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「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは2023/11/02

「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは

 テレビ朝日系で現在放送中のドラマ「ゆりあ先生の赤い糸」。今年の「第27回手塚治虫文化賞」で頂点となる「マンガ大賞」に輝いた入江喜和氏の同名漫画を実写化した本作は、主人公・伊沢ゆりあ(菅野美穂)が穏やかな生活を送っている中、夫・伊沢吾良(田中哲司)がホテルで昏倒し緊急搬送されたことから“恋人”だと名乗る美青年、夫を「パパ」と呼ぶ2人の女の子とその母親である“夫の彼女”と出会い、ひょんなことから彼らと“奇妙な同居生活”をすることに。さまざまな混乱の中でも強く生きるゆりあの姿を描いた令和のヒューマンドラマです。

 ゆりあの人生に大きな変化を与えることとなったキーパーソンたち、その1人が、倒れた吾良のことを誰よりも思い、その思いの強さ故に“吾良の彼女”・小山田みちる(松岡茉優)を敵対視してしまうこともある“吾良の彼氏”・箭内稟久。演じるのは鈴鹿央士さんです。序盤から波乱の展開が続く本作ですが、ゆりあの提案した“奇妙な同居生活”を「すてきだと思う」と語る鈴鹿さんが、作品の魅力や役に対する思いを語ってくれました。

「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは

――作品にはどんな印象を持たれましたか?

「人間関係がすごく複雑だなと思いましたし、“不倫相手”という役が初めてで、恋人だった吾良さんが倒れて介護するとなって、夫婦の住んでいる家に自分が住むようになって、奥さんと一緒に介護するというストーリーがすごいなと思いました。でも、ゆりあさんもゴロさん(吾良)も、ゴロさんの妹である志生里さん(宮澤エマ)も、みちるさんも、稟久も、どのキャラクターも濃くて、彼らの日常の中の出来事もすごく面白かったので、『自分に何ができるのか』という部分では、すごくワクワクしていた思いがありましたね」

――人間関係が複雑に絡み合っているだけでなく、癖の強いキャラクター性もあってなかなかの情報量があると感じたのですが、受け入れるのに時間はかかりましたか?

「原作を読ませていただいた時は、やっぱり絵もあったので面白くてバーっと読み切ったのですが、それが台本になって、日々撮影をしていて物語が立体的になっていくのを見ると、確かに複雑ではあるけど、コミカルでテンポも良くて、もともとあった面白いシーンもより見やすくなっている気がします」

――原作もあっという間に読み切れますよね。

「ドラマの中でも、家の介護が始まるとワンシチュエーションだったりするのですが、会話もすごく面白いし、家の中で起こる出来事も『え!?』となるので、全部が地続きしているような感じです。『日本なり世界の実際にある家で、本当にこういう家族がいるかもしれない』というリアリティーを感じられる原作でもあり、映像でもあると思うので、純粋に楽しんでもらえるような気がしています」

「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは
「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは

――今回演じられる稟久はかなり淡々としている印象があるのですが、ご自身はどのように捉えていますか?

「すごく冷たいなと思いましたし、ゴロさんが向けてくれている思いは誰よりも自分に向いていると思って、家に集まっているみんなのことを見下しているというか、冷たい感じで接しているのですが、よく考えると、恋人の奥さん、愛人疑惑のある女性と同じ空間で過ごすことって、不思議な感覚に陥るとは思うんです。あまり気分も良くないはずだけど、みんなと積み重ねていく日々の中でいろいろ変化も少しずつ起こっているので、すごく面白い役だなと思いましたね」

――第2話の終わりでは「同居しながら、吾良の介護をしてほしい」というゆりあからの提案にも、強く拒否する稟久の姿が描かれましたね。

「あれはちょっとやばいですね(笑)。でも、それがこの物語の面白さでもあるし、ゆりあさんの持っている“大きな意志”の表れだと思うので、格好よく生きているなと思っています」

「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは
「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは

――鈴鹿さんから見て、ゆりあの提案した“同居しながらみんなで介護をする”という新しい家族のような形についてはどんなことを感じたのでしょうか?

