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水上恒司、「趣里さんが歌う『ラッパと娘』の音源を聴いた時から、役作りは全く心配ないと思っていました」――連続テレビ小説「ブギウギ」2023/12/01

水上恒司、「趣里さんが歌う『ラッパと娘』の音源を聴いた時から、役作りは全く心配ないと思っていました」――連続テレビ小説「ブギウギ」

 現在放送中の連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK総合ほか)。大正の終わりごろ、大阪の下町の小さな銭湯の看板娘として育った花田鈴子/福来スズ子(趣里)は、歌って踊るのが大好きな天真らんまんな女の子。「歌と踊りでみんなを笑顔にしたい」という思いから歌劇団に入団し、抜群の歌唱力で頭角を現していきます。1938(昭和13)年に上京すると、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、人気歌手になっていきます。しかし、戦争が始まると、置かれた状況は一変。スズ子の歌っていた歌は「敵性音楽」となり、舞台での歌や踊りが厳しく制限されてしまいます。数々の苦労や困難を乗り越え、大スター歌手への階段を駆け上がっていくスズ子の物語です。

 今回は、そんなヒロイン・スズ子の最愛の人・村山愛助を演じる水上恒司さんにインタビュー! 役作りや趣里さんとの撮影エピソードについてお伺いしました。

――まず、ご自身の役どころを教えてください。

「スズ子が最初で最後に愛した男が、僕の演じる村山愛助です。スズ子はいろんな人物と出会い、支えや後押しを受けてスターとして駆け上がり、母親として娘を育てていくんです。その中でも、愛助の存在がスズ子にとってすごく大きな影響を及ぼすので、大事な役どころになっています」

――具体的にどう愛助を捉えているのでしょうか?

「『ブギウギ』の中で描かれているのは、戦争の前後という昭和の激動の時代で、日本が敗戦国というコンプレックスを抱く、歴史の中でも重要な時代なんです。その中で、愛助は男ですが、スズ子のことを立てているんです。憧れの存在であるからこそ、スズ子がさまざまな選択をしていく中で、『いや、スズ子さん、あなたはそれじゃ駄目だ』『スターとして駆け上がっていくために、こうしないといけない』と後押しするんです。当時の男女の在り方とは逆のスズ子と愛助の姿を今の時代に届けるのは、すごく意味があるなと感じています。昭和の時代ではなかなかない男女の形なので、昭和の男のイメージと真逆を想像しながら演じていました。また、愛助とスズ子は切っても切り離せない関係なので、スズ子にとってどういう愛助でいたら楽しく生きていけるかをずっと考えていて、それがベースになっています」

――演じる上で心掛けていることはありますか?

「今の時代も男女平等とは言えない部分はありますけれど、愛助とスズ子の2人の形は、現代社会でも目指していくべき姿なのかなと思いました。それが僕なりの今の時点の答えで、愛助の姿に反映しています。『ブギウギ』は特に女性に見てほしいと思っています」

水上恒司、「趣里さんが歌う『ラッパと娘』の音源を聴いた時から、役作りは全く心配ないと思っていました」――連続テレビ小説「ブギウギ」

――先ほどから関西弁で「スズ子↑」と呼ばれていますが、関西弁の難しさはありますか?

「台本を読んだ時点では、意外といけるんじゃないかなって思っていたんです。西に住んでいたというのもありますし、テレビでお笑い芸人の方の関西弁を聞くことも多いので、東北弁や広島弁などに比べたらなじみのある言葉ですよね。声に出して読んで『意外といけてる!』と思っていたんですけども、方言指導が一木美貴子先生という方で、以前『これっきりサマー』(NHK総合・関西地方)というNHKの大阪で撮ったショートドラマの時に共演した方なんですけど、『もぉ、全然ちゃうで~。あんた七色の方言使うなぁ』と言われて。撮影はだいぶ進んでいますが、いまだに何が違うのか合っているのかも分からないぐらいなので、本番前に指導していただいたり、やり直したりしながら撮影しています」

