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相葉雅紀×池井戸作品×月9のすべて 「ようこそ、わが家へ」フジテレビ・羽鳥健一プロデューサーロングインタビュー2015/02/20

“理想的な息子”から“大人の魅力”へ

 僕と相葉さんの初仕事は約15年前。嵐が結成した年の1999年、W杯バレーと連動した嵐出演のドラマ「Vの嵐」でプロデューサーを務めていたんです。だから10代の頃の相葉さんをよく知っていて、本作が決定して15年ぶりにお仕事でご一緒するのですが、32歳になられていることもあって、とてもしっかりした大人の男性になっていらしたんですね。もちろん活躍している姿は拝見していましたが、最近あったことや、この作品についての話をする中で、礼儀も含め、コメントも立ち振る舞いも大人で。それでいてバラエティー番組で見られるかわいらしさは変わらず。また、メンバーの方たちからツッコまれている時に感じられる、どこかかよわい雰囲気など、おそらく視聴者の皆さんが相葉さんに思われる「相葉くんってこういう感じだよね」という雰囲気やキャラクターは、当時のままだったんです。

 ほかにも制作スタッフが同席していましたが「こういう息子がほしいよね」と(笑)。“理想的な息子”の代名詞のような方かもしれません。そんな相葉さんの魅力と、今まさに大人の男性へと変化する過渡期にいる彼の雰囲気は、主人公の倉田健太という役柄にドンピシャです。キャラクター作りの詳細はこれからですが、デザイナーという役の設定がある中で「ファーストインプレッションは頼りない雰囲気にしようか」とか、髪色髪型など容姿も含めてこれから話し合っていく予定です。相葉さんは月9初主演ということに関して、やはり大変プレッシャーを感じられているように見えました。

フジテレビ流の池井戸作品ドラマ化のカタチ

 本作を制作するにあたり、原作の池井戸潤先生からは大胆なアレンジを施すことを了承いただきました。まず第一に、原作では、健太の父で、ドラマでは寺尾聰さん演じる太一が主人公でしたが、そこは相葉さん演じる息子・健太に。そして4月クールなので、原作では季節が夏だったところを春に置き換え、見てくださる方々の“カレンダー感”に合わせた作りにします。また、ドラマ版のオリジナルキャラクターも登場します。連続ドラマということもあって、原作のエピソードだけでは足りない部分にオリジナルキャラを配置した話で肉付けをし、「フジテレビが池井戸作品をドラマ化したら、こうなるんだ!」という形を提示していきたいと思っています。また、家族間のユーモラスなやりとりも描きたいと考え、有村架純さん演じる妹・七菜はしっかり者、南果歩さん演じる母・珪子はかわいらしい天然キャラにし、原作が持つホームドラマ感をさらに濃く演出できればと。

 本作は基本的にはサスペンスですが、ただストーカーが怖いとか、不正をする営業部長が怖いといった風には描きません。家族の会話をコミカルにすることで、平和で平凡な家庭が危機に瀕してしまうところを描き、その緩急のある展開で、視聴者に「倉田家が大変だ。応援したい!」という気持ちになってもらえるようにしたいからです。例えば、原作にもある、何者かに花壇を荒らされ、花が抜かれてしまう場面では、珪子がお巡りさんを呼んで調書を取ってもらうも、ついつい関係のないところに話が飛んでしまい、それをお巡りさんに「ちょっと話を戻しましょう」とたしなめられるとか(笑)。ほかの池井戸作品にはあまりない、この原作特有の家族の要素はしっかり忠実に踏襲していきたいですね。同じように、原作にある重要なエピソードも散りばめていく予定です。花壇が荒らされたり、郵便受けに瀕死の子猫が入れられるエピソードはもちろん、その子猫を治療して家族で飼うことになる話なども原作通り描きたいと思っています。

相葉雅紀の代表作になるはず

 また、原作にありますように、会社で父・太一をやりこめてくる相手や、倉田家をおびやかすキャラクターも当然登場します。豪華な役者の方々をキャスティングしていますので、配役もぜひ期待してもらえればと思います。そして今回、監督を務めるのは「若者たち2014」、「海の上の診療所」「Dr.コトー診療所」シリーズなどを手掛けた中江功です。これまでの作品や、台本作りを含めて感じていることなのですが、彼はきちんと“人を描きたい”という思いがとても強い監督です。平坦な脚本にはしたくないと、何度も脚本家と打ち合わせをしていますが、映像を意識して脚本に関わっているので、出てくるコメントにも「なるほど!」と納得させられることが多々あります。そんな中江と僕がよく話をしているのは、「とにかく、『ようこそ、わが家へ』を相葉さんの代表作にしよう!」ということです。相葉さんの等身大の姿を描きますが、「相葉くんってこんなに素敵だったっけ?」と、改めて気付かされるような新たな魅力を描いていきたいと。

 ストーカーだったり企業の不正だったり、池井戸さんが描く理不尽なことに対する“怒り”みたいなものは、父・太一のほうでより表れてくるかもしれません。なので相葉さんがお芝居で怒りで雄叫びをあげたり、慟哭したりということはありませんが「相葉くんがこんなリアクションを見せるんだ」とか「こんな動きもするんだ」といった驚きとともに、相葉さんの持つ、優しさだけではない、強さや男らしさを感じてもらえるよう作っていこうと思ってます。

身近に潜んでいる恐怖を伝えるドラマ

 原作には池井戸作品の大きな魅力である、会社の不正を知った太一がそれを暴き、戦っていく経済パートの部分も主軸にありますが、もう一つの主軸は主人公の家族がストーカーと戦っていくお話になります。ストーカーは一体誰なのか…というところでは「この人が怪しくないか? あれ、こいつも!?」と家族全員それぞれ思い当たる疑わしき人物がいる中、ストーカー事件と不正事件の2つの軸がクロスするよう作るイメージでいます。その様子がサスペンシーに描かれていくと思います。

 一見、月9ぽくないと感じるかもしれませんが、申し上げたホームドラマ感や、豪華キャスト陣のキラキラ感のほか、仮に身近な恐怖を悪とすれば、その悪と戦ってちゃんと叩きのめす展開が池井戸作品の特徴で、見た後にスカッとしたり、最後まで見てよかったと思ってもらえるドラマになることは間違いありません。また、4月というのは、1人暮らしを始める人もいるだろうし、さまざまな物事がスタートする季節なので、そんな時に「身近に潜んでいる恐怖ってあるんだよ」ということが伝えられるドラマにしたいとも思っています。例えばきちんと鍵を閉めて出かけるとか、今の世の中、普段から注意をしようと少しでも思ってもらえれば。ストレスを抱え、プレッシャーの中で生きている方々も、健太ら倉田家を見て勇気を持ってもらえたら幸いです。「僕は臆病者だ」というモノローグで始まる予定の、池井戸作品史上最弱主人公の活躍、ご期待ください。

【原作紹介】

「ようこそ、わが家へ」池井戸潤
小学館文庫

身近に潜む恐怖をつづったサスペンス
金融・経済界を舞台にした作品を得意とする作者が、身近に潜む恐怖をテーマにつづった長編小説。真面目が取り柄の会社員・倉田太一は、駅のホームで割り込み男を注意したことから、家族ともどもストーカーに狙われるように。平穏な日々を取り戻すべく、一家は犯人との対決を決意する。

【番組情報】

「ようこそ、わが家へ」
4月スタート
毎週月曜 午後9:00~9:54 フジテレビ系にて放送



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