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毎熊克哉が「光る君へ」で演じるオリジナルキャラクター・直秀、「文字で詳しく書かれていないけれど、すごく“匂ってくる”キャラクター」2024/03/02

毎熊克哉が「光る君へ」で演じるオリジナルキャラクター・直秀、「文字で詳しく書かれていないけれど、すごく“匂ってくる”キャラクター」

 大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合ほか)の第8回(2月25日放送)では、藤原為時(岸谷五朗)を訪ねて、母・ちやは(国仲涼子)の敵・藤原道兼(玉置玲央)が現れ、心中穏やかではないまひろ(吉高由里子)でしたが、母への思いを胸に道兼の前で琵琶を弾くのでした。一方、藤原道長(柄本佑)らが住む東三条殿に盗賊が侵入。取り押さえられた盗賊は、一緒に打毬(だきゅう)を楽しんだ直秀(毎熊克哉)だったことに驚きを隠せない道長でした。

 今回は、町辻で風刺を披露する散楽の一員で、その自由な言動にまひろと道長が影響を受ける直秀役を演じた毎熊さんのインタビューを前・後編に分けてお届け! 前編では人物像や色気あふれる直秀を演じるにあたって心掛けたことなどを伺いました!

――直秀役のオファーがあった時の気持ちを教えてください。

「どんな物語かを知る前にオリジナルキャラクターを演じてほしいと言われたので驚いて、どんな感じになるんだろうと思いました。史実に登場する人物だったら史料が残っているので勉強しやすいのですが、オリジナルキャラクターで、しかも貴族じゃなくて町の人間。自分は貴族じゃないし偉い人でもないので、生きている感覚としては今の自分に近いと感じて、ドキドキしつつも台本を読むのを楽しみにしていました」

――台本を読んで直秀のどんなところに魅力を感じましたか?

「実際に台本を読んでみると、登場シーンはそんなに多くはないものの、要所要所に出てきて、政権争いなどの物語ではない部分でものを語ったり、散楽で何かを表現している。視聴者に分かりやすい形で散楽にしていくので、すごく面白い役どころだなと思いました。貴族への批判も強くあるんですけど、そうじゃない部分を道長に出会うことで見つけていく。批判だけだったら楽なのに、人を批判できない部分が生まれてくる部分も面白いです」

毎熊克哉が「光る君へ」で演じるオリジナルキャラクター・直秀、「文字で詳しく書かれていないけれど、すごく“匂ってくる”キャラクター」

――平安時代の町人のイメージをどのように捉えていますか。

「学生時代に社会科を頑張っていなかったので(笑)、あまり詳しくはなかったのですが、戦がないから平和というイメージがあって。でも、戦はないけれど、世の中は貴族が仕切っていて、庶民たちは満足に食事もできずに虐げられている。上から見たら、下はどうでもいいというか。人間社会というのは、昔からあまり大きく変わらないのだなと思います」

――脚本家の大石静さんからは、どのように演じてほしいと言われたのでしょうか?

「大石先生は何を求めているんだろうとドキドキしながら顔合わせに行ったら、『楽しみにしてるね』とだけ言われたので、すごくプレッシャーを感じた記憶があります」

――おまかせだったのですね。

「直秀はずっと出ているわけではないですし、文字で詳しく書かれていないけれど、すごく“匂ってくる”キャラクターでした。直接会ってかけられる言葉ではなく、渡された台本に大石先生のメッセージがあるということかなと考えて。間違っていたら間違っていたでしょうがないなと思いながら、この脚本に書かれている何かしらの期待を僕なりに感じ取って応えようとしました」

毎熊克哉が「光る君へ」で演じるオリジナルキャラクター・直秀、「文字で詳しく書かれていないけれど、すごく“匂ってくる”キャラクター」

――大石さんが描く男性陣はすごく色気もあり、直秀もとても格好よく描かれていますが、それについてどう思われますか?

