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「光る君へ」毎熊克哉が演じる直秀が殺される衝撃の展開に! 死の直前に握った泥に込めた思いを明かす2024/03/03

「光る君へ」毎熊克哉が演じる直秀が殺される衝撃の展開に! 死の直前に握った泥に込めた思いを明かす

 大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合ほか)の第9回(3月3日放送)では、東三条殿に侵入したのが直秀(毎熊克哉)ら散楽一座だったことが明らかになり、彼らの隠れ家を訪ねていたまひろ(吉高由里子)も盗賊仲間と勘違いされ、獄に連行されます。まひろは藤原道長(柄本佑)によって助けられましたが、その道長が良かれと思って看督長に渡した金品があだとなり、直秀たちは殺されてしまいました…。

 直秀を演じる毎熊さんのインタビュー後編では、第9回のエピソードを詳しく伺いました。【前編はhttps://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2752074

――衝撃的な展開の第9回でしたが、この展開は出演が決まった時点でご存じだったのでしょうか? また、この回の台本を初めて読んだ時の感想を教えてください。

「最初から序盤に殺されることは知っていました。初めて第9回の台本を読んだ時は、カラスがめっちゃいいなと思いました。直秀が亡くなった後、カラスに食われている描写がすごく残酷に感じたんです。この作品で、鳥は自由の象徴のような気がしていて。鳥かごの話をしたり、ふくろうの鳴き声をまねるなど、鳥にまつわるエピソードがあり、何のしがらみもなく、どこへでも自由に行けて、自分で考え、自分の意思で生きていける直秀が、自由の象徴である鳥に食われているのがいいなと。そして、それを目撃してしまうまひろと道長。2人に影響を与える役だと言われていたのですが、出演シーンまでの台本しか読んでいないので、後にどんな影響を与えたのかは分かりません。ただ、重く長くのしかかるシーンだなと感じています」

――象徴的なシーンでした。

「第9回の演出が同い年の中泉(慧)さんという方で、連続テレビ小説「まんぷく」(2018年)以来の再会だったんです。お互いに当時よりも重役を任させれている立場で再会できたので、絶対に『いい第9回にしよう!』という意気込みがあった気がして、中泉さんも直秀の最期の顔や、彼の人生をどう終わらせたらいいのかをすごく大事にしてくれて。台本にはなかったんですが、最期に直秀が泥を握り締めているのはどうかと提案したところ、『それがいいかもな』と採用されて、泥を握り締めて亡くなっている直秀を見つけた道長が泥を払って扇子を持たせてやるというシーンになったんです。そこはすごくよかったんじゃないかなと」

「光る君へ」毎熊克哉が演じる直秀が殺される衝撃の展開に! 死の直前に握った泥に込めた思いを明かす

――泥を握るというしぐさはどのような思いで考えられたのでしょうか? 直秀の最期が描かれていないので、いろんな想像をしてしまいます。

「想像しますよね。僕の中では二つあって。一つは権力に抵抗したんだろうなと。実は第2回(1月14日放送)と第9回はつながっていて、第2回で直秀に石ころを投げられて『待てー!』と追いかけていた放免の2人が、第9回で直秀たちを殺すんです。泥を握ることで、この2人に対しての反抗というよりも、今の国の権力に対して反抗しているように見えるような、悔しさがにじみ出ている死に方になったらいいなと。もう一つは役としてではなく、俳優として直秀の思いを道長にバトンタッチしたい気持ちがあったんです」

――義賊は格好いいですが、常に一歩間違えれば死と隣り合わせ。どんな生い立ちで義賊という選択に至ったのかを考えたことはありますか?

「おそらく根本にあるのは貧困。自分たちが生きていくための食料と寝床を確保するためでもありますが、反骨精神もあるかと。こんなヤツらに自分たちの生活を決められてたまるかという気持ち。彼らは今僕らが生きているよりも、生きざまにこだわっていた気がして。自分たちと同じように、ろくに食べ物もないところで子どもを育てている人々を笑わせてやろう。そして貴族たちに対しては、『余っているんだったらくれよ』という感じだと思うんです。窃盗をしたらどうなるかは分かっていますし、捕まったら代償は大きいけれど、それをやることで自分たちの生きざまが守られるというか。そんなことしない方がいいとは思いつつも、もっと強い気持ちで生きていたんじゃないかと。どうやって生きていくかを選択した結果、昼間は散楽で皆を笑わせて、夜は義賊をやっていたんじゃないかなと」

「光る君へ」毎熊克哉が演じる直秀が殺される衝撃の展開に! 死の直前に握った泥に込めた思いを明かす

――細かく設定を決めて役に入られたのですか?

「共演者や演出陣とシーンを作っていく中で、1人だけ細かく設定を作り過ぎると、邪魔になることがあるんです。だから、直秀が行動する時やセリフを言う時に、今までこんな人生を生きてきたんだろうとか、こういうことにすごく敏感だから、こういうふうに話すんだろうなどとたくさん想像しました。想像するだけして、決めつけないという感じです」

――最初、貴族の道長と敵対していた直秀ですが、道長の人となりを知っていくうちに、貴族も皆が悪いわけではないと、気持ちがどんどん変化していきます。演技をする上で、徐々に変えていく難しさはありましたか?

