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町あかりのプレイリスト~テレビのうた~◆その8:心が晴れるバラエティーソング5選2023/01/21

町あかりのプレイリストリスト~テレビのうた~」その8:心が晴れるバラエティーソング5選

 日本でテレビ放送が開始してから、2月1日で70年。ドラマ主題歌やCMソングなど、テレビによって国民に周知された楽曲は無数にあります。そこで昭和から令和まで、テレビを通して愛された楽曲について、平成3年生まれのシンガー・ソングライターの町あかりが、独自の目線で語る連載が「町あかりのプレイリスト」です。

 さて、2023年がスタートしました! 1年の目標を掲げたり新しいことを始めてみたりと、年の初めは気合が入るものです。一方で年末年始の楽しかった休暇が名残惜しく、ちょっぴり憂鬱な方もいるかもしれませんね。

 第8回では「心が晴れるバラエティーソング5選」と題して、バラエティー番組を通じて人々に愛されてきた珠玉の楽曲をセレクト。聴けば晴々とした気持ちになって、福が舞い込むようなリストを作ってみました。

 1曲目は、矢島美容室「ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ-」(08年)。とんねるずとDJ OZMAが扮(ふん)し、プロデュースした3人のユニットです。フジテレビ系バラエティー番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」内の企画として、本曲でデビュー。作曲もDJ OZMAが担当し、アッパーなフィリー・ソウルで華やかなストリングスにうっとり! リリース当時、私は高校生でした。まだドラァグクイーンという言葉を知りませんでしたが、ザ・スプリームスを意識したスパンコールのドレスに身を包んだ3人の姿を見て、友人と「かわいい! 面白い!」と盛り上がったのを覚えています。彼女(彼)たちはネバダ州から来た親娘という設定のキャラクター。外国人である3人が第三者として日本を観察し、時に疑問を抱きながらも日本を愛する様子が描かれています。鋭いメッセージが込められていることを今回初めて知り、驚かされました。風刺は効いているけど、あくまで前向きなところが大好きなポイントです。

 次は、「ピンポンパン体操」(1971年)。フジテレビで放送された、子ども向け番組「ママとあそぼう!ピンポンパン」がきっかけで生まれた楽曲。番組内でお遊戯のコーナーに使われたところ、視聴者の問い合わせが殺到したことでレコード化されたそうです。個人的には、出だしの「ズンズンズン…ピンポンパンポン♪」のメロディーに、ただ明るいだけではない、妙な毒っ気が含まれているように感じます。作曲は小林亜星、作詞は阿久悠。お二人は子どもの目線に立って、無邪気な心で作ったのではないかと思うのです。これが子どものハートをガッチリつかみ、レコード売上260万枚以上を記録する大ヒットにつながったのではないでしょうか。歌詞には、当時流行していたワードのパロディーが織り込まれているそうで、印象的な「がんばらなくちゃ♪」は栄養ドリンク・新グロモントのキャッチコピーが由来だそうです。「頑張れよ」でも「頑張りなさい」でもなく「がんばらなくちゃ」というのが絶妙ですよね。歌中で奮闘しているトラのプロレスラーの独り言のようにも思えて、押し付けがましくない励まし方が令和を生きる人々にもピッタリ。なんともかわいい、人生の応援歌なのです。

 次は、ハナ肇とクレージーキャッツ「スーダラ節」(61年)。彼らのデビュー曲であり、戦後の歌謡曲を代表する名曲です。同年4月にスタートした日本テレビ系音楽バラエティー「シャボン玉ホリデー」内でも歌われ、きっと放送翌日は日本全国至るところから「スイスイ♪」と口ずさむ声が聞こえたはず。作曲は、クレージーキャッツのほとんどの楽曲の作曲・編曲を手掛けた萩原哲晶が担当。作詞は青島幸男によるもので、真面目すぎる性格の植木等はこの歌詞を読んで歌うことを躊躇(ちゅうちょ)したそうです。しかし僧侶であるお父さんから「『わかっちゃいるけどやめられない』というのは親鸞の教えに通じる」と背中を押されたというエピソードは、あまりにも有名です。近年多くの人が、気が付けばすぐにスマートフォンをいじってしまい脳が休まらないと言われていますね。こんな時こそ「スイスイ スーダラ♪」の出番。ところでスイスイって、何だろう?と考えたあなた。意味なんてありません。植木さんのただの口癖だったそうですから。余計なことを考えずただ言葉のリズムに身を委ねることで、疲れた脳もスッキリするはずです。

