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「坂道のアポロン」聖地巡礼。きらめく青春の舞台、長崎・佐世保の街を歩く2018/03/16

 3月10日に公開された映画「坂道のアポロン」。インターネットTVガイド・博多ニュースでは、映画のロケ地となった長崎県佐世保市で同市観光課を取材。そして「聖地巡礼」として、主人公たちの青春の足跡をたどっていく。

 某日、博多駅からJR「特急みどり・佐世保行」に乗車。博多からは、およそ2時間。早岐駅から佐世保駅前までは進行方向が変わり、後ろ向きで進んでいく。何とも不思議な感覚だ。そして、JR最西端駅・佐世保駅に到着。まずは、この映画にとって欠かせない「坂道」を歩く。佐世保駅からはバスで約10分。「佐世保市役所前」で下車。バスを降りると、原作の舞台にもなっている佐世保北高へと続く坂道が目に入る。劇中では「佐世保東高」という架空の学校名になっている。

街のあちこちに「忌々しい坂」

 転校初日、重い足取りで「佐世保東高」に続く坂道を上る西見薫(知念侑李)。そこは北高前にある八幡坂。映画でも原作と同じこの坂が舞台となった。「忌々しい坂だ…」という薫のせりふが印象的だが、まさに「忌々しい」。一見緩やかなようにも思えるが、実際に歩くと曲がりくねっていて、地味につらさを感じる傾斜と長さ。登下校のシーンでは、実生活でこの坂を上り学校へと通う北高の生徒、およそ80人がエキストラとして参加した。

 劇中では、昭和を感じさせるオート三輪のトラックが車道を走るなど、昭和を意識した細かな演出にも注目したい。登下校のシーンをはじめ、何度か登場する坂。恋をしたとき、友情が芽生えた時、いつもどのような気持ちでこの坂を上っていたのか、そのときどきの薫の心情を想像しながら登っていく。

 坂の上、校門の前から周りを見渡す。そこから見えるのは佐世保市役所や緑の山々、そしてその山に張り付いたように並ぶ家。そして、目の前に長く伸びる坂。物語の後半、薫と川渕千太郎(中川大志)が清々しい笑顔で駆け下りていく姿が目に浮かび熱くなる。2人をまねしてこの坂を全力疾走で下りる時には転ばないよう気を付けたい。

 八幡坂を下ったところには、亀山八幡宮がある。ここは、映画のクランクインとなった場所で、薫と千太郎が初めて仲たがいをするシーンが撮影された。

 神社の脇の道も通学路として使用されている。神社の脇や、階段の上から2人のけんかを傍観していた一生徒の気分を味わった。

 続いて、峰坂町にある「峰坂」へ。この坂も登下校のシーンで使用されている。千太郎が「リッコ(迎律子/小松菜奈)、お先!」と軽い足取りで、いつものようにムカエレコードの地下室へ向かう姿を思い出す。

 坂はどこまで続くのだろうと感じるほど長い。坂の上からは、佐世保の街並みが展望できる。実際に見える景色と物語の中の景色、その違いを見つけるのも楽しみ方の一つかもしれない。物語では、八幡坂、峰坂、亀山八幡宮の前の坂が「佐世保東高」へ続く通学路として描かれている。

★~裏話~★
峰坂は監督がロケハンに来たときに「ぜひ使いたい!」と印象を受けた場所の一つ。非常に細く、車の立ち入りができないこの坂道での撮影は、すべてスタッフが人力で機材などを運んで行われたそうだ。

 そして、初めてジャズに触れた薫が「モーニン」のレコードを買い、その興奮をかみ締めながら歩いた白南風(しらはえ)町の坂道へ。峰坂からは徒歩で25分ほど。立派な石垣を持つ住宅が立ち並び、階段や坂道の起伏に富んだエリアだ。

 買ったばかりのレコードを手にし、坂を上っていく薫の足取りは力強く、高揚感あふれるような表情が非常に印象的だった。

 これまで佐世保の街を歩いていると、目的地に向かうまでの道にも「坂、坂、坂!」と、とにかく坂が多い。物語では、薫のそのときどきの心情と坂道の描写が連動しているようにも感じられた。

ジャズがつなぐ友情

 薫と千太郎を強く結び付け、この作品には欠かせない「ジャズ」。映画の中で流れるジャズ音楽は一度聴くと耳に残り、つい口ずさんでしまう人も多いのではないだろうか。佐世保は古くからジャズが根付く「ジャズの街」。街にはジャズバーが並び、佐世保駅からバスで5分ほど、全長1km、日本一長いともいわれる一直線の商店街「さるくシティ4〇3アーケード」も歩いていると、どこからかジャズ音楽が聴こえてくる。

 アーケードを少し外れ、細い路地を入っていくと外国人バーの通りがある。劇中では、多数のネオン看板を設置し“淳兄”(ディーン・フジオカ)行きつけのジャズバーが並ぶ通りとして描かれており、幼い頃の千太郎が初めてジャズに触れたシーンでも使用されている。薫と千太郎が淳兄とセッションをする店内は、長崎市内のライブハウスで撮影。佐世保市在住の外国人エキストラも参加したという。