「男性と女性が思う“格好いい”は一生合わない気がする(笑)。別の作品で、どうしたら色気があったりセクシーに見えるかという話があったのですが、それは女性に聞いた方が早いなという感覚はあって。男性が思う格好よさではないんだと思うと、変に考えてやるよりも素直に演じた方がいい気がして。それが自分で格好いいかどうかは分からない状態なんですが、台本に書かれている通りにやった方がいいだろうと思いました」

――色気の一つに身体能力の高さもあると思います。三角飛びで馬に飛び乗ったり、第7話(2月18日放送)にも打毬のシーンがありましたが、役作りを意識したのでしょうか?

「台本にはバク転すると書いてあったのですが、もう36歳で今から練習するのは大変だったので、バク転じゃない技を練習してやりました。その技はそんなに目立つ感じで映っていなかったのですが…。ただ、よじ登ったり回ることは日頃からしておかないと、急に現場ではできないので、その練習はずっとしていましたね」

毎熊克哉が「光る君へ」で演じるオリジナルキャラクター・直秀、「文字で詳しく書かれていないけれど、すごく“匂ってくる”キャラクター」

――では、打毬はいかがでしたか。

「8月頃に撮影をしたんですが、1月から週1で1日3鞍、ずっと練習していました。体幹を使うので、それもいい筋トレにもなりました。身体能力を使うものについては早めから練習しました」

――直秀はどんな人物で、どんな性格だと思いますか?

「生い立ちは明確に描かれていないので、僕の勝手な想像ですが、ちゃんとした家では育っておらず、結構早い段階から散楽一座と一緒にいたんだろうなと。彼らも帰る場所がないような人たちで、血はつながっていないけれど、家族のように思っている。直秀という名前も自分で考えたのかもしれないし、芸名なのかもしれない。親の顔も分からない人かもしれないと考えています。だからその半面、愛情に対してうらやましさがあるんじゃないかな。そういう人は批判的だったりもするし。批判の裏には悲しみやうらやましさがある感じで。だから、道長とまひろという身分違いの2人の男女の気持ちに気付いていても、ネタにできない。本当だったら『なんだ? こいつら』という気持ちで見れるはずだけど、純粋に思い合っている2人に、どこかうらやましさがあるのかなという気がしています」

――直秀はちょっとニヒルな部分があったり優しさをのぞかせたりと、多面的な部分がありますが、役との共通点や性格について共感できる部分はありましたか。

「自分にとっては人を演じる活動の中で、うまくいっていたり幸せであることよりも、足りていない部分や悲しいことの方が圧倒的に栄養分になっている気がして。自分のひねくれていたり素直じゃないところ、ゆがんでいる部分とはあまり向き合いたくはないのですが、向き合うことで、少し前向きな愛情表現などになると感じているんです。直秀も幸せそうではなく、反骨精神なのか、負のエネルギーを持って生きている気がして、そこは近いところはあるかもしれないですね。直秀の優しさも、隠したくても出てきちゃう時の方が大事な気がしていて。道長とまひろを助けているシーンで、本人は優しくしているつもりはないけれど、はたから見ると優しく見える直秀はいいなと思います」

毎熊克哉が「光る君へ」で演じるオリジナルキャラクター・直秀、「文字で詳しく書かれていないけれど、すごく“匂ってくる”キャラクター」

――直秀は回ごとに見せる表情が違いますし、第5回(2月4日放送)で、直秀がまひろに「帰るのかよ」といったシーンの反響は大きかったと思いますが、それ以外で反響の大きかった回はどこでしょうか?

「どうなんでしょうね。現場では『帰るのかよ』と普通に言っていて、『あさイチ』でセリフを言うくらい反響があるとは思わずに演じていました(笑)。反響はちょっと想像がつかないですね。物語の2人を再会させる役割はあるけれど、ずっと出ている役でもないし、計算外でした。視聴者の皆さんがどこにキュンキュンくるかは全く分からないです。狙ってやっていないので、これからどういうところに反響があるのか、本当に楽しみです」

――まひろ役の吉高さんと共演して思い出に残っているシーンはありますか?

