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ハイヒールを履いた僧侶・西村宏堂「ポジティブに楽しく伝えることが大事」――国際同性カップルのなれそめから学ぶ“多様性”とは?2024/04/04

ハイヒールを履いた僧侶・西村宏堂「ポジティブに楽しく伝えることが大事」――国際同性カップルのなれそめから学ぶ“多様性”とは?

 なれそめの数だけいろんな人生の楽しみ方がある! カップルのなれそめをきっかけに多様な人生観をおしゃべりするNHK Eテレの「超多様性トークショー!なれそめ」が、4月に3年目を迎える中で取材会を開催。今年度第1回目のゲストは、ハイヒールを履いた僧侶の西村宏堂さんと、コロンビア人でグラフィックデザイナーのフアン・パブロ・レジェス・ディアスさんの国際同性カップル。

 西村さんはメイクアップアーティストやLGBTQ活動家としても活躍され、アメリカのTIME誌で次世代リーダーの1人にも選ばれた方です。取材会の冒頭で「私は同性愛者です。社会の同性愛者に対する考えや見方が変わればいいなという希望を視聴者の方に届けるために、たくさんの質問をいただけるとうれしい」と質問を歓迎する雰囲気づくりをしてくれた西村さん。フアンさんと共に出演への思いや社会に期待することなどを、終始笑顔で語ってくれました。

“多様性”を明るく楽しく広めたい

 制作統括の金丸千枝美さんは「番組を通して愛し合う2人が乗り越えてきた壁やつらかった出来事ではなく『好きになったきっかけ』というポジティブな部分にフォーカスすることで、さまざまな『幸せの形』をシェアしたい」と話し、西村さんたちも共感します。

――オファーを受けた理由を教えてください。

西村 「制作スタッフの方たちが私の講演やイベントなどを通して人となりを理解し、尊重してくださる気持ちを感じましたし、私たちのままで、楽しい伝え方で紹介していただけると確信できたので出演を決めました。楽しく伝えるということがとても大事だと考えています。『こういうことがつらいです』や『これが問題なんです』などとネガティブな伝え方をすると、受け取る側は怒られているように感じたり、口うるさく聞こえてしまって、聞く耳を持ってもらえない気がします。『こんなことで楽しんでいますよ』や『こんなうれしいことがありますよ』とポジティブな伝え方をしてハッピーな一面が伝われば、『応援したいな』とか『私も同じように楽しみたいな』と思ってもらえるはず。この番組に出られたことをとてもうれしく思っています」

フアン 「私たちの境遇や乗り越えてきた多くの壁を皆さんに知ってもらえるいい機会だと思い出演を決めました。同性愛者が希望を捨てずに、日本のファミリーとして迎えられるようになればうれしいです。日本でも愛し合う2人が幸せに暮らすことができるという希望を伝えたいです」

ハイヒールを履いた僧侶・西村宏堂「ポジティブに楽しく伝えることが大事」――国際同性カップルのなれそめから学ぶ“多様性”とは?

ロマンチックななれそめにうっとり

 西村さんとフアンさんのなれそめは、まるで映画のよう。遠距離恋愛の末に同性婚が認められているコロンビアで結婚。現在は日本で暮らしています。ドラマチックな出会いや「人類が終わるか男女差別が終わるかどっちが先だと思う?」のような哲学的な会話を楽しんでいることを知った出演者からは、ツッコミやうらやむ声が止まりません。

――司会の田村淳さんやゲストのYOUさんたちとの共演はいかがでしたか?

西村 「正直な質問を投げかけていただいたという印象です。田村さんやYOUさんが聞きたいことは、視聴者の方が聞きたいことでもあると思いますし、何よりも楽しく伝わることが大切ですね」

――番組で取り上げられることについてはどう感じていますか?