「いつどこで道長に心を許したのかは明確に分からないんですが、直秀は町をよく見ているので、道長のことはなんとなく知っていてもおかしくないし、いけ好かない思いはもとからあると思います。具体的なシーンはありませんが、直秀は勘の鋭さもあって、道長とのやりとりの中で、人柄や何を大事にしている人なのかを徐々に感じていったはずです」

――少しずつ仲を深めて、第8回(2月25日放送)では道長の弟と偽り、一緒に打毬(だきゅう)をやりますよね。

「打毬後、2人きりで屋敷内を歩くシーンで、直秀の左腕の傷は矢傷に見えるから大内裏に出た盗賊は直秀だろうと想像している道長と、誰に撃たれたか知っている直秀の腹の探り合いがあって。台本通りセリフが終わって、直秀が毬(たま)を投げたら道長がホイッて返してきて。それは台本には書いていなくて、道長は『そういうふうに返してくれるんだ』と。探ってはいるけど、うそで毬を返しているわけじゃないなと感じて。不思議な友情ですよね。探っていて、自分の役割や立ち位置、身分があるんですが、あの毬を返してくれたことがすごく意外でうれしかったです」

「光る君へ」毎熊克哉が演じる直秀が殺される衝撃の展開に! 死の直前に握った泥に込めた思いを明かす

――そこから距離が縮まったと受け止めていらっしゃるところもあるのでしょうか?

「なのに、次は道長の家に盗みに入っていがみ合う流れがいいなと(笑)。でも両方うそじゃないので。けがをしたことに対してのうそはあるんですけど、毬のやりとりにうそはなかったなと思って。そこで一番距離が縮まったシーンでした」

――道長役の柄本さんとの打毬のシーンはいかがでしたか?

「スケジュールや場所の都合で練習が同じ日だったのは1回、2回ぐらいで常に一緒にということはあまりなかったです。でも、初めましてではなかったし、佑さんは佑さんでめちゃくちゃ練習しているのを知っていたので、道長が頑張っているから頑張ろうという思いはありました」

――第6回(2月11日放送)で、散楽の一員から、「ほれてんのか」といわれた時に「俺は誰にもほれねえよ…明日の命も知れぬ身だ」と答えていました。それは恋愛を諦めているのか、それともそんなことをしてる余裕がないという気持ちからなのか、どのように解釈されていますか?

「あれは難しくて。やっぱり“好き関係”は難しいですね(笑)。自分のイメージですけど、あそこで仲間に言われて初めてその可能性を知ってしまったんじゃないかと。だから半分ごまかしで半分本当で、直秀ははっきりとそういうもんだと思っていないけれど、あのシーンで初めて、まひろのことを好きかもしれないという意識が生まれたのかも?…と思いながら演じました。ほれていることに自覚があったなら、ちょっと違う反応になった気がして。直秀にはそういう感覚が全くないという感覚で演じました」

――まひろに対して何とも思っていなかったけれど、そのことに自分自身が気付かされたという解釈をされたということでしょうか?

「長く生きていけば恋愛もできたかもしれないですけど、家族や自分の両親の愛をあまり知らないから、方法が分からない。知識はあっても実体験として分からないんじゃないかなという気はしてるんですよね。第9回で死なずに平和にお付き合いが続いていたら、もしかしたら自分で確信するような時間があったかもしれないけれど、今回の時間軸では分からなかったのではないでしょうか」

――あまり女っ気がないからこそ、すてきだなって思えました。女性と遊んでいたらちょっと嫌ですね。

「それはないでしょうね(笑)。ずっとあのむさ苦しい散楽一座のヤツらと一緒にいるんですよ。くだらない話をして、たまに安い酒をゲットして飲んでいるだけじゃないですかね」

「光る君へ」毎熊克哉が演じる直秀が殺される衝撃の展開に! 死の直前に握った泥に込めた思いを明かす

――ガイドブックのインタビューで、「ずっと権力に反抗してきてきたけれども、これまで見えなかった世界が見えるようになって、やがて自分の定めに気付いていくのではないか」とおっしゃっていました。直秀にとって定めというのは何だったのでしょうか?

「大まかに貴族というものに対して向けていた刃が、道長に出会ってから、貴族も人それぞれ違うということに気付いて。第9回で自分の人生はここまでかとどこかで悟った直秀にとって、道長を通して憎しみだけじゃなく、すてきなものを見つけられことが、短い人生の宝物なのかなと。あまりそうは見えないかもしれないけれど、直秀なりに成長はしているんです。直秀は気付いていないけれど、長い目で見ると、彼の死を持って、まひろと道長に影響を与えたことが定めだったのかなという感じがします」

――道半ばで亡くなる直秀、もしくは演じた毎熊さんご本人として、これからまひろに、どのように生きてほしいですか?

「今じゃなくても、いつかは海を見て、こんなに奇麗な場所があるんだという景色をいっぱい見てほしい。狭っ苦しい、生きづらい都じゃなくて、もっとのどかな美しい世界や景色を見てほしいです」

――ありがとうございました!

「光る君へ」毎熊克哉が演じる直秀が殺される衝撃の展開に! 死の直前に握った泥に込めた思いを明かす

【番組情報】

大河ドラマ「光る君へ」 
NHK総合 
日曜 午後8:00~8:45ほか 
NHK BSプレミアム4K 
日曜 午後0:15~1:00ほか 
NHK BS・NHK BSプレミアム4K 
日曜 午後6:00~6:45

NHK担当/K・H



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