「第4回(1月28日放送)で、まひろに一緒に飲むかと誘ったけど『お姫さまじゃ無理か』と言い、第6回(2月11日放送)では、まひろが書いてきた物語に『お前に頼んでねえよ』と言うシーンを経て、第7回でまひろが『笑える話を考えてきた』と直秀らの隠れ家にやって来て、散楽一座が猿を演じるシーンです。それらのシーンで、だんだんまひろと直秀の距離が近づいていったと感じたと思いますが、実際撮影でも同じようなことがあって。毎日一緒にご飯を食べている散楽一座と『今日は何を食べようか』とホテルを出たら、吉高さんがいたのでご飯に誘ったら『行こっかな』と本当に来てくれたことがありました。その感じと一連のシーンがマッチしていて。細かく描かれていないはずなのに、役柄や演じている人間同士の距離が近くなっているのが自然と出ているので好きですね」

――そんなことがあったんですね! その後の第8回では、直秀がまひろに「一緒に行くか?」と都の外に出ようと誘うシーンがありました。直秀は好意と友情、どちらの気持ちで言ったと思われますか?

「まず、まひろは都じゃなくて外の自由な世界の方が向いているなと思ったんじゃないかなと。そして、直秀はもし好意があったとしても認めない。あるいは自分の気持ちに気付いていないか。だから、好意は否定するけれど、まひろにすごく興味を持っていて、何げなく一緒に行くかって言った感じです。認めていないに近い感覚では演じていました」

毎熊克哉が「光る君へ」で演じるオリジナルキャラクター・直秀、「文字で詳しく書かれていないけれど、すごく“匂ってくる”キャラクター」

――自分では気付いていなくて、恋愛の好きではなく、人として好きという気持ちの方が強かったということでしょうか。

「そこが一番直秀の難しいところで。それは決めないまま演じました。シーンやセリフのトーンは演出陣と相談しましたが、分からないというのが正解かなと思って。今風でいえば、好きなタイプもあるのかもしれないし、友達、同志としての好きなのかもしれない。それを自分の中で決めると、はっきりした表現になる気がして。両方あるけど、もし恋愛の意味での好きが自分の中に出てきてしまうならば、それは消そうという感覚でした」

――そもそも直秀は、なぜまひろに興味持ったと思われますか。

「それも台本には書かれていなくて、なんでなんだろうと僕も思っていました。今思うと、直秀がまひろにぶつかったせいで、違う方に飛び火しちゃったことを隠れて見ていたわけです。ただ、それだけでずっと『屋根に来る?』と不思議で(笑)。きっと、直秀の建前としては、関係ない町の人に迷惑をかけちゃったということなんでしょうが、客観的に考えたらタイプだったんじゃないかと思います(笑)」

毎熊克哉が「光る君へ」で演じるオリジナルキャラクター・直秀、「文字で詳しく書かれていないけれど、すごく“匂ってくる”キャラクター」

――自分と似たところがあるまひろに、何かしらを見いだしたというか…。

「価値観の面でもそうですが、ほっとけないんですよね。まひろは籠(かご)の中にいるよりは、外に出た方がよっぽどいいだろうから、『行く勇気があるなら』と誘った部分もあるんじゃないでしょうか」

――まひろを都の外に誘った直秀ですが、実際には連れていかないだろうなとも感じました。

「直秀が『一緒に行くか』って誘った後、少し間があってから、まひろが『行っちゃおうかな』と言うんですが、行くとなったらいろんなものを彼女に捨てさせなきゃいけないし…。行かないよなという感じですかね(笑)。『冗談だよ、連れて行かないよ』って言うかもしれないし。あの短い間にいろんな感情が揺れているので、面白いですよね。まひろが本当に行きそうな顔を見て、初めていろんなことを考えちゃうんでしょうね」

――そんなところもチャーミングですね。

「そうですね。設定も若いですからね」

毎熊克哉が「光る君へ」で演じるオリジナルキャラクター・直秀、「文字で詳しく書かれていないけれど、すごく“匂ってくる”キャラクター」

――第8回では、道長らの住む東三条殿に盗賊として忍び込んだ直秀はどうなるのでしょうか?

「第7回では道長の弟という設定で、貴族に交じり打毬をして、今まで以上に右大臣家に関わる直秀、『どうする?』というところでしょうか(笑)」

 後編のインタビューは明日、第9回(3月3日)放送後に公開します!

【番組情報】

大河ドラマ「光る君へ」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後6:00~6:45

NHK担当/K・H



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