西村 「自己肯定感につながります。最近では、番組以外に本やファッションでもLGBTQの人たちが明るく紹介されることが増えてきたので、素晴らしいと思っています」   

私たちを見て、他の同性カップルも幸せになってほしい

 西村さんとフアンさんは、町を歩く時に手をつなぐことを心掛けています。「『あ!(手をつなぐ男性同士のカップルがいるんだ)』という気付きを与えたいです。1回見たことがあるのと1回も見たことがないのでは全然違いますし、何回も見るうちに『普通』になっていくと思います。他の同性カップルに『私たちも堂々と歩けるかもしれない』という勇気を与えたいです」と番組を通して伝える西村さんとフアンさん。日本でもっと“多様性”が広がることを望んでいます。

――「同性愛者であること」に自信を持てるようになったのはいつからですか?

西村 「18歳の時にアメリカに留学して、新しい価値観を持つ人に出会い、『違う普通』を知り、さまざまな情報を得ることで『自分を隠さなくてもいい』と思えるようになったんです。同性愛者であることに胸を張って生きている人や、プライドパレード(LGBTQ+に対する偏見に反対し多様性を祝うイベント)を見たこと、僧侶の修行で『どんな人も平等に扱われる』という話を聞いたことなどから、自分のことを恥じる必要はないと考えるようになりました」

――日本社会にどんなことを望みますか?

西村 「すべての人が同じ権利を享受できるような社会になってほしいです。外国人のパートナーと日本で一緒に住めない知り合いの同性カップルもいます。結婚できなくても2人でいることができればいいのではという声もあるかもしれませんが、一緒にいたくてもいられない状況もあります。フアンは労働ビザを取得して日本にいますが、大学を卒業していないといけないとか、弁護士をつけないといけないなど、さまざまなハードルがありました。問題が解決できずに、日本で過ごせないカップルがいるということも知ってもらいたいです。そして、好きな人がいることや、自分の気持ちを安心して打ち明けられるような社会になってほしいです」

フアン 「私たちは長いプロセスを経て今があります。多様性が進んでいる国のいいところを取り入れ、日本でももっと多様性が加速することを願っています。さまざまな価値観を広めるにはアイデアが必要です。私たちがモデルケースとなることができればと思っています」

――最後に、お互いの国の文化や価値観で「ステキだな」と思うところを教えてください!

西村 「『ミラベルと魔法だらけの家』というディズニー映画を見てコロンビアを深く知りました。アフリカ系や先住民族の血を引くキャラクターなど、さまざまな人たちが文化や装いを楽しみ合っているのがすてきでした。コロンビアは食べ物や地形もすごく多様なんですよね。珍しくておいしい果物がたくさんありますし、ジャングルみたいな谷や奇麗な海もあって。多様な味わいがあります」

フアン 「日本は『日本人の価値観』がはっきりしているところが魅力だと思います。宏堂と出会って、日本のことをもっと深く知りたいと思うようになりました。また、落ち着いて問題に対処できるところもすごいです。大変尊敬しています」 

 「同性カップルたちに楽しく生きてほしい」と、あふれる思いを語ってくれた西村さんとフアンさん。番組では「相手を褒めること」や「お互いが気持ちよく過ごすために心掛けていること」も教えてくれました。司会の田村さん、ゲストのYOUさん、塩野瑛久さん、わたげさん(ぼっち系クリエーター)にも“多様性”以上の学びがあったようです。明るく楽しくさまざまな価値観に触れたい人は、ぜひ、ご覧ください!

ハイヒールを履いた僧侶・西村宏堂「ポジティブに楽しく伝えることが大事」――国際同性カップルのなれそめから学ぶ“多様性”とは?
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ハイヒールを履いた僧侶・西村宏堂「ポジティブに楽しく伝えることが大事」――国際同性カップルのなれそめから学ぶ“多様性”とは?

【番組情報】

「超多様性トークショー!なれそめ」
NHK Eテレ
金曜 午後10:00~10:29



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