリフが入って来なかったり。でも、今はもう大丈夫です。楽しく演じさせていただいています!」

「自分も出てるんですけど、私が一番魅了されちゃって!(笑)」

三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】
三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】
三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】
三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】

――共演者は経験豊富な方々ばかりとのことで、刺激を受けることも多いかと思います。

「陽子側の『タリオ』のメンバーと敵対する組織があるんですけど、その組織が格好よすぎて!! 陽子からしたらめちゃくちゃ憎いし、その組織を倒すためにずっと頑張ってきたんですけど、“三田麻央”の視点が1回入っちゃうと、『格好いい~~~!!♡』ってなっちゃうんです。悪役が格好よく見えるというか、もう最高のヴィランですよね! 最初から最後までの通し稽古が終わった後の演出家さんからのダメ出しの時間では、『陽子、見ててどう思った?』と聞かれて『めっっっちゃ格好よかったです!! あんなの目の前で見せられて、殴れなかったです』って答えちゃったくらい(笑)。お芝居って、キャストが一番近くで見ることができるじゃないですか。自分も出てるんですけど、私が一番魅了されちゃって!(笑)。すごく勉強になりますし、オタクの自分としてもすごく楽しいんですよ。私がこの作品の一番のファンかもしれない(笑)」

―その熱量、すごく伝わってきます!

「めっちゃ楽しんでます!! 『ダメじゃん、一番楽しんじゃ!』『敵(かたき)、討たなきゃいけないよ!?』って分かっているんですけど、敵も味方も格好いいシーンがいくつもあって。現場にいるのがすごく幸せです!」

――いい意味で、座長としての気負いはなさそうですね。

「ないですね。変に気張って引っ張ろうとするよりも、皆さんが作り上げた空気にどれだけ溶け込めるかが大事だなって。そうやってなじんでいきながら、一つになれたらいいなと思えるようになりました。年上の方も多いですし、皆さんのお芝居を見ているとたくさん影響を受けるので、今は“座長”というよりも、みんなで肩を組んで『One for All, All for One』という感じです」

舞台は「出会いと別れを詰め込んだようなお仕事」

三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】

―今年に入ってまだ2カ月ですが、「戦国NEO原∞」「INDESINENCE Case:Beautiful Vermilion Ways」「女王幻想花劇」と、既に3本の舞台の出演が決定しています。怒濤(どとう)のスケジュールではないかと思うのですが…。

「ありがたいです、本当に。でも、終わっちゃえばあっけないというか。舞台って本当に一期一会なんですよ。1カ月間、毎日みっちりお稽古という日々を過ごしていたのに、終わったら一気に会わなくなりますし。舞台って出会いと別れを詰め込んだようなお仕事なので、そういう意味では、マンネリという言葉が一つもないんです。毎日新しいものを取り入れて、いろんな人と出会えて。いろんな人の考え方や人生観がお芝居に投影されるから、毎日刺激的です。すごく楽しいです」

――2022年は、主演を務めた「DEMON~ありがとうって言えなくて~」のほか、「純血の女王」「五彩の神楽『憫笑姫(びんしょうき)』」「キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦」と、計4本の舞台に出演。特に印象に残っている作品があれば教えてください。

「全部が身になっているし、人生の糧になっているんですけど、中でも印象深いのは『憫笑姫』です。昨年の8月に上演した劇団壱劇屋さんの舞台だったんですけど、セリフが一つもなくて、殺陣芝居だけでストーリーが進んでいく、ノンバーバルの作品でした。稽古期間もほかの作品と比べても長くて、2カ月弱。基礎から教えていただいたのですが、セリフを言わずに、身振り手振りと演出だけでストーリーを伝えるというのが思っている以上に難しくて。“魅せる殺陣”と“格好いい殺陣”が違うというのも学びました。例えば、人を殴るお芝居って、殴る時が大事なんじゃなくて、構えが大事なんです」

――なるほど…!

「『なるほど!』ってなりますよね! 舞台をストレスなく見ていただくためには、そういう細かな行動が大事だと学びました。それまでは、セリフがあって、それに伴った行動や、それに伴った演出をつけるのが当たり前だったんですけど、『憫笑姫』以降は、役のバックボーンをより考えるようになったんです。行動から見える性格を考えるようになって、芝居の面白さが分かったのが8月でした」

――セリフがない舞台は、観劇したことはあったのですか?

「それが、私も見たことがなかったんです。『どこまで伝わって、どこまで解釈されるんだろう?』と思っていたんですけど、『憫笑姫』への出演を機に、これまた私自身がものすごくファンになっちゃって!(笑)。『憫笑姫』って、『五彩の神楽』という5カ月連続企画の第1弾だったんです。毎月違う物語が、8月から12月まで続くというシリーズだったんですけど、9月の第2弾から、12月の第5弾まで、毎月観客として見に行っていました。1カ月に1回見に行って、めちゃくちゃ泣いて…。ストーリーがまたすごくよくて! 演出もすごいんですよ。“人間舞台装置”という言葉があるくらい、場面転換も、人の力で全部換えていくんです」

――充実した表情から、「好き!」という思いがすごく伝わってきます。

「好きなものを語ると熱くなっちゃうんですよ~(笑)。でも本当に、舞台ならではの熱量が伝わってくるようなお芝居だったんですよね。それがすごく魅力的で、壱劇屋さんのファンにもなったし、『また壱劇屋さんでお芝居がしたい』とも思いましたし。そういう一期一会の出会いに、いろんなものを吸収させてもらっているなとあらためて思います。一つ一つの出会いに感謝しています」

 NMB48卒業後の心境の変化や、「いなくなったらたぶん、生きていけない」という大切な仲間の存在、ターニングポイントとなった出来事について語ってもらったインタビュー後編はこちら(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2049614/)。

三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】
三田麻央からあふれる、「好き!」へのピュアな熱量。主演舞台に注ぐ愛「私がこの作品の一番のファン」【ロングインタビュー前編】

【プロフィール】

三田麻央(みた まお)
1995年9月9日生まれ。大阪府出身。A型。2011年、NMB48第2期生オーディションに合格し、デビュー。11年12月、アニメ「AKB0048」(tvkほか)の主演声優を決めるオーディションに合格し、12年4月、声優選抜メンバー9人によるユニット「NO NAME」を結成。12年8月、アニメ主題歌「希望について」をリリース。19年2月24日、NMB48を卒業。卒業後は、女優、声優、作家、イラストレーター、バラエティータレントなど、多方面で活躍。21年には、「夢にみるのは、きみの夢」(小学館)でライトノベル作家としてデビュー。現在、「#マヂカルシャドウバース」(OPENREC.tv)でアシスタントMCを務めるほか、「元乃木坂46中田花奈の麻雀ガチバトル!かなりんのトップ目とれるカナ?」(TBSチャンネル1)に司会進行として出演中。特技は進行(MC)、アニメや漫画について語り続けること、絵を描くこと。

【作品情報】

「INDESINENCE Case:Beautiful Vermilion Ways」
日程:2023年2月22日(水)~26日(日)
会場:東京・新宿村LIVE

取材・文/宮下毬菜 撮影/尾崎篤志



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