――今回演じている愛助は“御曹司”という役柄ですが、何か意識されていますか。

「御曹司に関しての役作りは特にしていないです。それ以上に、『福来スズ子にとっての村山愛助はどういう人なんだろうか』と考えています。だから、僕が出演する前の、子役の澤井梨丘ちゃんがスズ子を演じているところから台本を読んで、こういう時に年上の男の子に対して物おじせずに言えるんだとか、スズ子の歩んできた人生を頭に入れて、無意識の中でもスズ子にとって刺さっていくような青年を作っていきたいなと思っています。スズ子とは別軸で、愛助が村山興業の中の御曹司であるという葛藤が今後描かれていくんですけれども、それはまた別のお話で、小雪さんと村山興業の方々とのセッションだと思っています」

――ご自身と役柄で似ている部分はありますか?

「現場でもぽろっと趣里さんから言われたんですけど、上京してきたばかりという意味では共通しています。僕、福岡に15年間、長崎に3年間住んで、その後、19歳から東京に出てきたんです。『九州男子だね』と言われることが多いので、それに対する思いだったり、上京したばかりの時の感覚を思い出したりしています」

水上恒司、「趣里さんが歌う『ラッパと娘』の音源を聴いた時から、役作りは全く心配ないと思っていました」――連続テレビ小説「ブギウギ」

――ここまで内面のお話をお伺いしたんですけれども、外見についても聞かせてください。映画「OUT」ではすごく体を鍛えられている役で、今回は病弱な役を演じられていますよね。大変なことはありましたか?

「今回の苦労は特にないです。11月17日に公開した映画『OUT』が今年の頭に撮影で、それから別作品で特攻隊の撮影に入るまでのスパンが短かったので、その時に断食したくらいです。それが『まあ…つらかったかな』という感じですね。体重の増減って、今回に限らずこの5、6年で何度かやっていて『僕、できるな』と思っているんです。もちろん『おなか減った』とか『ラーメン食べたいな』とか思いましたけど」

――趣里さんのパフォーマンスを見た感想を教えてください!

「クランクインする前に、趣里さんが『ラッパと娘』を歌っている音源を聴いた時から、役作りは全く心配ないと思っていました。純粋に愛助を演じる役者として、スズ子のことを愛してあげられる、好きになれるってすごく大事なことだと思うんですけど、音源を聴いた時点で『頭で考えなくても好きになれるな』と僕は思ったので、心配もなく楽しみでした。先日もステージを拝見しましたが、最高でしたね。すごく高揚しました。皆さんも見ていただいていると思うんですけれども、音楽とドラマがうまくかみ合っていくと、予想できないぐらいのエネルギーが生み出されるので、本当に面白い作品になっていると思います。また、『ブギウギ』のように“人生を喜劇として捉えていく”視点はすごく大事だなと思っていて。つらいことも苦しいこともありますが、自分の人生を『ブギウギ』のように明るく捉えていけたら、より良く楽しく生きていけるんじゃないかなと。喜劇のような視点を持つことの重要性が、今回のスズ子から受け取れるメッセージだと思います」

――趣里さんと役作りについてお話されましたか?

「特にはしていないです。僕にとっての愛助というよりも、趣里さんのスズ子の話なので。僕たち周りは、スズ子にとっての名脇役になっていかないといけないので。自分を主に置く役作りをしていなくて。今回は、台本を読んで、この一言や姿がスズ子にとっての糧になって、エネルギーになっていくんだなとか、そのエネルギーになるためにはどういう愛助を見せた方がいいのか考えています。そこはあえて言葉にすることなく、現場でのセッションを楽しみにしています。本当に瞬発力を必要とする現場の連続ですね」