「ゴロさんの主治医の前田有香さん(志田未来)がおうちに来て『1人で抱え込まないのは大切ですよね』ということを言うシーンがあって、やっぱり1人で抱え込まないことは大事なのかなと思います。稟久も稟久でいろいろな事情を抱えているし、ゆりあさんもゴロさんの介護のことがあったり、(吾良の母)節子さん(三田佳子)も他人だった誰かと一緒に過ごすようになって、みんながいろいろなものを共有していけるようになるって確かに家族だなと思うし、そういうのもすてきだなと思ってしまった自分がいます。役的には思わない方がいいんでしょうけど、こういう形もありなのかもしれないと思いました」

――それぞれの事情を知ると、簡単には一蹴できないのかとも感じます。

「稟久は稟久でちょっと冷たかったり、みちるさんも一癖あったりするのですが、ゆりあさんにとっては断るに断れないというか、憎み切れないかわいらしさのような個性がそれぞれあって、そこも一つ屋根の下に集まっていられる要因なのだと思います。それが作品の見どころや魅力にもなりますし、演じられる先輩方のお芝居がとにかくすごいので、僕は毎日圧倒されながらも、必死についていけたらという思いで頑張って食らいついていますね。菅野さんは現場での撮影中もドシッと構えられていて、でもみんなでゲラゲラ笑いながら撮影することもあって。菅野さんだけでなく、皆さんが本当にすごくいい雰囲気を作ってくださっているので、とてもいい現場になっていると感じています」

「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは
「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは

――最後に、本作に込められたメッセージ性をどう感じているか、教えてください。

「(かなり熟考した後に)僕なりのメッセージだと、他人を受け入れることと自分自身を受け入れることはすごく大切なのかなと思います。不倫を肯定するわけでないですが、自分が心の底から好きになった時にその人とどう向き合うか、いろいろな壁はたくさんあるけど、自分の本心に問いかけてどういう答えが出るのかは自問自答していくべきだと思います。誰が好きで、その人のことをどう思っているかということには素直であるべきだと思いましたし、稟久も『男性が好き』という役ですが、“同性愛”という特別感のある描き方ではなく、一つの人間の恋愛として描かれていて。お互いが人として“好き”という感情を持って恋をしているので、それが男女の恋愛でも、男性同士の恋愛でも、女性同士の恋愛でも変わらないと思います。稟久とゴロさんの中でも人間としての“愛”があって、ゆりあさんもそれをちゃんと受け入れているので、その視点も大事だなと思いましたし、いろいろなものが詰まっている作品なので、見ていただいた人が『こういう家族や考えもあるんだな』と受け取ってもらえたらうれしいです」

「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは
「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは
「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは

【プロフィール】

「自分が心の底から好きになった時にどう向き合うか」――鈴鹿央士が「ゆりあ先生の赤い糸」から感じた“愛の受け止め方”とは

鈴鹿央士(すずか おうじ)
2000年1月11日生まれ。岡山県出身。17年に公開された映画「先生!、、、好きになってもいいですか?」にエキストラ出演した際、広瀬すずの目にとまり芸能界へ。NHK連続テレビ小説「なつぞら」、ドラマ「おっさんずラブ–in the sky-」(テレビ朝日系)、「MIU404」「ドラゴン桜」(ともにTBS系)、「六本木クラス」(テレビ朝日系)、「クロステイル〜探偵教室〜」「silent」(ともにフジテレビ系)、「君に届け」(Netflix)、映画「ロストケア」(23年)など、数々のドラマや映画に出演。映画「蜜蜂と遠雷」(19年)では第43回日本アカデミー賞新人俳優賞、第93回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第74回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第44回報知映画賞新人賞と各賞を獲得した。また、19年よりメンズノンノモデルとしても活躍中。

【番組情報】

「ゆりあ先生の赤い糸」
テレビ朝日系
木曜 午後9:00〜9:54
※11月2日放送は日本シリーズ中継のため、放送時間変更、または休止になる場合があります

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取材・文/平川秋胡(テレビ朝日担当) 撮影/蓮尾美智子



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