 4曲目は、坂本九「上を向いて歩こう」(61年)。初めは作曲家の中村八大が自身のリサイタルのために作った楽曲で、後に坂本さんのシングルとしてレコーディングされることになったそうです。NHKのバラエティー「夢であいましょう」内のコーナー「今月のうた」がテレビ初披露。爆発的なヒットは国内のみならず、「SUKIYAKI」のタイトルで全米1位を獲得したという、言わずと知れた世界的大ヒット曲です。先日もNHKの番組でこの楽曲が取り上げられていて、そこで当時アメリカの番組「スティーブ・アレン・ショー」に坂本さんが出演した際の映像を見ました。臆することなく堂々とした、むしろ気合の入りまくった歌唱に感動! 海外の人々は歌詞の意味を知らずに聴いていたはずですが、その美しいメロディー、言葉の響き、そして情感あふれるボーカルから「希望」を感じたのかもしれませんね。

 最後は、はっぱ隊「YATTA!」(01年)。フジテレビ系で放送されたバラエティー「笑う犬の冒険」のコント内で歌われた楽曲です。ウッチャンナンチャンの南原清隆さんを隊長とした芸人メンバーたちが、股間にはっぱ1枚の姿で動き回り突然歌い始めるコントで、私も子どもの頃大好きでした。海外でもネットを通じて世界中に広まり、なんとアメリカの番組「ジミー・キンメル・ライブ!」にはっぱ隊がゲスト出演したこともありました。そういえばこの年はアメリカ同時多発テロをはじめとした、戦闘にまつわるニュースの多い年でした。きっと世界中の人の心を癒やしたことでしょう。クラシックの「カノン」と同じコード進行である点も、世界中で愛されるポイントの一つでしょう(作曲はDANCE☆MANが担当)。そして何と言っても、はっぱ隊のルックスの面白さの前に、言語の壁はありませんね。

 しかしあらためて聴くと、はっぱ隊メンバーが作詞をしたこの歌詞が最高なのです! 「お水飲んだらうめー!」「息を吸える 息を吐ける」「生きているからLUCKYだ」という、小さな幸せを大切にするマインドに胸を打たれます。人間はつい不幸だけを数えてうらやんでばかりいる、欲深い生き物なのかもしれません。まずは身近にあるたくさんの幸せにきちんと感謝しなくちゃ、と思わされます。くだらないように見えて、実は大切なメッセージが詰まっているという点は、同じコメディー班である「スーダラ節」から受け継がれたものかもしれませんね。

 いかがだったでしょうか? 今回のプレイリスト(Spotify)はこちらから!
>>https://open.spotify.com/playlist/5gKiozMEpImwF1UuDKkOHs?si=c72040fd5cc64a48

町あかりのプレイリスト #6「晩秋!大人の昼ドラ主題歌4選」Spotify

 “1年の計は元旦にあり”と言いますが、よくあるのが最初だけ気合を入れて頑張って、徐々に尻つぼみ…というやつ。しかし、物事の達成にはとにかく継続。モチベーションの長期的な維持が重要だそうです。そこで長く続けるコツは、考えすぎずに力を抜いて楽しむこと! そんなことも「スーダラ節」や「YATTA!」などの名曲が自然と教えてくれます。

 充実した1年になるか、「やっておけばよかった…」と後悔の1年になるかは自分次第ですね。そこで今回のプレイリストを聴いて、音楽のパワーを借りれば怖いものなしです! みんなで明るく希望にあふれる1年にしていきましょう。

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町あかり

シンガー・ソングライター。2010年から活動を始め、作詞・作曲、編曲、執筆、イラストや衣装制作まで自身で行う。19年には、ビクターエンタテインメントからメジャー5thアルバム「あかりおねえさんのニコニコ♡へんなうた」をリリース。20年10月に、日本コロムビアから初のカバーアルバム「それゆけ!電撃流行歌」を発売。ほか、アーティストへの楽曲提供も行う。映画「男はつらいよ」と昭和歌謡曲、そして文鳥を愛する。最新アルバム「総天然色痛快音楽」が好評発売中。

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