 物語の中だけではなく、この通りは普段から外国人やジャズ好きの人たちでにぎわう。特に、米軍の船が佐世保に到着した時には朝まで盛り上がっているそうだ。映画の撮影期間中も、撮影が終わった後にはスタッフらがプライベートで足を運ぶこともあったとか。

「一生ものの出会い」を生んだ青春のメインステージ

 佐世保市役所前からバスで約10分「堺木」で下車。そこから、ゆるやかな坂と階段を上ると、瀬戸越町「眼鏡岩」に到着する。深堀百合香(真野恵里菜)が千太郎をモデルにスケッチするシーンが撮影された場所だ。

 百合香はこの階段にモデルとして座っている千太郎を見て「アポロンみたいね」と呟く。百合香目線で千太郎を見つめるとこのような感じだろうか(画像右)。この場所は、原作でも「逢引岩」として描かれている。

 そして、3人が通う学校内のシーン。「昭和の雰囲気のある古い学校」を意識し、市内にある早岐中学校、廃校となった旧花園中学校で撮影された。

 早岐中学校の音楽準備室では薫と律子の文化祭実行委員のシーン、渡り廊下では薫と千太郎のけんかのシーンが撮影された。そして、この作品の中で最も印象深い文化祭の演奏シーン。このシーンは、旧花園中学校の体育館で2日間かけて行われた。2日間のエキストラには北高の在校生、卒業生など総勢650人ほどが参加した。また、旧花園中学校はスタッフルームとしても使用されており、知念さんは撮影期間中も体育館でピアノの練習をしていたという。これらは敷地内へ立ち入ることはできないが、旧花園中学校は北高から歩いて20分ほどの距離。約10カ月という練習期間を経て、ドラムとピアノで本格的な演奏を披露した感動のシーンはこの場所で誕生したのだ。

それぞれの道、感動のクライマックスシーン

 物語のラストシーンが撮影されたのは黒島天主堂。黒島は、相浦港からフェリーで約50分。映画「母と暮らせば」では長崎市の黒崎教会にて撮影が行われたという経緯もあり、今回も入念な準備と交渉の末に教会内での撮影が実現したという。撮影時は天主堂内にピアノとドラムセットを搬入。そしてここは映画のラストシーンであり、撮影のラストでもあった。クランクアップを迎えた時にはキャストスタッフ、観光協会の面々が感極まり、涙を流したという。黒島天主堂は世界遺産候補ともなっており、今後も注目したい場所だ。

★裏話★
物語にはもう一つ教会が登場する。千太郎と律子がミサに通い、薫と律子の待ち合わせや、千太郎が薫に過去を告白し、二人が寄り添うシーンが撮影された浅子町の浅子教会。中川さんは、撮影が早く終わった時や休みの日には朝早くから黒島や浅子の海へ釣りに出かけていたという。

海と緑の島々、佐世保の美しい風景

 物語には、佐世保の豊かな自然が数多く登場している。昭和も現代も変わらない展海峰から望む九十九島の風景。当初は予定にないシーンだったが、同市からの強い要望もあって冒頭シーンでここからの景色がスクリーンに映し出された。また、3人が夏休みに海水浴へ出かけるシーンは俵ケ浦町の白浜海水浴場で撮影。海のシーンが撮影されたのはなんと5月。まだ少し肌寒い中、市民エキストラも参加し、どこか甘酸っぱく、まぶしい夏の日差しを感じさせるシーンが描かれている。

こぼれ話

 この作品で印象的な「佐世保弁」は原作アニメと同じ、声優・宝亀克寿さんをはじめ、市の職員も現地指導。千太郎や律子が話す“濃い”佐世保弁にも注目したい。

 また、1カ月半の撮影期間で、好評だった佐世保グルメは「クールソフト」「レモンステーキ」。名物「佐世保バーガー」は知念さんが差し入れをしてくれたそうだ。筆者も博多へ戻る前、佐世保駅近くのスーパーへ立ち寄り、クールソフトとレモンステーキのソースを購入した。佐世保バーガーは、また次の機会にしよう。

 今回、博多ニュースでは3人が学生生活を過ごした場所を中心に巡った。撮影当初は東京での撮影も予定されていたものの、熱い思いが実を結びオール九州ロケが実現したという同作。物語には佐世保、そして九州の美しい自然と、どこか懐かしさを感じる温かさが詰まっている。同市観光課をはじめ佐世保観光コンベンション協会や観光連盟、大分県豊後高田市のフィルムコミッションなどはロケ地マップを制作。特設サイト(https://www.sasebo99.com/apollon/)ではロケ地巡りのモデルコースなども紹介している。

 恋、友情、音楽をテーマにおくる青春映画「坂道のアポロン」は、全国の映画館で公開中。

【公開情報】

「坂道のアポロン」
公開中

出演:知念侑李、中川大志、小松菜奈、真野恵里菜、山下容莉枝、松村北斗(SixTONES/ジャニーズJr.)、野間口徹、中村梅雀、ディーン・フジオカ
監督:三木孝浩
脚本:高橋泉
原作:小玉ユキ『坂道のアポロン』(小学館『月刊flowers』FCα刊)
製作幹事:アスミック・エース、東宝
配給:東宝=アスミック・エース
制作プロダクション:アスミック・エース、C&Iエンタテインメント
<公式サイト>http://www.apollon-movie.com/

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