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現役引退の福士加代子さん、初の自著を出版! セルフタイトル「福士加代子」に込めた思い2022/03/17

現役引退の福士加代子さん、初の自著を出版! セルフタイトル「福士加代子」に込めた思い

 オリンピックに4度出場し、今年1月に現役を引退した元マラソン選手の福士加代子さんによる初の著書「福士加代子」(いろは出版)が、2月19日に発売。全日本実業団対抗女子駅伝で怒濤(どとう)の16人抜き。3000m、5000m、ハーフマラソンで8本記録を樹立。オリンピック4大会連続出場。本作では、そんな日本を代表するアスリートとして20年以上にわたって活躍してきた福士さんの、失敗と成功を繰り返しながら走り続けた競技人生が語られています。このたび、大阪・北区のカンテレ本社にて、出版を記念した取材会が開催されました。

「自分の考えが整理できました」

現役引退の福士加代子さん、初の自著を出版! セルフタイトル「福士加代子」に込めた思い

◆引退後の近況は?

「ジョギングは毎日はしていないですね。今日走ったのも1週間ぶりでした(笑)。引退してすぐの1週間から10日くらいは本当に何もしていなかったんですけど、今もワコールの社員なので、毎日ではないですが、9時に出勤して5時半頃まで働いています。会社に行けば、だいたい面白いことがあるので、充実しています。現役を引退してからの方がやることが多くて、時間がたつのが早いです。私はスポーツグループに所属しているのですが、自分のスケジュール管理をしたり、事務作業をしたり。会社に行くと社員の誰かしらが話し掛けてくれて、話し始めると2、3時間があっという間にたってしまうので(笑)、気付いたら『もう4時か』という感じです」。

◆本作では、自身の名前がそのまま本のタイトルに。

「気に入っています! タイトルはみんなでたくさん出し合った中から決めました。最初は『丸裸』みたいなイメージだったんですけど、出来上がってみると内容も本当に『福士加代子』だなと思います。書いていくうちに、自分の中でいろんなことが整理できました。『誰かに何かを伝えたい』というより、『自分の本だな』と感じています。なので、気が向いた人に読んでもらえたら(笑)」。

◆監督、恩師、家族、友人に加え、後輩ランナーの田中希実さん、一山麻緒さん、新谷仁美さん、小林祐梨子さんからの証言も収録されている本作。なかでも印象に残ったメッセージは?

「いろんな方が私について書いてくださって、あらためて知ったことも多くて新鮮でした。なかでも田中希実ちゃんのメッセージは、そこまで真剣に考えてくれているんだということが分かってうれしかったですね。彼女は言葉にするのが上手なので、『私、そういうふうに言いたかったんだ…』ということが分かって、自分の考えが整理できました。田中先生ですね(笑)。最初は後輩にメッセージをお願いしたら、言わされてる感が出るんじゃないかと思って『本当にやめて』って言ってたんですけど、じゃんじゃん載せてもらってよかったです(笑)。おかげでいい本になりました」。

けがのせいにして、しっかり休むことも大切

現役引退の福士加代子さん、初の自著を出版! セルフタイトル「福士加代子」に込めた思い

20年以上に及んだ競技人生、長く活躍できた秘訣(ひけつ)は?

「けがのせいにしてしっかり休んだからですかね。『けがなんだから仕方ない』と悠々と休んだおかげで、違う部分が見えてきました。いろいろな人にも助けてもらいました。すると、けがが治ってくると『またやろう』って思えたんですよね。けがが治った後の練習も、無理して多くすることはなかったです。『けがしたんだから、最初は10分でいい』って感じで。そのおかげですね。けがのたびに、新しい体の使い方が分かってくるのも楽しかったです」。

◆競技人生で、印象的だった時期は?

「オリンピックはやはり、4年、8年、12年、16年で基準になっていました。一番苦しかったのは2004年のアテネオリンピックの前後です。アテネで有終の美を飾るつもりだったので、次もやるという決意に至るまでが難しかったですね。2016年のリオデジャネイロオリンピックは、次やるもやらないも、どちらでもよかったので、そんなに苦しくはなかったです」。

解説を務めた3月13日開催の名古屋ウィメンズマラソンのほか、今冬の大会では、高性能シューズの影響で男女ともに好タイムが続出しています。

「シューズがよくなったことでタイムが上がりましたが、それは日本選手だけではなく、海外勢も同じです。海外選手との差を埋めるには、根本的に自分の走りを改善するしかないと思います。シューズがよくなったぶん、日本人選手はシューズの性能を生かした走りをした方がいいと思います。その方が楽に走れると思います」。

「復帰はないと思います」

現役引退の福士加代子さん、初の自著を出版! セルフタイトル「福士加代子」に込めた思い

◆現在、株式会社ワコールにおける女子陸上競技部のアドバイザーを務めている福士さん。今後は?

「(解説者としては)今後も求められたらやります。ただ、復帰はないと思います! ワコールは女性が活躍する企業なので、今後、自分が何をやれるのか考え中です。一社員として、元陸上選手として、一女性として。どんな切り口でもいいなと思っています。例えば、もしワコールの中に保育園や幼稚園ができたら、園長先生になりたいなと思っています(笑)。陸上部の選手に教えに来てもらって、そこで過ごした子どもたちが将来的にワコールに戻ってきたら、すごくいい循環ですよね!」。

◆初版は7000部発行。さらに3000部増刷され、現在10000部を突破していますね。

「目指すところは100万部! 以前、10万部って言いました?(笑)。10万より100万の方がいいじゃないですか!(笑)。後書き前の『加代子のタイムカプセル』の章では、ちょっとでもニュアンスが違ったら嫌なので、校了ギリギリまで書き直したんです。本当に素直に書いた一冊です。監督や先輩、後輩、いろいろな方に、いろいろな切り口で書いていただいて、助かりました。ありがとうございました。とっておきの福士加代子が入っているので、ぜひ手に取ってみてください!」。

現役引退の福士加代子さん、初の自著を出版! セルフタイトル「福士加代子」に込めた思い

【プロフィール】

福士加代子(ふくし かよこ)
1982年3月25日生まれ。青森県出身。青森・五所川原工業高校で陸上を始め、2000年にワコールへ入社。02年、3000mと5000mで当時の日本新記録をマーク、10000mでも日本選手権6連覇を果たすなど、「トラックの女王」と呼ばれた。ハーフマラソンでは06年に当時の日本新記録を樹立。08年の大阪国際女子マラソンでマラソンに初挑戦し、13年の世界選手権モスクワ大会で銅メダルを獲得。トラック種目で04年のアテネから12年のロンドンまでオリンピック3大会連続出場。16年のリオデジャネイロオリンピックにマラソンで出場し、日本の女子陸上選手で初めてオリンピック4大会連続出場を果たした。また、全日本実業団対抗女子駅伝では20年間で通算108人抜き、世界選手権は5大会出場するなど、日本女子長距離界の第一人者として活躍。22年1月30日の大阪ハーフマラソンを最後に、第一線を退く。

文/宮下毬菜(関西テレビ担当)



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