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アイナ・ジ・エンド×爪切男「死にたい夜にかぎって」のユーモアに学ぶ、“愛”「批判することが簡単な時代だからこそ、愛のある人に」2020/03/12

アイナ・ジ・エンド×爪切男「死にたい夜にかぎって」のユーモアに学ぶ、“愛”「批判することが簡単な時代だからこそ、愛のある人に」

──先ほどおっしゃっていた、脳裏にこびりついていた爪さんの言葉というのは、具体的にどの部分ですか?

アイナ 「歌詞に落とし込んだ部分で言うと“矢継ぎ早”という言葉です。身長がすごく高い女性と会うシーンで、『自分のことを矢継ぎ早に話す彼女の顔を見て』って書いてあったんですけど、私の日常会話では、人生で一度も“矢継ぎ早”という言葉は出てこなかったんです。爪さんの本を読んでその言葉を知ったんですけど、『この言葉、本当にめっちゃしゃべってそうに聞こえる言葉だな』と思って。こう、“ダダダダダ”って畳み掛けるというか。この言葉を曲に落とし込んだら、ゆっくりなテンポの中でちょっといい違和感が残るんじゃないかと思ったので、爪さんの言葉をお借りしたんです」

 「僕は曲を聴いて、言葉遣いが自然だなって感じて。“矢継ぎ早”っていうのも、そういう狙いで使ったというのは初めて聞きました。あと、ティーザーの映像を見てびっくりしました。あれ、新宿のガード下ですよね?」

アイナ 「そうです。本の中でも、『私達の愛の巣が新宿の大ガード下と同じにおいがするようになっても』というふうに出てきますよね」

 「僕、歌舞伎町のバッティングセンターで働いている時に、よくあのガード下を通って出勤してたんです。そういう思い出の場所が重なったこともあって、アイナさんの曲を聴いた時に、場所も、雰囲気も、ばっちりハマるなって感じたんですよ。僕とアスカは音楽の趣味が全く違うので、2人の共通のテーマソングみたいな曲は作れなかったんですけど、アイナさんやましのみさんの曲を聴くと、お二人が初めて、僕とアスカの物語の主題歌を本当の意味で作ってくれたような気がしたんです」

アイナ 「ありがたい…」

──なぜティーザーの撮影場所に、新宿のガード下を選んだのですか?

アイナ 「ずっとBiSHのドキュメント映像を撮ってくださっている、エリザベス宮地さんという方に今回も撮っていただいたんですけど、宮地さんはすごく人間に寄り添ってくれる方なんです。なのでこの『死にたい夜にかぎって』の曲を聴いたり、私が原作を好きだということを聞いて、ガード下にしてくれたんだと思います」

中野ブロードウェイを歩くと「ちょっとシャキッとできるんです」

アイナ・ジ・エンド×爪切男「死にたい夜にかぎって」のユーモアに学ぶ、“愛”「批判することが簡単な時代だからこそ、愛のある人に」

──作中にはゆずの「夏色」やフジファブリックの「茜色の夕日」など、印象的な光景と深く結びついている音楽がいくつも登場しますが、アイナさんにとってそんな曲はありますか?

アイナ 「いろいろあるんですけど、うーん、何を挙げましょう…(爪さんの方を見て)」

 「僕は答えない方がいい(笑)」

アイナ 「答えないんですか?」

 「僕が答えたら、風俗店で反省文を書かされた時に流れてた曲とかになります(笑)」

アイナ 「反省文?(笑)」

 「反省文を書いてる時、ずっと『Beat It』が流れてて、それがすごく嫌で(笑)。なんでこんな目に遭ってるんだろうって…。本番強要とかじゃないですよ?」

アイナ 「あー…(苦笑)」

 「違います!(笑)。なんか、イメクラのプレールームで越えちゃいけないビニールテープを踏んじゃったらしくて。それで反省文を書く羽目に…」

アイナ 「あ、前に言ってましたね(笑)」

 「店員さんに怒られている間もずっと『Beat It』が流れてるから、マイケル・ジャクソンも浮かばれねぇなぁ…って。そういう思い出しか出てこないから、アイナさんどうぞ(笑)」

アイナ 「この後に言うとかすむんですけど…(笑)。私はデミ・ロヴァートの『Skyscraper』という曲です。悲痛な叫びを優雅に歌っている感じが、ただの歌じゃない感じがして。自分の上京した時の心境と似ていて、その頃はずっと聴いていました」

──アイナさんは、上京して中野にお住まいになったんですよね。爪さんも中野で同棲されていたとのことですが、中野で思い入れのある場所はありますか?

アイナ 「爪さん、あれは? パスタの…」

 「『ポポラマーマ』? あれは(神奈川県の)相模大野にいた時かな」

アイナ 「『ポポラマーマ』、めっちゃ行ってみたいんです!」

 「相模大野のお店はなくなってしまって」

アイナ 「え~。残念です…。私は中野の街並み自体が好きです。中野ブロードウェイの中のお店って、20年、30年、40年と続いているお店も多くて、おじいちゃんが働いていたりするんですけど、そのおじいちゃんの娘さんなのか、私と同い年くらいの女の子が働いているお店もあるんです。そういう光景を見ると、自分がすごくちっぽけに感じるというか。そこを歩くと、ちょっとシャキッとできるんです。今はたまにしか行けないんですけど、ブロードウェイの街並みは好きです」

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