第43回向田邦子賞受賞記念 兵藤るりインタビュー2025/05/07 13:30

現在のテレビ界を支える優秀な脚本作家に贈られる向田邦子賞の第43回選考会が開催され、昨年10~12月に放送された「マイダイアリー」(テレビ朝日系=ABCテレビ制作)の脚本を担当した兵藤るり氏が受賞。最年少で受賞した気持ちや作品に込めた思い、今後挑戦したい作品などを明かした。
――受賞されたお気持ちは?
「憧れの賞だったので、うれしかったです。去年もノミネートしていただきましたが、今回、受賞できてホッとしました」
――28歳での受賞は最年少ですが、それに関してはいかがですか?
「自分としては、どんな作品でも“これが最後かもしれない”と思って書いているので、年齢は関係ないと思います。まだ自分に余裕がなさ過ぎるというのもありますが、書くと毎回ヘトヘトになって、書き終えた時に“また書けるんだろうか?”と思えるぐらい疲れ切るんです。そんなこともあって、毎回最後かもと感じています」
――それは、作品ごとに自分を全部出し切る気持ちで書いているということですか?
「そうですね。以前、大学院で坂元裕二さんのゼミに所属していた時に『楽をして書くな。楽をして書いたものは絶対にバレる』と言われたことがすごく心に残っていて。なので、ストイックに、“今自分の持っているものを全部出し切っているか?”と何度も自問自答するスタイルで書いています」
――受賞作「マイダイアリー」に込めた思いを教えてください。
「自分が若いうちは、若い人に向き合っていこうと思っていて。そうした中で、大学生5人の話が出来上がっていきました。作品を作る上で“明日ぐらいは生きてみてもいいかな”と思ってもらえるような元気を届けられたらいいなと思っています。ここ数年、自分の作風に関して手探り状態が続いていて、その中で、夜ドラ『わたしの一番最悪なともだち』(2023年/NHK総合)を書いた時、日常を描き込んでいくことの楽しさを感じたんですね。それで、“次の作品では、その方向性に1回振り切ってみよう”と。今は考察モノや息もつかせぬ展開のドラマが多いですが、あえて事件は起こさずに、日常をストイックに描く作品を書いてみたかったんです」
――劇中には、ご自身の経験を生かした描写もありましたか?
「自分の経験というわけではないですが、ある人をイメージして書いたエピソードもありました。例えば、まひる(吉川愛)のトラウマに対する考え方は、自分の知人を思い浮かべながら、その人に伝わってほしいなって思いながら書きました」
――今回の作品は、どういう点が評価されたと思いますか?
「自分はまだそんなに作品数を残したわけではないですし、まずは基礎を固めている段階だと思っています。だからこそ、徹底的に日常を描き切ることを重要視したいと思っていて、そうした思いや、私が普段日常生活を送る中で見ている目線みたいなものが伝わったのかなと思っています」
――今後、書いてみたい作品は?
「淡々とした日常を追っていく作品が続いているので、その正反対で、ホラーや復讐(ふくしゅう)劇といった負の感情を描いてみたいです。今までやってこなかった世界観に、自分の日常に対する目線を持っていったらどうなるのかなと思って。日常を描き込むことで基礎を固めつつも、展開で見せていくことも両立できるようになりたいです」
――最後に、脚本家を目指す若い方々へメッセージをお願いします。
「一番大事なのは、続けることだと思っています。自分は中学・高校時代、部活が全く続かなくて、それがコンプレックスでした。唯一なんとか続けられていたのが脚本だったので、それだけはやめずに続けようと思ってきました。とにかく、1日1文字でもいいから書き続けること。それを乗り越えて行った先に、何かあるんじゃないかと今も強く信じています」

【プロフィール】
兵藤るり(ひょうどう るり)
1996年12月29日生まれ。東京都出身。大学を中退後、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻脚本領域に進学した。ドラマ「就活生日記」(2020年)で脚本家デビュー。夜ドラ「わたしの一番最悪なともだち」(23年)で「第42回(2023年度)向田邦子賞」にノミネートされた。
<向田邦子賞とは>
故・向田邦子さんがテレビドラマの脚本家として、数々の作品を世に送り出し活躍してきた功績を称え、現在のテレビ界を支える優秀な脚本作家に贈られる賞として、1982年に制定。選考は歴代受賞者らによる向田邦子賞委員会が担当。前年度に放送されたテレビドラマを対象に、選考委員がノミネート作品を選定。本選を含めて4回の討議を経て受賞作品を決定している。選考委員は大森寿美男氏、岡田惠和氏、大森美香氏、井上由美子氏、坂元裕二氏(向田邦子賞受賞順)。
取材・文/水野幸則 撮影/蓮尾美智子
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