水上恒司、「趣里さんが歌う『ラッパと娘』の音源を聴いた時から、役作りは全く心配ないと思っていました」――連続テレビ小説「ブギウギ」

――今後、戦争が激しくなっていきますが、その中での「ブギウギ」の明るさや、スズ子と愛助らしさはどういったところにありますか。

「これまでの『ブギウギ』を見る限り、喜劇で続いていくんじゃないかなと思います。先日趣里さんともお話したんですけど、戦争を経験してそれを共に乗り越えることで、切っても切り離せない絆になっていると思うんですね。戦時中だったからこそ、スズ子もいろいろあって歌も踊りもできなくなって、愛助にも困難があるけど、スズ子と一緒にいる時間が作れて、その中で愛を育み、戦争を乗り越えて再起を目指していくんです。戦争はもちろん大変だけど、現代社会で戦っている僕たちが大したことないわけじゃない。本人が持っている悩みは人と比べるものではなく、その人が大変だと思ったら大変ですし。ただ、愛助とスズ子の姿を見て『今日も頑張ろう』『仕事を辞めようと思ったけど、今日1日だけでもいいから頑張ってみようかな』とか、これを見て一生楽しく生きてくださいなんて、そんな大きなことは言えないんですけれども、ささいな頑張るきっかけになれると信じています」

――趣里さんの座長ぶりはいかがでしょうか?

「趣里さんは、歴代のヒロインの中でもかなり厳しいスケジュールだそうです。実際の撮影期間だけじゃなくて、休みの日もボイストレーニングやダンスのリハーサルがある中でセリフも入れていかないといけない、かなり大変な現場です。なのに、嫌な顔も苦しい顔もせず『いい現場だったね』って言えるような時間を過ごしたいと思っていらっしゃるし、周りにも思っていただきたいという姿勢がビンビンに伝わってきますね。見ていて励まされますし、背筋を伸ばさなきゃいけないなと思います。僕自身も、違う作品と並行して撮影している時期もあったので、心身ともにきつい時期もあったんですけど、趣里さんの姿を見ていると『きついなんて言っていられないし、僕も頑張ろう』『この人にエネルギーを注ぎ込んであげたい』とポジティブに思わせるような立ち居振る舞いをされている方です」

――大阪らしさを感じる部分は?

「現場のスタッフさんをはじめ、東京とは違う感じがありますよね。やりとり一つにしても、何か試されている気がします(笑)。役者としてというか、いち人間としてすごく刺激になっています」

――突っ込まれるタイプですか。

「うーん、突っ込みもまあまあしますが…」

――突っ込みはヒットしましたか?

「だいたい、1割8分…(笑)」

水上恒司、「趣里さんが歌う『ラッパと娘』の音源を聴いた時から、役作りは全く心配ないと思っていました」――連続テレビ小説「ブギウギ」

――最後に、ここまで演じてみての感想を教えてください!

「どちらかというと、僕はスズ子の立場なんです。芸をなりわいにしていて、自分の個性や立場を評価されないといけないので、世界が自分を中心に回っている気分になりがちなんですね。でも一方で、スタッフさんに傘を持ってもらったり、タクシーを用意してもらったりすることに疑問を持つこともあります。もちろん替えがないというのもあると思うんですけど。普段そういう環境なので、スズ子を支える立場はすごく新鮮ですし、僕も見習わないといけないなと思う点もたくさんあります。また、趣里さんが演じるスズ子が見ていて面白いですし、僕が趣里さん演じるスズ子のことを純粋に好きになれて、『愛している』と言えることが本当にうれしいです」

――ありがとうございました!

【プロフィール】

水上恒司(みずかみ こうし)
1999年5月12日生まれ。福岡県出身。2018年、ドラマ「中学聖日記」(TBS系)で主人公の相手役に起用され、俳優デビュー。第99回ドラマアカデミー賞助演男優賞を受賞。福原遥とダブル主演を務める映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」が23年12月8日に公開予定。

【番組情報】

連続テレビ小説「ブギウギ」
NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15ほか ※土曜は1週間の振り返り
NHK BSプレミアム・NHK BS4K
月〜金曜 午前7:30〜7:45ほか

NHK担当/kizuka



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